タニタ

SNSの影響力が年々増している現代。「インフルエンサー」などの言葉も流行しており、その影響力は社会的にも無視できないものとなっています。

今回はTwitterのフォロワーが20万人を超える「TANITA」のTwitterアカウントの担当者にお越しいただき、人気の秘密について語っていただきました。

 

まさかの「本名非公開、顔出しNG」のゲスト登場

こんばんは。タニタ公式Twitterアカウントを運営をしている●●(本名非公開)と申します。本日は、よろしくお願い致します。いつも顔出ししていないので、写真撮影や、SNSへの公開はNGでお願いしますね。(会場笑)

 

まず、簡単に私の自己紹介をさせていただきます。タニタには2008年に入社して、始めは営業に配属されました。メーカーの営業部門として顧客周りをしていたんですけど、2年目で社長室に急に異動になったんです。

弊社の社長は新しいことが好きで、当時はまだ目新しかった企業の公式動画チャンネルにニコニコ動画を使って参画しました。社員が入れ替わり立ち替わり登場して、健康に関する動画を紹介するアカウントでした。

 

私自身は、動画チャンネルのようなものに馴染みもなく、詳しくなかったのですが、「若いんだからできるだろう」って(笑)若さを理由に任されました。1年くらいでしょうか、動画コンテンツ作成などをやっていたんですけど、この時に並行して運用していたのがTwitterです。

ただ、その仕事も長く続かなくて。1年程で営業にまた戻ることになり、GMS(General Merchandise Store:総合スーパー)やドラッグストアに体重計を取り扱って貰うというミッションを持つようになりました。営業としては、自社商品をしっかり語れることが大事ですから、この期間にかなり商品に詳しくなりましたし、愛着も湧きました。

 

営業も軌道に乗ってきた頃、自分が引き継がせたTwitterの運用がなかなか上手くいってないという話を聞いて。自分自身が、中途半端な時に引き継ぎをしてしまったな、という未練もあったので、営業と兼任してTwitterの担当者もやらせて欲しいと申し出ました。

2016年くらいまでは営業8、Twitter2くらいの割合で仕事をしてましたね。2016年以降は、社内でネットを活用したマーケティングにもっと力をいれていこうという方向性になり、新事業企画という部門ができました。今はそこに所屬しており、ようやくTwitter発の企画をできるようになっています(笑)

 

140文字のつぶやきでも企業イメージは変えられる

Twitterの本格運用を始めても、すぐに上手くいったわけではありません。フォロワーさんの反応をみながら、PDCAを積み重ねていきました。

大前提として、自分のTweetをどれだけの人が見ているかわからないので、Tweetするときは、より会社の代表として人前に出ているという意識を忘れないということを肝に命じています。

 

タニタイベント

 

また、これはやりながら編み出してきたポイントなんですけど、「会社のことだけでなく、自分のことを伝えて知ってもらう」ということが凄く大切なんですよね。

企業のアカウントを担当して、自社の商品だけをTweetしていても面白くないんですよ。はじめは「天気いいですね、新しい体重計出ました!」などの内容だったのですが(笑)イマイチ反応もありませんし。やってても面白くないなと思って、途中から自分のことを伝えていこうというスタンスに変えていきました。

例えば、自分のことを「静岡出身です」というだけでも親近感を持ってもらえるんですよね。そういったところって、結構ネットの中で大事なんだと肌で感じました。

 

また、企業のアカウントでもこういうことをやっていくと、「ただの企業アカウントではない」ですとか、「友達みたいな感覚でコミュニケーションできる」という気持ちになっていただけるんですね。身近に感じてもらって、コミュニケーションが生まれるのもTwitterの醍醐味だと思います。

タニタには、食堂とか健康というまじめなイメージがあると思うんですが、逆に面白いことをつぶやくと、ギャップがあってフォロワーさんに新しい印象を持ってもらえるようになりました。Twitterでは結構つっこんだ話もつぶやいているのですが、Twitterを通じて、良い意味でのギャップを感じてもらって、よりTANITAのことを好きになってもらいたいという気持ちで運営していますね。

