「文化を創る、社会を動かす。」
藤原義人さん(27歳)は、株式会社アイタンクジャパンの代表取締役社長。大学生向けの長期実践型インターンシップサービス国内最大級の『キャリアバイト』を運営している。
彼の経歴は、まさに異例尽くしだ。学生起業を経て、2013年にエン・ジャパン株式会社に新卒入社。管理職や複数の新規事業開発を経験し、2016年にグループ会社である株式会社アイタンクジャパンに出向。2017年4月に同社の代表となっている。
これだけのスピードで組織を飛び越えていくバイタリティーはどこから生まれるのか。彼の人生を振り返りながら、その熱源に触れてみたい。
・走るべきレールを見失う ・あれもダメ。これもダメ。それでもトライし続けた。
・学生生活最後に見つけた、自然と熱を持って夢中になれたこと。
・『若いうちは、PDCAよりDLTG』
・『なぜ、自分はそこにいるのか。』腹落ちした場所ならば、全力になれる。
自分が変われば、他人も変わる。
――以下、藤原義人氏
話は小学生の時代から始まります。まずこの写真を見てください。
小学校の頃の僕、目が死んでいます(笑)
怖いもの知らずで目につくもの全てに手を出してしまう、手に負えない小学生でした。傍若無人だったので、相手の気持ちを考えるという感覚が全然なかった。
そんな時、事件が起きます。クラスでドッジボールをしていたら、急に『僕VSクラス全員』のフォーメーションに変わったんです。その状態でずっとボールを当てられ続けた(笑)。
そんなことが度々ありましたが、先生に指摘されるまで自分がいじめられていることに気付かなかった。周りが見えてない証拠です。指摘されたことで初めて『自分ってダメな人間かも』と思うようになりました。
中学生になった僕は、暴力や悪口を辞めて、人にいじられやすいキャラクターになろうと努力しました。おかげで、中学でやっと友達ができました(笑)
「自分が変われば、相手も変わる。」そのことを身を持って経験しましたね。かなり若い時からこれを知れたのは良かった。今の仕事にも活きています。
走るべきレールを見失う
ただ、友達ができて嬉しかった僕は、常に友達を最優先するようになってしまった。いじられるのが喜びになってしまったんです。先生の話を聞かず、ふざけ続けていましたね。結果、内申点が著しく下がりました.
そのせいで、高校受験に失敗してしまいます。 それが悔しくて、高校に入学してからは一念発起して勉強に明け暮れました。3年間、ずっとオール5でした(会場驚) 周囲から「優等生」と認識され、常に褒められて過ごしていました。
ところが大学に入学して、僕はうつ病に近い状態になってしまった。 自分が走るべき道がわからなくなったんです。高校までは『評価』がすごく目に見えやすくて、成績が良ければ認められた。
でも、大学はそうじゃない。
不安定な状態が数か月続いて、さすがにこのままではいけないと思い、精神科医に行きました。先生にきちんと診てもらって、適切な薬を出してもらおうと。
その時、30歳くらいの若い先生にこんなことを言われました。
「君は今、これから始まる社会のことを楽しいと思ってないやろ。」
「社会人になること、大人になることに期待も希望もないやろ。」
確かにそうだったんです。社会人になったら、嫌な仕事をして過ごさなければいけないと思っていました。
「そんなことはない。社会に出れば出るだけおもろい、年を重ねれば重ねるだけ人生が豊かになる。だからまずは、期待してみろ。」そう言われました。
ただ、もらった薬を自宅で改めて見ていたら「これを飲んだら、もう引き返せない」と思えてきて。
その感覚がどんどん強くなり、恐怖心のあまり、もらった薬をその場で捨ててしまいました。
その時に、前に進まないといけないと本気で思えたんです。
あれもダメ。これもダメ。それでもトライし続けた。
それからは、夢中になれるものを探していろいろトライしていきます。
まず、自転車で日本一周の旅に出ました。「自分で何かやった」って感覚が欲しかった。
周りがまだしていないことで、尚且つ、すごいねって言ってもらえるようなもの。それで、自転車日本一周に。帰ってきたら、かなりの細マッチョになってましたよ(笑)
でも、全く自信は付いていなかった。
結局は「自分って何かできるのかもって思えるきっかけ」が欲しかったんです。
次は、頭を使って挑戦しようと思って「資格」を取得しました。株式・証券・不動産など、6ヶ月くらいで複数の資格を取りました。これがまた、全然ダメ。守ってもらおう、武器にしたいという動機で取得した資格では、何の自信にもなりませんでした。
三つ目は、スポーツです。ボクサーってカッコイイよな、って。半年間くらいプロボクサーのような生活を送りました。週4でジムに通い、腹筋背筋100回ずつして、縄跳び、ランニング。プロボクサーと戦えるくらいの実力になりましたが、それで生活をしていけるイメージは湧きませんでした。
並行して、国家公務員2種を受けました。小さい時に警察官になりたかったことを思い出して。でも、勉強が面白くなかった。OB訪問をしても、そこにいる人の雰囲気も組織の風土も自分に合うと思えなかった。 時間は有限なので、やりたいことは全部やり尽くそうと。
学生生活最後に見つけた、自然と熱を持って夢中になれたこと。
最後が、ビジネスです。学生起業をしたいと思いました。ただ、起業はやり方が分からない。
そこで、「大阪 起業家」とネットで調べて、一番上に出てきた『大阪起業家サークル』というところに「起業のやり方教えてください。」と連絡をしました。
すると、代表者の方が「50万円出資するから、それを元手に事業を考えろ」と。信じられないチャンスをもらいました。 その時に注目したのが、人材ビジネスだったんです。元手はそこまで要らないし、学生としての視点も生かす事ができると思い、賭けてみました。
