私たちの生きる時代は「VUCA」と呼ばれ、企業の在り方も常に変容し続けている。変化の激しい世の中で、自分自身が軸足を持ち仕事選びをしていくにはどうしたらよいのか。多くの就活生が興味を持っているテーマだ。

irootsでは、パナソニックにて人事戦略構築を担当されている若竹淳平氏をお招きし、『「本当にやりたいこと」が出来る企業との出会い方』というテーマでイベントが開催された。今回は、irootsコンサルタントとの対談形式で、当日の模様をレポートする。

※本コンテンツは2020年7月に開催された学生向けオンラインイベント「変化の時代に「本当にやりたいこと」ができる企業との出会い方」の内容から再構成されたものです。

 

メーカー=「モノづくり」とは限らない。

ーまずは簡単に自己紹介をお願いします。

若竹:こんにちは。若竹です。パナソニックのタレントエクスペリエンス課、人事戦略デザイン課、モビリティ事業戦略室という部署に所属しています。ひとことで言うと、人事戦略の観点から会社をよりよくアップデートしていくという役割を担っています。2019年6月に中途入社としてパナソニックにジョインしました。それまでは某人材系の企業に在籍し採用の企画や戦略の責任者や、子会社の担当をしていました。

伊藤:初めまして。irootsコンサルタントの伊藤です。主にメーカー業界の採用支援をしています。以前は、中途領域で転職を考えている方々の転職支援をしてきました。採用担当者の視点や、これまで就職支援してきたユーザーの方の声などを参考に、今日はお話できればと思います。

ー若竹さんは、昨年パナソニックに転職されたんですね!転職のきっかけはなんだったのですか?

若竹:はい。当時は「パナソニック=家電」というイメージが強く、メーカー業界にも特に興味を持っていたわけではありませんでした。ですので、パナソニックに転職したい!と転職活動を始めたわけでありません。ですが、とあるご縁で実際にパナソニックのこれまでの取り組みや目指している未来の話を聞く機会があって。その時に、「パナソニック=家電」だけじゃないんだ!とワクワクしたのが最初のきっかけです。

ー確かに、学生さんも「パナソニック=家電」というイメージを持たれているかたも多いと思います。

若竹:そうですよね。でも実は、家電の売上は全体の約3割しかなく、その他売上が7割を占めているコングロマリットな(多角的な取り組みをしている)企業なんです。

パナソニックは創業100年以上経ちますが、その時代、その時代で「文化をかたち創る」ということを体現してきた企業です。まだ電気が身近でなかった時代に、電気を世に広める取り組みをしたり、「家事労働からの解放」というスローガンを元に様々な家電を世に送り出したり、女性の社会進出の立役者にもなりました。実は、日本で週休2日制を初めて取り入れたのも弊社だといわれています。

ー新しい文化を創っていく、ベンチャースピリットに富んでいますね。

若竹:そうなんです。そしてその姿勢は今も変わっていません。これまでは新しい家電を開発したり、その製品をアップグレードしたりするという「モノづくり」がメインでした。ですが、今はくらしそのものをアップデートするという「コトづくり」にチャレンジしています。

パナソニックは自社製品を通じて、様々な人の暮らしとのタッチポイントを持っていますので、そこで集めたデータを分析して、ロボティクスや、AI、自動運転などの最新テクノロジーを用いながら価値提供のプロバイダになる。ということを現在は目指しています。

ーとてもワクワクする構想ですね!

若竹:はい。「モノづくり」から「コトづくり」に創業100年以上の企業がまさに変わろうとしているチャレンジングなタイミングなんです。こういった時期にジョインできる機会はそう多くないと想い、入社を決めました。

ーメーカー=「モノづくり」というイメージが大きく変わりました。他のメーカー企業にもそういった動きはみられるんでしょうか?

伊藤:そうですね。他のメーカーも新しい取り組みを沢山しています。例えば、コピー機で有名なA社は、3Dプリンターを活用してメディカル部門に参入しようとしていたり。B社は、窓ガラスに透明なディスプレイを埋め込んで、電車などで広告が投影できるような取り組みをしていたり。メーカー=安定というイメージがあるかもしれませんが、新しい領域にチャレンジをするベンチャースピリットをもった企業も多いと思います。

 

 

イメージに囚われず、企業の一次情報を取りにいく

※ご自身の体験談も踏まえて、就職活動の進め方について具体的なアドバイスをお話してくださったパナソニック若竹氏

ー就職活動中に一般的な企業イメージだけで志望企業を選び、最終的にミスマッチだったという話もよく聞きますね。「イメージ」と「現実」のギャップを埋めていくにはどうしたらよいでしょうか?

若竹:とにかく「自分の目で見て感じる」ということが大切だと思います。情報社会ですのでネットで調べて情報収集するって簡単なんですけど、実はそれだけだと見えてこないことが多い。学生の内だと、社会人の方に「ちょっと話聞かせてください」と伝えると、話を聞けるだけでなくご飯をご馳走してもらったりすることも(笑)学生ならではの特権を活かして、沢山の人に話を聞いて情報を集めることが大事だと思います。

それに、話を聞いてみて「ちょっと違うな」と思ったとしても、就職活動ってゴールではなくて、仕事はその後も続いていくじゃないですか。今後の社会人人生を考える上でも、業界や職種を絞らずに視野を広げていろいろな社会の仕組みについて「知っておく」ということは財産になると思います。

