「せっかく入社するなら、いい会社に入りたい」。就活を経験している人であれば、誰もがこのように思うのではないでしょうか。では、みなさんにとっての「いい会社」とは一体どのような会社でしょうか?社会に貢献している、知名度がある、給料や待遇がいい…さまざまな会社が自社の魅力をPRし、またインターネットにも多くの情報が溢れている中で、就活生はどのような視点で「いい会社」を定義し、探せばいいのでしょうか。
今回は「働きがいのある会社」ランキングで毎年上位にランクイン(2022年度Great Place to Work® Institute Japan 『大規模部門4位』『大規模部門 製造業1位』)している株式会社ディスコの人事お二人をお招きし、ディスコの事例を紹介しながら「いい会社の見極め方」についてディスカッションを行いました。これから就活をはじめる人や、就活の終盤でどの会社に行こうか迷っている人は、ぜひ参考にしてみてください。
※本コンテンツは2022年4月に開催されたイベントをもとに構成しています。
●登壇者紹介
株式会社ディスコ 採用グループ 増原亜樹さん(入社5年目)
2018年にディスコへ新卒入社。志望配属先を自分で見つける「アプリケーション大学」においてさまざまな部署でのOJTを経て、採用グループへ配属。現在は新卒採用に携わっている。
株式会社ディスコ 採用グループ 福田研二さん(入社9年目)
日系SIer、外資系コンサルを経て2013年にディスコへ中途入社。外資系コンサルで採用を行なっていた経験を活かし、現在は新卒採用チームリーダーを務めている。
【モデレーター】
エン・ジャパン株式会社 新卒iroots事業部 津田有季子
2013年にエン・ジャパンへ新卒入社。入社1年目から新卒採用を担当し、マネジメント経験などを経て新卒iroots事業部へ。現在はセールスとカスタマーサクセスを担当している。
(左上:増原さん、右上:津田、中央:福田さん)
●ディスコについて
エン・ジャパン 津田:今回は「いい会社の見極め方」というテーマでお二人とお話しできればと思いますが、その前に毎年「働きがいのある会社」ランキングで上位にランクインされているディスコという会社について教えてください。
ディスコ 増原:ディスコは半導体製造装置や加工ツールを開発・製造・販売しているメーカーで、世界シェアは約8割を占めています。半導体・電子部品を作るメーカーを主な顧客としてBtoBのビジネスをしているため、学生のみなさんにとっては聞きなじみのない会社だと思います。本日は「いい会社の見極め方」というテーマでお話をさせていただくのですが、みなさんが会社選びを行う際に、企業の理念やそれに紐づく制度に着目する方もいらっしゃるのではないでしょうか。本題についてお話しする前に、ディスコのユニークな制度について少しご紹介させてください。
①個人Will制度
ディスコでは、社内のさまざまなやりとりを「Will」という社内通貨を通じて行っています。一般的には企業単位や組織単位で収支管理を行うことが多いと思いますが、ディスコではその収支管理を個人単位に落とし込んでおり、それを個人Will制度と呼んでいます。私たち社員はWillを通じて仕事を選べるようになっているので、働き方の管理も自分で行うことができ、それが一人一人の働きがいやモチベーションの維持にもつながっています。
②アプリケーション大学
先ほどもお話しした通り、ディスコでは仕事を自分で選べるようになっています。所属部署も会社や人事が介入し一方的に決められるのではなく、自分で志望部署を選び、その部署との合意で配属先を決めることができます。とはいえ入社していきなり自分に適した配属先を選ぶのは難しいので、まずはアプリケーション大学というOJTのための部署に入り、そこでアプリケーション技術(ディスコの「装置」「加工ツール」と「加工条件」を組み合わせて最良の加工結果を導く技術)を身につけながら、興味のある部署の仕事を並行して経験します。実際の業務や関わる先輩社員を通して、自分自身の適性や理想の働き方を知ることができるので、納得のいく選択ができると思います。私も入社当初は営業を志望していたのですが、さまざまな部署を経験する中で採用に興味を持ち、現在に至ります。
③PIM(Performance Innovation Management)活動
ディスコは会社を進化させていくためにさまざまな取り組みを行っている会社で、その一つがPIM活動です。この活動の特徴の一つが、個人もしくは部署対抗の対戦形式で取り組み事例を発表し、社員の個人Willの投票で勝敗を決める点です。勝者に投じていれば配当Willが得られ、敗者に投じていればその全額が失われるため、発表者だけでなく聴講者も真剣そのものです。目の前の業務をこなすだけでなく、長期的な視点に立った進化のための活動も認められるので、社員の大きなやりがいにつながっています。
ディスコ 増原:ディスコは「CS(顧客満足)はES(従業員満足)から生まれる」という考えを大切にしているので、フレックス制度や社内設備の充実など、社員の満足度を高めるための施策が多く取り入れられています。
エン・ジャパン 津田:どの制度においても自由と責任のバランスがすごくいいですよね。単に従業員を甘やかすという発想ではなく、自由に選択できる制度を設けることで社員一人一人の自律を促し、社員もその中で成長しながらやりがいを持って働けるという印象を受けました。
●いい会社の見極め方とは?
