キリンのヘルスサイエンス事業を世界へ。若手の挑戦。

今回お話を伺ったのは、キリンホールディングスでヘルスサイエンス事業を手がける吉田さん。酒類、飲料・ヘルスサイエンス、医薬と幅広く事業を展開するキリンで、若手から裁量を持って挑戦できる風土とは。詳しくお話を聞きました。

キリンホールディングス株式会社

ビール・飲料事業で培った発酵・バイオテクノロジーの技術を核に、「食から医にわたる領域」での価値創造を目指す企業。近年はヘルスサイエンス領域を次なる事業の柱として注力。オーストラリアの健康食品最大手「ブラックモアズ」、健康食品・化粧品大手「ファンケル」をグループに迎え、各社の強みを掛け合わせながら、グローバルでの健康価値の創出を推進している。ヘルスサイエンス事業を中長期的な成長を担う重要な事業の柱と位置付け、アジア・オセアニア・ 北米で、健康をより多くの人々へ届ける、最も信頼されるヘルスサイエンスカンパニーを目指す。

吉田 茂雄(よしだ しげお) ヘルスサイエンス経営企画部 企画グループ

2017年にキリンホールディングス株式会社に新卒入社。キリンビールに配属後、長崎・福岡での業務用酒類営業を経て、入社5年目に三菱商事へ社外出向。タイで食品卸の経営企画を2年間担当し、新たなビジネスモデルの立ち上げを経験。2023年に帰任後、ヘルスサイエンス経営企画部に配属。現在はオーストラリア発の健康食品企業「ブラックモアズ」の事業会社窓口として、キリングループとの連携や事業推進を担うほか、ヘルスサイエンス領域の成長戦略の検討にも携わっている。

キリンが生み出す健康価値を、世界へ
― 現在ご担当されているブラックモアズの事業について教えてください。日々どのようなお仕事をされていますか?

お客様の健康に貢献し、その先の豊かな生活につながっていく仕事をしたい。それが今の自分の原動力です。事業に必要なリソースを動かし、プロジェクトを前に進めることで、最終的にお客様に価値が届く。その連鎖の中に自分がいるという感覚が、仕事の支えになっています。

私が行っているのは、ブラックモアズの事業管理です。具体的には、経営計画や業績のモニタリングを行うとともに、キリングループ内の研究開発、マーケティング、品質保証などの専門部署とブラックモアズをつなぐ窓口として、さまざまなグローバルプロジェクトを推進しています。現場の声や事業の状況を整理し、経営判断につながる情報として提供することも重要な役割です。

対象となるブラックモアズは、売上収益702億円(2025年実績)で、オーストラリア・ニュージーランドのみならず、中国・タイ・マレーシア・インドネシア・ベトナム等にも展開しています。事業管理からプロジェクト推進まで、ブラックモアズの事業成長に必要なことを幅広く担っています。

加えて、ヘルスサイエンス領域全体の成長戦略の検討にも携わっており、キリンがヘルスサイエンス事業をどう伸ばしていくか、その大きな絵を描くチームの一員として議論を重ねています。

― この仕事の醍醐味や、やっていてよかったと感じる瞬間はどのような場面ですか?

醍醐味を感じる瞬間は数多くありますが、特に印象に残っているのが、キリン独自素材「プラズマ乳酸菌」をブラックモアズのサプリメントとして台湾で販売したプロジェクトです。新商品を店頭に並べるまでには通常24ヶ月かかるところを、このプロジェクトでは半分以下の10ヶ月で実現しました。

このプロジェクトの意義は、単に商品を早く市場へ届けることではなく、ブラックモアズがキリングループ入りして間もないタイミングで、キリンの研究開発力とブラックモアズのブランド力を掛け合わせた最初のシナジーを形にし、今後の海外展開につながるモデルケースをつくることにありました。

私は、ブラックモアズとのシナジー創出に向けたプロジェクトに初期段階から参画し、市場や製品の方向性を検討するとともに、社内の専門部署とブラックモアズ本社、台湾チーム、製造工場、今回初めて起用するサプライヤーなどを含め、国内外の多様な関係者を巻き込みながら、それぞれの立場や考え方を丁寧にすり合わせ、販売開始までプロジェクトを推進しました。

特に大変だったのは、台湾での発売日が決まり、一日たりともスケジュールを後ろ倒しにできない中で、ブラックモアズとして初めて取引するサプライヤーとの契約を短期間で締結する必要があったことです。品質基準や責任範囲など、契約上で整理すべき論点も数多くあり、さらに言語や商習慣の違いもあったため、調整は決して簡単ではありませんでした。そのため、実際にサプライヤーへ足を運び、ブラックモアズ本社の品質保証メンバーやキリン側の品質保証メンバーとともに監査を実施し、製造現場や品質管理体制を一緒に確認しました。その結果を踏まえながら、品質基準や責任範囲など契約上の論点を一つひとつ整理し、それぞれの関係者の間に立って認識をすり合わせながら、契約締結から販売開始までプロジェクトを前へ進めていきました。

