今回お話を伺ったあの• •

平野寛大(ひらの・ひろまさ)
株式会社湖池屋/生産本部 R&Dセンター テクノロジー開発部

高校卒業後、フリーター期間を経て麻生工科自動車大学校へ入学。自動車設計・3DCADについて学んだのち、2021年4月に湖池屋へ入社。入社後は生産本部 R&Dセンターに所属し、新規ライン立ち上げと新技術の開発に携わる。

大学受験の失敗を機に、進学も浪人もしないという道を選んだ

 
 
―現在の平野さんのご活躍を紐解くために、まずはルーツについて教えてください。
 
幼い頃から人一倍好奇心と負けん気の強い性格で、野球、バレーボール、陸上、フットサル、物理部、クイズ研究会などいろいろなことにチャレンジしていました。やりたい気持ちが先行するあまり、親の許可なく入部届を出してしまったこともあるほどです。

幼い頃から好奇心旺盛だった平野さん

一方、幼い頃から機械やロボット、ロケットなども好きだったので、高校では理系のコースに進んだのですが、一人暮らしをきっかけに勉強から遠ざかってしまい…。友人と遊ぶ日々が続きました。

そんな自分に転機が訪れたのは、大学受験のときでした。高校3年生の夏から心を入れ替えて地元の国立大学を受験したものの、やはり不合格で…。センター試験の成績を利用して他の大学に行くという選択肢もあったのですが、オープンキャンパスも行かず学力に準じた大学に行くというのもしっくり来ず。

せっかくならこの4年間で面白い経験を積んでみようと思い至り、大学には行かないという選択肢を選びました。
 

ユニークなアルバイト経験を経て、自動車系の専門学校へ

 
 
―高校を卒業された後はどのように過ごされていたのでしょうか。
 
3年ほどはアルバイトをして過ごしていました。

せっかく働くなら面白そうなアルバイトをしたいと思い、おもちゃメーカーのプロモーションイベントでの司会やスポーツ関係のコラム執筆など、他の人がやらなさそうなものをあえて選んでいました。

そういった募集は求人広告になかなか出てこないので、募集がなくても自分から直接連絡して自分がやりたいことをアピールし、運良く機会をいただくことがほとんどでした。

他にはボーイの仕事をさせていただいた期間もあり、一般的な清掃やドリンク、フードを作る仕事以外に他スタッフたちの悩み相談のようなこともやっていました。それまでの人生で出会ってこなかった人たちの人生や価値観を学べたのは、今振り返ってみても貴重な経験だったと思います。

大学に行かなかったことを後悔していたわけではなかったのですが、就活をはじめた友人たちの姿に焦ることが増え、家族に心配をかけ続けていることに対しても情けないという気持ちが強くなりました。

そういったさまざまな要因もあり、元々好きだった飛行機や自動車に関わる仕事に携わりたいという想いから、21歳で専門学校への入学を決めました。

私が入学したのは自動車設計に特化した専門学校で、自動車の設計や3DCGソフトの使い方について学びながら資格を取っていきました。

入学前から自動車メーカーの設計職は狭き門だと分かっていました。ただ、ものづくりの上流工程に携わりたいという思いがあったので、設計者とデザイナーを繋ぐ仕事であるデジタルモデラーという職種に絞り、日々の勉強と就活に取り組みました。
 

フリーター期間を「面白いね」と認めてくれたことが嬉しかった

 
 
―就職活動について教えてください。
 
2年生になってから就活をはじめたのですが、長期インターン経由で自動車メーカーから早々にお声がけをいただいたので、残りの就活期間を持て余していました。その頃には学業も落ち着いていたので、せっかくなら他の会社も見てみようと思い、興味本位で就活サイトを覗いているときに出会ったのが湖池屋でした。

自動車メーカーとはまったく違う業界でしたが、お菓子で人を喜ばせるという明るさ、成果物と消費者の距離の近さ、そして型にはまらずチャレンジを続けている姿勢に惹かれて応募してみることにしました。

選考の中で出会った社員の方はみなさん気さくで、高校卒業後のフリーター期間についても「面白いね」と評価してくださり、嬉しかったことを覚えています。

最終的に湖池屋からも内定をいただき、自動車メーカーとどちらに行くかかなり悩んだのですが、自動車業界からお菓子メーカーに行ける道は後にも先にもないだろうと思い至り、湖池屋に入社を決めました。
 

