今回は中国の東大と呼ばれている北京大学を卒業後、日本でIT製品流通・販売の大手企業に入社した張さんにインタビューしました。中国のリアルなインターンシップ事情や、日本企業に就職した理由など、経験談をもとに語っていただきました。

果たして、日中数多くの大手企業でインターンしてきた彼女は学生時代で何を思い、どう行動してきたのでしょうか。

 

―――自己紹介お願いします。

張葉秋暁(チョウヨウシュウギョウ)と申します。某IT製品流通・販売企業でマーケティングの仕事をしています。社会人2年目です。北京師範大学学部卒業して、北京大学日本語通訳コースを修士課程で卒業しました。

 

学生生活で感じた「中国」と「日本」の差

―――学生生活について教えていただけますか?

北京師範大学の日本語専攻で、主に日本語文法や日本文学について勉強しました。その後、北京大学大学院の日中通訳コース専攻に進学して、主に同時通訳と逐次通訳の勉強をしていました。

日本に初めて来たのは大学3年生の時です。筑波大学で一年間交換留学しました。筑波大学の授業は幅広い領域から全部自分で組み立てることができるので充実していました。心理学や教育学、医学の授業も取っていましたね。

 

―――中国と日本の大学、違うと感じた部分はありますか?

中国の大学は成績主義ですね。かなりGPAを意識しています。単位を取るだけではなく、A+を取るために一生懸命勉強する感じですね。

一方で、日本の学生はあまり成績を意識していないような気がします。部活とバイトなどで充実していて、ライフスタイルがバラエティーに富んでいるというのが印象的でした。

将来を考える上では、日本ではあまりにも選択肢が多くて、迷ってしまいます(笑)。中国だと、こうやればこういうところに辿り着けますよーというルートみたいな道が見えていて、安心感があります。

だからこそ、日本の場合は、明確な目標や目指す方向がしっかりしていることが重要だなと思いました。でも私は何になりたいとか、将来何をしたいとか大学時代ではあまりわからなかったです。

 

「出版社」「コンサル」「スタートアップ」実務経験を養ったインターン時代

 

※インターン時代に、あるワークショップで日本語通訳をしているときの写真。

 

―――張さんはインターン経験が豊富ですよね。中国ではどのようなインターンをされましたか?

インターンは大学4年生の時に通訳の仕事をしたのが初めてです。その後、中国外文出版社『人民中国』編集部(1953年に創刊された中国唯一の日本語総合月刊誌)で3ヶ月ほどインターンしました。メインの仕事は記事の翻訳と編集でした。一番印象に残ったのは北京の映画祭で、「おくりびと」の監督のインタビューを手伝わせていただきました。

出版社でのインターンを終えたあと、Valeonという留学コンサルティングのベンチャー企業でのインターンに参加しました。創始者2人はオックスフォード大学(University of Oxford)卒業の方で、当時のチームメンバーが8人くらいしかいなかったですので、K12に関する市場リサーチ、プロジェクト管理、ワークショップの開催企画など、幅広い仕事に携わらせていただきました。今この会社は200、300人規模に成長しています。

また、大学院入学と同時にコンサル会社でインターンを始め、中国のNGO向けの戦略コンサルプロジェクトでした。プロジェクトメンバーは全員ボランティアで、マッキンゼー、IBM、そして中国の大手企業Baiduなどのトップ企業の方々とチームを組んで、戦略を練ったり、NGOの活動改善、ビジネス改善を立案するなど行っていました。とても勉強になったし楽しかったです。当時の経験は、今でも非常に生かされています。

修士2年の時には、日本での仕事が決まって、ディディ(DiDi(北京))でインターンしました。

 

―――数多くインターンをする中で、一番印象に残ったのは?

海外留学のコンサル会社ですね。そこで違うバックグラントを持っている人たちと一緒に仕事ができて、本当に刺激的でした。創始者二人がオックスフォード大学卒業で、他のキーメンバーもNGOの立ち上げに携わってきた人や、投資銀行で働いているバンカーなど、すごい人ばかりです。彼らと一緒にプロジェクトを進めることで、仕事の進め方と視野が一気に広がりましたね

また、インターン経験もそうですが、そこで得た人間関係は、私の財産にもなっています。就職した後も、いろいろなアドバイスをもらえたり、仕事のチャンスに繋がったりと、本当に感謝しています。

 

 

日本で就職して気づいた、インターンのアドバンテージ

 

―――なぜ日本に就職しようと思ったのですか?