当時は学生起業がまだ珍しかったようで、幸運なことに、新聞の一面に取り上げてもらうこともありました。
そしてこの時に初めて、僕が自然と熱を持って頑張れたんです。ビジネスは、特別に頑張ろうと思わなくても頑張れた。自分が進みたい方向性が分かってきた瞬間です。
これまでの気づきをもとに、まとめに入っていきたいと思います。
『若いうちは、PDCAよりDLTG』
PDCAは、皆さん聞いたことがありますよね。計画を立てて実行し、それを振り返り、改善する。課題解決に取り組むための最もポピュラーな考え方です。
ですが、起業までの経験から、若いうちはPDCAよりも『DLTG』が大事だと思うようになりました。DLTGとは『Do Look Think Grow』のことで、まずやってみて、振り返り、考えて、成長するというサイクルです。
PDCAよりも簡単で、取り組みやすいのが特徴です。前もって入念に計画を立てなくても、自分の行動を振り返り、考えることで成長することが出来ます。
いろいろ考え過ぎて、一歩踏み出すことに躊躇してしまうのであれば、失敗を恐れず思い切ってチャレンジした方が、よっぽど早く成長できることに気が付きました。
『なぜ、自分はそこにいるのか。』腹落ちした場所ならば、全力になれる。
一度、企業に属し、ビジネスマインドやスキルを高める必要があると考え、学生時代に注力していたビジネスを辞め、就職を決意しました。
就職先の企業を選ぶ軸として、自ら立てた「入社後の3カ年計画」を実現する可能性が高い企業を探しました。
1年目:個人として、最も成果を出すプレーヤーになる。
2年目:チームを統括する責任者となり、最も成果を出すプレイヤーを育てる。
3年目:新しい価値を生み出す、新規事業に挑戦する。
将来、もう一度起業したいと思った時、どれも必要となる力です。それを早期に身に付けようと考えました。
自らビジネスをはじめた時、オンラインであれオフラインであれ、まず最初に商品を販売・営業するのは、代表である自分自身です。自ら率先して営業し、成果を出すことで、社員の見本になる必要があると思いました。
その為には、営業として高い成果を出すプレイヤーの経験が必要だと。
次は、自分が率いるメンバーが自分自身と同様に成果が出せるよう育成し、組織を強くしていく。
最後に、より価値の新しい事業を次々に生み出すことが出来れば、企業は成長していく。このような順番で考えました。
振り返るとこの3ヶ年計画は、ほぼ全て達成することができました。これが出来た1番の理由は『自分の居場所に腹落ちしていた』からです。「なぜこの会社にいるのか」「なぜこの会社で努力するのか」それらの問いに対して、自分の中で明確な答えがありました。
何に対して自分は頑張れるのか。その理由をきちんと追求して理解することが、成長の近道だと思います。
就活をしていると、その会社に入りたいがあまり「入社させてください」というスタンスになってしまう学生がとても多い。でも、本当に大事なのは、会社に入った後です。入社をゴールにせず、その会社で働く理由に納得できていれば、自然と仕事に熱中できる。
そうなると、毎日働くのがすごく楽しい。うそじゃないですよ(笑)
僕は、社会人になってからの方が人生が面白いです。皆さんも、社会人になることに楽しみに、就職活動に取り組んでほしいです。
以上で、僕の話は終わりです。ありがとうございました。
※藤原 義人様と学生達
「編集後記」
「今回のイベントはレポート作らなくてもいいんじゃない、、?」 自分のルーツについて余すことなく話し、僕たちに熱いメッセージを送ってくれた藤原さんは意外にも、恥ずかしそうな様子でイベント終了後そう話してくれました。
『自分がなぜ、そこにいるのか?』 ど直球のこの質問に、自分の言葉で答えられる人はどれくらいいるのでしょうか。近年では大学生に対して、長期インターンシップ、NPO、海外留学、学生起業など、さまざまな機会に触れることができるようになりました。選択肢はここ数年で格段に増加しているように思います。機会の提供は、それ自体大きな価値であることは間違いありません。しかしながら、本当に重要なことは「その機会を生かして、自分が何を獲得したのか」です。
藤原さんの話を聞いていると、様々なアクションを取りながらも常に『自分がなぜ、そこにいるのか?』自問しているようでした。だからこそ、自分との葛藤に苦しむこともあったのでしょう。自分に疑問を掲げることは、痛みを伴うことなのかもしれません。
でも、だからこそ、腹落ちしている居場所でのスピードは半端じゃない。入社後に成し遂げたいものが明確だからこそ、会社で働く理由が腹落ちしている、その上で新しい機会を獲得していく。藤原さんの”成長の秘訣”には、そんな痛みと戦ったが故の腹落ちがあるのだと、僕は思いました。
編集/写真撮影 iroots intern kai
―取材協力―
◎講演者:藤原 義人氏
1990年大阪府高槻市で生まれる。現在27歳。 2011年、関西学院大学在学中、人材領域で学生起業。2年間事業運営の後、2013年人材系大手エン・ジャパン株式会社に入社。 2014年、最年少で管理職に昇格。 2015年、同じく最年少でHR関連の新規事業開発の責任者として、複数の新規事業の事業開発を行う。その後、株式会社アイタンクジャパンにジョイン。 2016年4月、同社取締役事業本部長に就任。 2017年4月、代表取締役社長就任。
◎講演イベント:iroots shibuya
iroots shibuyaは、irootsが主催する学生と社会人の交流会。それぞれが自分のルーツを語りあうことで、未来をより良くするためのきっかけにして欲しい。という想いで毎週火曜日@渋谷で開催されている。ゲスト講演30分+懇親会60分の2部構成にて実施中。