入社1年目から新商品のライン立ち上げと技術開発に携わる

 
 
―入社後はどのような業務に携わられているのですか。
 
入社後はR&Dセンターという部署で新規ライン立ち上げと新技術の研究をメインで行っております。

新規ライン立ち上げに関しては、マーケティングチームが求める商品規格や包装形態、商品開発チームが求める味を実現できる生産ラインを発売日までに立ち上げるという業務を担当しています。立ち上げに際しては、製造設備の検討、設備試算、設備導入、事前テストを導入先の工場と連携して行います。

最近発売された中では、『濃いじゃが』や『KOIKEYA The のり塩』、『ハッシュドポテト』といった商品を担当しています。

平野さんが担当した商品

お店で自社の新商品が並んでいるのを見るとやはり嬉しくなりますし、家族や友人からも「あの商品買ったよ」と声をかけてもらえることも多く、消費者との距離の近さを実感しています。

新商品のライン立ち上げの他にも、異業種で用いられている技術を食品業界用に転換する試みもおこなっているのですが、技術を外へ探しに行くというところが自分の性格にはすごく合っているなと感じます。

コンパクトな組織だからこそ自分が関われる範囲が広く、年次に関わらず幅広い業務を任せてもらえるので、入社当初はそれに戸惑ったこともありましたが、周りにサポートしていただきながら少しずつできることを増やしていきました。

チャレンジを後押ししてくれる社風なので、まだ入社2年目ではありますが、少しずつ成長できている実感があります。

業務範囲が広く、年次に関わらず仕事を任せて貰えるというと不安に感じる人もいるかと思いますが、私自身、学生時代の専門知識はほとんど使えずゼロから学びましたし、部署の先輩からOJT制度で丁寧に仕事を教えていただけるので専攻分野が異なっていても全く問題ないと思います。

また同様に、食品製造に関する知識もほとんど持っていませんでしたが、日々の業務をこなしながら少しずつ覚えていけるので、問題ありませんでした。
 

「みんなと同じ」よりも、直感的にわくわくする方を選んで

 
 
―今後平野さんはどのようなキャリアを歩みたいとお考えですか。
 
個人的にプラモデルが趣味で、就活時に玩具メーカーも受けるくらいには大人になった今も好きなので、あくまで私の願望ではありますが、湖池屋から食玩を発売したいと思っています。そして、食玩の商品企画、商品開発には必ず携わりたいと思っています。

とはいえ食玩に限らず、湖池屋というフィールドで自分の興味やスキルを深めていくことができれば理想ですね。

あとは技術の分野や新しい環境が純粋に好きなので、新技術の開発や海外拠点での新規ライン立ち上げ業務に携わりたいというのが中長期的な目標です。

―最後に、これからキャリアを考える人に向けたメッセージをお願いします。

就活をすると周りの意見や価値観に悩むこともあるかもしれませんが、「自分が面白いと思えるかどうか」を大切にしてほしいなと思います。

私は高校卒業後にフリーター、自動車系の専門学校から湖池屋と、周りと違う選択肢を選んできましたが、仮に「みんなと同じ」を選択していたとしても本当に自分の想像した通りの仕事内容や人間環境に恵まれるかどうかは分かりません。

それであれば自分が直感的にわくわくすることを選んだ方が、後悔のない道を歩めるのではないかと思います。
 
 
 

インタビュアー:アイルーツ+(プラス)編集部 小笠原寛

1999年上智大学 経済学部 経営学科 卒業。
新卒採用責任者他、様々なHR事業経験を積む中で、本音の大切さを実感。
2012年にirootsに参画し、「学生と企業の本音フィッティング」に従事する。
横浜市生まれ、現在は岐阜県関市に在住し、自然と人との対話に耳を傾ける日々。
 

文・編集:アイルーツ+(プラス)編集部 西村恵

2015年にエン・ジャパンの子会社である人材系ベンチャーに中途入社。
2018年にエン・ジャパンに転籍後、新卒スカウトサービス「iroots」の企画として、
ミートアップやメディアの運営、記事のライティング・編集に携わる。
その傍らで現在は芸大に通い、芸術史やデザインについても学び中。