経済学の「ゲーム理論」とは?例題を使ってわかりやすく説明します!

経済学の「ゲーム理論」とは?例題を使ってわかりやすく説明します!

「ゲーム理論」は近年発展してきた経済学の学問で、経営学や心理学にも波及しています。ゲーム理論を学び始めた方や、ゲーム理論について詳しく知りたい、という方も多いかと思います。そこで、今回はゲーム理論についてわかりやすく具体例や例題も絡めて説明していきます。

ゲーム理論の概要

ゲーム理論とはどのようなものか、まだご存知ない方も多いかと思います。ですので初めに、ゲーム理論に関する基本的な説明をしておきましょう。

ゲーム理論とは?

ゲーム理論とは、複数人または複数の団体が関わる社会的な環境で、それぞれの行動や意思決定が、それぞれの利害に影響を及ぼす場合における、最適な行動戦略や選択を科学する理論のことです。更に簡単に言うと、「お互いに利害関係のある相手がいる時、お互いの利害を考えて最適な戦略をとる」ための考え方です。元々は経済学、数学から派生した分野でしたが、現在は心理学、経営学、工学、政治学などの様々な分野に応用されています。

ゲーム理論の歴史

ゲーム理論の発祥は1944年まで遡ります。アメリカで活躍していたジョン・フォン・ノイマン(数学者)と、オスカー・モルゲンシュテルン(経済学者)の二人が発表した論文「ゲーム理論と経済行動」により、ゲーム理論という分野が誕生しました。その後1980年頃から主に経済学者に広く研究されるようになり、現在は各地の大学で経済学だけではなく心理学や経営学の授業でも取り上げられているようです。

ゲーム理論の具体例(囚人のジレンマ)

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囚人のジレンマとは?

ゲーム理論を考える際の非常に有名な具体例の一つに、「囚人のジレンマ」という例があります。ここでは問題形式で考えてみましょう。

例題:囚人のジレンマ

あなた(Aとする)はある犯罪の容疑で逮捕されました。容疑者は他にもう一人(Bとする)います。お互い意思疎通ができない状況で取り調べを受けることになります。二人に与えられた選択肢は「自白する」「自白しない」の二つです。その際、警察はそれぞれに以下のような条件を提示しました。
・AとBが両方自白しないなら、刑罰は両方懲役1年
・片方だけが自白した場合、自白した方は懲役なし、しなかった方は懲役5年
・両方自白した場合、両方懲役3年
さあ、あなたは自白しますか?しませんか?

なかなか難しいですね。この時、どのような行動をお互いがとるでしょうか?両者にとって、自分だけが自白し懲役が0年なのが最も魅力的であるのは間違いありません。しかし、二人ともそれを狙ってしまえばお互いに3年の懲役になってしまいます。また、客観的に見ると二人とも自白せずに懲役1年ずつ、というのが最適な落ち着きどころです。

ここで、ゲーム理論を深く理解する上で重要なキーワードが3つあります。それらのキーワードと合わせてこの問題を考えていきましょう。

ゲーム理論の重要キーワード3つ

1.ナッシュ均衡

一つ目のキーワードは、「ナッシュ均衡」です。囚人のジレンマの問題では、各々にとって最高の結果は自分の懲役が0年になることであり、最悪の結果は自分の懲役が5年になることです。全体の最適化を考えるとお互いに懲役1年になることがベストですが、それには自分が懲役5年になるリスクを負った選択をする必要があります。両者ともこのように合理的な判断をした場合(赤の矢印)、両者にとって自分だけが選択を変更した場合に不利益を被る、つまり両者ともこれ以上選択を変更するメリットが最も少ないポイントに行きつきます(青の矢印)。このように、個々の最適を考えて合理的な判断をした結果ある均衡点に落ち着き、両者とも自分だけがそこから動く利益のないことを「ナッシュ均衡」と言います。
 

2.パレート最適

二つ目のキーワードは、「パレート最適」です。「パレート最適」とは、全体として最も利益が大きく最適な状態のことを言います。囚人のジレンマの問題では、両者とも自白せず懲役1年ずつになる場合がパレート最適です。社会的に全員で目指すべきポイントだと言えるでしょう。個人の視点から言えば、「これ以上に利益を得ようと思ったら、誰か他の人が不利益を被る必要がある状態」とも言えます。

