グローバルな環境での成長を求める学生の中で、短期的な留学だけでなく“海外大学への進学”という選択肢も増えつつあります。
コロナ禍によって国を跨いだ移動の制限が続くものの、就活がオンライン化したことによって海外大生と日本企業の距離はむしろ縮まったと言えます。“海外大学への進学”という大きな決断をした学生は、どんな理由でその選択肢を選び、何を学び、どこを目指すのか。
今回はカナダ留学を経てアメリカのアーカンソー大学に進学し、2023年に日本の大手小売企業に就職予定の高橋鈴音さんにお話を伺いました。
気になる海外での大学生活や就職事情についても本音・ありのままでお話いただいているので、今まさに海外でチャレンジしている人や、これからチャレンジを考えている人はぜひご覧ください。
- 周りに流されやすいからこそ、厳しい環境に身を置きたかった
- アメリカに来て、やっと「NO」と言えるようになった
- 時差に苦しみながらも、“視野を広げる”ことにこだわった
- 多様な考え方に触れることは、絶対マイナスにならない
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―最初に自己紹介をお願いします。
高橋鈴音です。愛媛県の高校からアメリカのアーカンソー大学に進学し、2023年5月に卒業予定です。日本での就活を経て、2023年の秋からは大手小売企業に入社予定です。
―日本の高校を卒業後、海外の大学を選んだ理由について教えてください。
きっかけになったのは高校時代の語学留学です。高校2年生まで日本の大学に進学するつもりで受験勉強に励んでいたのですが、明確な理由もないまま進路を決めてしまっていいんだろうか?と突然不安になり…。
特に自分は頭が固く、周りも似たような価値観の人たちばかりだったので、もっと多様な価値観を身につけたうえで将来について考えた方がいいのではないかと思ったんです。
そんなときに海外研修から戻ってきた担任の先生から「いろいろなところに足を運ぶと物事の見方も変わるよ」という話を聞き、自分も海外に行って視野を広げてみたいと思ったことから、高校を休学して半年間カナダへ留学しました。
留学当初はまったく英語がわからず、ホームステイ先の家族に何回も話を聞き返してしまい、申し訳なかったですね。それでも2ヶ月目以降からは少しずつ会話ができるようになり、帰国する頃にはスムーズとまではいかないものの、自分の意志は伝えられるようになっていました。
帰国後、改めて進路を考えるために志望大学のオープンキャンパスに行って先輩方にお話を聞いたのですが、やはりあまりピンと来ず…。
私が話を聞いた中ではアルバイトやサークルに力を入れている人が多かったのですが、私としては学業にコミットメントできる環境に身を置きたいという気持ちが強かったんです。
もちろん周りに流されず学業にコミットしている人もたくさんいると思うのですが、周りに影響を受けやすい自分はより厳しい環境に身を置いた方がいいだろうと思い、海外への進学を決めました。
―海外大学の中でアーカンソー大学を選んだ理由について教えてください。
経済大国のアメリカで、マーケティングを学びたかったというのが一番の理由です。働くってどういうことだろうと考えたときに、一番イメージしやすかったのがものを作って売ることだったのですが、せっかくいいものを作っても売り方がイマイチであれば売れないですよね。
それであれば、どうすればものが売れるのかという仕組みについて勉強したいと思い、アーカンソー大学のマーケティング専攻を選びました。アーカンソー大学は西海岸や東海岸の大学に比べて学費も安かったですし、大学の中で学生が会社を経営するプログラムがあり、そこで実学が学べるのではないかと思ったのも決めての一つでした。
―アメリカでの大学生活はいかがでしたか。
生活の面では正直ストレスに感じることが多かったです。寮生活ではプライベートな空間がなかったり、食文化が合わなかったり…。また、アーカンソーは車がないと不便な地域だったので、スーパーまで歩いていくだけでも一苦労でした。カナダでの便利な生活を知っていたからこそ、ギャップが大きかったですね。
大学1年生のときはとにかく慣れようという気持ちと、授業についていかなければという焦りで図書館にこもって日々勉強に励んでいました。2年生になると、就活を意識してなにか活動をはじめなければと思うようになり、2つの学生団体に所属して、異文化交流を目的としたプレゼンテーション発表や、日本文化の普及をおこなうためのさまざまな活動に参加しました。