 大学で専攻していた日本語を活かしたいと思いました。ただ、中国の日本企業だと、給料水準が私の希望とあまりにもかけ離れていたんです。また、仕事内容も翻訳や通訳に限定されたものが多く、自分のキャリアに繋がらないと感じました。

日本での就職の決め手になった1つは、「ジョブローテーション」という制度です。中国企業の場合は、「大学で学んだ知識を活かせるところに配属」という考え方で、日本のように総合職としていろいろな職種を経験できることはほとんどありません。なので、いろいろな経験を積める、という点で魅力的でした。

また、留学生活を経て、実際日本で社会人経験を積みたいなと思ったのもありますね。他国で一人前として生活できるというのは、人生にとって貴重な財産だと思いました。

 

―――インターン経験は就活の際に役に立ちましたか?

はい。特にコンサルの経験ですね。コンサル的な問題解決手法や、レポート作成のポイントや構成、ロジックなど非常に勉強になりました。社会人としての文章でまとめる能力、分析能力などが身に付いたと思います。

現職のマーケティングの仕事は、これまで進出していなかった分野に参入する余地があるかをリサーチし、具体的なGo-to-market計画を立てる仕事です。インターンで培った経験と能力は活かされている実感がありますね。同期入社したメンバーよりも、即戦力にはなっているかな(笑)。

 

―――仕事をしていく上で、日本と中国で差をかんじることはありますか?

日本企業は、研修制度など育成に対してのフォローが手厚いと思います。

一方で中国企業のスタンスは新卒入社3ヵ月経ったら「じゃあとりあえずこのプロジェクトやりましょう、任せたよ!もしだめだったら、ほかの人がそのポジションにつくからね」というシビアな環境です。狼文化と呼ばれている職場文化があります。みんなアグレッシブで、だめだったら次の人が上にいくという弱肉強食な世界です。入社したらすぐに一人前として見られていて、プレッシャーはもちろんありますが、期待された分、やる気も出ます。

また、物事を考えるときの思考プロセスの違いなどは感じます。例えば、学生時代にインターンに参加したときに、出された課題は社会問題の分析でした。私はすぐに政治面、文化面、経済面、国際的動きなどの側面から分析し始めました。中国人は学生時代から、大きい枠を決めてから細分化していく考え方をすると思います。同じチームの日本人学生はまず身近な経験から、自分の体験談みたいなところから考え始めたので、少し驚きました。

これから社会が一層グローバル化していき、様々なバックグラウンドがある人達と働いていく上では、学生時代から社会を大きくとらえてディスカッションする力が必要になってくると思います

 

―――最後に、学生にメッセージを一言お願いします。

成長をし続けるためには、思考の深さが大切だと思います。例えば一つのイベント企画するときに、以前よりも、「どうすれば面白くなるか」など企画について深く考えられるようになった、「どうしたらクオリティの高いものにできるのか」細部まで意識を向けることができた、というのは1つの成長です。

もう一つは心の強さ、逞しさ、論理的に物事を分析し、受け止められるということも大切です。自分の弱みに直面できることもそうです。社会人になってからは「ここはだめ」とか「ここは物足りない」とか、指摘されても受け止められないという場合も多いと言われるのですが(笑)そうではなくて、アドバイスをもらったことに対して、しっかり向き合って、それを改善するために努力ができるというのも自分自身が成長できる秘訣です。

学生の皆さんには、早い時期からインターン経験などで視野を広げ、深く考える、周囲のアドバイスに耳を傾けるということにチャレンジして欲しいと思います

また、英語を勉強しましょう。まずは英語を勉強して、そして機会があれば、是非、中国に行ってみてください(笑) 。本当に中国は活気あふれる国だと思うので、若者たちのモチベーション、やる気などを感じることで、将来に繋ぐヒントを得られたらいいなと思います。

 

 

―この記事を書いた人―

周 恬(シュウ テン)

2010年中国で高校卒業後に来日。上智大学卒業後大手小売会社に新卒入社。社会人3年目にエン・ジャパンに転職。猫とうさぎの三人暮らし。趣味は漫画と映画。最近はピラティスに夢中。