今回お話を伺ったあの• •

小松尚弘(こまつ・たかひろ)
株式会社ネットプロテクションズ/関西オフィス AFTEE エンジニアリングマネージャー 兼 データサイエンスグループ

京都大学大学院を卒業後、新卒でネットプロテクションズに入社。内定者インターンとしてプログラミングを学んだ後、入社1年目から台湾を拠点とした新規事業へ参画。現在は関西支社でプロダクト開発と組織づくりをおこなっている。

不安を感じやすい性格で、小学生の頃から将来について真剣に悩んでいた

 
 
―現在の小松さんのご活躍を紐解くために、まずはルーツについて教えてください。
 
 
幼い頃から理科や算数、工作が好きで、いわゆる研究者気質な子どもだったと思います。

それと同時に、人生に対してつねに不安を抱いている一面もありました。その種類はさまざまで、死や将来に対する漠然とした不安から学校での人間関係に至るまで、とにかくいろいろなことに不安を感じていました。

その不安ゆえに小学生の頃から将来の職業について真剣に悩むような、少し変わった子どもでしたね。小学校の卒業文集には安定してそうというイメージだけで「将来なりたい職業は公務員」と書いたこともありました。

中学に入ってからは勉強と部活が単純に楽しく、どちらも頑張っていました。負けず嫌いだったので、できないことがあるのが嫌という気持ちが原動力になっていた気がします。その根底にはきっとある種の不安があったのだと思うのですが。

もともと人見知りだったこともあり、中学時代は自分の殻に閉じこもって人付き合いをしていたのですが、高校に入っていろいろなタイプの友人と出会う中で、少しずつその殻が溶けていくような感覚を覚えました。

中学時代までの自分は、意見が合わない相手に対して「相手が間違っている」と決めつけて跳ね除けるような一面もあったのですが、高校で多様な個性に触れたことによって対人関係における受容度があがり、意見の異なる相手とも建設的な話し合いができるようになっていました。

今振り返ってみても、これは自分にとって大きな変化だったなと感じます。
 

環境の変化をきっかけに、今まで抱いていた不安が虚像だったことに気づいた

 
 
このような変化があった一方で、不安を抱きやすい性格は変わっておらず、大学を選ぶ際にはできるだけ自分の可能性を閉じない選択をしたいと思っていました。

高校進学のときもそうだったのですが、やりたいことが明確に決まっていないのであれば、できるだけ選択肢が広がる環境を選んだ方が将来に対する漠然とした不安が減らせるかもしれないと考えていたんです。

その後は受験勉強に励み、京都大学工学部に合格したことで生まれてはじめて地元である北海道を離れて京都で一人暮らしをはじめました。
 
 
―大学生活はいかがでしたか。
 
 
大学に入学してからも大きな変化がありました。大学入学までは不安症の自分が慣れない土地で一人暮らしをするなんて絶対無理だと思っていたのですが、いざ新生活がはじまるとすごく楽しくて。

それをきっかけに、今まで自分が漠然と抱えていた不安は虚像だったことに気づきました。挑戦するまではすごく不安なことでも、いざはじまってみると実際にはそこまで悪いことは起こらない、むしろ意外で楽しい発見の方が多いと実感できるようになったんです。

その気づきをきっかけに、勉強に加えてサークルやアルバイトにも積極的に取り組めるようになりました。

大学までは将来の方向性を模索していたのですが、大学院に進んでからは昼夜問わず研究に没頭するようになりました。私が研究していたのはフラッター現象という自然現象だったのですが、原因のわからない現象に対して仮説立てと実験を繰り返しながらその原因を紐解いていく過程がとても面白かったんです。

起きている時間はすべて研究に費やすぐらい没頭しており、周りの同期と比べても自分は特に研究が好きなんだなと感じていました。

大学院時代には研究内容が評価され、学会で表彰された経験も
 

なにかを選ぶときに大切なのは、“選ぶ対象”ではなく自分の“マインドセット”ができているかどうか

 
 
―就職活動について教えてください。
 
 
研究が好きだったのでそのまま研究者になる選択肢もあったのですが、大学の研究のスピードは自分が求めているスピードより遅い感覚があり…。先輩たちが数年かけてようやく一つの仮説検証をしているのを見て、自分はもっと早いスピードで物事を検証したいと思い、社会に飛び込むことに決めました。

まずはいろいろな会社を見てみようと思い、コンサルやITベンチャーのインターンに参加してみたものの、なぜかもやもやした気持ちになり…。そのときの自分にとっては、どの会社を選んでも不正解な気がしたんです。

そのもやもやの原因を知りたくていろいろな本を読み漁る中で、「なにかを選ぶときに大切なのは、選ぶ対象ではなく自分のマインドセットなのだ」というメッセージを見つけ、やっと自分のもやもやの原因がわかった気がしました。「自分は会社を選ぼうとしているが、それを選ぶ自分の状態はどうなんだ?」と。

そんなとき、ネットプロテクションズのインターンに参加したことが一つの転機になりました。

ネットプロテクションズのインターンでは、5日間を通じて「あなたはどうなりたいのか」というテーマに向き合い続けることが求められたので、かなり大変な経験ではあったものの、漠然とした将来ではなく、もっと“今”の自分と向き合ってみようと思えるようになりました。

また、メンターとしてついてくれたネットプロテクションズの社員の方が私たち学生の前でもまったく取り繕うとせず、ありのままで接してくれたことによって、自分もこうなりたいなという社会人としてのイメージを持つことができました。

