上場ベンチャー4社が語る「早期採用戦略の作り方」

新卒採用の早期化・通年化が進む中で、採用担当者は初期接触から入社までの採用戦略をどのように設計すれば良いのか。

今回、フリークアウト・ホールディングス、freee、ガイアックス、エス・エム・エスの採用責任者4名をお招きし、「早期採用戦略の作り方」をテーマにしたディスカッションを開催した。

※本コンテンツは、2020年4月に開催されたiroots人事ミートアップの内容から構成されたものです。

Speakers:

株式会社フリークアウト・ホールディングス People Development Div. 新卒採用責任者 金聡氏

freee株式会社 リクルーティングチーム 責任者 栗林由季氏

株式会社ガイアックス People Empowerment officeマネージャー 流拓巳氏

株式会社エス・エム・エス 人材開発部採用支援グループ 新卒採用統括責任者 三村憲史氏

Moderator:エン・ジャパン株式会社 新卒iroots事業部 山崎壮太

 

採用設計の始まりは、「市場調査」でも「理想ドリブン」でもいい

【株式会社エス・エム・エス 人材開発部採用支援グループ 新卒採用統括責任者 三村憲史氏】2016年に入社。営業、プロダクト責任者、インサイドセールスのチームマネージャーなどを経て、2019年に新卒採用統括責任者に着任。

iroots 山崎:では早速、「採用戦略の立案方法」というテーマから進めていきたいと思います。エス・エム・エスさんはかなり早い時期から新卒採用の計画を立て始めるというお話をお伺いしたのですが、まずどんなところから設計していくのですか。

エス・エム・エス 三村:弊社の場合、「採用はマーケティング」という考え方が根本にあるので、まずは市場調査から始めます。大学ごとの卒業者数や男女比、学部別の人数、産業別の就職者数の推移など、定量データを集め、それらのデータと自社/採用競合の採用力を鑑みて、どの程度外部に協力を仰ぐのかなどの設計を行っていきます。

私も含め、弊社では事業の経験者が人事に異動することが多いので、採用も事業と同じような考え方で戦略を練っていくということが根付いています。

iroots 山崎:なるほど。市場を作って新規事業を行なっていくという貴社のビジネスモデルと採用戦略はリンクしているのですね。「採用をマーケティングとして捉える」という部分ではガイアックスさんも近しい採用手法を取られている印象があるのですが、いかがですか?

 

【株式会社ガイアックス People Empowerment officeマネージャー 流拓巳氏】2017年入社。内定者時代は新規事業部でマーケティングや地方拠点立ち上げを経験。入社後は採用担当/経営会議事務局、管理本部採用マネージャーを経て、2020年にPeople Empowerment Office立ち上げ及びマネジャー就任。

ガイアックス 流:そうですね。ただ、今までは“自社に入社してほしいと思う学生だけに刺さるようにターゲットを絞ってメッセージを届ける”ということを意識していました。手法としてはマーケティングというより「広報」に近い採用を行なっていました。具体的には自社ホームページのトップに社員のブログ一覧を載せたり、採用イベント等にどんどん代表に登壇してもらったり、SNSで発信する社員の数を増やしたり、注目される仕組みを作りに行く活動です。

しかし最近はエス・エム・エスさんと同様に、マーケティング的な考え方を採用に取り入れていて、採用ターゲットが所属しているコミュニティをより具体的に絞り、いかにピンポイントに認知度をとっていくかということを意識しています。例えば「起業家サークルの中でのガイアックスの認知度を80%にする」というような指標を設定し、それを予算内で達成するという採用にシフトしました。

実際の認知度を正確に測るのは難しいですが、採用担当者の数が少ない弊社にとっては「対象コミュニティ内の就活生の間で噂になる」ということが重要だと考えています。

iroots 山崎:認知度という部分で言うと、freeeさんは日頃から理念やカルチャーを強く発信されているので、ファンづくりが上手だなという印象があります。やはりそれを意識して採用戦略も作られているのですか?

