今回お話を伺ったあの• •

加藤 康平(かとう・こうへい)
藤沢市役所/スポーツ推進課

千葉大学を卒業後、地元の藤沢市役所に入庁。職員課を経て、東京オリンピック・パラリンピック開催準備室付として神奈川県庁のセーリング課に配属。江の島で開催されたセーリング競技のプロモーションを担当。昨年秋からはオリンピックでの経験を生かし、藤沢市役所のスポーツ推進課でスポーツ大会の企画・運営を担当。

サッカーや水泳、ハンドボール…スポーツやお祭りが好きだった少年時代

 
 
―現在の加藤さんのご活躍を紐解くために、まずはルーツについて教えてください。
 
 
地元が藤沢市なので、小学生のころはよく自転車で海に遊びに行ってましたね。幼い頃から体を動かすことが好きだったので、サッカーや水泳、ハンドボールなど色々なスポーツにチャレンジしていました。

その傍らで町内会のお囃子会にも所属しており、太鼓の演奏者として毎年地元のお祭りに参加していました。太鼓を叩くのが楽しかったというのもありますが、周りの人たちがお祭りで楽しんでいる様子を見るのが当時から好きだったんだと思います。

大人になってからもお囃子会の子どもたちに太鼓を指導していた

中学・高校では卓球部に入って好きなスポーツを続けながらも、課外活動や勉強にもしっかり取り組み、たくさんの仲間と交友を深めていました。高校に進学してはじめて藤沢を離れたのですが、自分とは違う環境や価値観で育ってきた人たちとの出会いは新鮮で楽しかったです。

大学を選ぶ際にも、もっと色々な人と関わりたいという気持ちから総合大学である千葉大学を選びました。藤沢市から千葉大学へは片道2時間ほどかかるので通学には苦労しましたが、それでも新しい場所で色々な価値観や経験に触れたいという想いが強くありました。
 

特別なことができなくても、ただ話をしに行くだけで変わることがある

 
 
―大学生活について教えてください。
 
 
自分が学んだ知識が身近な生活に役立つというところに魅力を感じ、大学では法学科を専攻していました。

そして大学でも変わらず体を動かすことが好きだったので、フットサルサークルと掛け持ちで総合スポーツサークルという、色んなスポーツをするサークルにも所属していました。一つのスポーツにこだわらず、さまざまな競技にチャレンジしてみたいというのは幼い頃から変わらない部分だと思います。

大学生活でもっとも印象的だった出来事は、東日本大震災の1年後にボランティアで宮城県の石巻市を訪れたことです。

ボランティアの仲間たちと

ボランティアといっても特別なことをするわけではなく、仮設住宅を訪ねてそこで暮らす方とお話をしたり、集会所での催し物にお誘いしたりするというものでした。仮設住宅で暮らす方の中には震災での経験を話してくださる方もいましたし、私たちの何気ない日常の話をただ聞いてくださる方もいました。

この経験を通じて、それまではどこか他人事だった震災という出来事を身近に感じるようになり、それ以来震災や復興に関するニュースに対する受け止め方も大きく変わりました。

また、色んな人と話をすることでそれまで自分の中になかった価値観や選択肢を知ることができたので、身近な人が困っているときにも別の角度から一緒に考えられるようになったと思います。

地元の人たちと交流した宮城県石巻市の風景
 

民間企業への就活から一転、フィーリングマッチを感じた藤沢市役所へ入庁

 
 
―就職活動について教えてください。
 
 
就活をはじめたときには市役所という選択肢は考えておらず、民間企業への就職を目指していました。その中でも自分が学んだ知識が身近な生活に役立つという点から損害保険会社に興味を持ち、インターンにも参加しました。

インターンを通じて生活の中のさまざまなリスクに対して最適な保険を提案する楽しさを知り、いくつかの損害保険会社を受けてみたものの、残念ながら思うような結果は得られませんでした。

