「大手企業とベンチャー。どちらが成長できるかとよく聞かれるけど、規模は関係ない。大切なのは環境ではなく“働く姿勢”」そう語る芳賀さんは、大手金融機関に就職後、フリーランスを経験。現在は、注目ベンチャーメタップスの人事として活躍されています。今回のコラムでは、様々な事業フェーズを経験されている芳賀さんに、学生に伝えたい「後悔しない企業選びの仕方」について、ご自身のキャリアを元にお話いただきました。

 

意思決定の決め手は「なんとなくカッコイイから」

ーまず、芳賀さんの大学時代について教えていただけますか?

大学時代は遊んでましたね。アウトドアサークルに入って野営をしたり、議員インターンシップを派遣する学生団体で活動していたりと、課外活動が多かったです。大学に入学してやりたいことがあったわけでなく「偏差値が高い大学ってカッコイイじゃん」と思って勉強して大学に入学してしまったせいで、これといってやりたいことがなくて。ただ、周囲には「この教授のゼミに入りたくて進学先を選んだ」とか「会計士の資格を必ず取りたい」という目的意識を持った友人も多かったので、自分はダメだな……と感じていました。

3年生になって就活を始めたときも、明確に「これがやりたい」ということが見つからなくて、なんとなく大手金融機関のサマーインターンに参加したり、当時流行っていた2ちゃんねるで「ホワイト企業ランキング」なるものを調べて、ひたすらエントリーするといった活動の仕方をしていましたね。ダメダメですね(笑)。

ー最終的には、大手金融機関を入社先に選ばれたんですね。

はい。僕の場合、もともと育った家庭があまり裕福な環境ではなかったんですね。なので「お金」って人の幸せを左右するものだ、という認識を強く持っていました。だから、就職活動でも「お金」に携わる業界として、金融系にはもともと興味を持っていて。さらに、利益重視っていう考え方が余り好きではなかったので「公共性」というキーワードでも絞っていったところ、1社目の企業に出会って入社を決めました。「なんとなくカッコイイから」という理由も多分にありましたけど(笑)。

 

 

ー入社された後はどのようなミッションを担っていらっしゃったのですか?

会社の方針として、新入社員は必ず現場配属されていたので、最初の半年はプレイヤーとして、リテール営業(個人を顧客にする営業)をしていました。その後、地域の事務所で、自分より年齢層の高い営業の方々のチームリーダーを半年。一通り現場を体験した後、2年目には人事部のダイバーシティ推進室という部署に初の男性社員として配属されました。

ー初の男性社員ですか!

はい。ダイバーシティ推進室というのは、会社の中でも比較的新しい組織だったのですが、業界がら「女性活躍推進」がテーマの中心で、歴代女性のメンバーしかいなかったんです。でも今の時代、推進するべき働き方って多種多様にありますよね。例えば、介護離職を防ぐために介護と仕事の両立できる環境を整えたり、男性の家事参加等の就業意識を変えたりと。初の男性社員ということで、主に女性活躍以外のダイバーシティの推進を期待されての配属でした。

ー配属されてみてどうでしたか?

「働きやすい環境づくり」と「会社としての生産性を落とさない」ことの両立が難しかったですね。新しい制度や研修を企画することで、現場の仕事に影響が出てしまうということも少なからずありましたから。ただ、大企業で従業員数も多かったので、何万という従業員を対象に実態調査をして、データ分析をして、施策を立案して、内部研修をするというゼロからイチをつくる仕事は純粋に面白かったですし、従業員の環境を整えることを軸として「世の中を少し良くしている」という実感も持てました。

 

大企業の企画職から心機一転、独立してフリーランスに

 

芳賀 圭介氏:1991年、東京都生まれ。一橋大学卒業後、新卒で金融機関へ。コンサルティング営業を経験の後、人事部へ。人事部にて社内改革プロジェクトをリード。その後、独立してフリーランスを経験の後、株式会社メタップスに参画。採用統括、研修設計を中心に人事業務に携わる。

 

ーその後、独立してフリーランスに?かなり思い切った決断ですね。

はい。1社目は大企業だったので、会社としての知名度も資産が潤沢でしたが、それがなくなった時に、自分の資産や信用だけでどこまでできるのか、自分は何ができるか試したくなって。昔から極端なことが好きなので、勢いで辞めました(笑) 。独立後は、もともと趣味でブログをやっていたのですが、その経験を活かして、一般人でブログを運営している方を対象にマーケティングの基本やマネタイズ、ライティングの仕方をコンサルする仕事をしていました。

ー独立前と、独立後でのギャップは何かありましたか。

1社目でも組織づくりがミッションだったので「答えのない仕事」と感じることが多かったのですが、独立後はより「答えがない」と感じることが多くなりました。本当に自分の知識しか頼るものがないので正解が分からない。精神的な大変さはありましたね。なので、当時は内省をたくさんしましたし、「考え抜く」ということについて凄く鍛えられました。

また、意外だったのは「1人で仕事をするのは思いの外、つまらない」ってことですかね(笑) 。フリーランスで食べていけるだけの金額は稼げていたのですが、かなりの工数をさいて工夫をしない限りは労働集約型なので収入を2倍にしようと思うと、自分が2倍働くしかない。チームで仕事をする良さ、というのも独立することで実感しました。

 

ビジョンに共鳴して、ベンチャーに飛び込む

ーメタップスにはどのように出会われたのですか?

