今回お話を伺ったあの• •

浜岡 宏樹(はまおか・ひろき)
株式会社LIFULL(ライフル)/新規事業室uniiグループ グループ長/事業責任者

筑波大学卒。2014年4月に株式会社ネクスト(現:株式会社LIFULL)に入社し、不動産・住宅情報サイト「LIFULL HOME’S」の営業を4年間経験。社長補佐業務を経験した後に、LIFULLの社内新規事業提案制度「SWITCH」にて入賞。「ワクワクする挑戦で溢れる社会を創る」をビジョンに掲げて、2020年9月よりオンラインインタビューサービス『unii(ユニー)リサーチ』をリリースし、クライアント企業の新規事業開発の支援に取り組む。

幼い頃からスポーツが苦手。でも、下手なりに成長を実感できた

 
 
―現在の浜岡さんのご活躍を紐解くために、まずはルーツについて教えてください。
 
 
両親が教育熱心なタイプだったので、小学校のときから塾に通いつつ水泳やサッカーを習っていました。ただ私は本当に運動神経が悪かったので、全然スポーツが得意なわけではなかったです(苦笑)。

中高一貫の学校に入ってからもサッカーは続けていたのですが、背が低く運動が苦手だったこともあり、自分に自信が持てない消極的なタイプでした。

しかし、高校2年生のときに元Jリーガーの方がサッカー部の顧問になったことが一つの転機になりました。決して強いチームではなかったにも関わらず、その先生が激戦区の千葉県でベスト8に入るという高い目標を掲げたことによって、それまではどちらかといえば惰性的にやっていたところからいっきに競技志向の強い部活に変わっていったんです。

それに伴って練習もハードになりましたが、下手なりに成長している実感があって高校2年生からはやっと部活が面白いと思えるようになりました。

勉強に関しては中の上ぐらいの成績だったのですが、予備校に世界史をすごく面白くストーリー仕立てで教えてくれる先生がいたので、世界史の成績だけはつねにトップでした。サッカーもそうですが、自分が成長しているという実感が持てるものにはのめり込むタイプなんだと思います。
 

E判定からの逆転合格。しかし入学後すぐに「違う」と悟った

 
 
将来については漠然と「人に影響を与えたい」「ハッピーにしたい」という想いを持っていたので、その基本となる“人の心”について学ぶために筑波大学の心理学部に入学しました。

センター試験の時点でE判定だったので合格は絶対に無理だと思っていたのですが、選択科目の世界史に助けられて奇跡的に合格することができました(笑)。
 
 
―大学生活について教えてください。
 
 
念願の心理学部に入れたのはよかったのですが、入学して1〜2週間ほどで「自分は心理学じゃなかったな」ということに気づいてしまい…。

自分がイメージしていた以上にアカデミックな領域だったので、周りの同級生のように熱心に勉強するモチベーションが湧かず、結局早々に授業には行かなくなってしまいました。

勉強に熱心になれなかった代わりに、大学ではトライアスロン部の活動に力を注いでいました。

トライアスロンは練習の量がわかりやすく結果に表れる競技なので、サッカー部時代は運動センスがなく万年ベンチだった私も、2年生のころには全国大会にまで出られるようになりました。
 

学生生活最後のトライアスロン大会にて
 
その後は主将にも抜擢され、やっと自分に自信が持てるようになっていました。主将になってからはマネジメントの勉強として組織やリーダーシップに関する本をたくさん読むようになり、そこから得た知識を実践に活かすというPDCAを回しているうちに「ビジネスもこんな感じなんだろうか?」と働くことに対する興味も芽生えていきました。
 

利他主義、成長環境、人。3つの軸にぴったり当てはまったのがLIFULLだった

 
 
トライアスロン部を引退後は一年間休学し、ニュージーランドに半年間留学しました。留学のきっかけは、3.11のときに参加した東北のボランティアでさまざまな価値観を持つ仲間に出会い、自分ももっと広い世界を見てみたいと思ったことでした。

もともと英語がそこまで得意だったわけではなかったのですが、ニュージーランドでは一言も日本語を話さないということをマイルールにしていたので、多様な国籍の友人と仲良くなる中で徐々に語学力を身につけていくことができましたし、価値観も広がりました。
 

ニュージーランドの語学学校でブラジル人の友達と
 
それまでの大学生活はトライアスロン一筋だったので、勉強に遊びにと充実した日々を過ごすことができ、人生の中でもっとも楽しい思い出になりました。
 
 
―就職活動について教えてください。
 
 
ニュージーランドから帰国後、2014年卒として就活をはじめました。

就活の軸は3つあり、1つ目はビジョンへの共感。2つ目は早いうちから責任を持たせてもらえる環境、そして3つ目は一緒に働く人が魅力的であるということでした。周りの人と幸せに働くことができれば成長できるかどうかは自分次第だと思っていたので、それらを軸に企業を探していましたね。

「誰かをハッピーにしたい」という想いは変わらずに持っていたので、最初はホテル業界などを見ていたのですが、途中からは目の前の一人を笑顔にするよりもみんなが幸せになれる仕組みを作りたいという想いが強くなり、方向性を変えました。

