
この会社で、自分はどんな未来を描けるだろう?――。ファーストキャリアという重要な選択を前に、そんな期待を抱える就活生へ。「Vision Talks」は、企業の未来を創り、その舵を取るリーダーたちが自らの言葉で、会社の未来像、そしてこれから仲間になる若手への想いを語る企画です。今回はYKK AP株式会社の人事部 採用グループ長 田中 雄介さんにお話を伺いました。>>irootsへのログインはこちら
Interviewee’s Profile
設立:1957年 従業員数:18,252名(2025年3月末)
1957年に吉田商事株式会社(現 YKK AP株式会社)を設立。住宅用の窓・サッシや玄関ドア、ビル用カーテンウォールなど、幅広い建材を手掛ける。高断熱樹脂窓「APW」シリーズなど、省エネ性能と快適性を両立する商品開発に注力。米国・欧州・アジアにも拠点を広げ、グローバルに事業を展開。建築分野における課題解決と価値創造に取り組む。
田中 雄介/人事部 人材戦略室 採用グループ長
教育学部でキャリア教育を学び、2016年に外資系人材会社へ新卒入社。主に転職コンサルタント、採用人事、事業立ち上げの3部門を経験。2024年1月にYKK AP株式会社人事部へ転職し、2025年4月より採用責任者となる。
- 目指すは「世界のリーディングカンパニー」。売上高1兆円を掲げ、変革の舵を切るYKK APの現在地
- 「失敗しても成功せよ、信じて任せる」。3年かけて一人前に育てる、YKK AP流・挑戦を促す育成文化
- カギは「他者・自己実現」への共感。視野を広げ、自分だけのベストマッチを見つける思考法
TOPICS
目指すは「世界のリーディングカンパニー」。売上高1兆円を掲げ、変革の舵を切るYKK APの現在地
Q1.YKK AP株式会社が描く将来像やビジョンについて教えてください。
私たちは2030年の“ありたい姿”“あるべき姿”は世界のリーディングカンパニーと掲げています。その実現に向け、「Evolution 2030」というビジョンを策定し、特に海外事業の売上を現在から3倍ほどに引き上げるという高い目標を掲げています。
日本では少子高齢化と人口減少が進み、新築住宅着工戸数が減少傾向にあります。一方で、既存住宅の断熱性能向上の動きは今後も需要が見込まれ、リフォーム分野のように成長している領域もありますが、国内マーケットだけを見ていては、いずれ限界が訪れる。だからこそ、私たちの技術や商品がまだ届いていない海外へと、積極的に打って出る必要があると考えています。
しかし、私たちの主力商品の窓は、その土地の気候・風土・文化によって求められる商品の性能が異なります。例えば日本国内でも、北海道と沖縄では重要視される窓の性能が異なります。つまり、海外で事業をより拡大するには、それぞれの市場を深く分析し、その土地で最適な商品を研究・開発する必要があり、一筋縄ではいきません。だからこそ私たちは、一つひとつの市場に本気で向き合っています。直近でも海外事業展開の動きも加速させており、世界のリーディングカンパニーを目指して着実に前進しているところです。
Q2. そのビジョン実現に向けて、現在注力していることは何ですか?
私たちが掲げるビジョンは、日々の地道な挑戦なくしては実現できません。その根幹を支えているのが、YKK APが創業以来こだわり続けてきた「一貫生産体制」です。私たちは、モノづくりの考え方として材料の開発から、生産設備の設計・開発・製造も自社開発をベースとしています。この他に類を見ないモノづくりの基盤があるからこそ、未来に向けた新たな挑戦を可能としています。
また、既存の建材事業の枠を超えた、新規ビジネスの開発に力を入れています。例えば、カーボンニュートラルに向けた再生可能エネルギーへの取り組みとして、ビルの窓や壁面を活用しエネルギーを創り出す「建材一体型太陽光発電(BIPV)」。あるいは、レーダーセンサーなどを用いた検知技術で疾病の早期発見に取り組み、事業化を目指している「ヘルスケア(健康管理)分野」など、パーパス「Architectural Productsで社会を幸せにする会社。」をキーワードに、社会課題の解決に貢献する未来を、私たちは本気で創ろうとしています。
こうした変革をドライブさせるため、人材採用戦略も大きく進化しています。グローバルマインドを持つ人材や社会人経験が豊富な人材を採用し、多様な経験や価値観を積極的に取り入れることで、組織に変革を促しているのです。
ただし、私たちは全て変えようとしているわけではありません。YKKグループには「善の巡環」という企業精神が脈々と受け継がれています。これは、自社の利益だけを追求するのではなく、お客様や取引先、社会全体と価値を分かち合うことで、皆が豊かになることを目指す考え方です。この哲学は、私たちの変革における“揺るがない軸”として「YKKグループらしさは残し、変えるべきものを変える」。この精神を胸に、私たちは未来への挑戦を続けています。
「失敗しても成功せよ、信じて任せる」。3年かけて一人前に育てる、YKK AP流・挑戦を促す育成文化
Q3. 若手社員が成長するために、最も大切なことは何だと思われますか?
