『龍が如く』『ぷよぷよ』など、誰もが一度は聞いたことのあるゲームタイトルを世に送り出しているセガグループ。彼らが生み出すゲームのファンは国内だけではなく、世界中に広がっている。設立60周年を迎えてもなお、多くのユーザーを夢中にさせるプロダクトを生み出しつづける。その秘訣はどこにあるのだろうか。今回irootsでは、現場でゲームづくりに携わっているプログラマ社員にご登壇いただき、”ものづくりにかける想い”をテーマにお話を伺った。
※本コンテンツは、2020年11月に開催された学生向けオンラインイベント「ユーザーを熱狂させつづけるセガに聞く”ものづくりにかける想い”」の内容から再構成されたものです。
設立60年間変わらない「企業理念」。
ーセガグループでは「感動体験を創造し続ける」というミッションを掲げていらっしゃいますよね。セガが目指すものづくりの「これまで」と「これから」について詳しく教えていただけますか?
人事の池谷さん(以下、敬称略):セガグループでは、家庭用ゲーム機やスマートフォン向けアプリゲームの開発、ゲームセンターのアミューズメント機器開発など、様々なエンタテイメントコンテンツ事業を展開しています。
池谷 百合恵(セガグループ 人事):2015年入社後、主に家庭用ゲームのタイトルPR担当として『ソニック』『初音ミク』シリーズを受け持つ。2017年から採用チームに参加。新卒採用だけでなく、中途採用や障がい者採用、転籍を担当。プライベートでは、麻雀大好き。オンラインではなく雀卓を囲むことに幸せを感じる。
池谷:それぞれ独自の専門領域を持ちながらも、グループ全体で大切にしているのが「ものづくり」に対しての向き合い方を示す3つの企業理念です。
1つめは「大切にすべき価値観(Group Value)」として掲げている「創造は生命 × 積極進取」という言葉です。誰も見たことのない製品・サービスを作っていこう、新しいことにチャレンジしていこう、という姿勢を表しています。
ーこの言葉は設立当時から変わらず?
池谷:はい。2020年にセガは設立60周年を迎えたのですが、設立当時から大切にしている言葉です。社員にもDNAのように根付いていて、ベテラン社員だったとしても新しいことを積極的に取り入れようとする貪欲な姿勢を、私自身も仕事をする中で常に感じています。
また、新しいものを創って終わりではなく、その先にいるユーザーに届けて心を動かすことが私たちの役割。それを示すため、2つめに「果たすべき使命(Mission)」として「感動体験を創造し続ける」という言葉を掲げています。
3つめは「我々のありたい姿(Vision)」を表す「Be a Game Changer 〜革新者たれ〜」。常にワクワクやドキドキといった「感動」を届けるゲームを生み出し続け、世の中のライフスタイルまで変えてしまおう、革新者を目指そうという想いが込められています。
ーセガの企業理念が、ユーザーを熱中させるゲームづくりの土台になっているんですね。
池谷:そうですね。土台となっている想いは、これまでもこれからも変わらない、セガの”核”になっている部分だと思います。
ーありがとうございます。プロダクトをつくる開発現場では、どのように”感動体験の創出”に取り組まれているのでしょうか。ゲームプログラマのお二人にお話を聞いていきたいと思います。
実現可能性は度外視して「ワクワクすること」にこだわる。
ゲームプログラマの時枝さん(以下、敬称略):私はセクションマネージャーとしてプログラムセクションを統括しつつ、『龍が如く7 光と闇の行方』のメインプログラマとして実装にも携わっています。
時枝 浩司(株式会社セガ セクションマネージャー):2001年入社後、ゲームキューブ専用ソフトの開発を行う。2004年から『龍が如く』チームに入り、現在に至る。最新作『龍が如く7 光と闇の行方』ではプログラム統括として活躍。
ーまずはゲームプログラマの役割について教えていただけますか?
時枝:一般的にエンジニアやプログラマの仕事というと、すでに細かい仕様が決まっているものをバリバリと実装していくというイメージが強いかもしれませんが、セガのゲームプログラマは少し役割が異なります。
ゲームプランナーから「こういう企画をつくりたい」という大枠の企画を共有されたら、そのゲームをより面白くするためのアイディアを出したり、仕様決めをする部分にもプログラマが積極的に関わって、一緒にゲームを作っていきます。
ー企画や仕様決定の段階に、プログラマも積極的に関わっていくんですね。イメージと違いました。
時枝:ここがセガのゲームプログラマの醍醐味かもしれないですね。時には企画担当さえいないことありますから(笑)。 「なにかミニゲーム作っておいて」と言われて、自分で企画して仕様を詰めて、すごいゲームつくっちゃうプログラマはセガには結構います。
ーすごく個人的な話なのですが、『JUDGE EYES:死神の遺言』が好きでして。作中のサイドストーリーで「ドローンレース」や「VRすごろく」が急に始まったり、印象的なミニゲーム多いですよね。
時枝:ありがとうございます!実は、ドローンレースの開発時には私もたくさんアイディアを出しました。 プログラマとしては、好きなゲームを好きなように作れるチャンスなので、任せてもらえるとテンションが上がりますね。
ーユーザーが夢中になるようなゲームのアイディアを出していくのは、仕事の面白さでもあり、難しさでもあると思います。並木さんはどう感じられていますか?
