グローバルな環境での成長を求める学生の中で、短期的な留学だけでなく“海外大学への進学”という選択肢も増えつつあります。
コロナ禍によって国を跨いだ移動の制限が続くものの、就活がオンライン化したことによって海外大生と日本企業の距離はむしろ縮まったと言えます。“海外大学への進学”という大きな決断をした学生は、どんな理由でその選択肢を選び、何を学び、どこを目指すのか。

今回は2021年秋に香港大学を卒業し、2022年春に日本のスポーツメーカーへ就職予定の中野裕正さんにお話を伺いました。

気になる海外での大学生活や就職事情についても本音・ありのままでお話いただいているので、今まさに海外でチャレンジしている人や、これからチャレンジを考えている人はぜひご覧ください。

インターナショナルスクールを卒業後、幼い頃から馴染みのあった香港へ進学

 
―最初に自己紹介をお願いします。
 
中野裕正です。小学校3年生までは日本で育ち、その後中国の広州で5年間暮らしていました。高校生のときに日本に帰国しインターナショナルスクールを卒業後、香港大学に入学しました。香港での大学生活を経て、2022年春からは日本のスポーツメーカーで就職予定です。
 
 
高校卒業後、幼少期から慣れ親しんでいた香港へ
 
―日本の大学から留学するという選択肢もある中で、正規留学(海外大学への進学)を選んだ理由について教えてください。
 
インターナショナルスクールを卒業後、年齢制限の関係で日本の大学にはすぐに入学できなかったことがきっかけでした。数ヶ月待てば入学することも可能でしたが、時間がもったいないと思い海外大学への進学を決めました。

幼い頃から日本と中国を行き来する生活をしていたのでそもそも中国には馴染みがありましたし、自分が話せる日本語・中国語・広東語・英語という4種類の言語を活かせる環境を求めて香港大学を選びました。
香港は中国と西洋文化が融合している場所でもあり、国際的な人材がたくさん集まっているというところも魅力の一つでした。
 

夜11時まで部活、朝まで勉強、少し寝ては大学に行く日々

 
 
―香港での学生生活はいかがでしたか。
 
もともと内向的な性格だったこともあり、1年生の頃はどう友達を作ればいいのかわからなくて苦労しました。そのため1学期は特定の友人とばかり遊んでいましたが、せっかく海外の大学に来たのだから…と奮起し、2学期からは積極的に寮のイベントに参加して徐々に交友関係を広げていきました。

そこで仲良くなった友人たちが勉強をすごく頑張っていたので、それにひっぱられて自分も勉強を頑張るようになりました。
だいたいお昼頃から授業がはじまり、そこから夕方まで食事の時間以外はほぼ休みなく授業を受け、寮に戻ってからは夜11時まで寮の部活に参加、それが終わると朝まで勉強して少し寝てまた大学に行く…というスケジュールで、正直かなりハードな生活でした(苦笑)。

私が入っていた寮は寮での活動に貢献しない人は出ていかないといけないという決まりがあったので、どれだけ勉強が忙しくても部活には参加しなければいけなかったんです。

周りの友人は大学1年生のときから「就活の履歴書をどれだけ充実させられるか」ということを意識して勉強や部活、インターンシップに参加していたので、私自身も焦りを感じながら学生生活を送っていました。
 

高校時代から得意だったスポーツを通じて友人もできた
 

香港に来てはじめて、日本の文化が世界中の人に愛されていることを知った

 
 
―就活はいつごろからはじめましたか。
 
大学3年生のはじめごろから就活を開始したのですが、コロナの影響で大学2年生の後半から大学3年生の1学期まではずっと日本に滞在していました。

当時は日本と香港のどちらで就職をするかはまだ決めていませんでしたが、大学を卒業してからでも就活ができる香港に対し、日本は就活のスケジュールが決まっていたので日本企業の就活を優先して進めていました。

日本企業の就活を行うにあたって一番気にしていたのは、カルチャーマッチの部分でした。
最初のころは内向的だった自分も大学生活を通じて自分の意見をはっきりと主張するようになっていたので、調和を重んじる日本では自分が浮いてしまうのではないかと不安を感じていました。
それを払拭するために日本企業が開催していた1ヶ月の業務体験インターンに参加して、日本企業のカルチャーについて知るところから就活をスタートしました。
 
