謎の自撮りアカウントに隠された想い|神戸大学 藤永旺二郎

 謎の自撮りアカウントに隠された想い|神戸大学 藤永旺二郎

【藤永旺二郎(ふじながおうじろう)】
神戸大学経済学部4回生。ベンチャー企業内定者。一年間休学し、世界放浪の旅に出て30カ国以上の国を巡った経験あり。単位取得に苦しんでいたが、無事修了。数多くのユニークな経験を経てきた彼のirootsを探ります!

巷では話題沸騰中インスタアカウント「@jirojamagram」

──本日はよろしくお願いします!

よろしくお願いします!

──いま、藤永さんはどんな活動をされていますか?

現在は、インスタグラムで「じろうが邪魔です」というアカウントを運営しています。まだフォロワーは1000人程度ですが、俗に言うインスタグラマーですね。

──どんなインスタアカウントなんですか?

結構、一部のコアなファンに人気なんですけど、ご存じじゃないんですか???

──すみません存じ上げないです…

今すぐフォローすることをおすすめします。
すごいきれいな景色や、世界中の有名な観光地などの写真を撮影して投稿しているんですが、どの写真にも僕がアップで映り込んでいて、それが見えないんですよ。

──かなり邪魔ですね(笑)。 どうして邪魔するんですか?

今って、インスタグラムやTwitterなどのSNSで何でも見れるじゃないですか。だから実際に足を運ばないでも満足しちゃう人って居ると思うんですよ。でも、それって僕はよくないと感じていて、経験上もっと自分の足で現地に行って、自分の目で見ることが大事だと思っています。このアカウントのコンセプトは「人のインスタで写真見て満足してねぇで自分の目で見ろよまだまだ君は若いんだから」というもので、このアカウントがきっかけで行動する人が増えればいいなという思いで、世界中の「訪れたい名所」「震えるほどの絶景」「心が動く瞬間」などを、”あえて”積極的に邪魔しています。

──熱い想いが隠されているのですね。
──そのインスタアカウントを開設することになったきっかけはなんですか?

初めのきっかけは、大学3回生で休学して行った世界一周中に友達に送った写真でした。旅に出て2カ国目でシンガポールに行ったときに、マーライオンと写真を撮りたくなって自撮りしたんです。そのとき自分とマーライオンが被ってマーライオンが全く映らなかったのですが、その写真が面白かったので友達に送りました。その写真を見た友達が「いや、じろう邪魔やん」と言ってきたんです。それ以来、行く先々の国で、自分の顔のせいで世界的に有名な建造物や自然物が見えないという写真を友達に送り続けていて、送る度に「じろう邪魔やねん」と言われていたのですが、あるとき「見えなさすぎて行きたくなってきた」と言われたんです。その時、このうざったい写真には人の心を動かす力があると実感し、もっと多くの同年代にこの写真を見て欲しいという思いで旅の途中でアカウントを開設しました。


──なるほど。今までは具体的にどんなものを邪魔してきたのですか?

具体的には、マーライオンのような有名な観光名所だったり、アフリカのキリマンジャロやロシアのバイカル湖などの壮大な自然、そしてハワイで会った有名人に渡るまで、色々と邪魔してきました。世界一周から帰ってきた後も、国内外問わず旅行先で邪魔ばかりしていて、最近はニューヨークで聴いた本場のジャズの動画をアップしたのですが、じろうの声が邪魔でほぼ聞こえなくしてみました。視覚的に邪魔するにとどまらず、聴覚などいろんな感覚を邪魔することにも挑戦しています。

──本当に多くの国に行かれているのですね。

そうですね。邪魔することが目的で色んな場所を訪れている訳では無いんですが、結果的に邪魔しまくってしまっています。自分が行ってよかったと思う場所では、絶対に何かを邪魔してすぐにインスタにアップするように心がけています。

“Seeing is believing”

──いろんな場所に足を運ぶ動機は何なのでしょうか?

