大学1,2年生向けのキャリア教育プログラム・FUJITSU Academyの記念すべき第1期目を開催された富士通。今回のイベントを開催するに至ったエピソードや学生さんへの想いを赤裸々に教えてください。
――FUJITSU Academy は今回が初めての開催なんですね。
三川:はい、富士通としても初めての取り組みになります。全3ターム、各回30~40名の学生さんにお集まりいただきました。概要をお伝えすると、Society5.0時代のいま、次世代のリーダー像とは何かを学び、自己理解を深めることで自分自身の成長を実感してもらう、大学1,2年生向けの3days ワークショップです。
初日はインプット、2日目は実践、そして3日目が発表というタイムテーブルで、イノベーションの生み出し方を伝え、個人でもグループでも明日から実践できることを考えてもらいます。3日間での学びを大学生活にフィードバックし、その後6か月間、今までより一段高いチャレンジに挑んでもらうという取り組みです。
――対象が大学1,2年生とのことですが、始めたきっかけは何だったのでしょうか?
三川:企業が就活のタイミングで良い学生を選ぶのではなく、キャリア支援をしながら大学とともに企業も一緒になって育てていける環境作りや取り組みが必要ではないかと思ったことです。
普段の採用業務とは関係なく、就活生ではない1.2年の学生さんと話してみると、「なんとなくやりたいことはあるがどうしたらいいか分からない」という迷いのある子がたくさんいることに気付きました。
彼らにできるだけ早いタイミングで“社会で活躍するために必要な”情報提供や意識付けをすることで、なんとなくやりたいことは何なのか、具体的には何をしたらいいのかに気付いてもらい、これからの学生生活が少しでも身のあるものに変わってもらえたらなあと考えたことがきっかけです。
本橋:僕は完全にしくじり先生です(笑)自分が学生だったら、「こういうのがあったらよかったな」という場を提供したいと思っていました。学生さんと話していると、自分がもっと多様な経験をしていれば、もっと伝えられることがあったのにと、もどかしさを感じることがあります。学生さんには同じ思いをしてほしくない、という気持ちが強いです。
三川:今後大学生活で何をすべきかの指針や、目標を立てることに役立つような「気付き」が得られる場にしたいと思いました。例えば、アルバイトやサークルをしているときと社会人として働いているときとでは、日々が過ぎていく早さも規模も違っていることや社会に出てから役に立つ力を身に着けられる機会があることに、社会人になってからじゃないと気付けないことが多い気がして。
今とはスピードの違う世界が将来待っているとしたら学生生活どうする?という問いかけをして、「社会の動き」というものを前もって伝えてあげることで、学生さんの視野が広がったり成長速度が変わったりするんじゃないかと思います。将来、より早期に活躍できる人材になってほしいからこそ、1,2年生の間に、学生生活と社会の変化におけるスピード感の違いも体感できるはずです。
三川真奈氏:新卒入社5年目。営業志望で入社をしながら、人事配属。入社から新卒採用一筋で、北から南まで、時には海外にも足を運び、多くの学生に会う。今は、チャレンジをさせてくれる環境でのびのび働けることにやりがいを感じている。最近の趣味は、ズボラ飯の研究。
――グループワークはどのようなテーマで取り組まれたのでしょうか。
本橋:「電車での移動時間をワクワクさせるためのイノベーションは何か」考えてもらいました。身近なところでの問題意識から、アイデアを発散してみるのが面白そうだなと。いろんなバックグラウンドがある人が集まってはじめて、良いサービスがつくられたりアイデアだしができたりすることを体感してもらいます。
本橋遥人氏:新卒入社6年目。コーポレート部門の担当人事や学校法人海陽学園 海陽中等教育学校への出向を経て、2018年4月より新卒採用担当へ。新卒採用は天職だと本気で思っている。「人生で今が一番楽しい」が口癖。好きなものはお肉と映画のレイトショー。
ユーザー視点と自己成長を体感するワーク
――グループワーク発表タイムでの”寸劇”は面白い取り組みですね。
三川:発表タームでは、ユーザー体験を表現するスキットを採り入れてもらいました。表現方法は四コマ漫画であったり今回のような寸劇であったりといろいろあるんですけど。サービスを使うビフォーアフターを表現することで、ユーザーエクスペリエンスを本人達が体感してもらうねらいがありました。
参加した学生さんが、電車内のお爺さん役や、子供役などを役割分担して寸劇を演じている様子は、見ている学生も社員も見入ってしまい時にはシリアスに、時には爆笑を誘うような本格的なものでした。
――その場が盛り上がることに加え、ユーザーの疑似体験ができるのは大きいですね。他に効果的だった取り組みがあれば教えてください。
三川:3日間のうち2回、社員が学生さんと1 on 1をする機会を作りました。学生の時って自分の強みや弱みについて、日常生活で誰かにフィードバックをもらう機会ってなかなか無いと思っていて。だからこそ客観的な意見を伝えることで、改めて自己認知してもらうことが目的です。しかもそれが社会の第一線で活躍している人からのフィードバックに価値があると思っています。
本橋:2回実施した意図は、自分自身の成長を認識してもらうことにありました。1回目ではフィードバックをしつつ、残りのワークの時間でどうチャレンジするのかを具体的な行動としてアドバイスをします。2回目で学生さんが実際に変わった点を伝えるんです。「変わった」という事実を伝えることで、成長実感を得られます。
――実際変わりましたか?
