今回お話を伺ったあの• •

細矢響(ほそや・ひびき)
株式会社カインズ/八王子長房店/売場担当

立教大学卒。2019年に新卒でカインズに入社。店舗でDIYやキャンプ用品の売場を2年間担当後、新店舗のオープンスタッフを経験。現在はマネジャーの代行として売場全体の統括をおこなう。

成績優秀で個性的な友人に囲まれ、コンプレックスでいっぱいだった学生時代

 
 
―現在の細矢さんのご活躍を紐解くために、まずはルーツについて教えてください。
 
 
友人と外で活発に動き回る一方で、人の心の動きに対して敏感なところもある子どもでした。私の“響”という名前には「人の心の震えを感じ取れる人になってほしい」という想いが込められているそうなのですが、たしかに自分の性格をよく表している名前だと思います。

幼い頃から周りのことを気遣うことが多かったという

教育熱心な両親の影響で中高一貫の進学校に入ったのですが、頭が良く、個性豊かな友人の中で自分の平凡さについて悩む日々が続きました。でも、どんな自分でも受け入れてくれる先生の存在や、私の少し天然なところを面白がってくれる友人のおかげで、少しずつ「自分らしくいていいんだ」と思えるようになっていきました。今でも学生時代の友人と集まると、私のドジな思い出話に花が咲きます(笑)。

そのような形で自分の個性に対するコンプレックスからは少しずつ開放されていったのですが、高校生になると次は勉強に対してコンプレックスを抱くようになってしまい…。進学校だったこともあり、周りは高校1年生から大学受験を意識している友人ばかりだったのですが、私はどうしてもそこまで熱心になれませんでした。

なんとかやる気を出すために1日ごとの目標を立てても、せいぜい2日ぐらいしか続かず…。両親が法曹の世界で仕事をしており、なぜ自分だけがこんなにできないんだろうという気持ちと、期待に応えられないことに対する申し訳なさでいっぱいになりました。

それでもなんとか受験期を乗り越え、一浪の末に立教大学の教育学科へ進学しました。
 

表舞台からは見えなくても、一生懸命頑張っている人がいるんだと示したかった

 
 
―大学生活はいかがでしたか。
 
 
いっきに世界が広がったような感覚で、とても楽しかったです。アルバイト先の人に誘われたことをきっかけに総勢200人ほどの放送研究会に入ったのですが、そこにはアナウンサーを目指している人と編集や音響など技術系の仕事を目指している人が混在していて、さまざまなタイプの人と交流できることが新鮮でした。

ただ、その中で私はそのどちらにも所属するタイプではないことに気づいたので、美術が好きだったことを活かして小道具や大道具を作るチームを盛り上げていくことにしました。

舞台上で使用するさまざまな道具を作っていた

小道具や大道具を作る仕事はいわば裏方ですが、舞台を作るうえでは欠かせない役割です。舞台に上がる人だけでは成立しないし、裏方で一生懸命頑張っている人もいるんだということを仲間にも知ってもらいたかったんです。今思えば、少しひねくれていたのかもしれませんが…(笑)。
 

「ヒット商品の紹介ページを任せてもらえるの?」。2週間のインターンを経て、カインズへ入社

 
 
―就職活動について教えてください。
 
 
もともとは小学校時代に出会った先生に憧れて教育学科を選んだのですが、世界が広がったことでこのまま社会を知らずに教育の道に入っていいんだろうかと疑問を持つようになり、結局教員免許は取りませんでした。

ただ、だからといってやりたいことがあったわけでもなく…。就活ではとりあえず自分にとって身近な雑貨やインテリア系、あとは憧れていた広告系の企業をいくつか受けていました。

その中で出会ったのがカインズで、合同説明会のブースの中でひときわ勢いと活気にあふれているところに興味を持ち、2週間のインターンに参加してみることにしたんです。インターンの課題はオンラインサイトの中に商品紹介のページを作るというもので、商品の撮影からページの構成まですべてを任せてもらいました。

私が担当した商品はカインズの中でもヒット商品の一つだったので、大事な商品を任せてもらえるという裁量権の大きさにも驚きましたし、社員のみなさんが気軽に声をかけてくれるフラットでオープンな社風に惹かれたこともあり、入社を決めました。

カインズの他にも広告系の会社から内定をいただいていたのですが、ずっと裏方をやっていた自分には合わないだろうという感覚がありました。華やかな業界に憧れていた時期もありましたが、それはあくまでも憧れで、最終的にカインズを選んだときには自分の中ですごく腑に落ちたような気持ちでしたね。
 

大変なこともたくさんあるが、変化を恐れないカインズだからこそ期待を持って働ける

 
 