はい。人事やマーケティングなどこれまでの経験を活かせる職種で転職を考え始めた時に、たまたまメタップスから声がかかって。創業者の佐藤の境遇や考え方に、とても共感したんですよね。

佐藤も僕と同じように、あまり裕福ではない家庭に育って、その悔しさを原動力に起業してたという経緯があります。当時の採用担当に話を聞いた時に、メタップスは「今の社会はお金に依存しているけれど、お金に依存している社会を壊して、他のカタチで経済活動を回したり、人の生活を豊かにする」というミッションを大切にしていると知って。僕が小さいころ目指していたことに近いなと思いました。

また、フリーランス時代に感じたのは「自分が思いつくアイディアなら死ぬ気になれば実現できる」ということ。だからこそ、転職するならば、「自分が思いつかないアイディアに触れられる企業」にすべきだなとも思ってました。そうじゃないと、自分1人でやらない理由にならない。それがメタップスにはあると思ったのが、転職の決め手でした。

ーメタップスが実現したいことと、芳賀さんのやりたいことがリンクしたんですね。

そうですね。やはり自分がお金に悩まされた幼少期だったから、お金を通じて人を豊かにしたいと思って、就職活動時代は金融機関を選びました。メタップスを選んだのは「そもそもお金で困るような社会を変えよう」が動機になっています。こうやって振り返ってみると、実は目指したいことはアプロ―チ方法が変わっただけで、つながっているんです。

 

 

ー就職活動では「大企業」「ベンチャー」どちらを選ぶかということに悩む方も多くいます。これまでのキャリアを踏まえて、芳賀さんはどのように思われますか?

そうですね。学生から「大手とベンチャーどちらが成長できますか?」と聞かれることはとても多いです。確かに、規模の大きな会社の方が資本も持っているし、例えば巨額のM&Aをするとか、地図に残る大きな仕事をするとか、大きなプロジェクトに関われるチャンスは多いかもしれません。ただ、プロジェクトの規模と、そのプロジェクトの中で日頃大きな職務を任されるか、というのは全く別の話なので、切り分けて考えないといけない。

ベンチャーやスタートアップの場合の特徴は、社内で日頃任される仕事の幅と、ポジションの幅が広いことです。僕自身はメタップスで今仕事をしていて、自分に大きな裁量が任されているので「自分で企画して自分自身で判断する。そして自分で責任を取る。」というスタンスで仕事をやらせて貰っています。とても楽しいですよ。

 

「誰かからの評価」のために生きない

ー大企業、ベンチャーそれぞれの良さがあると思いますが、「活躍する力」を身に着けるためには、どのような環境選択が重要なのでしょうか。

社会で活躍できる力を身に着けられるかどうかは、環境ではなく「仕事に対する姿勢」だと思います。自分の仕事をどう捉えて、どのように取り組むのか。これが全てです。なので、取り組む姿勢さえしっかりしていれば、大企業でもいいし、ベンチャーでもいいし、起業してもいいと思います。

例えば、メタップスのようなベンチャーという環境で生きていくために必要な力ってたくさんあります。自分自身で意思決定をしていく力、他人の評価を気にせず自分の意思を貫く力、異常なほどに情報収集をする力。こういう能力って、原体験に依存するところもあるので、大学時代にすでに身に着けている人と、身に着けてない人がいる。僕自身も、大学卒業後にいきなりベンチャーに入ったら活躍できなかったと思います。1社目の新設部署で新しい企画に取り組んだり、フリーランスでの経験を積み重ねた結果、今があります。

ー「仕事に対する姿勢」には、何が重要なのでしょうか。

外部からの評価ではなくて、自分自身で「どんな仕事をしたいのか」を決めることです。僕は就職活動で1社目を選ぶ時に「なんとなくカッコイイから」という理由で、最終的には決めてしまった。結果オーライでやりがいのある仕事を任せてもらえましたが、この決め方はおすすめしません。

「この企業に就職したらかっこよく見える」といった風に、外部からの評価を気にし始めると、自分自身で判断ができなくなります。そうすると、自分の意思がどこにあるのか分からなくなってしまって、仕事に取り組む姿勢も鈍っていく。それに誰かからの評価のためにやる仕事って楽しくないじゃないですか。自分自身の人生なんだから、自分自身がやりたい仕事をした方が絶対に楽しめます。

 

 

ー「やりたいこと」の見つけ方が難しいという声もあると思います。最後にそんな学生のみなさんに一言お願いします。

日常生活を思い返して見てもらうと、意外と周りからの評価を気にして発言していることは多いと思います。例えば、合コンで好きな食べ物を聞かれて、本当は牛丼なのに、お洒落なパスタ名を言ってみたり(笑) ありのままを隠そうとする人が多すぎる。

例えば、サークルで、インターン先で日常的なところから、他者の評価を気にせず、自分の思ったままを発言してみる、行動してみるというのをやってみてください。こういう積み重ねが、就職活動の企業選びの時に、周りからの見え方を気にせず、本当に自分がやりたいことに耳を傾けられるようになる近道だと思います。