その中で最も意識したのは、「何をやるか(HOW)」を伝えること以上に、「なぜやるのか(WHY)」を共有し続けることでした。もちろん、HOWもプロジェクトを進める上では重要です。しかし、通常より短いスケジュールで進めるからこそ、それぞれの立場で守るべきものがあり、時には衝突もありました。その前提を理解し、一人ひとりがプロジェクトの目的に腹落ちした状態で動いてもらうことが欠かせませんでした。そのため、相手の立場や考え方に寄り添いながら、プロジェクトの目的や目指す姿を何度も丁寧に伝え続けました。その結果、多くの関係者が同じ方向を向き、一つのチームとしてプロジェクトを推進することができたと考えています。

台湾の店頭にブラックモアズ製品が並んだとき、その製品がこれから多くのお客様の健康や豊かな生活につながっていく第一歩を形にできたことを強く実感しました。一方で、新しい商品を市場に送り出すことはゴールではなくスタート。現地のチームとともに試行錯誤を重ねながら、事業を育て続けていくことも私たちの重要な役割です。世界中の仲間と力を合わせて新しい価値を形にし、それをより多くのお客様へ届けていく。その挑戦を続けられることこそが、この仕事の一番の醍醐味だと感じています。

営業と海外出向を経て現在へ。グローバルな挑戦のルーツとは
― グローバルに事業を推進されていますが、そのルーツはどこにあるのでしょうか。まずはキャリアの原点である営業時代について教えてください。

営業時代に最も大切にしていたのは、お客様(飲食店)の未来を共に考え、成長を支えるパートナーであることでした。そのためには、現場へ何度も足を運び、お客様の経営課題を深く理解し、課題解決につながる提案を考え続けることが欠かせませんでした。その泥臭く現場に向き合う姿勢こそが、今の私の仕事の原点になっています。

新入社員の当時、最も挑戦的だったのは、競合メーカーの商品を扱っていた飲食店へ、キリンビールへの切り替えをご提案する仕事でした。その際に作成した提案書は100ページを超えましたが、お酒の提案は最後の数ページだけでした。残りの大半は、その企業が3年後、5年後もお客様から選ばれ続けるための経営提案です。

その提案を形にするために、競合店を20店舗以上自分の足で回って市場を分析し、人財育成や店舗開発、コスト改善など、社内外の多くの方々の知見や協力をいただきながら提案をまとめ上げました。最終プレゼンを終えた際、お客様から「キリンビールの吉田さんが一番私たちのことを考えてくれた」と言っていただけたことは、今でも忘れられません。その言葉をいただいたとき、営業とは商品を売る仕事ではなく、お客様の未来に本気で向き合い、その成長に伴走する仕事なのだと改めて実感しました。

この経験を通じて学んだのは、商品を売ることではなく、お客様が実現したい未来から逆算して価値を考えること、そして多様な人を巻き込みながら、その価値を形にしていくことです。この姿勢は、現在、グローバルで事業を推進する上でも変わらない私の原点になっています。

― 三菱商事への出向では、どのような視点や学びを得ましたか?

それまで4年半、営業として現場でお客様と向き合ってきましたが、海外で異なる企業文化の中で、初めて経営企画の仕事に携わることになり、何もかもが新しい挑戦でした。その中で特に鍛えられたのは、数字で事業を捉える力と、ゼロから事業をつくる視点です。

営業時代は「どうすればお客様に価値を届けられるか」を考えていました。一方、出向先では「どうすれば事業として利益を生み出せるのか」を考える立場になりました。売上やコストを一から設計し、どの数字をどう動かせば事業として成り立つのかを徹底的に考える中で、事業全体を俯瞰する経営視点を身につけることができました。

その実践として、タイでは三菱商事グループのネットワークを活用し、原料調達から商品開発、製造、最終製品の販売までを一貫して担う新たなビジネスモデルの構築に携わりました。多様な関係者を巻き込みながら、新たな価値を事業として形にしていく経験は、現在、ブラックモアズとのシナジー創出やグローバルプロジェクトを推進する上でも大きな財産になっています。

三菱商事では、出向者という立場ではなく、一社員として大きな挑戦を任せていただきました。多くの上司や同僚に支えられながら、事業づくりや経営の考え方を学ぶことができたことは、私にとってかけがえのない経験です。そして、この経験を通じて、改めてキリンの魅力にも気づきました。 キリンには、挑戦する人を信じて任せるだけでなく、部署や立場を越えて自然と知恵や力が集まり、挑戦を組織全体で支える風土があります。出向前は当たり前だと思っていたその風土が、外から見て初めて、キリンならではの強みだったのだと実感しました。

― これまでの経験が、今のヘルスサイエンスでの仕事にどうつながっていると感じますか?

