少子高齢化、経済の停滞、さらにコロナ渦やDX時代の到来により、先の読めない時代になっています。どんな企業でも、いつ危機が訪れてもおかしくありません。終身雇用が期待できなくなった今、会社に自らのキャリア形成をゆだねることはできなくなりました。自分のキャリアは自分自身で切り拓いていく(自律的キャリア)ことが求められています。

では、自律的キャリアを形成するためには、どのような就職先を選べばいいのでしょうか?

2022年12月、大学生向けのキャリア支援などをおこなうエン人材教育財団は、『第3回CSA賞』を発表しました。この賞は20代の育成環境を含めた審査基準を設けており、次世代型人材を創出する企業に授与されます。本記事では、社員の自律的キャリアを支援する企業の事例として、第3回の受賞企業である豊田通商アフリカ本部、ボーダレス・ジャパンの評価ポイントについて解説します。企業研究で見るべきポイントがわからない、成長を軸に企業を選びたいがどのように企業を探せばいいかわからない…という方は、ぜひ参考にしてみてください。

●CSA賞とは?
本業での社会貢献と高い収益を背景に、これからの社会に必要となるビジネスパーソンを育てる⼒を持っている企業に光を当てる賞です。CSAとは、「Career」「Select」「Ability」を掛け合わせた造語であるCareerSelectAbility®(キャリア自⼰選択⼒)の略称で「どんな環境に置かれても主体的に活躍できる⼒」を⽰しています。

時には高い要望を出しながら「どんな環境に置かれても主体的に活躍できる⼒」を意図的に育成する企業を表彰しています。

●第3回 CSA賞受賞企業

現場に立ち事業推進する若手社員(右・セネガルにて)

①豊田通商株式会社 アフリカ本部
アフリカ全54カ国、総勢約22,000名の従業員が多彩なビジネスを展開。①事業ポートフォリオの多様化、②グローバルブランドとのパートナーシップ強化、③バリューチェーンの統合、④カーボンニュートラルの推進を事業戦略として、アフリカの経済成長と産業化に貢献、拡大する中間層への対応を推進している。

★20代人財輩出性 評価ポイント
⚫︎経済環境がダイナミックに変化するアフリカ市場において、緊張感と創意工夫が求められている
⚫︎文化や言語も異なる中で、若い年次であってもアフリカ本部の社員が中心となり責任を持って現場を取り仕切る環境がある。また、政情不安などにより案件がスケジュール通りに進められないことが当たり前に起きる不確実性の高い環境から、高度なリスク管理能力も求められる
⚫︎実際に現地に足を運び、豊田通商が行動原則として大事にしている「現地・現物・現実」を実行。現場で体感する機会を作ることで、アフリカ本部全体の理念である「WITH AFRICA FOR AFRICA」の思いを「自分ごと化」して働ける環境がある

★本業主観正義性 評価ポイント
⚫︎モビリティ、ヘルスケア、消費財、電力・インフラ・エネルギー。多くの領域でアフリカの課題解決を通じた経済発展への貢献に挑戦している
⚫︎アフリカで活動するスタートアップ企業への出資に特化したコーポレートベンチャーキャピタルを設立。アフリカで革新的な技術・サービスを展開する企業へ積極的に投資を行い、新たなビジネスの創出と共にアフリカの社会課題の解決への貢献に取り組んでいる

★収益性 評価ポイント
⚫︎売上高は2017年のアフリカ本部設立以来、5年で売上高が約6000億円から約1.1兆円と毎年成長し続けている。アフリカ地域での売上高が1兆円を超えたのは日本企業としても初めてとなる
⚫︎アフリカ本部での営業利益率は4.1%であり、総合商社業界の平均3.4%を上回っている(※エン人材教育財団調べ)

◆受賞コメント
このたびは、輝かしい賞をいただき、大変嬉しく思います。当社は「Be the Right ONE」をグローバルビジョンに掲げ、お客さま・事業パートナーにとって代替不可能な唯一無二の存在になることを追求し、その実現を目指しています。このビジョンのもと、アフリカ事業においては、“WITH AFRICA FOR AFRICA”という理念を胸に、事業推進や人財育成を通じてアフリカの自立的発展に貢献しています。

当社は、国籍や言語、文化などさまざまなバックグラウンドを持つグローバルな仲間と、各々の強い「個」を生かしながら、一丸となって活躍しています。日々現場に立ち、汗をかき、現地の方々と一緒に取り組む彼らの強い意志と情熱あってこその受賞と自負しております。今後も、“WITH AFRICA FOR AFRICA”の想いを各自がじぶんごと化し、挑戦を続けてまいります。
 
 

ミャンマー農村部で小規模農家のためのビジネスを行う社会起業家・犬井智朗さん

②株式会社ボーダレス・ジャパン
「ソーシャル・ビジネスで世界を変える」ことを目指し、社会起業家が集うプラットフォームカンパニーとして2007年に設立。現在、貧困・環境問題など社会問題の壁を超える47の事業を世界16ヶ国で展開中。2021年度の売上高は65億円を超える。(※エン人材教育財団が20代の成長環境がある企業を独自の基準で認定した「エンパワー認定」に認定済)