並木 勇人(株式会社セガ プログラマ):2016年入社後、龍が如くスタジオに配属され、内製ゲームエンジンを使用したプレイステーション4用ソフトの開発を行う。2018年にチームを異動。Nintendo Switch や Xbox One、Steam も含めたUnity によるクロスプラットフォーム開発が中心になる。UI やローカライズなどを中心に担当。担当作品は『龍が如く6 命の詩。』『龍が如く 極2』『JUDGE EYES:死神の遺言』『たべごろ!スーパーモンキーボール」など多岐に渡る。
ゲームプログラマの並木さん(以下、敬称略):私は配属早々、洗礼をうけました(笑)。私の場合は配属2日目で『龍が如く6 命の詩。』のチームに配属されたんですが、ディレクターにいきなり呼び出されて「加速度センサーを使って赤ん坊をあやすゲームをつくってほしいんだ」と突拍子もないオーダーをもらったんです。
ーすごいオーダーですね…!(笑)
並木:プログラマの立場だとシステム面から考えがちなんですが、アイディアを出す段階では、技術的なものをまずは度外視して「どんなゲームだったらユーザーがワクワクするか」「どうしたらユーザーが体験したことないような面白いゲームになるか」、この視点が大事なんですよね。
プロジェクト内で一緒に働くゲームプランナーは、常にユーザー視点でどんどんアイディアを出してきますし、デザイナーやサウンド担当は、独特のセンスで案をたくさん出してきます。プログラマは、それらのアイディアをどう実現していくか、試行錯誤しながら考えます。そうすると結果的に、遊び心のある名作ゲームや仕様が生まれるんです。
実現可能性はまず置いておいて、「何をつくりたいか」の視点でアイディアを出す。そしてそれを具現化させる。これはゲームプログラマとしての難しさでもあり、やりがいでもありますね。
ーなるほど。「どう作るか」というより「何を作るか」を大切にされているんですね。
並木:そうですね。また、ゲーム作りの難しさとして、タイトルによってハードウェアが変わることも挙げられます。
たとえば、私が担当していた『たべごろ!スーパーモンキーボール』というタイトルは、Wiiの『スーパーモンキーボール ウキウキパーティー大集合』の移植版として企画がスタートしました。Wiiの時はWiiリモコンを絶妙な角度に傾けて遊ぶところに難しさがあるんですが、それをPS4やNintendo Switchでスティック操作ができるように移植したところ、操作がとても簡単になってしまって(笑)。
そのタイトルを他のハードウェアでも遊べるようにするだけでなく、ゲーム自体が面白いということが重要なんですよね。なので、「このままじゃ面白くないじゃん。どうやったらこのゲーム面白くなるかな」ということを突き詰めます。そうすると、社内でアイディアがどんどん膨らんでいって、最終的には移植版というよりリメイク版のような形になってしまうこともありますね(笑)。
「感動体験」を具現化する高い技術力の秘訣。
ーアイディアを形にしていくには、技術力も問われますよね?
並木:そうですね。ハードウェアの特徴にあわせて、技術をアップデートすることは大切です。
たとえば『龍が如く6 命の詩。』を担当していた時は、DualShock4に搭載されている加速度センサーやタッチパッドを駆使したミニゲームなどをつくっていました。セガには、グラフィックに強い先輩もいれば、物理エンジンに強い先輩もいるし、得意な専門領域を持っているプログラマがたくさんいます。わからなかったら、社内の得意な人に聞いて解決していますね。
また、「プログラマはプログラミング技術を磨けばよい」というイメージがあるかもしれませんが、ゲーム作りの現場では、プログラマ以外のプロフェッショナルな職種の方がたくさん関わって、チームで動いています。たとえば、モーションキャプチャ技術やUIの作り方など、自分にとって新鮮な技術をインプットし、他職種の仲間とコミュニケーションをとったり、チームでものづくりをするためのスキルも重要だと思います。
ーセガでは、高い技術力を維持しつづけるためにしていることなどあるのでしょうか。
時枝:社内でカンファレンスもありますし、勉強会もやっています。特に、家庭用ゲーム機が発表された後などは、異なるゲームの開発チームであっても情報交換をかなり活発にやっていますね。自分自身で地道な勉強をすることはもちろん必要なのですが、このような情報はインターネット検索しても絶対出てこないですから。
「こういうことに困っているんですが何かアイディアありますか?」と周りの人を巻き込んで解決して、そこで学んだことを自分の技術としてインプットしていく。そういう勉強の仕方が、セガの場合は多いかもしれません。
1人1人の「好き」がゲームづくりの原動力。
ーお二方とも、高い技術力を基盤にゲームづくりに携わられている印象ですが、学生時代からゲームプログラマを目指されてスキルを学ばれていたんですか?