 

【freee株式会社 リクルーティングチーム 責任者 栗林由季氏】情報通信関連の商社で営業としてのキャリアをスタートし、2014年にfreeeへ入社。社員20名強の時代からリクルーターとしてfreeeの魅力について情報発信を行う。現在はリクルーティングチームの責任者としてfreeeの採用戦略、運用、チーム作りに関わる。

freee 栗林:そうですね。私たちのカルチャーには「理想ドリブン」という考え方が根本にあります。私たちがビジョンとして掲げている「マジ価値(※ユーザーにとって本質的な価値があると自信を持って言えることをする。)」に共感しない人は採用しないという強い意志があるので、そこを原点としてインターンの設計や選考を考えています。なので、エス・エム・エスさんやガイアックスさんのお話をお伺いし、市場調査という観点はもっと私たちに必要だなと思いました。

iroots 山崎:最初に定量的なデータを集める市場調査も、理想を掲げてそこから逆算していく理想ドリブンも、どちらが正しくてどちらが間違っているということではなく、自社のビジネスモデルや組織文化とリンクした採用戦略を考えるということが大切ですね。

 

単年の採用人数ではなく、長期的なタレントプールを意識する

iroots 山崎:戦略立案という部分でもう一つお伺いしたいのですが、採用の目標については皆さんどのように設定されていらっしゃるのですか?

 

【株式会社フリークアウト・ホールディングス People Development Div. 新卒採用責任者 金聡氏】大学卒業後、組織開発に特化した人材系コンサルティング企業に入社。その後、株式会社ドリコムにてデジタル広告営業および組織開発、採用業務に従事。2016年株式会社フリークアウト(現株式会社フリークアウト・ホールディングス)入社。人事組織のマネジャーを経て現在は新卒採用責任者を務める。

フリークアウト・ホールディングス 金:めずらしいと思われるかもしれませんが、弊社の場合、新卒採用担当者の目標設定において採用人数を目標に置いていません。また、新卒採用の目的として、2021年、2022年にフリークアウトへ新入社員として入社する方だけでなく、プラスX年後に中途で入社する方との初期接触の場としても捉えているためです。そのため、新卒採用における短期的な結果やROI(費用対効果)というのはそこまで重要視していません。

ガイアックス  流:弊社も同じように、採用人数という指標のかなり手前にタレントプールという考え方を持っています。具体的には、入社していなくても、社内イベントなどに気軽に誘える人がどの程度存在しているか?というような指標です。将来ガイアックスに入社する見込みのある人を心理的距離が近い状態を保ったままどの程度関係性を維持しておけるか?という部分は常に意識していますね。

iroots 山崎:「採用目標」というとどうしても単年での成果ばかり見てしまいがちですが、「X年後に入社する可能性がある人たちとどの程度関係性を維持できているか」という、もう一つの指標も持っておくといいかもしれませんね。

 

内定承諾のプレッシャーをかけることは本質的ではない

iroots 山崎:今回参加者のみなさんに事前にアンケートを取ったところ、採用の早期化が進めば進むほど、初期接触から入社までのグリップに課題を感じるというご意見を多く頂戴しました。freeeさんはどのようにお考えですか?

freee 栗林:弊社でも同じ課題を感じています。早期に接点を持った学生を選考まで待たせてしまうと学生の熱量も下がってしまいますし、難しいですよね…。

実際弊社も、過去にインターンシップから本選考への導線がうまく作れず失敗した経験があります。失敗の要因としては、サマーインターンとウィンターインターンを単発で行なったこと。そしてもう一つは、ロジカルシンキングや新規事業立案など、freeeの事業とは直接結びつかない内容にしてしまったこと。どちらも蓋を開けてみると、サマーインターンから採用に全く繋がっていませんでした。この失敗経験から、「選考のストーリーを一本化する」ということと、「初期接触の段階からfreeeのことをきちんと伝える」ということを軸に、インターンの設計を変えました。選考の中でfreeeへの志望度が醸成できるようなストーリーを設計することで、スムーズに入社まで繋げることができるのではないかと思っています。

iroots 山崎:freeeさんは先ほどのお話にもあった通り、新卒採用の基準に「カルチャーへの共感」というものを入れられているからこそ、初期接触の段階から事業やカルチャーに触れてもらったほうが後々のグリップを行うときにも効果的だということですね。フリークアウトさんはいかがですか?