 
―最終的に日本で就職することを決めた理由について教えてください。
 
 
日本の文化を世界中に発信することを仕事にしたいと思ったからです。
あまり知られていないかもしれませんが、香港では日本の文化や商品が多くの人に愛されています。香港にある日本の回転寿司チェーン店や雑貨店は開店前から行列ができるほどの人気で、コロナ禍で自由に行き来ができなくなったことでより一層その熱が高まっています。

周りには私よりも日本のゲームやアニメに詳しい人もいて、私が寮でゲームをしていると「私も混ぜて!」とどんどん人が集まってくるんです。中には全然面識がない人もいたりして(笑)。香港に来てみてはじめて日本文化の魅力に気づきましたし、周りとの関係性を作る上でとても助けられました。

だから今度はその魅力を自分が世界中に発信していければと思い、日本での就職を決めました。
 

オンライン面接でも“自分らしく”いられた日本企業に就職を決めた

 
 
―コロナ禍において、香港にいながらどのように就活をしていましたか。
 
周りに日本人の留学生がいなかったので、日本の就活についてネットで情報収集をしたり香港にある日本人勉強会に行って先輩から話を聞いたりしていました。
日本人勉強会の人が教えてくれたことがきっかけでirootsの存在を知り、登録後はいくつかの企業からスカウトをいただいたり海外大生限定のオンラインイベントに参加したりしました。

その中で日本の文化を世界中に発信できるフィールドがあり、かつ若手であっても意見を言いやすいフラットな組織という軸で企業を探し、全部で10社程度の企業にエントリーしました。大学3年生の途中からは香港に戻っていたので、選考にはすべてオンラインで参加しました。選考中に対面で参加してほしいと言われることはなかったので、そのへんはありがたかったです。

最終的に日本のスポーツメーカーに内定をいただき、就活を終えました。
 
 
―その企業に入社を決めた理由について教えてください。
 
 
選考中に出会った社員の皆さんがとてもフラットで、オンライン面接でも“自分らしく”いられたことが決め手でした。他の企業の選考では終始かしこまってしまいがちでしたが、この企業は最終面接もまったく緊張せず、最後まで自分らしくいることができました。

調和を重んじる日本企業のカルチャーにフィットできるのかということにずっと不安を感じていましたが、ここであれば入社後も自分らしく活躍できるだろうと思い、入社を決めました。

またこの企業は海外での売り上げが全体の7割を超えているので、自分の語学力を生かしながらグローバルに働けるのではないかと期待しています。
 

コロナ禍であっても、人と繋がることを諦めないでほしい

 
勇気を持って課外活動にチャレンジしたことで、世界が広がったという
 
―最後に、今まさに海外でチャレンジしている学生へメッセージをお願いします。
 
コロナ禍で思うように活動できない日々が続いていると思いますが、その中でも何かしらの目的意識を持って学生生活を過ごすことをおすすめします。

私自身、コロナ禍で日本に帰国した際の1年間を無為に過ごしてしまったという後悔をきっかけに、大学4年生からは香港の企業でインターンとして働き、大学生活最後の1年間で大きく成長することができました。何かをはじめるのに遅いということはありません。

コロナ禍である今だからこそ、時間をかけずに世界中の人たちとつながれるネットを大いに活用して大学同士の交流会やイベントに参加してみてください。留学に行きたかったけど行けなかったという人も、オンラインで得られる出会いや学びがあるかもしれません。

思いも寄らない出会いから、将来につながる道がきっと見えてくるはずです。
 
 
 
 

インタビュアー:アイルーツ+(プラス)編集部 周恬(シュウ テン)

2010年中国で高校卒業後に来日。上智大学卒業後大手小売会社に新卒入社。
社会人3年目にエン・ジャパンに転職。猫とうさぎの三人暮らし。趣味は漫画と映画。最近はピラティスに夢中。
 

文・編集:アイルーツ+(プラス)編集部 西村恵

2015年にエン・ジャパンの子会社である人材系ベンチャーに中途入社。
2018年にエン・ジャパンに転籍後、新卒スカウトサービス「iroots」の企画として、
ミートアップやメディアの運営、記事のライティング・編集に携わる。
趣味は映画鑑賞・美術館めぐり。