並木:僕の場合は、大学時代からですね。実は高校までは機械系は弱かったんです。ガラケーしか持ったことない高校生で、大学生で初めてパソコンを買ったくらいです(笑)。大学進学の時に、改めて自分自身が何をしたいのか考えて、当時好きだったエンタメ系に携われるような仕事をしたいなと思い、ゲーム学科のある大学を選びました。
最初はデザイナーを目指してたんですが、チームでゲームを作る制作課題でプログラマとしての役割が増えてきて、結果的にゲームプログラマとして就活をしました。
入社当時のスキルは、C++は勉強をしていて標準ライブラリやAPIなどは一通り使えるという状態でした。しかし入社をしてみると、社内専用のライブラリや、外部に公開していないような高度の技術がたくさんあって…。入社してからは、先輩や周りの人に聞きながら勉強して実装の仕方などを身につけていきました。
ー大学で初めてパソコン購入は意外でした!時枝さんはいかがですか?
時枝:私の場合は、並木さんのように大学生時代からゲームプログラマを目指していたわけではなく…(笑)。就活のときは「就職どうしようかなー」と途方にくれていたような学生でした。理系だったんですが、研究分野もゲームとは全く関係ない、タンパク質の構造解析をグラフィカルに表示するというような学問を専攻していました。
その研究内容が難解すぎたこともあって、就職を考えたときに「35年以上働くなら楽しく」という想いが強くありました。自分にとって「楽しさ」とはなんだろうというのを考えていったときに、大好きだったゲームに行き着いて、ゲーム会社を数社受けました。
僕の時代は幼少期にファミコンが流行っていたんですが、ゲーム機を買ってくれない家庭だったので、ゲームセンターにいってゲームをしているような子どもでした。そこでセガの『バーチャファイター』に心奪われて(笑)。今考えると、そのときからセガとは縁があったのかもしれませんね。
ーお二方とも進路を考えるときに、ご自身の「好き」や「楽しい」を大切に意思決定されているとことが共通していますね。
時枝:そうですね。変に取り繕うことなく、嘘偽りない自分自身の気持ちに沿って意思決定することは楽しく働くために重要なことだと思います。
僕が最終的にセガに決めた時も、面接の時に「好きなゲームは?」と聞かれたときに、なにも考えず他社のゲームを答えたんです。そしたら、今の上司でもある当時の面接官が「いまセガの面接なんだけどね(笑)」とツッコミながらも、「でも、それが面白いならそれでいいんだよ」と認めてくださったんです。その懐の深さに「ここだったら楽しく働けそう」と入社を決めました。
並木:僕もそうですね。最終的にゲーム会社は8社から内定貰ったんですが、セガの面接はフレンドリーで「なにか面白いことできそうだぞ」と感じました。クラスの友達で相性が合う人と合わない人って直感で感じるじゃないですか。そういう感覚です。自分が「好き」とか「面白そう」という心の声に素直にしたがって業界や職種、働く会社を選ぶことが、よい仕事をするためには大切なんじゃないかなと思います。
時枝:そうそう、実際セガにも「ゲームが好き」という社員はたくさんいますよ。僕自身も、今セガでゲームづくりをすることが楽しくて仕方がないです。
ー最後に、ゲームプログラマを目指している学生に、一言いただけますか?
時枝:そうですね。学生のうちに「ゲームづくりの楽しさ」に触れておくことをお薦めします。今は、簡単に自分でゲームを作れるツールが揃っていますよね。自分がワクワクするようなゲームを考えて、実装してゲームを作ってみる。この経験をすることで、ものづくりの楽しさや、実際のゲームプログラマーの仕事内容への理解が深まり、ゲームづくりが好きかどうか?ということを改めて考えるきっかけになると思うので、ぜひチャレンジしてみてください。
ー池谷さん、時枝さん、並木さん、本日は貴重なお話をありがとうございました!
セガグループの新卒採用については『セガ グループ 新卒採用サイト』をご覧ください。