グローバルな環境での成長を求める学生の中で、短期的な留学だけでなく“海外大学への進学”という選択肢も増えつつあります。
コロナ禍によって国を跨いだ移動の制限が続くものの、就活がオンライン化したことによって海外大生と日本企業の距離はむしろ縮まったと言えます。“海外大学への進学”という大きな決断をした学生は、どんな理由でその選択肢を選び、何を学び、どこを目指すのか。
今回はイギリスの大学で教育について学び、2023年春に学習塾を運営する企業へ就職予定の大重舞香さんにお話を伺いました。
気になる海外での大学生活や就職事情についても本音・ありのままでお話いただいているので、今まさに海外でチャレンジしている人や、これからチャレンジを考えている人はぜひご覧ください。
- 「そんなに興味があるなら行ってみれば」という父の言葉で、急に視野が広がった
- 「できない子」というスタートから、上位7位の成績で奨学金を勝ち取る
- 英語を使って仕事ができるかよりも、何をするかの方が重要だった
- 「そっちの方がおもしろそう」という気持ちで海外に挑戦してみてもいい
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―最初に自己紹介をお願いします。
大重舞香です。日本の高校を卒業後、イギリスのヨーク大学で教育について学んでいます。2022年の夏に卒業予定で、2023年春からは日本の学習塾を運営する企業に入社予定です。
―日本の高校を卒業後、海外の大学を選んだ理由について教えてください。
将来どんな人間になりたいか考えたときに、説得力のある人間になりたかったからです。
両親が教員だった影響で、私も将来は教育に関わる仕事がしたいと思っていました。ただ、特別な経験や苦労を知らないまま大人になり、将来の生き方について子どもたちに教えたとしても、説得力がないんじゃないかと思い…。
そんな気持ちを抱えながら両親と進学先について話しているときに、海外の教育制度の話をよく引き合いに出す私を見て、父が「そんなに興味があるなら海外の大学に行ってみれば」とポロッと言ったんです。
その言葉で「そういう選択肢もあるんだ」と急に視野が広がり、そのチャンスがあるなら挑戦したいと思いました。
高校3年生の夏までは日本の大学に行く気満々だったのですが(笑)、急遽方針転換してイギリスのヨーク大学へ進学しました。
―なぜイギリスの大学を選ばれたのですか。
高校のときに学校や県のプログラムでアメリカ、オーストラリア、カナダにそれぞれ一週間ほど行ったことがあったので、せっかくならそれ以外の国に行ってみたいという気持ちと、英語教育において先進国であるイギリスで教育について学んでみたいという理由でヨーク大学の教育学部を選びました。
両親も「まさか本当に海外に行くなんて」と最初は驚いていましたが、最終的には後悔のない選択をしたらいいと応援してくれて、ありがたかったですね。
―イギリスでの大学生活はいかがでしたか。
向こうに行って1年間はファウンデーションコースという、大学で学ぶうえで必要な語学力や学習スキルを身につける準備コースに通っていました。
もともと英語が苦手な方ではなかったのですが、ファウンデーションコースはネイティブの人も多かったので、授業では「できない子」という立ち位置でしたね(苦笑)。最初は周りのレベルの高さに焦りを感じたものの、奨学金をもらうためには上位7位の成績をとるという明確なハードルがあったので、すぐに切り替えて猛勉強しました。
予習復習に加えて、もともと得意だった数学をクラスメイトに教える代わりに英語を教えてもらうなど、成績をあげるためにいろんな工夫をしました。もともと壁がある方が燃えるタイプでしたし、「自分なら乗り越えられる」というポジティブさもあったので、努力を重ねて最終的には無事に奨学金を獲得しました。
―大学生活で印象に残っている出来事はなんですか。
課外活動として、大学で日本語を教えるクラスの講師を担当したことです。
大学側が用意したプログラムを学生が運営するようになっており、日本人が少ないためか「日本語クラスを担当しませんか?」と大学側から依頼されたことがきっかけでした。話だけでも聞いてみようかなと軽い気持ちで説明を聞きに行ったのですが、すでに講師をやる前提で話が進んでいて…(苦笑)。
でも、すごくいい経験になったので結果的には引き受けて良かったです。最初は参加学生が2人しかいない状況からスタートだったのですが、「他の語学クラスに負けないぞ!」という気持ちで楽しい授業づくりをしているうちにどんどん人数が増え、最終的には40人ぐらいの生徒と出会い、日本語を教えていました。
もともとトライアンドエラーを繰り返したいタイプだったのですが、講師を担当するようになってからは長期的なゴールから逆算して計画を立てられるようになったので、自分の中で一歩成長できた経験でした。
―就職活動について教えてください。
大学2年生のときから就活を意識しはじめて、海外で開催されている就活イベントに参加したり、ダイレクトリクルーティングに登録したりしました。自分は話し下手だという自覚があったので、プロフィールを書いてスカウトを待つというのは自分にあったスタイルだなと思ったんです。
就活はすべてオンラインで進めており、教育系や福祉系の企業を中心に20社程度の企業と接点を持ち、その中から10社程度の本選考を受けました。
イギリスと日本では8時間ほど時差があるので、うまくスケジュールを組むことが難しく…。なので、一斉にエントリーするのではなくはじめから企業を絞って就活をしていました。
そして最終的に日本の学習塾を運営する企業に内定をいただき、就活を終えました。就活の途中でいろいろと軸が変わることもあったのですが、やはり自分が一番熱くなれるのは教育だと思い、最終的に学習塾を運営する企業に入社を決めました。
―海外ではなく日本企業への就職を選んだ理由はなんでしたか。
英語も話せるようになったものの、やはり自分のパフォーマンスを最大限に発揮できるのは日本語のフィールドだと思ったからです。私にとって英語を使って仕事をすることよりも、何をするかということの方が重要だったので、最初から日本企業に就職しようと決めていました。
もちろん英語を使った仕事がしたいという考え方があってもいいと思いますし、そういう働き方も素敵だなと思うのですが、私にとってはベストなパフォーマンスを発揮できる環境で働くことの方が重要でした。なので、今後仕事においてまったく英語を使う場面がなくても全然構わないと思っています。
―最後に、これから海外でチャレンジしたい学生に向けたメッセージをお願いします。
明確にやりたいことが決まっていなくても、「そっちの方がおもしろそう」という気持ちがあれば海外に挑戦してみてもいいと思います。
海外に行けば必ずやりたいことが見つかるというわけではないですが、間違いなく視野は広がるので。気持ちのままに生きて、やりたいことを探しに行けばいいのではないでしょうか。
あと、これは海外大生に関わらず就活生にお伝えしたいことなのですが、企業を探すよりも先に自分を探すことを大事にしてほしいです。
私も自分の「哲学書」を作って、そこに自分が社会や人に対してどんな価値を発揮していきたいのかをひたすら書き出しました。そうすることによって自分の根っこの考え方をあらためて認識することができましたし、人事の方から質問されることが怖くなくなりました。
今はやりたいことが決まっていなくても、視野を広げ、そこから自分の信念や哲学をぜひ見つけてください。
社会人3年目にエン・ジャパンに転職。猫とうさぎの三人暮らし。趣味は漫画と映画。最近はピラティスに夢中。
2018年にエン・ジャパンに転籍後、新卒スカウトサービス「iroots」の企画として、
ミートアップやメディアの運営、記事のライティング・編集に携わる。
趣味は映画鑑賞・美術館めぐり。