営業時代に培った「現場に足を運び、お客様を深く理解する」という姿勢は、今も変わらず仕事の原点になっています。ヘルスサイエンス事業でも、まずは現地へ足を運び、ブラックモアズや競合の売り場を見て、現地のメンバーと直接話をすることを大切にしています。東京にいながら海外市場を理解することはできないと思っているので、定期的に現地へ足を運び、自分の目で見て、自分の耳で聞くことを心掛けています。

また、三菱商事で培った経営視点は、事業管理や経営計画の策定だけでなく、事業全体を俯瞰しながら判断する場面でも活きています。さらに、多様な関係者を巻き込みながら新たな価値を事業として形にしていく経験は、キリンとブラックモアズが連携してプラズマ乳酸菌を台湾市場へ展開したプロジェクトでも大きな支えとなりました。社内外の多くの関係者と連携しながら、通常24ヶ月を要するプロジェクトを半分以下の約10ヶ月で実現できたのも、営業時代と三菱商事での経験があったからこそだと感じています。

当時は一つひとつが独立した経験に見えていました。しかし今振り返ると、対象は国内の飲食企業からグローバル事業へと大きく変わりましたが、「お客様を起点に考え、多様な人を巻き込みながら価値を形にする」という仕事の本質は変わっていません。目の前の仕事に真摯に向き合ってきた経験が、今の自分を支えていると実感しています。

挑む人を応援するキリンの文化と風土
― 「キリンだからこそできた」と思う経験を、具体的に教えてください。

キリンに入ってからずっと感じてきたのは、想いを持って挑戦している人間には、会社も周囲の人も本気でサポートしてくれるということです。営業時代や出向中も、ヘルスサイエンス事業においても、年次や立場に関係なく大きな仕事を任せてもらいました。

また、任せるだけではなく、想いに共感した仲間が部署や立場を超えて一緒に取り組んでくれる。そのおかげで、一人では実現できない挑戦を形にすることができました。

そういう風土があるからこそ、キリンが長年培ってきた技術や知見に加え、ブラックモアズやファンケルなどグループ各社の強みを掛け合わせながら、新しい健康価値の創出に挑戦できています。会社や国を越えて多くの仲間と協力しながら、グローバルで事業を動かせることは、キリンという場所でなければできなかったことだと思っています。

― 今後、キリンで成し遂げたいことは何ですか?

入社当時からずっと変わらないのは、日本国内のみならずグローバルでキリングループの製品・サービスの価値を広げていきたいという想いです。外に出てみると、世界にはまだまだキリンのことを知らない人がたくさんいます。でも、キリンが持っている技術・ブランド・人財を掛け合わせれば、もっと多くのお客様に価値を届けられると確信しています。やるべきことは、まだまだ無数にあると感じています。

ヘルスサイエンス領域で言えば、健康は人々の豊かな生活の土台です。健康であることで、人々は日々をより豊かに生きることができます。そのために、私たちの製品やサービスが少しでも役に立てるのであれば、これほどやりがいのあることはありません。

私が目指したいのは、単に製品を届けることではなく、その先にある健康価値を世界中へ広げていくことです。そのために、キリン・ブラックモアズ・ファンケル、それぞれの強みを掛け合わせながら、グループ全体のシナジーを最大化し、より多くのお客様の健康で豊かな生活に貢献できる価値の創出に挑戦し続けたいと考えています。キリンには、まだまだグローバルで大きく成長できる可能性があります。その可能性を仲間とともに切り拓き、一人でも多くのお客様の健康と豊かな生活に貢献していきたいと思っています。

― 就活をしている学生に向けて、ご自身の経験から伝えたいことを教えてください。

私自身、入社当時は、5年目で海外へ出向することも、ヘルスサイエンスのグローバル事業に携わることも、まったく想像していませんでした。だからこそ、キャリアは最初から描けるものではなく、目の前の挑戦を積み重ねた先に、後から形になっていくものだと感じています。

就職活動では、「どこで働くか」だけでなく、「何のために働くのか」、「誰と挑戦したいのか」を大切にしてほしいと思います。自分が大切にしたい価値観や実現したいことがあれば、一つひとつの経験は必ず将来の自分につながっていきます。私自身、国内での営業、海外での経営企画、ヘルスサイエンスでの事業企画と、一見異なる経験が今では一本の線になっていることを実感しています。

キリンには、想いを持って手を挙げる人に挑戦の機会を与え、その挑戦を組織全体で支えてくれる文化があります。大企業だから安定なのではなく、大企業だからこそ、一人では成し遂げられないスケールの大きな挑戦ができます。そんな環境で、自分の可能性に挑戦し、仲間とともに新しい価値を創っていきたいと思う皆さんと、いつか一緒に挑戦できる日を楽しみにしています。