就活スーツは自分と面接官の間で物質的にも心理的にも浮遊するサムシング

まず初めに、ここでは服とは物質的にも心理的にも自分と相手(面接官)の間にあるものという定義で話しを進めます。物質的には読んで字のごとくなのですが、心理的にも服は相手に対する「快」を決める要因でもあり、自分自身が身にまとうものとして「快」を決めるものでもあります。

よって服装を語るときに多くはその論点を「相手寄り」に語るのか、「自分寄り」に語るのかで、服装に対しての指針が変化します。

ここではirootsが語る「就活生の服装論」ということで、主体的に生きるという意味で「自分寄り」のスタンスを取っているとご理解いただいた上でお読みください。

 

服装が原因で就活の面接に落とされるのは事実だが

面接官は学生のスーツの上に付着する髪の毛の一本まで見ている。

こんなまことしやかな噂話が就活あるあるではなされています。

真偽はいかに。

 

私が20年弱企業の採用面接に関わっていて、服装が原因で落とされた事例は0ではありません。3つの事例を知っています。

・服装がだらしなかったので選考不通過にしました

・TPOをわきまえない派手な服装だったので選考不通過にしました

・鼻に付く過度な香水の匂いに違和感を覚えて選考を不通過にしました

え、やっぱ面接官は皆んな服装気にしてんじゃん。。

 

確かにそんな事実がありながらも、今回私が伝えたいのは発生確率です。

私が具体的に関わってきた面接案件は少なくとも10000はくだりません。

その中でも1000は選考不通過の理由を聞いています。つまり分母は1000。

服装が理由で落ちる確率なんてたったの千三つ(3/1000)なのです。

 

『服装自由は就活選考の落とし穴』という記事の煽り

「服装自由」という時に服装どうすれば良いかと考えたことがある学生は多いのではないでしょうか。

確かに心配ですよね。

 

会場に行ってみんなスーツだったら?

スーツを着てて、みんな私服だったら?

みんな格好良いビジネスカジュアルで自分だけ浮いたら?

とってもお気持ち理解できます。一人だけ浮いてしまうのは心配ですよね。

 

みなさんの「一人だけ浮きたくない。まさか巧妙な罠では。」という心配とは裏腹に、面接官側はそこで合否を判断しません。「一人だけ違う格好してきた人がいるね」というあなたに対しての興味と認知がなされるだけです。

万一、面接官に外見の違いからあなたを認知されたら次に実行すべきは面接官にあなたの中身を伝えることです。認知されずにそのまま選考から漏れる学生が世の中には5万といることを知っておきましょう。

自分をどう伝えるかについては自己分析が大切なので他の記事をご参照いただくとして、浮く事が必ずしも悪いことではないことをご理解ください。

→就活準備でやっておかなければいけないこと【大学3年の夏】 

→サマーインターンの面接前に読んで欲しい「自己分析のやり方」 

 

面接官の立場に立つことで理解できることもあるでしょう。

そもそも、彼らは皆さんの裏をかくほど意地悪ではありません。「服装自由」と書く最大の理由は「企業側は服装とかこだわらないから、なるべく多くの学生に当社選考に来て欲しい」なのです。

 

かつて私が面接官を務める説明選考会でこういうことがありました。 

私(人事)のメール事前告知はこうでした。「服装は私服など過ごしやすい服装でお越しください」結果としてその日に集まった学生(総勢20名)は19名スーツ・1名私服(チノパン・セーターにジャケット)でした。

説明会の冒頭で服装の違和感に気付き私はアイスブレイクの意味でその話をしました。

私 :「確か私服でとお伝えしたような気がしますが、スーツの方が多いですねー。暑いのにありがとうございます。」

スーツ学生A:「いやその方がいい気がして。。ダメでしたかね?」

私 :「いや、もちろん、全然大丈夫ですよ。ただ、伝える内容を間違えたかなと心配になっただけです(笑)」

スーツ学生B:「私服などって書いてありましたが「私服限定」ではないのでスーツの方が無難かなと思って」

私 :「なるほど!それは気を使わせちゃってすみませんでした。他の方もみなさん、そういう理解でした?」

スーツ学生複数:黙って「うん、うん」と頷く。

私服学生:「すみません、空気読まずに来ちゃいました。私はただ頂いた言葉通り受け取って私服で。。」

説明選考会が終わった後、私服学生さんを少しフォローした方が良いと思い、声がけしました。そこで彼の人柄の良さ、素直で伸びしろがある特性に惹かれて、選考通過のご連絡をしたのです。

