今回お話を伺ったあの• •

楠 勇真(くすのき・ゆうま)
ラクスル株式会社/ノバセル事業本部/ノバセルアナリティクス事業部/ノバセルアナリティクスGマネージャー

東京大学経済学部卒。在学中にはスタートアップでエンジニア、webメディア立ち上げのインターンを経験。ラクスルに入社後は、運用型テレビCMサービステレビを展開するノバセル事業本部に新卒一期生として配属。テレビテレビCMのマーケティング戦略企画、メディアバイイング、カスタマーサクセスを経験後、入社二年目で最年少マネージャーに就任。現在に至る。

幼い自分に、「他人と同じことをするな」。ルーツにあるのは、かなり“変わった”父の教え

 
―現在の楠さんのご活躍を紐解くために、まずはルーツについて教えてください。

教育熱心だった両親の影響もあり、幼少期から比較的勉強はよくやっていた記憶があります。
ただ、周りの学力レベルが本当に高かったので、「自分は勉強だけで勝負してはいけない。人と違うことをしなければ」と思っていました。

幼少期はレゴ作りが得意だった

父は公認会計士でベンチャーのIPO支援の仕事をしており、幼い私に対して「他人と同じことをするな」「成果を出せなければ意味がない」と教えてくれました。
父と口げんかになったときも、最終的には「お前は成果を出していないだろ」と言われてしまうんです。
小学生相手に成果と言われても…と当時は苦々しく思っていました(笑)。

他にも、「ガイアの夜明け」や「WBS」などのビジネス番組を一緒に見ていると、「この市場規模はいくらぐらいだと思う?」というクイズをよく出されていました。
それに対して適当に答えると、「全然違うでしょ(笑)。商品単価と顧客数をそれぞれ仮定すると、◯◯億円ぐらいはあるはず」とフェルミ推定のようなことを小学生の僕に試してくるんです。
今思えば、かなり変わった教育方針でしたね。結果として、数字感覚は鍛えられたと思います。

やりたいことがないからこそ、東大を目指そうと思った

 

中学、高校はサッカー部に入って友人にも恵まれ、楽しい学生生活を送っていました。
しかし、高校一年生のときにふと将来のことを考えるようになり、簿記の勉強をしてみたんです。
周りに簿記の勉強をしている友人なんて一人もいませんでしたが、将来社会に出るのであれば、そのときに役立つ知識を今のうちに身につけておいた方がいいだろうと思っていました。
「他人と同じことをするな」という父の教えを、どこかで意識していたのかもしれません。

サッカー部の友人と(真ん中が楠さん)

簿記の資格が取れると、大学受験に向けて勉強を始めました。
中学受験に失敗した経験から、大学受験ではリベンジをしたいと思っていたので、東大合格という目標を掲げて勉強をしていました。
大学に入ってやりたいことは特になかったので、やりたいことがない自分に今できることは、「選択肢を増やす」ことであり、それであれば東大に入った方がいいだろう、とも思っていました。

充実していても、成長していない。アルバイトを辞め、スタートアップに飛び込んだ

 
―大学ではどのように過ごされていましたか。

大学ではサッカーサークルに入ったものの、高校時代のようには熱中できず、打ちこめることを探していました。
ちょうどそのときに塾講師のアルバイトを始めたのですが、これがとても楽しく、同期とも気があったので、大学よりもアルバイトの方にのめりこんでいきました。
自分が教えたことで生徒の成績が上がり、自分が求められているという実感が持てることが単純に嬉しかったんです。

でも、大学二年生になると塾でのアルバイトに疑問を持つようになりました。
確かに塾講師のアルバイトは楽しいですし、やりがいもあるのですが、自分の成長につながっている感覚がなかったんです。
今までの自分の知識や経験を切り売りしているだけで、自分は大学一年生のときから何も成長していないな、と。

そんなとき、大学で同じクラスだった友人がスタートアップでインターンをしていることを知ったんです。
その友人はとても賢く成績もトップクラスだったのですが、インターンを始めてからはほとんど大学に来なくなっていました。
あんなに優秀な彼がそこまで熱中するインターンというものを自分もやってみたいと思い、自分もスタートアップでインターンを始めました。

スタートアップって、こんなにギリギリのところで戦っているんだ

 
―インターンではどのような役割を担っていたのですか。

エンジニアとしてプロダクト開発を行っていました。
もともと文系でエンジニア領域は未経験だったのですが、IT知識もある文系って珍しいかなと思いエンジニアを希望しました。

当時はメンバーが5名ほどの会社だったので、インターンでありながら「新しいSaaS(Software as a Service)のサービス開発やってみて」というなかなかハードなオーダーをされたこともありました。
周りの方に助けてもらいながらもなんとかサービスリリースにできたので、いい経験にはなりましたが、「スタートアップって、こんなにギリギリのところで戦っているんだ」と身をもって感じた出来事でした。

しかし、挑戦する中で自分はエンジニアとしてつきぬけられそうにはないなと感じたので、改めて自分はビジネスサイドから勝負しようと思いました。

「仕組みを変えれば社会はもっと良くなる」。ラクスルに出会って、「これだ!」と思った

 
―就職活動について教えてください。

エンジニアインターンを辞め、大学三年生のときに就職活動を始めてみたものの、あまりしっくりとはきていませんでした。
そんなときに大学の先輩から「自分の会社を手伝ってほしい」と声をかけられ、そちらにすべてのリソースを注ぐために思い切って一年間の休学を決めました。

