ヴィーガンが暮らしやすい世界を目指して~その先に見据えたVisionとは~

ヴィーガンが暮らしやすい世界を目指して~その先に見据えたVisionとは~

【工藤柊(くどうしゅう)】
神戸大学国際人間学部2年生。一年休学し、NPO法人日本ヴィーガンコミュニティを設立して代表理事を務める。
自分自身の描く理想の世界を目指して、常に前進し続ける工藤さん。
そんな強い信念をもった工藤さんのirootsに迫ります。

一般家庭で生まれ育った工藤さんが"ヴィーガン"をはじめたきっかけとは。

――工藤さん、はじめまして。今日はよろしくお願いいたします!
 

よろしくお願いします!

 

――工藤さんは現在休学されているのですよね。何をされているのでしょうか?
 

昨年の10月に休学して、ヴィーガンの人たちがもっと生きやすい世の中を作りたい、と考えてNPO法人を立ち上げました。
 

 

――すごい行動力ですね。そもそも“ヴィーガン”ってなにですか?
 

ヴィーガンとはライフスタイルの一つなんですね。
ヴィーガンと一緒にベジタリアンという言葉もよく聞かれると思うのですが、ベジタリアンは肉や魚を食べないライフスタイルを送っている人たちのことを言います。一方でヴィーガンは肉や魚を食べないのはもちろん、タマゴや乳製品も口にしません。また、動物保護、環境保護の観点でヴィーガン続けている人たちは、皮革製品を持たない、動物実験反対、という風に“食”以外でもこだわっている人が多いです。

 

わたしの場合はきっかけは動物保護の観点からヴィーガンを始めたのですが、環境問題にも課題意識がありそれもあって今も続けています。
 

 

――なるほど。そもそもなぜヴィーガンというライフスタイルを始められたのですか。
 

きっかけは高校3年生の夏、車に轢かれたネコをみたことです。そのネコ、道路で原型がなくなるくらい轢かれていたんですね。なんで運転手も通行人も放っておいたんだって怒りと憎しみの感情が湧いてきて・・・。
涙があふれたまま「猫 車に轢かれ 死亡」とキーボードを叩いたら、多くのネコが殺されていることを知りました。さらに調べていくと犬や猫が保健所で殺されていることや、畜産業では1日6万匹もの豚が殺されていることを知りました。
人間の勝手な都合によって何万もの動物が殺されていて、しかもそれが自分の消費活動とつながっていることを知って、このまま肉を食べていいのかわからなくなってしまったんです。だから一旦肉や魚、卵や乳製品を食べるのをやめようと決意しました。

 

 

――大きな決断ですね。周りに驚かれませんでしたか?
 

もちろんびっくりされましたね。でもすぐに親も友達も受け入れてくれました。
何を食べたらいいのかわからなかったので最初の1か月は水炊きとおにぎりの生活でしたが、母親はヴィーガン用のレシピを探してくれて、私のために別メニューを作ってくれました。友達にもびっくりはされましたが、よく高校でも人と違うことをして笑いをとるキャラクターだったので・・・また工藤がなんか変なことしてるぞ、というくらいの反応でしたね。

 

 

――途中で挫折したりしなかったですか?
 

それはなかったですね。今言った通り、周りの協力があったことと、自分のやっていることは間違ってない、と色々調べていくうちに確信していったからです。というのも今地球が抱えている問題、地球温暖化・森林伐採・水質汚染などに畜産業が大きな影響を与えていることがわかったんです。で、やはりヴィーガンを続けたほうがいいなと。

――もともとはヴィーガンを始めたきっかけは動物保護の観点だったけど、今では環境保護の観点から続けられているのですね。

子どものころから感じていた“不快感”

――昔から“環境問題”とか興味があったのですか?

 

そうですね。今でも小学生のころ「自分の町の川、汚いな。なんかいやだな」と思ったことは覚えていますね。



――特別に汚い地域だったのですか?