★20代人財輩出性 評価ポイント
⚫︎他の事業を展開する仲間と助け合いながら切磋琢磨する風土がある
⚫︎一人一人が経営者視点で、自分でプランを考えて実行しており、目の前の仕事に高い視座で取り組んでいる。自らの「ソーシャルビジネスで社会課題を解決したい」という思いから事業を立ち上げているため、事業そのものや、商品・サービスに対し当事者意識を強く持っている
⚫︎利益を出すのが難しいとされるソーシャルビジネスにおいて、日々の売り上げなど、数字に対してもコミットしており、収益に対するこだわりがある。また、それがグループ全体の風土として根付いている

★本業主観正義性 評価ポイント
⚫︎「社会起業家の共同体」として、非効率とされている人やモノ、状況も組み込んだビジネスでインパクトを出している。様々な社会課題をより多く解決するために、社会課題を解決したい気持ちはあっても、勇気や経験や自信がない人がソーシャルビジネスにチャレンジできる仕組みを作っている
⚫︎資金面やプランニング、マーケティング、バックオフィス業務のサポート体制があり、起業家同士が分野を超えて助け合っていくコミュニティも生み出している

★収益性 評価ポイント
⚫︎ボーダレス・ジャパンは利益の出た事業の分社化を行っており、数年おきに収益性の高い事業を生み出しており、グループ全体として成長基調である
⚫︎直接競合となる比較対象はないが、社会課題を解決することを目的としたビジネスの構造の中で、赤字になることなく、毎年継続して営業利益が上がっている

◆受賞コメント
日本を代表する名だたる企業にならび、この度、20代に薦めたい「次世代型人材」創出企業にご選出いただいたこと、大変光栄に思います。私たちボーダレス・ジャパンは、ビジネスを手段として社会問題の解決に取り組む「ソーシャルビジネス」だけを行う企業体であり、環境問題や貧困問題などを解決する47の事業を14カ国で展開しています。

「社会問題が解決された社会を実現したい」

そんな志を持ったメンバーが集まり、今まで社会になかった新しい選択肢をつくる新規事業創出に取り組んでいます。40名以上の社員へのヒアリング調査では、20代のメンバーそれぞれが裁量権を持ち、自分自身の働きが社会へインパクトを生み出すことに達成感を味わっている姿が浮かび上がっていました。こうしたボーダレスらしい働き方を客観的な視点でご評価いただけたことが、また社員のやりがいにつながっています。
 
 
●受賞企業から就活生のみなさんへメッセージ

豊田通商株式会社 人事部 中田様より
みなさん、こんにちは!当社は商社として、130カ国以上のグローバルネットワークと1,000社以上のグループ会社と共に、地球規模で豊田通商“ならでは”のビジネスを展開しています。アフリカ本部のみならず、全ての社員が「現地・現物・現実」の精神をモットーに、自ら現地に足を運び、現物を見て、仕事に対して責任と誇りを持ち、主体的に「現実」と向き合うといった“現場に強い商社パーソン”であることを大切にしています。また、挑戦することを後押しする風土・文化が根付いており、年次を問わず、挑戦したい人はさまざまな経験を積んで成長できる環境があります。

ぜひ、皆さんも私たちと一緒に、世界中の現場で、現地の人々と共により良い社会の実現に向けて挑戦してみませんか?
 
株式会社ボーダレス・ジャパン 副社長 鈴木様より
「何のために働くのか」
就活をするなかで、一度は考える問いです。この問いは、就活中に限らず、社会人になった後も色々な節目で自分自身に問い続けていくと思います。学生時代に社会問題に出会い、その活動に奔走してきた。就活では、まず問題を解決できるだけのビジネススキルをつけるために、就職先を選ぶ。そんな学生の方をたくさん見てきました。ボーダレスなら、社会問題解決と事業スキルの獲得を両立する働き方ができます。 「今よりもいい社会を作りたい! 」そんな志を持ち、全力で取り組む仲間や先輩のなかで切磋琢磨しながら、自分を鍛え、社会のためにまっすぐ取り組みたい、そう考える方のエントリーをお待ちしています。

TEDx「人生の価値は何を得るかではなく、何を残すかにある」
https://note.com/borderless_japan/n/nace1137dc056  
 
●最後に
「就社」ではなく「就職」の時代だからこそ、若手のうちから活躍できる就職先を選ぶことが、自律的キャリアを切り開く第一歩になります。今回CSA賞を受賞した2社が気になる!という場合は、ぜひ調べてみてくださいね。

また、今後他の企業研究をおこなう際にも、この記事で紹介した①20代の人財輩出性、②本業主観正義性、③収益性という3つの観点にも着目してみてください。irootsでは、みなさんの自律的キャリアの形成と、後悔のない選択を応援しています!