就活の時期を迎えているものの、どのようにこれからのキャリアを考えていいのかわからない。自己分析をしてみても、「やりたいこと」に対して腹落ちする答えが見つからない…。そんな方へのメッセージとして、法政大学キャリアデザイン学部で教授を務める田中研之輔先生(@KennosukeTanaka)に「自分らしく輝くためのキャリアの描き方」について執筆していただきました。
 

 
●「先のことが思い浮かばない」というあなたへ

社会で輝いている先輩達のルーツを遡ると、必ず、一つの「きっかけ」があります。それは、先輩達が「これまでの過去を受け入れ、自分を認めてあげる」という自己受容のモーメントを経験しているということです。

ふとした時に、気がつくのです。「よく頑張ってきた。このまま自分らしく生きていいのだ」と。この気づきに出会うと、目の前の景色が、180度変わります。ここにヒントがあります。

今、私があなたに向けて書いているこの「手紙」が、そんな「瞬間」になってくれたら嬉しいです。

私は法政大学のキャリアデザイン学部でキャリア論を教えています。タナケンで覚えてください。2008年に着任してからもう14年。これまでに9つの大学で、2万人近くの学生を社会へと送り出してきました。大学生活の悩み、就活の不安、やりたいことがみえないもどかしさ、これまでに様々な悩みに寄り添ってきました。

そんな私から、あなたに伝えたいのは、

「この先のことが思い浮かばなくても、焦らなくていい。あなたは、あなたらしくあればいい。そのために、まず、あなた自身を褒めてあげてください。」  
 
ということです。

大学生になると、大人として認識されるようになるので、褒められる機会が激減します。アルバイトやインターンでも頑張ることは当たり前とされ、失敗すると叱咤されるのではないでしょうか。社会人の先輩達も悪気はないのですが、あなたのこれからのことを思い、褒めるよりもアドバイスが多くなってしまうのです。

だからこそ、あなたが、あなた自身のことを褒めて、認めてあげるのです。

人生100年という長距離レースを生き抜いていく上で最も大切なのは、「あなた自身が、これまでの過去を認め、目の前の毎日を大切に過ごしていく」ことです。

小さい頃から塾や習い事を続け、小学校、中学校と忙しく過ごしてきましたね。さらに、高校受験、大学受験を突破して、今のあなたがいます。部活動に打ち込んだこと、体育祭や学園祭で盛り上がったこと、友達とのかけがえのない時間。たくさんの楽しい思い出がありますね。また、親と揉めてしまったこと、友達との人間関係に悩んだこと、思うような結果がでなくて涙したこと。つらいことも十分経験してきました。

これまでの経験すべてが、あなたの「たからもの」。目を閉じて、あなた自身に語りかけてあげてください。「よく頑張っているね」と。

すると、じわじわとエネルギーが湧いてきませんか? 

自分の人生を台無しにしたいと思って生きている人は、誰1人としていません。しかし、どうしたらいいのか、わからないで悩んでいるのですよね。
 
 
●今日からできるキャリア・ワークアウト

まず、今日からこれからのキャリアについては、「悩む」のではなく、「考える」ように認識を転換しましょう。「これから働いていくイメージがわかない」で「悩む」のではなく、「どんな風に働いていこうかな」と「考える」ようにするのです。

キャリアを「悩む」から「考える」ようにするためのコツがあります。それは「受け手」から「創り手」側にまわることを意識していくことです。大学講義を履修生として「受け」ているだけだと、「つまらなく」感じることもあるでしょう。では、あなたが大学講義を教える側だとした、どう「創る」かを考えるようにするのです。

目の前の「一瞬」をすべて「創り手」側の視点で捉え直すようにしていきましょう。例えば、サークルで企画を考え、後輩達をまとめてきたとき、あなたは「創り手」でした。居酒屋でアルバイトをしていた時、お店のオペレーションを考え、動いている時のあなたも「創り手」です。

大学を卒業して、社会人として働くようになるということは、「受け手」から「創り手」にまわることなのです。

もう少し広い視点で捉えるならば、親や先輩達があなたに教えてきてくれたことを、今度はあなたが後輩や社会へと還元していくタイミングを迎えたということなのです。

そのために、① まず、あなた自身がこれまでの過去の経験を認め、自己を受容する。② 「受け手」から「創り手」側に認識を転換し、毎日を過ごすようにする。

具体的には、下記のような取り組み方です。
 

 
この二つのキャリア・ワークアウトを2週間、継続してみてください。すると、あなたに変化が起こります。私も先輩達と同じように、社会で輝きながら働きたいという思いが湧いてくるようになるのです。