そのときに偶然「ネクスト(現:LIFULL)という会社は真剣に利他主義を掲げているよ」と知り合いから教えてもらい、選考を受けることにしました。

ただ、ネクストの選考は面接というよりも面談のような形で進んでいったので、最終面接に案内されるまでは自分が選考に進んでいるのかどうかもよくわからず…(苦笑)。

しかしそれらの選考の中で先ほどあげた3つの軸にネクストはぴったり当てはまっていたので、最終的には迷いなく入社を決めました。
 

4度のピボットを経験し、ついに新規事業立ち上げへ

 
 
入社後はどのような業務に携わっていますか。
 
 
1年目から4年目までは東京と大阪で不動産会社を顧客とした営業をおこなっていました。東京から大阪へ異動した際にはビジネスに対する考え方の違いになかなか馴染むことができず、泣きながら東京時代の先輩に電話したこともありましたが…(苦笑)。

そんなことがありつつもお客様や周りの人たちに育てていただき、4年目を迎えるころには営業についてはある程度自信を持てるようになりました。そのため5年目からは新しいことに挑戦したいと考えるようになり、それを上司に相談したところ「社長の鞄持ち」に抜擢していただいたんです。

「社長の鞄持ち」といっても実際に鞄を持つわけではなく、(社長の)井上さんの商談や会議に同席し、そこで生まれたタスクやプロジェクトが円滑に進むようにサポートしていく仕事を主に担当していました。

鞄持ちをしてみてわかったのは、井上さんをはじめとした経営陣は主語を「自分たち」ではなく「社会」にして事業に対する議論をおこなっているということ。現場にいると経営陣の中でどのような会話がされているか分かりにくい部分もありますが、本当に裏表のない組織なんだと実感することができましたね。

入社6年目には「SWITCH」という社内の新規事業立案制度に応募した自分の案が採択され、その事業化に向けた取り組みが動きはじめました。

2021年には無事事業化承認が降り、次は子会社設立という目標に向けて日々経営の勉強をしています。ただ、事業案が採択されてからここに至るまでの道のりは本当に大変で、フィジビリティスタディ(事業にまつわる仮説の検証)の途中で4回もビジネスモデルを変更しました。

その過程を経て生まれた「uniiリサーチ」というオンラインインタビューのプラットフォーム事業は、現在利用者数が伸び、順調に成長を続けています。

この2年間は事業だけに向き合い続けてきましたが、これからは子会社化に向けて組織づくりにも向き合っていかなればと思っています。
 

自身で起案した新規事業オンラインインタビュープラットフォーム「uniiリサーチ」
 

未来のヒントは過去にある。これまでの自分を信じ、悔いのない道を選択して

 
 
―今後浜岡さんはどのようなキャリアを歩みたいとお考えですか。
 
 
「uniiリサーチ」はオンラインインタビューのマッチングを行うサービスなので、この事業を通じて新規事業立ち上げの成功率を上げ、同じように事業を作っている人たちを応援していきたいです。

個人としてのキャリアでいうと、この先5年間では経営者として必要な素養を身につけていきたいです。井上さんの鞄持ちをやっていた時期に間近で経営者としてのあり方を勉強させてもらったので、少しでも近づけるように事業と組織を育てながら経営者としての視座を身につけていきたいですね。
 
 
―最後に、これからキャリアを考える人に向けたメッセージをお願いします。
 
 
未来のヒントは過去にあると思うので、今までの人生を振り返りながら自分なりの軸を探してみてほしいです。就活がうまくいくのだろうかという不安もあると思いますが、今まで培った価値観に沿って選んだ場所であればきっと後悔はないと思います。

逆に今の時点でやりたいことが明確に決まっているという人は、就職ではなく起業も一つの選択肢になってくるかもしれません。もちろん事業の立ち上げは簡単なものではありませんが、それを乗り越える覚悟があるなら、是非挑戦してみるべきだと思います。

どちらの道を選ぶにせよ、就活の結果をゴールにするのではなく、その先に続く長い仕事人生において自分がいきいきと働き、成長したいと思える場所を探してください。
 
 
 

インタビュアー:アイルーツ+(プラス)編集部 小笠原寛

1999年上智大学 経済学部 経営学科 卒業。
新卒採用責任者他、様々なHR事業経験を積む中で、本音の大切さを実感。
2012年にirootsに参画し、「学生と企業の本音フィッティング」に従事する。
横浜市生まれ、現在は岐阜県関市に在住し、自然と人との対話に耳を傾ける日々。
 

文・編集:アイルーツ+(プラス)編集部 西村恵

2015年にエン・ジャパンの子会社である人材系ベンチャーに中途入社。
2018年にエン・ジャパンに転籍後、新卒スカウトサービス「iroots」の企画として、
ミートアップやメディアの運営、記事のライティング・編集に携わる。
その傍らで現在は芸大に通い、芸術史やデザインについても学び中。