ー情報収集をする時に、意識した方がよいポイントなどはあるのでしょうか。

大切なのは、「具体的に聞くこと」です。同じ単語を使っていても、双方でイメージするものが全然違ったといことが社会人でもよくあります。例えば、「若手のうちから裁量権があります」と言われたとしたら、「具体的にどういうことですか?」と聞く。若手という単語が、20代前半を指しているのか、30代を指しているのかで全く異なりますよね。また、1万円の費用がかかる出張に1人で行くということを裁量権と呼んでいるのか、海外支社の責任者を任されることを裁量権と呼んでいるのか、企業によって当たり前が違うんです。だからこそ、具体的に「程度」を確認してくことは重要だと思います。

ーイメージに囚われずに一次情報を集める、とういことが重要なんですね!「どのように視野を広げていって、情報収集をしたらよいかわかならない」という方もいると思うのですが、その点はいかがでしょうか。

伊藤:自分が今取り組んでいることを突き詰めて、その周辺に興味を持っていくというのも有効なアプローチだと思います。例えば、私は以前、塾の運営に携わっていたのですが、転職活動をするときに、何故自分はこの仕事に興味をもったのだろう?と突き詰めて考えた結果、「人生の転機に携わる」ということにやりがいを感じていたんだ、と気づきました。そのため、それが実現できる環境ってどういう企業だろうと視野を広げることで、人材業界に興味を持ち始めました。

そのため、学生のみなさんも今自分が取り組んでいることで、「やりがいを感じるとき」「楽しいと感じるとき」を考え、それは何故かを考えていくと、自分自身のモチベーションの源泉にたどり着くと思うので、それを踏まえて、「そんな経験ができそうな業界、企業の情報を収集しよう」という興味を広げていくのがやりやすいと思います。

ー視野を広げて企業の情報を見ていくと、若竹さんのご経験のように、思いもかけない業界に「この企業ワクワクする」という出会いがあるかもしれませんね。

 

ありのままの自分を見せることがよい出会いに繋がる。

※当日はirootsのモデレーターがチャットなどから質問を拾いながら進行。

ー自分自身が興味のある企業に出会えた時には、相手の企業にも自分のことを知ってもらう必要がありますよね。その場合、大切なポイントはなんでしょうか。

若竹:そうですね。採用担当者の立場から話すと、新卒採用の場合は、スキルマッチというよりポテンシャルマッチや、ビジョンマッチの要素が大きいので、「どんな考え方でこれまでの人生を過ごされてきたのか」ということを重要なポイントとしてみています。ですので、社員の方と話す時には、そこを伝えられるように準備しておくことが重要です。

ーirootsでも、幼少期~将来像までプロフィールを学生の皆さんは記載されています。どういったポイントを見ていらっしゃるのでしょうか?

若竹:全部みていますよ(笑)irootsのプロフィールでは、これまで経験されてきた「過去」のエピソードと、将来どういうことに取り組みたいかの「未来」を書きますよね。過去の経験は事実ベースでしっかり書くと相手に伝わりやすいです。特に程度の部分。例えば、「バイトリーダーやっていました!」といってもどれくらいの規模感の中でバイトリーダーをやっていたのか、読み手がイメージできるように伝えてもらえるといいと思います。

ーそこまで大きな規模感のエピソードがないよ…と悩んでいらっしゃる方もいらっしゃいますが。

若竹:これまでの経験上、ご本人が毎日当たり前だと思っていることが、実は他人から見ると凄いこと、ということが結構あります。自分で勝手に当たり前だと思わずに、日々取り組んでいることをありのまま書いてみるのがおススメです。事実を盛って過剰に書くといい出会いにならないですし、ばれます(笑)最終的には、企業とのマッチングがゴールですので、自然体に書いて、その企業と自分がどれだけフィットするかをみていくことが大切だと思います。

 

不確実な世の中だからこそ、決めたことを「正解」に変えていく。

※irootsコンサルタントが過去の転職者支援の経験や、メーカーの採用人事の言葉を代弁し解説。

ー「ありのまま」に記載するということが、最終的によい企業との出会いを生むということですね。

伊藤:私は、中途領域で転職者の支援をしていましたが、入社して辞めてしまった人の多くが「企業をイメージだけで選んでいた」という理由と「面談のときに本音を話さず、受かるために取り繕って話をした」でした。そのため今の時期に、企業をイメージだけで判断するのではなく、中身をしっかり知るということ。そして、自分を深く知ってどんなときに感情が動くのか、仕事に対してどんな意義をもって働きたいのかを考え視野を広げて情報収集することが、「やりたいことができる企業」に出会うきっかけになると思います。

ー最後に学生のみなさんにメッセージをいただけますか。

若竹:「決めたら正解にする」という気持ちの持ち方が大事だと思います。今の時代、将来の夢をまず決めて、それに向かって何をすればよいかを棚卸をして、マイルストーンを考えないといけないという風潮がありますよね。でも、これだけ変化が激しい時代だと、「これを目指そう」とおいた錨(いかり)も流されたりすると思います。

それに、自分自身も常に変化をしていきますよ。昨日までの自己分析が、今の自分とは限らないので、日々感じたことをアップデートしていくことが大切です。だからこそ、一度、「これだ!」と決めたら、目の前の興味があることに全力で取り組んで、それを正解に変えていくというやり方が今の時代に合っているのではないでしょうか。

社会情勢も含めて不確実性の多い世の中です。変えられないことには悩みすぎないことも重要です。自分自身がマネジメントできること、例えば「時間の使い方」とかに集中してどのように変えていこうか考えてみるとか、そういった工夫をすることで、豊かな時間が過ごせるのではないかなと思います。

ー本日はありがとうございました!