三川:変わりました。例えば、アイデア出しができなかった学生さんに、ご自身の持つ専門性や強みが何か。そういったものをどうアウトプットすべきかを伝えたら、ビジネスモデルや仕組みを考えるワークでその強みを発揮していました。
また、最初は皆がアイデアを拡散していたので、まとめ役を勧めてみたら、率先して議論を収束させようとしていた学生さんもいて。違いは大小ですけど、全員が自らの特徴に気づき自信を得て変化していったと言う印象です。
――自分の”特徴”が強みであることに気づくということですね。
本橋:はい、あとは自分の行動を言語化してもらいました。あのときはどうだったか、当時のシチュエーションを言葉にして振り返ることで、自己認識をするんです。言語化すること自体とても大切なことなんですけど、自分が言語化したことに対して相手からフィードバックをもらうことはより大きな学びにつながると思います。
FUJITSU Academyというラーニングゾーンへの挑戦
――大学4年間長いので、1,2年生のうちに気付きを得ることはその後の大学生活において大きな意味があると思います。
三川:そうですね、ただ、FUJITSU Academyは単なる体験で終わらせたくなかったので、FUJITSU Academyで学んだことをその後6か月間の学生生活で活かしてもらう6months Challengeという取り組みを継続して実施しています。
――6か月間、具体的に何をするのですか?
三川:FUJITSU Academyの最終日、参加者全員にイノベーションを起こすためのテーマを決めてもらったんですけど、希望者には実際に6か月間自分のテーマを実践して、その結果を発表していただきます。期間中は富士通の社員がフォローして、達成までコミットします。
最終的にしっかりプロセスを踏めていて、かつ成果にもつなげることができた学生さんにはプラスアルファの体験をしてほしいので、アワードとして、今回は富士通の海外支社にご招待し、グローバルな現場や体験をしてもらうことで、更なる成長につなげてほしいと思っています。何とか良いものにしようと現在企画真っ最中です(笑)
――感度の高い学生さんにとって嬉しい機会ですね。
本橋:そうですね。グローバル環境は刺激の多い世界なので、感度の高い学生さんにはおすすめです。居心地のいい空間をコンフォートゾーン、コンフォートゾーンから一歩踏み出したストレスのかかる環境をラーニングゾーンと言いますが、今回参加した学生さんは明らかにラーニングゾーンに挑戦してるんですよ。
ワークのなかではたくさんの葛藤があり、たくさんの刺激を受けたと思います。3日間では参加前と比べて劇的な変化はないとしても、変化のきっかけにはなったと思いますし、そうなってくれていればとても嬉しく思います。
――学生の皆さんにメッセージをいただけますか。
本橋:是非「見立て力」を身につけてください。見立て力とは、専門性を持った上で、自分の専門とは違う分野を見ることで新たなアイデアを生み出す力のことです。
例えば、良く言われていることではありますが、携帯電話の開発者であったら、スマートフォンを発明することはできなかった。パソコンを専門にしていた人だからこそ、スマートフォンを生み出すことができたんですよね。「自分が学んでいることなんて将来的に使わない、役に立たない」と思っている学生さんは文系理系問わず少なからずいらっしゃると思います。
でもその判断は性急すぎるかもしれません。学生生活で学んだ知見や経験はダイレクトじゃなくても、どこかで掛け合いが起きて、必ず意味を為します。アピールできる体験が無いと思っている人も、「見立て」の力を意識的に自分の経験に当てはめてみてほしいと考えてみます。
学業だけでなく、日常経験や過去の原体験も実はこう言うことに役立つのではないか。その試行錯誤の繰り返しをすることで就職活動よりもっと大切な未来に繋がるはずです。
三川:FUJITSU Academyを通してお話してきたのは、何かを成し遂げようとするときに、高い視座で物事を見られるようになるためのインプット、そして社会人として求められているチカラ。学生さんにも「未来志向でどうなりたいか、社会人とのギャップを埋めるための新しい視点を得られた」と言ってもらうことができました。
自分が少しでも惹かれることにフォーカスして活動してください。本当は「好奇心」に強弱は無くて、好奇心が弱いと思っている人は自分にもちゃんと好奇心があることに気付いていないだけだと思います。この記事を読んでくれている皆さんと、どんな場所であれ、どんな形であれ、富士通とのご縁があれば嬉しいです。