もともとは大学が経営している会社に所属して、そこで課外活動をおこなうつもりだったのですが、そこでの内容がイメージしていたものとは少し違って…。
私としてはビジネスの上流から下流までを学びたかったのですが、私が配属された部署はひたすら商品のアイデア出しをおこなうだけのところだったので、ごく一部の経験しか積めず…。
その代わりに、学生団体ではファンドレイジングの担当としてアクセサリーやフードの販売活動を推進していく役割を担い、マーケティングの実践的な理解を深めていきました。
大学生活の中でもっとも成長したと感じることは、「NO」と言えるようになったことです。もともと自分の意志をはっきり伝えることが苦手だったのですが、こちらに来てからは物事の優先順位をつけるために断らないといけない場面も多く…。
でも、自分の意志を伝えても意外と相手も気にしていないなと感じるようになってからは、ストレートなコミュニケーションがとれるようになりました。
また、他者への寛容度が上がったことも大きな変化でしたね。公共の場所が綺麗じゃなかったり、店員さんの態度がイマイチだったりすると、最初は「そんなことある!?」といちいち驚いていましたが、最近は「ま、そんなこともあるよね」と受け入れ、フォローできるようになりました。
―就職活動について教えてください。
大学1年生の頃はアメリカでの就職を考えていたのですが、食文化が合わないことが本当にストレスで…。それ以外にもアメリカに来て日本の良さをひしひしと感じるようになったので、十分に知られていない日本の良さを海外に伝える仕事がしたいと思うようになりました。
とはいえ周囲に情報がすごく少ない中で就活をはじめなければいけなかったので、とりあえずナビサイトやirootsをはじめとするスカウトサービスに登録し、情報収集をはじめました。
マーケティングの仕事には興味があったものの、なにを扱うかを考えていなかったので、スカウトをいただいた場合はとりあえず話を聞きにいくようにしていました。
ありがたいことに、IT、物流、金融、不動産など幅広い業界の企業からスカウトをいただけて、実際に話を聞いてみるとどの業界も魅力的に思えてしまい、結局最後まで業界を絞れないまま就活を続けていました。
就活で一番苦労したのは、やはり時差ですね。オンラインで3daysのインターンに参加していると、日中は授業に出て夜中はインターンに参加して…という生活になるので、ほとんど寝る時間がなくつらかったです。でも、自分の視野を広げたいという気持ちが常々あったので、この3日間だけやり抜こう…!という気持ちで頑張っていました。最終的に入社を決めた大手小売企業には、海外の就職イベントで出会いました。そのイベント経由で20社ほどにエントリーし、うち3社から内定をいただいたのですが、選考の中でもっとも好感を持てたのが入社先の企業でした。
私の就活の軸は、人々の豊かさや幸福度の向上に貢献できること、新しいことを取り入れる風土があり、若手のうちから挑戦できる環境があること、そしてグローバルに働けることという3つだったのですが、入社先の企業はこれらすべて満たしていましたし、社員の方も素敵な方ばかりだったので、ほぼ迷いなく入社を決めました。
卒業まであと半年ほどですが、残りの学業を頑張りつつ、帰国するまでにコロナ禍でなかなか行けなかった旅行にも行きたいなと考えています。
―最後に、これから海外でチャレンジしたい学生に向けたメッセージをお願いします。
海外でチャレンジするときにつまずきやすいのが、友達づくりと就活だと思います。海外の大学にはさまざまな人種の人がいて、彼らの多様なパーソナリティや考え方に触れることは、絶対マイナスになりません。
私は大学1年生のときに図書館にこもりきりで友人とあまり交流しなかったことを少し後悔しているので、せっかく海外にチャレンジするのであればまずはやってみよう!というマインドでイベントやボランティア活動などに参加してみてください。
就活については、周りに仲間がおらずどうしても不安になってしまいがちですが、楽しんでやることを心がけてほしいです。就活を通じて自分の新たな一面に出会ったり、企業への“好き”がたくさん見つかったりするはずです。嫌々ではなく、可能性を広げる機会として前向きに取り組むことをおすすめします。
社会人3年目にエン・ジャパンに転職。猫とうさぎの三人暮らし。趣味は漫画と映画。最近はピラティスに夢中。
2018年にエン・ジャパンに転籍後、新卒スカウトサービス「iroots」の企画として、
ミートアップやメディアの運営、記事のライティング・編集に携わる。
趣味は映画鑑賞・美術館めぐり。