ネットプロテクションズのインターンを通じて考え方を磨くことができたので、そこから「まずは3年間、自分がどんな環境であれば頑張れるか?」という問いを立て、具体的な軸を作っていきました。

その中で考えたのが、初心者でもプログラミングができる、哲学的な話ができる人がたくさんいる、飲み会でも仕事について話すぐらい仕事好きな人たちが集まる場所、という3つの要素でした。

その要素にもっとも当てはまっていたのがネットプロテクションズだったので、他社からも内定はいただいていたものの、最終的には迷いなく意思決定をすることができました。

新たな挑戦に対する不安もありましたが、その頃には不安を持っている自分を客観的に受け止められるようになっていましたし、今持っている材料の中でベストな選択ができたという自負もありました。
 

インターンで学んだことは、プログラミングスキルではなく“ものづくりの難しさ”だった

 
 
―入社後はどのような業務に携わられていますか。
 
 
内定者時代に京都にある関西オフィスでインターンをはじめました。

関わっていたのはプログラミング系の業務でしたが、学んだことはそれ以外のところにありました。コーディングやプログラミングのスキルは努力すれば独学で身につけることができるかもしれません。本当に難しいのはその身につけたスキルでなにを作るのか、そしてそれをどのように使ってほしいのかという部分で、それを作っていくための企画にも参加させてもらうことができたことは大きな学びでした。

それまではビジネスサイドと開発サイドは別々のフィールドに分かれているようなイメージがありますが、内定者インターンでの経験を通じて、本来は両者に隔たりはなく、全員がものづくりに携わっているのだなと感じました。

入社後は当時立ち上げ2年ほどの「AFTEE(アフティー)」という新規事業のプロダクト開発に携わるため、事業拠点がある台湾へ移り住みました。内定者インターン時代の恩を返したいという気持ちと、なんとかこの事業を成功させないといけないという気持ちで目の前の仕事に没頭しました。せっかく台湾に住んでいたのに、現地での生活を楽しむ余裕はほとんどありませんでしたね(苦笑)。

もちろん新規事業なので大変なこともたくさんありましたが、小さなチームで一体となって事業を前に進めていくのはすごく楽しかったです。

2年目からは帰国し、入社4年目の現在に至るまで関西オフィスで自分のプロジェクトを担当しながらインターン生を採用し、一緒に開発をおこなっています。自分が内定者インターン時代にすごくいい経験をさせてもらえたと思っているので、経験の有無に関わらずいろいろな人に開発について学べる環境を提供していきたいと思っています。

関西オフィスのメンバーと

また、内定者時代の気づきでもあった「ビジネスサイドと開発サイドの融合」というテーマにもデータサイエンスの領域から挑戦をはじめています。ネットプロテクションズにおいてはビジネスサイドと開発サイドがそこまで分断されているわけではないのですが、一般的には別々のチームとして動くことが多いと思いますし、そこに違和感を感じています。

データを活用し、プロダクトや組織に活かしていくというデータサイエンスのプロジェクトを進める中で、両者の融合を社会に仕掛けていきたいです。
 

「来年5人のチームを作るとしたら、どんなチームがいいか?」

 
 
―今後小松さんはどのようなキャリアを歩んでいきたいですか。
 
 
理想の開発組織を作ることが目標です。

「開発に挑戦してみたいけれど、その環境がない」という人が組織に参加することでスキルとモチベーションが向上し、より良いプロダクトが作れるようになり、結果として組織にも収益が入る。そしてスキルが成熟すれば卒業し、新たな環境で活躍する…という循環の場をネットプロテクションズで作っていきたいです。

自分が内定者インターンのときに受けた恩が循環していくようなイメージですね。そのための一歩として、今は関西オフィスでインターン生とともに開発を進めています。
 
 
―最後に、これからキャリアを考える人に向けたメッセージをお願いします。
 
 
会社を選ぶ前に、自分の価値観を追求してほしいです。自分の価値観がわかっていないと、どんな環境を選んでも結局後悔するのではないでしょうか。

自分の価値観を知るためにおすすめの“問い”は、「来年5人のチームを作るとしたら、どんなチームがいいか?」というものです。

私の場合、その問いから先ほどお話しした3つの要素を見つけることができました。理想のチームを作るためには、その人たちからも求められるようにもっと自分を磨く必要がありますし、その人たちが集まる場所や仲良くなる手段について知る必要があります。

まずは自分がどんな組織の中で生きていきたいか、どんな組織であれば頑張れるのかを考え、最後に会社を選ぶというプロセスを踏めば、自分の選択を後悔することはないと思います。
 
 
 

インタビュアー:アイルーツ+(プラス)編集部 小笠原寛

1999年上智大学 経済学部 経営学科 卒業。
新卒採用責任者他、様々なHR事業経験を積む中で、本音の大切さを実感。
2012年にirootsに参画し、「学生と企業の本音フィッティング」に従事する。
横浜市生まれ、現在は岐阜県関市に在住し、自然と人との対話に耳を傾ける日々。
 

文・編集:アイルーツ+(プラス)編集部 西村恵

2015年にエン・ジャパンの子会社である人材系ベンチャーに中途入社。
2018年にエン・ジャパンに転籍後、新卒スカウトサービス「iroots」の企画として、
ミートアップやメディアの運営、記事のライティング・編集に携わる。
その傍らで現在は芸大に通い、芸術史やデザインについても学び中。