エン・ジャパン 津田:では、本日のテーマである「いい会社の見極め方とは?」について、みなさんと一緒に問いを立てながら進めていきます。まず、みなさんが考えるいい会社とはどのような会社でしょうか。(→参加学生からチャットで多数意見があげられる)みなさん、たくさんのご意見ありがとうございます。
社員が優秀、社内の人間関係がいい、充実した研修制度、社会に貢献している、多様な働き方ができる…など、さまざまな意見があがっていますね。他にも知名度がある、お給料が高い、サービスが好き、歴史がある、規模が大きい…といった特徴も「大学生の就職企業人気企業ランキング」に影響を与えているのではないでしょうか。
しかし、人気企業ランキング上位企業だけがいい会社だと受け取ってしまうと企業選びの幅が狭まってしまいますよね。このようなランキングを参考にすることも一つの手ではありますが、もっと多角的な視点から企業を見てみる必要があるのではないでしょうか。
①コロナ禍での“リアル”を知る
エン・ジャパンが実施した「退職理由」に関する調査結果を見ると、コロナ禍をきっかけにランキングが変動していることがわかります。2017年、2018年でもっとも多かった退職理由は「給料が低かった」というものでしたが、2019年の調査結果では「やりがい・達成感を感じない」という理由が1位になっています。この結果から、オンライン化によって自由に働けるようになった反面、職場での人間関係が希薄になったり自分の仕事に手触り感を感じられなくなったりした人が増えたという見方をすることもできますよね。コロナ禍によって働き方が多様化した今だからこそ、日々のやりがいや達成感、社員同士のコミュニケーションの活発さという“リアルな働き方”に着目してみると、入社後に「こんなはずじゃなかった…」というギャップも生まれにくいかもしれません。
②投資家の目線を知る
いい会社を見極めたいと思っているのは就活生のみなさんだけでなく、投資家も同じです。投資家は「今流行っているサービスだから」という一過性の視点ではなく、「将来的に高い付加価値があるのか」という長期的な視点で投資先を選んでおり、この考え方はみなさんが就職先を選ぶ時の視点と通じるものがありますよね。その会社の商品やサービスが日々の生活や人生に欠かせないものなのか、そしてそれは他社と比較してどのような独自性があるのか、その潮流は長く続くのかという投資家目線で企業のIR資料や中期経営計画資料などを読んでみると、新たな発見が生まれてくると思います。
③働く人の声を知る
先ほどの「大学生の就職企業人気企業ランキング」とはまた違う視点のランキングから企業を見ることもおすすめです。その一つとして参考にしたいのが、「働きがいのある会社ランキング」です。これは働く人の声と会社の施策や制度を評価し、社員の働きがいをランキング化したもので、企業に対するイメージではなく実際に働く人たちのリアルな意見を知ることができます。口コミサイトを見るとどうしてもネガティブな意見ばかりに目がいってしまいがちですが、そのまま鵜呑みにするだけではなく、どんな人がなぜそのようなコメントをしているのか、あるいはしていないのか、自分自身でしっかりと考えることも大事です。また先ほどの退職理由調査の結果を踏まえると、“働きがい”という点にもきちんと注目しておきたいですね。
エン・ジャパン 津田:これらの視点を身につけることで、「イメージ」ではなく「リアル」な企業の姿を知ることができ、それに基づいた比較や判断ができるようになるため、就活生のみなさんにはぜひ知っておいていただきたいです。また、手前味噌ではありますが人材会社としてさまざまな企業の求人情報や口コミを取り扱っている弊社が定義している「いい会社」の要素もあげておくので、ぜひ参考にしてみてください。