いえ、そういうわけではないんですけど。昔からたまに田舎とかに遊びに行ってたんですよ。田舎とかと比べたら自分が育った都会って、川汚いし、山もくすんで見えるし、空気もなんか臭いな、と感じていました。
こんな風に自分がいやだな、と感じる環境は私たちの前の世代が発展に力を入れた結果の負の遺産だなと考えていて、私の次の世代には同じ思いはしてほしくないとずっと思っていましたね。

 

 

――昔から社会の問題に関心があったんですね。
 

そうかもしれないです。
中学生の時から少年漫画をよく読んでたんですけど、少年漫画って主人公が平和を目指して奮闘してるじゃないですか。“平和”っていいなあって漠然と中学生の時に思ってて。
高校生のときの地理の授業では環境問題や紛争、飢餓などについて学んだのですが、漫画の中の世界と思っていた問題が実際に現実にあるんだ、ということに衝撃を覚えました。私たちは不自由なく生活できているのに、その一方で私たちの生活の犠牲になっている人たちがいるっていう不平等が本当にいやだなと思ったことを覚えています。


さっきのネコが轢かれた話に戻るんですけど、人間間にだけ存在していると思っていた“不平等”が、人間と動物にも存在しているんだと衝撃を受けたから、ヴィーガンを続けられているんだと思いますね。

――幼いころからの思いが今に繋がっているのですね。

ヴィーガンを広めることの限界

――大学に入学されてからはどのような活動をされたのでしょうか?

 

大学生協のメニューにヴィーガンメニューを加えようと新メニューを提案したり、神戸にあるヴィーガンカフェで店長を務めたりしていました。
ただ、大学生協と途中から上手くいかなくなったり、カフェで店長をしていても現状は変わらないなあと思うようになりました。


 

――どのようなところに限界を感じたのでしょうか?
 

例えば神戸にヴィーガンカフェを開いていても、その価値って東京とか他の地域に住んでいるヴィーガンの人たちには届かない価値ですよね。1人で頑張ってもできることは限界があるなあと感じていました。
そういう思いから、1人でやるよりもみんなでやったほうがもっと進歩していけるんじゃないかなあと思いました。例えば生協のメニュー考案にしても、成功しているところもあるかもしれないし、失敗したところもあるかもしれない。いろんな人たちのノウハウを集めて共有することで、一人でやるよりももっと早いスピードで成果を残していけるのではないかなあと思いました。
そこからヴィーガンやベジタリアンの人たちが集まれるコミュニティのようなものを作りたいなあと考え始めましたね。

 

――そこからNPO設立に繋がっていくのでしょうか?
 

実はもう一つきっかけがあるんですよ。
賀川豊彦さんってご存知でしょうか。もともとイギリスで始まった“生協”という概念を日本に広めた方なんですよ。賀川豊彦さんの本を読んで、生協とか協同組合という考え(*1)に惚れこみました。この考えをヴィーガンの人たちで応用したら、みんなで協力して自分たちの問題を解決できるのではないかと考えました。
というのも、ヴィーガンの人たちが抱えている問題って、割と共通した者が多いなと感じていて。例えばレシピのレパートリーが少ないこととか、外食するお店が少ないこととか。これらの問題を解決するためにみんなでお金を出し合って、サービスや商品を作るときに運営に関わって、できたらみんなで使おうっていうシステムを作ったらいいのではないか、と考えたこともNPO設立に繋がっていますね。



(*1)生協、協同組合
出資と運営と利用を組合員ひとりひとりがやっていくというシステム

一人一人の力とつながりが世界を少し、いい方向へ。


――なるほど。NPOでは実際どのような活動をされているのですか。

今は主に4つの事業をしています。

一つ目はコミュニティとしての役割。フェイスブックでグループを作ったり、イベントを企画したりしています。

二つ目は"V-cook"というヴィーガン用のレシピサイトの運営です。今までもレシピをネットに上げている人たちは多かったのですが、それらが散在していて見つけづらかったので一括で検索できるようにしました。