 

Twitterを起点として生まれる、新しいビジネスのカタチ

Twitterを運用していると、思いもよらない新しい交流や、人気コンテンツが生まれたりするんですね。例えば一昨年、「シャープさんとタニタくん」(リブレ刊)という漫画が出ました。

これは特にシャープさんとタニタで打ち合わせしてできたのではなく、出版社さんからの企画でした。「タニタさんこんな仕掛けもしたんですね」と勘違いされることがあるのですが、出版社さんからご提案いただいた新しい企画です。まさかの擬人化で漫画化してもらって驚いています。

 

タニタツイッター

これは「#タニタ式どうでしょう」の模様ですね。

タニタではもともと四万温泉でヘルスツーリズムというウォーキングをしたり、カロリーを抑えた料理を食べたりするなど健康にいいツアーを行っていました。そこで、普段からTwitterで交流し、漫画にもなっているシャープさんやセガさん、キングジムさんの中の人をお誘いして温泉に行ってきました(笑)。

詳細は「#タニタ式どうでしょう」で検索してください。ゲームや卓球などを楽しみながら旅の模様をゆるーくTweetしていきました。こうした交流もTwitterがなければ生まれなかったものですね。

 

入れ替わってる
出典: 入れ替わってる!? タニタとシャープ、Twitterで「君の名は。」を再現 

最近ですと、ご存知の方も多いかもしれませんが、エイプリルフールのネタで有名なアニメ映画をシャープさんと再現したのがこちらです。お互いこの作品が好きで、3月中旬くらいから構想はしていたのですが、本格的に打ち合わせをはじめたのは3日前あたり。

当日は、自分たちもどっちがどっちだか良くわからなくなっちゃって(笑)結構大変だったんですけど、なんと新海監督が見てくれていたんですよ。このあと結構シャープさんとあたふたしていました(笑)

 

タニタ計量器
出典: タニタ「ノリで作ってしまいました」 タミヤとコラボして0.1グラム単位で計れるミニ四駆の計量器発売 

また、Twitterからコラボ商品が生まれることもあります。この商品は、ミニ四駆のセットアップをする時に使うはかりです。

弊社の社内サークル「タニタ・ミニ四駆クラブ」の様子をTweetしたところ、ミニ四駆を製造・販売しているタミヤさんから、一緒にやりましょうとお声掛けいただいて。

普段は料理などに使われるはかりなので、女性の方が多く購入するのですが、この商品を買われたのは、90%男性の方でした。企画段階からTweetしているので、フォロワーの方からも「買います」とすぐに反応があるんですね。

Twitterを通じて、今までにない視点の商品が生まれたり、新しい顧客層の方にTANITAの商品を手にとってもらったりと、新たなTwitterの可能性を感じた事例でした。

 

20万人との繋がりが自分の夢を叶えてくれる

(ここからは学生とのQAセッション)

―――Tweetのコツってなんですか。

リアルタイムのライブ感がTwitterのいいところだと思うんですよね。今日の例だと、「タニタさんですか?」と学生さんにエレベーターの中で聞かれたのもTweetしました。小さい出来事もリアルタイムでTweetすることで、見ている人も面白いんだと思います。

 

―――2011年からずっと継続してるってすごいですよね。継続の秘訣は何ですか。

やっぱり、タニタが好きだからでしょうね。Twitterを継続するのって結構大変で、自社への愛情がなくては難しいんだと思います。私の場合は10年間タニタにお世話になっていて成長の機会をもらっていて、商品に愛着もある。だから、タニタに恩返ししたいっていう気持ちが強かったですね。

また、Twitterの場合、リアルタイムでリアクションがあることもモチベーションの一つになっています。「アリーナ!」「いえーい!」みたいな、ちょっとしたミュージシャン気分です(笑)

あとは、習慣化することと、無理しないことも大切です。我慢するけど決して無理はしないんですよ。強制的にやらされている気分にならないことが大切だと思います。つらいときはしなくていいんですよ。誰も文句言わないんで。

Twitterって自分のペースでやれるので、自分でモチベーションをコントロールできるんです。「なう」の二文字で大丈夫なんですよ。素晴らしいですよね(笑)

 

―――仕事する上で、大切にしていることはありますか?