フリークアウト・ホールディングス  金:うちが決めていることは「内定承諾期限を一切設けない」ということです。内定者に対して内定承諾のプレッシャーをかけることはあまり本質的ではないと考えています。当社のようなベンチャー企業においては『自分で決めた納得感』が重要だと考えています。あと少しズレるのですが、『内定承諾の圧をかける会社ってダサくね?』と説明会で言い切る事で独自のポジションを取る意図もあります。他社の方に嫌われそうですが…(笑)

早期に内定を出した後は、内定者のキャリアを考えるために伴走しています。その結果、フリークアウトを一社目に選ばなかったとしても、数年後に選んでくれる可能性もあると思いますし。ただ、私自身の信条と会社としてのスタンスが合っているので精神的にヘルシーな状態で採用業務に取り組めます(笑)。

ガイアックス 流:内定承諾期限を決めないということは弊社も同じです。その代わり、内定者と内定承諾者への対応は変えないというルールを設けていて、内定を承諾している・していないに関わらずイベントや研修などには全員に声をかけるようにしています。未来の同期が優秀だということさえ知ってもらえれば、学生は自ずと内定承諾するだろうなと考えているからです。

 

社内を巻き込むための“飛び道具”は存在しない

iroots 山崎:ご登壇いただいている皆さんはほぼお一人で採用を行っていたというご経験をお持ちですが、社内の方がなかなか採用に協力してくれないということお悩みも参加者の方からいただいております。社内の巻き込み方について工夫されていることはありますか?

エス・エム・エス 三村:巻き込み方という言葉が適切かわかりませんが、事業を成長させる上で優秀な人材を採用しないといけないことは明白なので、それに対して建設的に協力を仰ぐことが重要だと思います。

必然性さえ理解してもらうことができれば協力はしてもらえるので、それを理解してもらうために社内用の採用戦略の資料を100枚作ったこともあります(笑)。今思うと自分の構造化力が欠けていた結果でしかありませんが、それくらいの熱量で取り組んでいました。

できる限り自分の思考をアウトプットし、経営陣、責任者、現場社員それぞれに対して、誠実かつ丁寧に向き合うことが大切だと思います。巻き込めない時は、多くのケースでその必然性を思考し切れていないケースが多いと考えています。社内を巻き込むための飛び道具というものはなく、ちゃんと考え、ちゃんと伝えるという当たり前のことを地道にやるしかないと思います。

 

「オンラインだから選考できない」はメンタルブロックだ

iroots 山崎:コロナの影響を受け、このミートアップもオンラインで実施させていただいているのですが、採用のオンライン化に関してはどのようなお考えをお持ちですか?

フリークアウト・ホールディングス 金:今までオフラインで行なっていたことを、そのままオンラインに置き換えるというのは違うのかなと思っています。そうではなくて、オンラインだからこそできることは何か?ということを考えないといけないのかなと。例えば弊社ではオンラインで説明会やグループワークを行なっているのですが、完全に匿名での質問を受け付け、私や役員がそれに全て答えるということを行っています。聞きにくいことを聞くハードルが下がりますよね。過去荒らされた事もありますが、清濁併せ呑む覚悟でやっています。それってオンラインならではですよね。

iroots 山崎:それは確かにオンラインならではですね。オンライン選考でよく聞くお悩みとして、「オンラインだと見極めが出来ない」ということもあると思うのですが、それに関してはいかがですか?

フリークアウト・ホールディングス 金:それはいわば「メンタルブロック」だと思います。Eメールが開発された時に、「手書きじゃないと気持ちが伝わらない!」って言ってた人って絶対いると思うんですよね(笑)。でも今やそれが当たり前になっている。それと同じで、通信環境がきちんと整った状態で、お互いが配慮して話をすれば、オンラインでも選考は問題なくできるはずです。

こういう状況だからこそ、我々採用担当者は今までチャレンジしたくても出来なかったことを試してみるべきだと思います。どの企業も従来の採用方法が通用しなくなってきているので、真っ先にこの状況に対応できた企業が採用でも勝ち残っていくと思います。

iroots 山崎:ありがとうございます。本日みなさんのお話をお伺いし、「こんな状況だから何もできない」と悲観するのではなく、こんな状況だからこそ、知恵を絞って新しいことにチャレンジすることが大事だと改めて感じました。メンタルブロックにとらわれず、今後も一緒に採用市場を盛り上げていきましょう。本日はありがとうございました。

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