 

この実例を持って、目立てば良いということではないのですが、『認知』が互いの関係を前進させ、結果的に浮いた学生が得をすることがあることはご理解いただけましたでしょうか。

よくメディア記事で見かけるところですが「服装自由の落とし穴!」なんてものは存在しません。万一そういった『落とし穴』をセコセコと掘っている会社があれば、「その会社で私は活躍すべきなの?」という根源的な問いを持ち、どうぞ自分から穴にジャンプするくらいの主体性を持って邁進しましょう。

 

服装を気にしすぎる学生は受からない

『煽り』に注意とお伝えした先から『煽り』タイトルをつけてごめんなさい。誤解のないように説明します。

服装をちゃんと気遣える人は素晴らしいと思います。そういう方はお話ししていても気持ちが良いでしょうし、相手に「快」を与えられる方だと推察します。

お伝えしたいのは服装のことばかり気にしすぎていて中身がおぼつかないという本末転倒はやめましょうということです。「見た目だけで内定を出す会社で働きたい!」という方はもちろんここでは当てはまりませんので悪しからず。

 

また相手の「快」に心理的に密着しすぎるのも入社後の皆さんの活躍という観点から避けたいところです。

自分が自然体に過ごせるための「最低限の快」を顧みず「会社に受かれば良い。自分のことなどどうでも良い。徹底して企業が求める他人の姿を作りこむぞ」という相手偏重の就職活動からは入社した後に自分が主役となって活躍することも望めないのではないでしょうか。

 

『今(選考)に集中できる格好をしよう』

私が服装に関して皆さんに重視して欲しい点はこの一点のみです。

現代の就活は極めて限定された期間で自分のファーストステップを決めなければいけない制度です。時間は限られています。この制度において就活をするためには可能な限り就職活動に集中出来る環境を作りましょう。

あなたが生理的に不快であってはいけない。

そう、あなたが心理的に不快であってはいけない。

 

例えば夏の熱い日は半袖を着ましょう。30度を超えた真夏日に長袖で歩くのは体力消耗も尋常ではありません。汗だくで人と会話するのはハッキリ言って自分が不快ですし、集中できません。

ジャケットは持って行きましょう。皆さんが想像するよりオフィスは冷房がよく効いてます。風邪をひいては戦うことさえできません。

 

もちろん業界の常識的などで長袖シャツが必要などとあり、長袖を着ないと心理的に不安すぎる場合は例外です。

その場合のみ業界常識に合わせることを検討してみてください。私の独断とあえて断りお伝えすると、熱い日に長袖を着ないと選考通過させない会社には行かないことをお勧めします。

よほど特殊な事情がない限り、将来仲間になる可能性があるあなたに無駄な身体的負荷を強いるその環境は皆さんが未来をかけるために必要で重要なサスティナビリティ(持続可能性)を備えていないのではと感じます。

 

結局どうすればいいの?

皆さんからのそんな声が聞こえてきそうなので、iroots流最低限必要な準備を3つあげました。

①快適に過ごせる服装。(歩きやすい。着心地がいい。盛り上がるetc)

②服装枚数の確保。(洗濯ローテーションを維持できるだけ)

③ポジティブマインド。(浮いたらラッキーと思えるか)

以上3点です。これを読んだらあなたが服装に気にかける時間を思い切って断捨離しましょう。

服装で落としたという人事の話は本当に千三つなのですから。

 

―この記事を書いた人―

小笠原 寛
iroots 事業責任者
ベトナム戦争終結の年に生まれた浜っ子。仏教系中高からキリスト教系大学へ。大学時代から人材業界でアルバイト。そのまま人事・人材業界へ。採用責任者、紹介、グローバル・障がい者採用からダイレクトリクルーティングまで経験。2012年からずっとiroots。心の根っこを大切に。