三つ目は"ひつじの"というヴィーガンを続けている人にフォーカスしたウェブメディアを運営しています。というのも、ヴィーガンの料理やお店にフォーカスしたメディアはけっこうあるんですけど、ヴィーガンを続けている人にフォーカスしたものってなかったんですよね。だから、ヴィーガンを続けている人がどういうことを考えてどういう信念を持っているのかという所にフォーカスしたメディアを作成しました。

四つ目は“ヴィーガンサミット”というイベントを来年の1月に企画しています。イベント内容としては、ベジタリアンやヴィーガンの世界ですでに活躍している人やインフルエンサーや企業の方を登壇者に呼んで、プレゼンテーションやパネルディスカッションなどしてもらうことを企画しています。また、今から起業とかを考えている人たちにプレゼンテーションを行う機会も作ろうと考えています。
 

 

――面白そうな企画ですね。
 

――今後の工藤さんの展望、教えてください!
 

直近の目標としてはこの1年でV-cookをより多くの人に認知してもらって使ってもらうということですね。NPOの資金調達の仕方として寄付とか助成金とかでやっているところもあるのですが、わたしは継続的な組織運営にするために事業として成立させたいんですよ。そのためにも、今取り組んでいる事業を広めて、使ってもらって、より成長していくという流れを作っていきたいと考えています。
このような活動を通じてヴィーガンが今よりももっと広まって、ヴィーガンの人たちがより暮らしやすい環境を作り上げたいと考えています。

 

最終的にはNPOの理念にも上げているんですけど“世界平和”をめざしています。世界にも日本にも不平等って存在すると思うんです。たとえば、家によって経済格差があったりだとか、虐待があったりだとか。そういうだれかが傷ついたり悲しむような出来事を1個ずつなくしていけたらいいなと考えています。
それってやっぱり私だけの力ではできないし生きているうちに全部はできないから、他の人とつながって協力していく
ことが大切だと思っています。

 

――”他の人とつながって協力していく”ってどういうことですか?
 

よくナルト(*2)の"火の意志"の話で説明するんですけど。
話は、"武力要員だった忍者が幸せに暮らせる里を初代ハシヤマが作ったところ"から始まるんです。そういう思いを持って里を作ったけど、結局戦はなくならなくて殺し合いの戦いはずっと続いていたんですね。でも忍者も幸せに暮らせる世界を作るという意志は代々受け継がれていって、その意志が主人公であるナルトにまで届くんです。最終的にナルトは平和の世界を手に入れるんですけど、それを成し遂げられたのはナルト一人の力ではなくて、ナルトの先生とかナルトにラーメン奢ってくれてたラーメン屋のおっちゃんとか周りの人がいたから、その意志が受け継がれて平和を手に入れることができた
んですよね。
もともとは初代ハシヤマたった1人の意志が、いろんな人を通じて受け継がれていって、元々は関係のなかったナルトにまで届いたからこそ平和を手に入れることができたんです。

 

こんな感じで、1人の思いが周りのひとに繋がって、その人たちが自分たちのできる範囲で世界を良くするために働いて、その思いが人や時間を超えて受け継がれていくことで、より多くの、より影響力のある人たちにも伝わって、世界のためにできることが大きくなる。ここから少しずつ平和に近づいていくのではないかと考えています。

だから今は、小さなことかもしれないけど自分が平和のためにできることをやっていくことが大切だと思っています。

 

――とてもかっこいいビジョンですね。

――本日はすてきなお話を聞かせていただきありがとうございました。


(*2)ナルト
忍者の少年が主人公の少年漫画。

編集後記

世界の問題を自分事に捉えて、解決へと行動を起こし続ける工藤さん。

いい意味でがつがつしすぎず、周りを自然と巻き込んでいく“やさしさ”を感じました。

自分自身の行動をもう一度見直し、よりよい世界への第一歩を踏み出そうと思います。

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