エン・ジャパン 津田:これらの視点について、お二人はどのようにお考えですか。
ディスコ 福田:前職の外資系コンサルで人事をしていた時は、エン・ジャパンさんがあげられている4つの要素のうち、上の3つを求めている人が多かったように思います。先ほどお話にあがっていた“働きがい”を考えるうえでは重要な要素なのではないでしょうか。私個人の意見としては、これらの要素に加えて「成長産業であるかどうか」ということにも着目してほしいです。ディスコへの転職の決め手になったのはまさにその点で、半導体市場の盛り上がりを知って「なんて明るい業界が日本にあるんだ」と驚いたものです。社会的インパクトの大きさや市場の盛り上がりという点も、個人の働きがいにつながっているのではないでしょうか。
ディスコ 増原:先ほどご紹介されていた「働きがいのある会社ランキング」にはディスコもランクインしていましたが、もちろんディスコにも辞めてしまう方がいます。価値観は人それぞれなので、ディスコが万人にとって働きがいのある会社だとは思っていません。津田さんがご紹介されていたように、会社を見るためのさまざまな視点があるからこそ、まずは自分が何を大事にしているかという価値観を知ることが、会社を選ぶうえで重要なポイントだと感じました。
エン・ジャパン 津田:増原さんのおっしゃる通り、最終的に一番重要なのは自分の価値観に照らし合わせてその会社をどう見るかですよね。前提として押さえておきたいのは「いい会社」の定義は人それぞれであることと、価値観は将来変わる可能性があるということ。時間軸を「今」だけでなく「未来」にもおき、パートナーや子ども、親など自分の人生における登場人物を想像しながら「将来価値観が変わったとしてもその業界・会社で働いていけるのか」というところまで考えてみるといいですよね。
ディスコ 増原:私も就活をしている時は、自分の人生を紙に書いて振り返っていました。文字に起こすことで行動特性が見えてきて、無自覚だった価値観に気づくことができたので、学生のみなさんも会社選びで迷うことがあればぜひ自分の価値観に立ち返ってみてほしいです。
ディスコ 福田:先ほどの「価値観は変わる可能性がある」というお話にとても共感します。私は社会人になって20年ほど経ちますが、学生時代に考えていた「やりたいこと」と、社会人5年目の時に考えていたそれは大きく異なります。おそらくこの先50代になった時にもまた違った価値観を持つようになると思います。家族構成の変化や、仕事でそれまで積み上げてきたもの、また興味関心がある領域にも変化があるでしょうから、当然のことです。大事なことは、そのような変化があった時にも志望するキャリアを実現できる柔軟な環境がそこにあるか、ということではないでしょうか。
エン・ジャパン 津田:福田さん、増原さん、ありがとうございます。今回のお話を通じて就活生のみなさんにお伝えしたいことは、「いい会社」を選ぶためにはその会社の内側までしっかりと見る必要があるということです。どの会社もいいことを言いますし、会った社員がみんないい人に見えることもあると思います。人事をやっていた経験からお話しすると、私たちもそう思ってもらえるように準備している部分があります。だからこそそういった情報は7割ぐらいで受け止めて、あとは今日ご紹介した多角的な視点から会社を見て、情報を精査し、考え抜くことをおすすめします。得られた情報と今まで自分が培ってきた価値観を照らし合わせて、自分にとっての「いい会社」を選択してください。