この気持ちを大切にしてください。(*忘れそうになった時には、自己受容と創り手への認識転換のキャリア・ワークアウトを繰り返してください。)
 
 
●就活とは「あなたらしく」輝く場所=企業をみつけること

今、企業が取り組んでいることは「人的資本の最大化」です。難しく考える必要はありません。一人ひとりが持っているポテンシャルを最大限に発揮しながら、働いてくれることを求めているのです。もちろん、その背景には超少子高齢化や日本企業の生産性や競争力の停滞などの課題が関係しています。

こうした状況の中で、これから社会に出ていくあなたにとっての就職活動は、「あなたらしく」輝ける場所=企業を探し出すことなのです。

先日、内定を獲得したゼミ生が後輩に次のような言葉をかけていました。

「ありのままの私を伝えた。私がちゃんと自分らしく働ける企業を選んでいった」と。

就職活動をする上で、忘れてはならない大切な言葉です。企業の名前や人気ランキングに振り回されて就活するのではなく、自分軸で選んでいくのです。それでも「やりたいことがわからない」かもしれません。そんな時は、3分でできる次のシートを書き込んでみてください。

(出典:田中研之輔『今すぐ転職を考えてない人のためのキャリア戦略』)

これだけは、やりたくないということを書き出して、それらを就活の中で選択肢から外していくようにするのです。「やりたくないリスト」を作成することで、「やりたいこと」もぼんやりと浮かんでくるようになります。

そして、時間がある時に、次の「生き方デッサン」シートも言語化するようにしてみてください。1週間ぐらいかけて、何度も取り組みながら、あなたなりのシートを作成してみてください。

(出典:田中研之輔『今すぐ転職を考えてない人のためのキャリア戦略』)

たくさんの「たからもの」を持つ、あなたはこれからの人生を自らデザインしていくことができます。誰かに言われたからとか、誰かに認められたいからといった他人軸ではなく、あなた自身があなたの人生のオーナーになのです。

その考え方を「キャリアオーナーシップ」といいます。あなたのキャリアのオーナーは、あなた自身なのです。

このアイルーツプラスに登場している先輩達は、それぞれに「キャリアオーナーシップ」を持って働いています。自ら人生をデザインしているから輝いているのです。
 
そんな働き方を最後にキャリア論の知見から整理しておきますね。これから社会に出ていく皆さんの背中を押してくれる最新の考え方にプロティアン・キャリアがあります。

はじめて聞かれた方も多いと思いますが、プロティアンとは変幻自在という意味です。これまでの過去を経験を活かし、自ら主体的にキャリアをデザインしていく生き様です。

あなたの親世代までのキャリアは、伝統的キャリア(Organizational Career)と言われ、組織にキャリアを預けている働き方が主流でした。

でも、あなたは違う。あなたの価値観を大切にしながら、輝ける場所で成長していくのです。比較すると次のようにまとめることができます。

(出典:田中研之輔 『プロティアン―70歳まで第一線で働き続ける最強のキャリア資本論』)

キャリア論の専門家である私が自信を持って伝えているので、心配はいりません。あなたらしく輝ける場所=企業を探していきましょう。輝ける場所=企業をみつけたあなたは、自分磨きに取り組むようになります。もっと輝けるために、これまでのがんばりを持続するようになるはずです。

せっかくなので、私と一緒に次のアクションをやってみましょう。まず、アイルーツプラスに掲載されている記事をすべて読むこと。

輝いている先輩達の語りには、あなたがこれから未来を描いていくエッセンスが濃縮されています。そしてできたら、twitterにアウトプットしてみてください。ハッシュタグは #アイルーツプラス or  #プロティアン で気づきを投稿してもらえれば、私も読ませていただきます。

たとえば、ダンスサークル。みているだけで、踊りは上手くなりません。サッカーも同じですね。自分でボールを蹴ってみなければ、上達しないのです。

キャリアも同じです。

先輩達の輝かしいキャリアを読んだら、今度はあなた自身が小さなアクションを積み重ねていく。あなたの未来は、あなたが「創り」だしていくのです。
 
 
(執筆:田中 研之輔/編集:西村恵)