―入社後はどのような業務に携わられていますか。
 
 
1年目は埼玉県北部の店舗に配属になり、店頭に立ってひたすらお客様のお問い合わせ対応をしていました。

私はDIYやキャンプ売場の担当をしていたのですが、お客様から「このネジと同じネジを探してほしい」とお問い合わせをいただいても、最初はちんぷんかんで…。でもわからないなりに一生懸命調べたり、他店に問い合わせたりしてとにかく探すということを繰り返しているうちに、少しずつ商品に対する理解も深まりましたし、お客様に喜んでいただけることも増えていきました。

中には「この前細矢さんに探してもらったから、今回も彼女にお願いしたい」とおっしゃってくださるお客様もいて、そういうときには特に嬉しかったです。

3年目以降はオープニングスタッフとして新店舗に配属されたのですが、これがかなり大変で…。

私を含めてオープニングを経験した人がいなかったので、パートさんの研修やオペレーション構築など、現場はかなり混乱していました。せっかく希望を持ってカインズに入ってくださったパートさんたちの期待を裏切りたくないという思いもあったので、業務だけでなくメンタル面でのサポートもするように心がけていたのですが、なかなかうまくいかず…。

そんな日々の連続で自分の無力感を味わっていたとき、ちょうどカインズがホームセンター業界の売上高においてトップに立ち、オリジナル商品だけを揃えた新店舗もオープンするなど、すごく勢いに乗りはじめたんです。その様子を見ていると、現場ではたくさん大変なことが起こるものの、それでも変化を恐れずに前に進んでいくカインズはすごいなと改めて思いました。

まだまだ課題もありますが、変化を恐れないカインズであればきっと変わっていくだろうという期待を持って働くことができています。

自分が担当する売場だけでなく、商品に関する幅広い知識が求められるという

これは嬉しかったエピソードの1つなんですが、今年に入って実施された昇格試験で全国1位の点数を取ることができたんです。この試験は筆記試験、店長の評価、レポートにおける総合評価で得点が決まるのですが、学生時代は1位とほど遠い成績だったこともあり、はじめて自分の努力が成績として認められたことがすごく嬉しかったです。

勉強が好きになれなかった学生時代とは違い、純粋に仕事が好きだからこそ残せた結果なのではないかと思っています。

カインズに入社するまでは都会育ちで、運転免許すら持っていなかったのですが、今は一人で運転していろいろな店舗を回ることができるようになりましたし、商品を知ることで今まで生活の中で見逃していたものが見えるようになってきました。

休みの日も街の中で見かけた商品が気になったり、キャンプ用品を担当したことをきっかけに友人とキャンプをするようになったり…カインズに入社して、すごく世界が広がったような感覚です。
 

「まだ見たことがない世界だから」という理由で会社を選んでみてもいい

 
 
―今後細矢さんはどのようなキャリアを歩んでいきたいですか。
 
 
近い目標でいうと、現場目線で気づいた課題や改善点を吸い上げて本部に伝えていけるような役割を担っていきたいです。店舗のマネジャーを目指しつつ、お客様にとっても現場で働くメンバーにとっても親切でわかりやすい売場作りを心がけていきたいですね。

長期的な目標は、正直あまり考えていません。昔から「これをやりたい!」と思うタイプではなかったので、先ほど述べた目標も実はやっと最近見つかったものなんです。

あまり先のことまで考えずにとりあえず目先のことに向かって全力で取り組んでいくというのが自分らしさかなと思いますし、上司や同僚もそんな私をありのまま受け入れて応援してくれています。
 
 
―最後に、これからキャリアを考える人に向けたメッセージをお願いします。
 
 
私は行き当たりばったりの生き方をしてきましたが、後悔している選択肢は一つもありません。むしろ、その選択によって起こった出来事や出会いが私という人間を作ってくれたと思っています。

なので、これから就活をするみなさんも「これが好きだから」「これが得意だから」という考え方に捉われず、「まだ見たことがない世界だから」という理由で会社を選んでみてもいいのではないでしょうか。

私もやりたいことを学生時代からずっと探していましたが、結局見つかったのはここ最近です。

やりたいことがまだ見つかっていないという人も、「会社に入ってから見つければいいや」という気持ちで、まずは自分の選択肢を広げられる会社を選んでみるといいのではないでしょうか。
 
 
 

インタビュアー:アイルーツ+(プラス)編集部 小笠原寛

1999年上智大学 経済学部 経営学科 卒業。
新卒採用責任者他、様々なHR事業経験を積む中で、本音の大切さを実感。
2012年にirootsに参画し、「学生と企業の本音フィッティング」に従事する。
横浜市生まれ、現在は岐阜県関市に在住し、自然と人との対話に耳を傾ける日々。
 

文・編集:アイルーツ+(プラス)編集部 西村恵

2015年にエン・ジャパンの子会社である人材系ベンチャーに中途入社。
2018年にエン・ジャパンに転籍後、新卒スカウトサービス「iroots」の企画として、
ミートアップやメディアの運営、記事のライティング・編集に携わる。
その傍らで現在は芸大に通い、芸術史やデザインについても学び中。