仕事ってつらいですけど楽しいんです。意外と自分のやりたいことってできなかったりしますよね。でも工夫して楽しむことが大切だと思います。どんな仕事でも<問題解決する>というのは一緒なんですね。興味ないことでも楽しむことが大事ですね。

あとは、日頃から問題解決力を身につけておくことが大事だと思います。本当に自分がやりたい仕事が目の前にある時に、自分のスキルが足りなくてできない、ということも結構多いです。

だからこそ、いつかそういうことが来た時のために、それまでに自分のレベルを上げておいてその時に備えて置くことが大切です。そういう意識を身につけていると毎日頑張れるし、楽しめると思います。そうすることで、仕事の中で意外に会いたい人に会えたり、やりたい仕事に取り組めたりするようになってきます。

 

タニタ式、成果を出すための3つのメソッド

せっかくなので、最後に学生のみなさんに、メッセージとして3つの言葉をお伝えできればと思います。

 

タニタ当日スライド

 

まず、「行動を起こすと何かが世の中に起こる」ということ。先ほどもお伝えしましたが、自分が動いてみると何かが起こります。そういった感覚を持つことは、新しいことをやっていく中で重要になると思います。 

そして、それを継続することもとても大事です。Twitterって過去のTweet見れるんですよ。私は1年目終わったときに3000ツイートだったんですね。色々大変なことはあったんですけど、継続してやり続けたからこの結果があると思っています。

 

最後に、「基本があっての型破り」という言葉。私の場合は最初営業に配属されたんですけど、そのおかげでお客さんとのやり取り、ビジネスマナー、商売の仕方、商品について勉強することができました。自社の広報よりも商品に詳しいという自負もあります(笑)

この基礎があったからこそ、できたTweetが沢山あると感じています。新しいことはすごく面白くてやりがいもあることなのですが、基礎を固めること。それが成果を飛躍的に伸ばすためのポイントなのではないかと思います。

 

編集後記

人気Twitterアカウントの中の人って変わっている人だろうという当初の予測とは裏腹に、非常に実直な方で驚きました。「タニタという会社が好きだからTwitterを続けられる」というところや、「行動すると、なにか変化を起こすことができる」というところが強く印象に残りました。

本当にやりたいことができたときのために、日々の努力を怠らず自分の実力をつけていきたいと強く感じました。

 

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―取材協力―

◎講演者:タニタ公式Twitterアカウント担当者
株式会社タニタの公式Twitterアカウント担当。新事業企画推進部に所属し、自社商品の新規企画や他企業とのコラボ企画などに携わる。Twitterでは健康計測機器や食に関してだけでなく、アニメやゲーム、音楽など幅広い話題をつぶやく。企業アカウントの「中の人」同士の会話が4コママンガになったりネットニュースに取り上げられたりすることで話題となる。現在フォロワー数は20万人を超える。ツイートをきっかけとしたコラボ商品を数多く実現させ、現在も複数の企画をつぶやきながら進行している。

 

◎講演イベント:iroots shibuya
iroots shibuyaは、irootsが主催する学生と社会人の交流会。それぞれが自分のルーツを語りあうことで、未来をより良くするためのきっかけにして欲しい。という想いで毎週火曜日@渋谷で開催されている。ゲスト講演30分+懇親会60分の2部構成にて実施中。

 

―この記事を書いた人―

小林 良輔
iroots インターン
早稲田大学商学部在学中。日系企業・タイ企業のビジネスマッチングサイト、子育てメディアのインターンを経てiroots編集部へ。irootsでは主に企画、マーケティング、記事作成を担当。趣味は散歩。