動機はいつも自分の中にある1つの信念なのですが、英語で言わせてもらうと、

“Seeing is believing”

という想いです。

まあ、日本語で言うと「 百聞は一見に如かず」という意味なんですが、わざわざ英語で言った意味は、全くないです。

──(笑)。その想いを持つようになったきっかけは何ですか?
 

もともと幼少期から、なんでも自分で経験しないと気が済まないたちでした。遊びから習い事に至るまで、様々なことに手を出していた記憶があります。高校生の時に、姉が留学に行っていたことや、先生方から海外の話を聞いたことで、海外と日本の違いに強く興味を持ちました。それで大学入学前の春休みにベトナムに旅行に行ったんですが、初めての異国の文化は本当に衝撃で、車がビュンビュン通る信号のない道を平気で横切る人々を目の当たりにしたり、理由もなく陽気な現地の人とパクチーの入った料理を食べたり、マーケットで値段の半額以下に値切って買い物をしたりして、知らないものに触れることを単純に楽しいと感じました。同時に、「これは実際に来ないと体験できなかったな。」とも思いました。この経験が、もっと知らないものを自分の目で見たいと思うきっかけになったと思います。その後、休学して世界一周に行くことを決めるのですが、世界一周中も世界中で様々な人と話し、色々なものを見て、ますますこの想いは強くなる一方でした。

──世界一周の中で自分の価値観が変わったエピソードはありますか?

多くの国を訪れる中で、自分のこれまでの当たり前だと思っていたようなことがぶち壊される経験をいくつもしました。自分のなかで印象深いのは、インドでの「 いやWi-Fi繋がらへんやん事件」ですね。インドの安宿に泊まっていた時の出来事なんですが、「Wi-Fiあるよ」と言われたのに一切繋がらないんです。フロントに聞くと、「オーナーしかつなぎ方を知らない、オーナーは忙しいから来れない。」みたいなことを言われました。そっちの都合なんか知るかと思った僕は”客として”めちゃめちゃ怒って文句を言ってたんですが、フロントのおっさんは全く取り持ってくれないどころか、お金を払って泊まってる僕に悪びれる様子もありませんでした。ところが数日後、これじゃらちが明かないと思い、態度を一変させて「頼むよ~オーナーに連絡してよ~マイブラザ~」という感じで距離を詰めてみたところ、フロントのおっさんの動きが急に機敏になって、1時間ほどで問題が解決したんです。この時に、インドにはいい意味でも悪い意味でも「客と店員に上下関係なんてない」ということに気づきました。日本ではお客さんのクレームを解決するのは当たり前ですが、インドではそんな感覚はなくて、マイブラザーだから何かをしてあげたいという感覚の方が大きかったんですね。これはとても面白い気付きでした。インドで快適に旅をするキーワードは「マイブラザー」です。

──世界一周をする前と後で何が一番変わりましたか?


何かに接するときに先入観を持たないようになったことが一番大きいと思います。世界一周の前は、自分の常識や固定観念を前提として人と話したり、何かを見ていたりしていたと思うんですが、旅の中でそれがいかに邪魔なものかを実感し、未知のものに触れる時には、事実以外の先入観を持たないように意識しています。例えば、2年生の時から働いているバイト先のバーで初対面の人と話す機会が多くあるのですが、以前であれば「肩書き」や「見た目」などの表面的な情報から、無意識のうちに「このひとはこういう人だ」とイメージを作ってしまい、実際どういう人か知らないまま終わっていました。ですが、最近は時間を取ってしっかり対話をし、自分の知らない面白い部分を積極的に知るように努力しています。前までは苦痛でしかなかった「酔っぱらったおっさんの自慢話」も、掘り下げていくとその人の信念があったり、色々な気づきや教訓が隠れていて、時間が過ぎるのも忘れるぐらい楽しい「偉大なおじさまの大事なお話」に昇華しました。意識一つで人・モノと接する経験の価値が変わるのは面白いと思います。

価値観の拡大こそが「成長」

──藤永さんにとっての成長とはなんですか?

