グローバルな環境での成長を求める学生の中で、短期的な留学だけでなく“海外大学への進学”という選択肢も増えつつあります。
コロナ禍によって国を跨いだ移動の制限が続くものの、就活がオンライン化したことによって海外大生と日本企業の距離はむしろ縮まったと言えます。“海外大学への進学”という大きな決断をした学生は、どんな理由でその選択肢を選び、何を学び、どこを目指すのか。

今回は島根大学から台湾の國立臺中教育大學へ進学し、2024年に日本のフィンテック系ベンチャーに就職予定の原恵利華さんにお話を伺いました。

気になる海外での大学生活や就職事情についても本音・ありのままでお話いただいているので、今まさに海外でチャレンジしている人や、これからチャレンジを考えている人はぜひご覧ください。

中華圏の文化と言語に惹かれ、島根から台湾へ

 
 
―最初に自己紹介をお願いします。
 
原恵利華です。島根大学で地方創生について学んだ後、台湾への語学留学をきっかけに國立臺中教育大學へ入学しました。文化クリエイティブ産業デザイン運営学科でデザインやマーケティングについて学んでおり、2023年6月に卒業予定です。2024年4月からは日本のフィンテック系ベンチャーに就職予定です。
 
 
―島根大学を退学し、台湾の大学へ進学した理由について教えてください。
 
島根大学に在学中、島根県庁が主催する「交流の翼」という日中韓蒙の青年が参加する交流会に参加し、中国の寧夏と北京に1週間ほど滞在したのがきっかけです。

島留学制度を利用し、高校時代から親元を離れて島根で暮らしていた

交流会ではじめて中国語に触れ、その発音の美しさや率直な感情表現に惹かれました。日本ではどうしてもオブラートに包むことを考えてしまいますが、中国語だと自分の感情をそのまま伝えやすいという違いに興味を持ったんです。

その後、中華圏の文化や中国語にもっと触れたいという気持ちで台湾に旅行した際、その文化や雰囲気を知り「ここで生活してみたい!」と直感的に感じました。

それを家族に相談したところ、「留学は許可するけれど費用は自分で工面すること」という条件を出されたので、1年間大学を休学し、囲碁の指導をおこなうアルバイトをしながら留学費用を稼ぎました。

その後もう一年休学し、台湾の高雄市にある語学学校へ9ヶ月間の語学留学をおこない、もっと台湾で学びたいと思うようになったことから、島根大学を退学し國立臺中教育大學へ入学しました。
 
 

自由でフラットな雰囲気に触れ、「もっとこうしたい」が増えた

 
 
―台湾の大学生活はいかがでしたか。
 
単純にすごく楽しかったです。中国語がほとんどわからない状態で語学留学に行ったので、最初はレストランで注文することもままならないほどでしたが…(苦笑)。

でも、やってみてだめだったら考えたらいいやというタイプなので、そこまで苦にはなりませんでしたね。

近所の方や大学の友人たちもあたたかい人ばかりで、周囲の人にフォローしてもらいながら少しずつ言語や文化について学んでいきました。

台湾留学中での様子

國立臺中教育大學はその名の通り台中市にある教育大学ですが、私は文化クリエイティブ産業デザイン運営学科というところでデザインやマーケティングについて学んでいます。

デザインを手段とした課題解決について学びたいと思いこの学科を選んだので、特に絵が得意というわけではありません。

なので、最初は中国語で指示されるデザインの専門用語がまったくわからず…(苦笑)。大学に入学してからも言語に苦戦することが多々ありました。

授業はプロジェクト型のワークショップ形式でおこなうことが多いのですが、台湾の同級生は「自分がいいと思ったから」というスタンスが特に強いと感じます。私は基本的に相手の立場に立って「どう評価されるだろう?」と考えることが多かったので、そういう考え方もあるのかと刺激を得ました。

台湾と日本は文化面で似ているところもありますが、日本に比べてフラットで自由な雰囲気のあるところが気に入っています。日本にいるときは「こうしなければいけない」という考え方が強かったですが、台湾に来てからは「もっとこうしたい」と思うことが増えました
 
 

面接を受けたのは1社だけ。それでも入社に迷いはない

 
 
―就職活動について教えてください。
 
最初は台湾での就職を考えていましたが、コロナの影響で日本に帰れない日々が続いており、親代わりとして育ててくれた祖父母が高齢になっていることから、一度日本に帰国して一緒に暮らしたいと思うようになりました。

また、待遇面でも台湾は日本に比べてやや劣ることから、まずは日本で新卒として就職しようと考え、大学3年生の夏ごろから就活をはじめました。

台湾では大学を卒業してから就活をはじめるのが一般的で、周りに日本人の留学生もいなかったことから、最初は「そういえばそろそろはじめないと…」という感覚で就活について調べはじめました。

その中でirootsの存在を知り、スカウト型であれば幅広い業界の企業を知れそうだし、学業が忙しくても効率的に就活できそうだと思い、登録しました。

iroots経由で面談をしたのは5社ほどで、そこから面接に進んだのは早期選考をおこなっていたフィンテック系のベンチャー1社でした。

選考の中では5名の社員の方と面談させていただいたのですが、選考というよりは「お互いにいいと思えたら一緒に働きたいね」という雰囲気の中で、とても心地よくお話をすることができました。

また、その会社が掲げているビジョンと、社会の中で多くの人が直面する「壁」を取り除いていきたいという自分の軸が一致していたことから、内定をいただいたタイミングで入社を決めました。
 
 

固定観念を捨てたチャレンジが、未来の自分を作ってくれる

 
 
結果的には1社しか受けずに就活を終えましたが、自分なりにいろいろと調べて決断をしたので、迷いはありません。何事もやってみなければわからないので、まずはやってみてから考えればいいかなと思います。

入社後どんなことに関わるかはまだ決まっていませんが、社会の壁に金融という観点からアプローチし、チャレンジする人たちを応援するような取り組みができれば嬉しいです。台湾にも支社がある会社なので、民間からも台湾と日本の良好な関係性を作っていきたいですね。
 
 
―最後に、これから海外でチャレンジしたい学生に向けたメッセージをお願いします。
 

 
まず目の前のことを一生懸命やれば必ず自分の力になりますし、それがのちの自信にもつながると思います。

私は台湾の雰囲気が好きだったので、スーツを着て面接で自己PRをして…という“日本らしい就活”に不安を感じていました。でも固定観念を捨てて自分らしくチャレンジしたことで、自分に合う会社に出会うことができました。

これから海外でチャレンジするみなさんも、「だめだったらまた考えればいいや」という気持ちで、目の前のことに取り組んでみてください。
 
 
 
 

インタビュアー:アイルーツ+(プラス)編集部 周恬(シュウ テン)

2010年中国で高校卒業後に来日。上智大学卒業後大手小売会社に新卒入社。
社会人3年目にエン・ジャパンに転職。猫とうさぎの三人暮らし。趣味は漫画と映画。最近はピラティスに夢中。
 

文・編集:アイルーツ+(プラス)編集部 西村恵

2015年にエン・ジャパンの子会社である人材系ベンチャーに中途入社。
2018年にエン・ジャパンに転籍後、新卒スカウトサービス「iroots」の企画として、
ミートアップやメディアの運営、記事のライティング・編集に携わる。
趣味は映画鑑賞・美術館めぐり。