「語りBAR」開業!現役大学生の挑戦

「語りBAR」開業!現役大学生の挑戦

【山本周雅(やまもとしゅうが)】
京都大学総合人間学部3回生。彼は今、5/7開業予定の「語りBAR katharsis」代表として開業準備に奔走しています(インタビュー日は4/15)。大学生で起業し、自身の店を持つ。バーにかける思いとその原動力を探ります。

「語りBAR」とは何か

ー本日はよろしくお願いします。早速ですが「語りBAR」とはどのような場所なのか教えてください!

語りBARとは京都の若者を中心に、多様な価値観を持った人達が”語り”を通して自身の考えをぶつけ合える交流の場です。固い雰囲気ではなくお酒片手に軽い感じで議論できる場所を目指しています。異分野の人と関わったり同じ興味を持つ仲間と出会えるようなきっかけをこのバーで作りたいと思っています。

ー“語り”が中心とは斬新なバーですね。では、そもそも語れる場所を作りたいと思ったのはなぜですか?

理由は主に3つあります。1つ目は自分が友人との語りによって救われた経験があるからです。僕は大学入学後、自分が何をしたいのか、自分とはどういう人間なのかがわからず悩んでいました。しかし学部の友人達と語り合ったことで自分の性格を相対化して見ることができ、自分についてよく理解することができました。さらに他人の意見も納得して聴けるようになり、その結果様々な角度から世界を見れるようになりました。語ることを通して自分の価値観を相対化し新たな視点を獲得する、この感動を他の人にも知ってほしいです。
2つ目はAIの進化によって自分で考えない人が増えるかもしれないという危機感があるからです。自分の言葉で語ることでAIに頼りきりにならず自分で思考・判断・表現ができる人が増えたらいいなと考えています。
3つ目は僕の周囲に変わった人が多いからです。僕の在籍する総合人間学部は「京都大学一自由な学部」と言われることもあり、強いこだわりや個性を持った人が大勢います。この環境を活かして雑多な人と関われる場を作りたいと思いました。これらの理由から、同じ学部や他大学の友人らと5人でバーを開業することにしました。
語りBARで様々な価値観の人と語り合うことで自分の価値観を相対化し、多角的に考える経験をしてほしいと思います。その経験は将来様々な問題を解決していく力になると思うので。最終的にはその問題解決能力を活かして自分の未来・日本の未来を切り開く人を育てる場にしたいです。

大学2回生の時、シンガポールでの1枚

バーを選んだ理由

ー議論するならバーでなくても良い気がしますが、バーという形態にこだわる理由は何でしょうか?

語るためのバーというアイディアは僕の実体験が基になっています。もともと一人旅が好きで、青森に行ったときに屋台の居酒屋に入ったことがありました。そこでは初め、僕と女将さん・他のお客さんと女将さんという形で話していたのですが女将さんとの会話を通して次第に直接他のお客さんとも話せるようになったんです。その時に、お店ではお客同士では話しにくいけれど店員を通してなら話しやすいということに気づきました。バーという形態で店員が間に入ることでお客さん同士の交流が生まれるし、お酒が入ることで気持ちがほぐれて初対面の人と話す心理的なハードルが下がるのではないかと考えました。
それぞれが自由に語り合うだけでなく、一つのことに非常に強いこだわりを持った人にそのこだわりについて話してもらう「こだわり語りイベント」など様々な語りイベントも開こうと思っています。

小さい頃は写真を撮るのが好きだったそう

開業までの道のり

ー大学生でバーを開業するというのはなかなか珍しいと思うのですが、大変だったことはありましたか?

それはもういっぱいありましたね(笑)。例えば資金繰りやビジネス知識の習得、批判の対応などです。

ー色々と苦労されたのですね。ひとつずつ具体的に聞かせてもらってもいいでしょうか?

はい。いちばん苦労したのが資金繰りです。開業資金として自分達で100万円は集めることができたのですがあと100万円がどうしても集まらず、バーの存在を知ってほしい思いもあってクラウドファンディングをしました。応援してくださった方々のおかげで必要な資金は集めきることができました。起業に必要なビジネス知識の習得については、飲食店営業をする際の法律や会計について知らないことばかりで理解するのに時間がかかりました。幸い1回生の後期からビジネススクールに通っていたこともあり、最終的には何とか知識を自分のものにすることができました。あとは、Twitter上でクラウドファンディングのお願いをした頃からたくさんの批判を受けました。意見をくれた人にはDMを送ったり直接会ったりして自分の思いを説明しました。これらの対応は大変でしたが、悪いところを指摘してもらったり建設的な話し合いができたりして楽しかったです。まだ開業していないので実際に運用してみたらもっと大変なことも出てくるかもしれません(笑)。

ーでは逆に開業の準備をする中で良かったこともありましたか?