大学時代にシリコンバレーのFacebook本社を訪れたときの一コマ

先輩の会社でSEOやメディアの立ち上げ、ライター組織の構築、オペレーション整備など、webメディアの運営に関わることを一年間経験したあと、再び就職活動を始め、その中で出会ったのがラクスルでした。

―ラクスルに入社を決めた理由について教えてください。

どのような軸で会社を選ぶか考えたときに、「自分が死んだ後も世の中に残るインフラとなる事業を作りたい」と思いました。

それをもとにいろいろな事業会社を見ている中で、「仕組みを変えれば、世界はもっと良くなる」というビジョンを掲げているラクスルに出会い、「まさにこれだ!」と思いました。

当時ラクスルには印刷事業、物流事業、広告事業という三つの事業がありましたが、この理念を掲げている会社が生み出すサービスであれば、既存の事業はもちろんのこと新しい事業もきっと愛せると思い、ラクスルに入社を決めました。

「できるから任せる」のではなく、「できるっしょ!」というラクスルの文化が、自分を育ててくれた

 
―ラクスルに入社されてからはどのようなことに携わっているのですか。

入社後は、運用型テレビCMサービスを行う「ノバセル」へ配属されました。
ノバセルはラクスルの中でもメンバー数が少なく、スタートアップのような雰囲気でした。
最初はこの少数精鋭の中で自分がやっていけるのかという不安もありましたが、僕が事業本部にとって初めての新卒だったということもあり、とても丁寧に優しくいろいろなことを教えてもらいました。

入社一年目はさまざまな企業に対するテレビCMのマーケティング戦略企画や、テレビ局から広告枠の仕入れ・買い付けを行うメディアバイイング、実際に放映したテレビCMの効果分析、カスタマーサクセスまで、一連の業務をすべて経験させてもらえました。

最初から一つの業務に特化するのではなく、企画から分析までの工程をすべて経験させてもらえたことによって、結果として一つ一つの業務の精度を上げられることができたと感じています。

入社二年目の現在は、テレビCM効果分析サービスのノバセルアナリティクスグループ全体のマネージャーを任せてもらっています。
 「できるようになったから任せる」のではなく、「できるっしょ!」という考えで新しい仕事を任せるというラクスルの文化が、成長できるストレッチ環境を作り出しているのだと思います。

「それはただの伝書鳩」。失敗したくなかった自分への強烈なフィードバック

 
―つらかったこと、苦労したことなどはありますか。

いろいろなことを任せてもらえるぶん、大変なこともたくさんありました。
でも、新卒一期生で周りが上司と先輩ばかりだったので、自分大変さがどの程度のものなのかあまりよくわかっていませんでした。

そんな環境の中で少し受け身になってしまっていた僕に、ある日上司から「ミーティングで発言しないなら、参加しなくていい。自分の意見を持たず、上司の指示に従うだけなら、それはただの伝書鳩。経験値がなくて意見を言えないというのであれば、意見を持つまで考えてください」というフィードバックを受けました。
「失敗したくない、うまくやりたい」と思うがゆえに保守的になってしまっていたことを上司は見破っていたのでしょう。

それ以来、怒られてもいいから自分がすべて巻き取る、ということにこだわって仕事をするようになりました。
とはいえまだまだなので、ほんとに怒られることもありますが(苦笑)。

今ノバセルは“広告代理店”というイメージから、“テレビCMのプラットフォーム”になるための変革期にあります。
ラクスルのビジョンである「仕組みを変えれば、世界はもっと良くなる」を実現し、世界に変革を起こすことにとてもわくわくしています。

“自分にしか見えていない未来”にこそ、チャレンジする価値がある

 

―最後に、これからキャリアを考える人に向けたメッセージをお願いします。

つねに自分がストレッチし続けられる環境を選んだ方がいいと思います。
環境が変わればおのずと引き上げられていきますし、逆に停滞している環境で努力し続けるというのはなかなか難しいと思います。

そして環境を変えるためには、「同世代の人はまだ価値に気づいていないけれど、将来きっと気づくだろうこと」を探し、先取りしてチャレンジすることがおすすめします。
みんなが見えている未来にチャレンジすることは、誰でもできますし、誰かがやります。自分にしか見えていない未来にこそ、チャレンジする価値があるのではないでしょうか。

それに向けてチャレンジしている最中は多少浮くかもしれませんが、きっと数年後、数十年後にみんなもその価値に気づくはず。
周りを気にせず、自分だけが見えている未来を追いかけてください。
 
 
 

インタビュアー:アイルーツ+(プラス)編集部 小笠原寛

1999年上智大学 経済学部 経営学科 卒業。
新卒採用責任者他、様々なHR事業経験を積む中で、本音の大切さを実感。
2012年にirootsに参画し、「学生と企業の本音フィッティング」に従事する。
横浜市生まれ、現在は岐阜県関市に在住し、自然と人との対話に耳を傾ける日々。

文・編集:アイルーツ+(プラス)編集部 西村恵

2015年にエン・ジャパンの子会社である人材系ベンチャーに中途入社。
2018年にエン・ジャパンに転籍後、新卒スカウトサービス「iroots」の企画として、
ミートアップやメディアの運営、記事のライティング・編集に携わる。
趣味は映画鑑賞・美術館めぐり。