僕にとっての成長とは、価値観の「幅」を広げることです。新しい価値観に触れたとき、誰かの価値観をそのまま自分の価値観にする必要はなくて、「そういう考えがあるんだ」と知識として自分の中に持っておくことが大事だと思っています。そうすることで、物事を自分だけの視点ではなくもっと多角的に見ることができたり、誰も思いつかないようなアイデアを発想できたりすると思います。そのためには、自分で行ったことのない場所に訪れ、話したことのない人と会話をすることが大切です。もちろん、話を聞くうえで意見をぶつけ合うことは必要ですが、相手の考えを否定することなく、また無理に納得する必要もなく、ただ理解するということを意識しています。

──価値観を広げる一番の方法はやはり異国の地へ足を運ぶことですか?

確かにわかりやすいのは海外に行くことかもしれませんが、本当に大事なのはどんな価値観にもオープンである自分のスタンスだと思っています。海外にいくと、違いが分かりやすいですし、違いが大きい分そのインパクトも大きいです。ただ、もっとミクロの視点を持った時に、例えば隣にいる親友だって、違う人生を歩んでいる以上全く違う価値観を持っていることは間違いなくて、いかにそこに興味を持って、理解しようとするのかの姿勢が大事だと思っています。僕は海外に行ってそのことに気づけたのですが、帰国してからはむしろそういった細かな価値観の違いの方を見つけるのも大切だと感じています。

──その成長の先にどんなキャリアを描いていますか?

将来的には、例えば海外拠点の立ち上げだったり、日本のいいサービスを海外に移植するような仕事がしたいと思っています。なぜかと言われるとただ単純に、世界に日本を好きになってほしいからですね。ただ日本のサービスをそのまま海外の国に持って行っても、絶対にうまくいくとは思っていなくて、その土地のユーザーの価値観や文化、ニーズを理解して、あるときはサービス自体の形を変えることも必要だと思っています。その時に大切なのが、いかに多様な価値観を理解しているかで、そのために今のうちから先入観を捨ててなにかを理解する練習をしておくべきだと思います。

「最終目標は宇宙」

Photo byLoganArt

──藤永さんのインスタアカウントのビジョンを教えてください。

最終的な目標は宇宙です。

何言ってんねんと思う人もいると思うのですが、結構本気で考えています。宇宙に行くための資金を全部インスタのアカウントを収益化して貯めようと考えています。具体的にどうするかというと、今のアカウントのフォロワーを5万人にします。その存在を知った企業からインフルエンサーとして「うちの商品を邪魔してほしい」という依頼を受けます。依頼をくださった企業からの報酬を全て宇宙貯金として貯めまくります。そして最終的には貯まったお金で念願の宇宙に行きます。宇宙では、壮大な景色を自分で楽しみながら、青い地球を思いっきり邪魔した写真をインスタで投稿したいですね。青い地球はちらっとしか載せずに、もうほぼほぼ肌色のじろうしか見えません。


──でもせっかくなので、やっぱり青い地球を映してほしいと思う人がいると思うのですが(笑)。

「そんなに見たいと思うのなら、自分で行けよ、まだ君は若いんだから。」

──熱いお言葉ありがとうございます。藤永さん、今日は本当にありがとうございます!!
 

【編集後記】

ただふざけているだけだと思えるインスタアカウントには、想像以上の熱い想いが隠されていて圧倒されました。宇宙という一見馬鹿げた夢も彼なら実現させてくれるかもしれない、いや実現させるに違いないと思わされる力強い口調とカリスマ性あふれる風貌はとても印象的でした。

多様な人々の価値観を理解するためには、まず自分自身の価値観を見つめ直すことが重要だと思います。皆さんも自分自信の”iroots”を探ってみてはいかかでしょうか。

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