はい、良かったこともたくさんありました。ビジネスの知識がついたことやお金の運用の感覚がつかめたことで起業に対するハードルが下がりました。今後起業したいと思った際は今回よりもスムーズに行動に移せるようになると思います。準備段階で社長さんや議員の方に会って人とのつながりが増えたことにより入ってくる情報が増えたことも良かったです。また、開業の準備を通して自分に足りないものがたくさんあるということを知れました。そしてなにより、起業という目標ができたおかげで毎日を充実して過ごせるようになったのがいちばん良かったですね。

ーありがとうございます。開業の準備を通して苦労だけではなくやりがいも多くあったのですね。

「できないことがしたい」

ー先ほど、語りを通して自分についてよく理解できるようになったとおっしゃっていましたが山本さんが考える自分の性格とはどのようなものですか?

自分の性格を一言で表すと「行動主義」です。なんでも自分ができないことをやりたがる性格なんです。例えば高校生の時にハンドボール部に入ったのも、玉を投げられる肩がないうえに握力が弱い僕にとってハンドボールができないことだらけの競技だったからです。そこでやめておこうと思わず、かえってやりたくなりました。京都大学を選んだのも今の自分よりレベルが高い環境に身を置くことで自分を鍛えたかったからです。今回の起業もできないことだらけの状態から始まりました。自分にはリーダーシップがないし人に面白いと思ってもらうのも難しい。人見知りで喋るのも基本的に苦手なんですけど、このようにできないことだらけだからこそ挑戦したくなりましたね。
あとは、「遠回りしても結果的にゴールに辿り着ければいい」っていう考え方を持っています。これはきっと浪人した影響です(笑)。回り道をする中で得られることも絶対あるので、目的地まで最短距離で行くということはあまり重視していないです。とりあえず行動してみて間違いに気づいた時点で修正すればいいと思っています。

高校のハンドボール部での様子

ー自分の成長に対する向上心が強いんですね。そう考えるようになったきっかけはあるんですか?

劣等感が強いっていうのが一番のベースになっていると思います。もともと勉強ができないほうで量をこなすことでカバーしていたんですけど、高校に入ってからは周りが賢すぎて太刀打ちできなくなってしまいました。その時「なんで自分にはできへんねん」ってすごく悔しくて。一つずつでいいからできないこと、悔しいことを減らしていきたいと思いました。もっと根本的に言うと自分はすごく負けず嫌いなんですよ。なんでも負けるのが嫌で勝つまでやりたい。自分より能力が高い人をなんとか追い越したいという思いにずっと突き動かされ続けています。

写真を撮る時に目をつぶるのがマイブームだったそう

将来のビジョン

ー負けず嫌いの性格から生まれた行動主義をもとに様々なことに挑戦されているんですね。現在は学部の3回生ということですが、卒業後もバーの経営を続けるのですか?

いえ、起業はあくまで最初のステップで、お店を大きくしていきたい気持ちはもちろんあるんですけどいずれは後輩を育てて引き継いでいきたいです。というのも、学生が経営するバーというコンセプトを大切にしたいので自分がずっと経営者をやるっていうのは違うんじゃないかと思って。卒業後は大きい組織の動かし方を内側から学ぶために大企業に就職したいと思っています。でもそれがゴールではなくて最終的には自分で事業を始めて社会を動かしていけるような大人になりたいです。
今はBI(ベーシックインカム:国民全員に最低限の所得を保障する制度)に興味があって、もしこれを実現できたら仕事の意味ががらっと変わると思っています。生活のために働くのではなく、ひとりひとりがやりたい時にやりたいことをできるようになればみんな幸せになれるんじゃないか、と考えています。なので将来はそのような社会を実現する力になりたいです。このビジョンに対する皆さんの意見もバーで聞かせてもらえたら嬉しいです。

ーバーの開業、楽しみにしています。本日はありがとうございました!
 

【編集後記】

自身の実力を謙虚に見つめ、常に向上心を忘れず動き続ける山本さん。できないことに取り組むのには苦労が伴いますが、その分成長の伸びしろも大きいと思います。現状に満足せず更なる成長を求めるその姿勢を見習いたいですね。

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