3.社会的ジレンマ

三つ目のキーワードは、心理学用語でもある「社会的ジレンマ」です。例えば、自分にとって最も合理的だが周囲に非協力的な判断をした場合に最高の結果が得られる。しかし全員がその判断をした場合、全員で周囲に協力的な判断をした場合より悪い結果になるということがあります。これが「社会的ジレンマ」です。囚人のジレンマで起こっている状態そのものですね。ゲーム理論が心理学にも応用されていることが頷けます。

ゲーム理論の例題(経済学)

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価格市場での例題

囚人のジレンマは有名ですが心理学的観点からの問題でした。ここでは経済学的観点の問題を見てみましょう。

例題:価格競争

あなたはラーメン屋を開くことに決めました。しかし同時期に他のラーメン屋も新しく3軒できるようです。どの店もラーメンのクオリティ、サービス、立地などに差はないものとします(安い店ほど集客でき、同じ価格なら均等に集客できる)。この時、4軒の売り手から見たナッシュ均衡とパレート最適になる価格はいくらか?なお、この問題において価格は500~1.000円の範囲で、また全体の集客数は変わらないものとする。

解説

問題のために設定は極端にしましたが、考えてみましょう。まずは、簡単なパレート最適の方から考えます。パレート最適とは全体として最も利益が大きくなる状態のことなので、全店1.000円がパレート最適です。価格競争はなく、最も平和で相互に協力的な状態ですね。

ナッシュ均衡はどうでしょうか。まず、全体の集客数と価格以外の要素を全く考慮しない前提というです。ですので、それぞれの店は他店よりも利益を出すために低価格化を進めます。ある店が900円に値下げし、またある店は800円に値下げし、というような価格競争が起こります。それぞれの店が自分の店の利益だけを求めて行動している状態です。そして最終的には、500円という最低価格に行きつきます。

この状態からラーメン一杯の利益率を上げるため値上げしようとしても、他の店は一杯500円で売っているため、集客力が低く利益は上がりません。つまり、どの店も500円から価格を動かせないという状態がここで出来上がります。というわけで、全店500円の状態がナッシュ均衡です。

日常生活に見られるゲーム理論

ゲーム理論が経済学や心理学に通じている分野であることはご理解頂けたと思います。しかし、上記の例題に限らず、ゲーム理論の考え方は日常生活の様々なシーンに応用することが可能です。

具体例1・待ち合わせ

誰かと待ち合わせをしている時、自分も相手も動き回ってなかなか会えない、という経験は誰でも一度はあるのではないでしょうか。この時下手に二人とも動くよりは、片方だけが動いてもう片方を探し回る方が早く会える確率は高いです。しかし二人とも動かないという状況は最悪なため、二人ともそれを恐れ動き回ってしまいます。この場合、片方だけが動いている状態がパレート最適、二人とも動いている状態がナッシュ均衡です。

具体例2・スポーツ

スポーツの様々な場面でもゲーム理論は応用できます。ここではサッカーのPKを具体例としてみましょう。キッカーはシュートをどこに決めるのが最適か考え、キーパーはその選択を読みます。お互いがお互いの選択を探りあっている状態です。ちなみに、この例は今までの具体例や例題と異なりパレート最適やナッシュ均衡は存在しません。片方の利益がもう片方の不利益となり、片方の選択が変わるとわかればもう片方がそれに合わせて無限に選択を変えられるためです。

具体例3・学校のテスト

中学・高校などで順位の出るテストでは、近い学力の友達がどれぐらい勉強しているかを探りあった経験のある方は多いのではないでしょうか?それを探りあう理由の一つは、その友達の勉強具合によって自分の順位が変動するからですよね。友達が頑張って勉強していれば、それ以上の順位を取るためにはより勉強する必要がある。あまり勉強していなければ、自分もそこまで勉強する必要がない。まさにお互いの行動がお互いの利害に影響を与え、お互いの行動を左右している状況です。

まとめ

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いかがでしたか?ゲーム理論について、囚人のジレンマなど心理学的な例も含めて解説してきましたが、少し難しい場面もあったかと思います。しかし、ゲーム理論は日常生活にも応用できる考え方です。この記事を読んでくださり、興味を持って頂いた方は、機会があれば是非勉強してみることをお勧めします。

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