その状況に焦りを感じはじめていたころ、偶然目にした藤沢市の職員募集に興味を持ちました。

それまで市役所という選択肢は考えていなかったものの、石巻市で地域に住む人たちと交流することの楽しさを知った経験から、自治体という選択肢もありなのではないかと感じました。

また、自分の知識を活かして人々の生活を支えるという点も自分の志向性に合っていると感じましたし、加えて藤沢市は民間企業に近い形で選考を行っていたので、私のように市役所を見ていなかった人間でもチャレンジできるかもと思い、応募しました。
 
 
―選考の中で印象に残っていることはありますか。
 
 
それまでの面接とは違い、自然体で選考にのぞめたことが印象的でした。思うような結果を得られてなかったとはいえ、他社に内定をもらっていたので、変に気構えていなかったのが良かったのかもしれません。

また、面接官の方もフラットに話をしてくださったので、面接を受けに行くというよりはおしゃべりをしに行っているような感覚でした。その結果内定をいただくことができたので、お互いにフィーリングが合っていたのかもしれません。
 

スポーツの経験を生かし、オリンピックのプロモーション担当に

 
 
―入庁後はどのような業務に携わられているのですか。
 
 
現在入庁して8年目になりますが、最初の4年間は職員課で職員の給与計算を担当していました。

その後、東京オリンピック・パラリンピック開催準備室付けという扱いで神奈川県庁のセーリング課に配属されました。スポーツをやっていた経験から、オリンピック・パラリンピックに関わりたいという希望を出していたので、それが叶い嬉しかったです。

セーリング課では、江の島で開催されるセーリング競技の準備や調整、プロモーションを担当していました。組織委員会がサポートしてくれるとはいえ、はじめてのことだらけなので戸惑うこともたくさんありました。それでも自分が設置準備から手配までを担当したモニュメントが完成したときは、やはり嬉しかったですね。

セーリング課のメンバーと

昨年にオリンピックが終わってからは藤沢市役所に戻り、現在はスポーツ推進課というところに所属しています。

今年の秋に神奈川県で「ねんりんピック」という高齢者を対象としたスポーツ大会が開かれるので、オリンピックでの経験を生かしながら今はその準備に励んでいます。オリンピックのときに比べて人的リソースが限られているので大変なことも多いですが、0から企画して作り上げていくという面では大きなやりがいがあります。

これらのイベントを通じて、幼い頃にお囃子会に入っていたように、やはり自分はお祭りやイベントに参加した人たちに喜んでもらえることが好きなんだと改めて実感しました。自治体ではさまざまなイベントが開催されているので、これからもそういった仕事に関わっていけると嬉しいですね。
 

“軸”を無理に見つける必要はない。思いもよらぬ出会いが待っているから

 
 
―最後に、これからのキャリアを考える人に向けたメッセージをお願いします。
 
 
自分の経験から学んだことで言うと、就活のときに無理にやりたいことを見つける必要はないと思います。

私も民間企業への就活をしつつ市役所を受けていたので、今思えばしっかりとした軸は持てていなかったかもしれません。でもそのまま民間企業に入っていればオリンピックに関わることもなかったでしょうから、結果的には視野を広げてみて良かったと思います。

もし今やりたいことが見つからないという人は、色んな人に会って話を聞いてみてください。そこから思いもよらぬ出会いが見つかるかもしれません。
 
 
 

インタビュアー:アイルーツ+(プラス)編集部 小笠原寛

1999年上智大学 経済学部 経営学科 卒業。
新卒採用責任者他、様々なHR事業経験を積む中で、本音の大切さを実感。
2012年にirootsに参画し、「学生と企業の本音フィッティング」に従事する。
横浜市生まれ、現在は岐阜県関市に在住し、自然と人との対話に耳を傾ける日々。
 

文・編集:アイルーツ+(プラス)編集部 西村恵

2015年にエン・ジャパンの子会社である人材系ベンチャーに中途入社。
2018年にエン・ジャパンに転籍後、新卒スカウトサービス「iroots」の企画として、
ミートアップやメディアの運営、記事のライティング・編集に携わる。
趣味は映画鑑賞・美術館めぐり。