スキルや知識以前に、二つの姿勢が私自身は必要不可欠であると考えています。一つは、自分自身の意見を、自分の言葉でしっかりと口にすること。もう一つは、その言葉を受け取る相手がどう思うか、その先に何が起こるかを想像することです。
この考え方は、私自身の経験からきています。大学では教育学を専攻し、「教える」とは一方的な知識の伝達ではなく、受け取り手の捉え方を想像し、理解しやすく伝え、理解が深まらない場合は協業し、最適解を導く行為であると学びました。この学びは、社会に出てからより深まりました。前職で出会った上司が、まさにこの考え方の体現者です。常に受け取り手のことを深く洞察しながら、自らも汗をかいて手を動かす。私は、その姿を見て、自分の学び、考え方が間違っていなかったと確信したと同時に、私自身も今でも目指している理想の上司像です。
ですから、若手の皆さんには、臆することなく自分の意見を主張してほしい。しかし、それは単なるわがままや自己満足であってはいけません。常に周囲への敬意と想像力を持ち、自分の言葉に責任を持つ。そのバランス感覚こそが、周囲の信頼を勝ち取り、より大きな挑戦へとつながるはずです。
Q4. YKK AP株式会社には、どのような若手社員の成長環境がありますか?
私たちの育成思想を象徴するのが、3年一人前教育プログラムです。これを聞くと、「一人前になるのに3年もかかるのか」と感じるかもしれません。しかし、その真意は全く逆です。これは、新入社員一人ひとりを将来の幹部候補として捉え、じっくりと時間をかけて本物のプロフェッショナルに育てるという、私たちの覚悟の表れです。
3年の間、座学の研修が続くわけではありません。ビジネスとしてお金をもらう以上、その業界、会社のプロとしての成果が求められます。導入教育、ビジネス基礎研修で「社会人としての意識」を学んだ後に、OJTを基本とし、「現場での実践経験」を積みながら、節目ごとに同期で集まり、業務報告会を行う。インプットとアウトプットを繰り返しながら、着実に成長できるカリキュラムを組んでいます。
そして、この教育プログラムの根底に流れているのが、「失敗しても成功せよ/信じて任せる」「品質にこだわり続ける」「一点の曇りなき信用」というYKKグループの3つのコアバリューです。私たちのAP事業は、気候・風土・文化によって仕様が変わる複雑なものであり、一朝一夕で知識・経験を習得できるほど簡単ではありません。だからこそ、お客様へは品質にこだわるモノづくりを提供し、会社は社員を信じ、挑戦を促し、たとえ失敗しても、そこから学びを得て次に繋げることが信頼にも繋がる。このカルチャーがあるからこそ、若手は安心して挑戦のバッターボックスに立ち続けることができると考えています。
Q5. これまで若手社員に任せた仕事で、印象的なプロジェクトがあれば教えてください。
「失敗しても成功せよ/信じて任せる」という文化を象徴するエピソードの1つは私自身も入社間もなく採用グループ内のメンバーで働いている中で、採用グループに配属された新入社員が研修を終え配属されてから1ヶ月後に内定式の司会という大役を担当したことですかね。
内定式は、未来の仲間を迎え入れる、会社にとっての一大プロジェクトです。失敗は許されない重要な場であることは、言うまでもありません。しかし、当時のグループ長は「失敗してもまずは経験としてやってみよう」と伝え、大役を任せました。準備に多くの時間はかかりますが、責任ある場を経験することこそが、人を最も成長させると信じていたからだと思います。また同時に会社としてコアバリューがしっかりと浸透していると自身が感じられる経験となりました。
そして私自身も会社が挑戦の機会を与えてくれるように、私もまた、チームのメンバーに挑戦の機会を繋いでいきたい。実際に担当したメンバーはプレッシャーの中で見事に大役を果たし、その経験を通じて、社会人としての大きな自信と責任感をその身に刻んだはずです。YKK APでは、年次に関係なく、誰もが会社の歴史を創る当事者になれると考えています。
カギは「他者・自己実現」への共感。視野を広げ、自分だけのベストマッチを見つける思考法
Q6. YKK AP株式会社を志望する若手社員に、どのようなことを期待していますか?
YKK APには「善の巡環」が根付いている中で、この精神に基づいた、「相互尊重」「着実遂行」「他者・自己実現」という3つのキーワードに共感し、遂行できる方を求める人物像として定義しました。
中でも、「他者・自己実現」という言葉は聞き馴染みがないかと思います。「自己実現」を求める人物像として定義する企業はあると思いますが、私たちは意図して「他者」という言葉を冠しています。これは、自身の成長や成功だけを目指すのではなく、共に働く仲間や、関わる部門、ひいてはお客様の成功やビジョンの実現にも貢献しようとする姿勢を意味します。
この考え方は、材料から生産設備の設計・開発・製造まで自社開発をベースとしている「一貫生産体制」と深く結びついています。私たちのモノづくりは、一つの部門だけでは決して完結しません。協業部門のビジョンを理解し、その実現を助けることが、結果としてより良い商品を生み出し、会社全体の成功にも繋がる。「善の巡環」に通じ円滑な協業体制を作り上げられる利他精神こそが、YKK APの強さの源泉です。
ですから、皆さんには、この「他者・自己実現」という価値観に心から共感し、それを体現したいという強い意志を期待しています。自分のためだけではなく、誰かのために。その想いが、YKK APで活躍するための最も重要な資質です。
Q7. 最後に、就職活動に励む学生へメッセージ・エールをお願いします。
皆さんには、ぜひ客観的な視点を大切にしてほしいと伝えたいです。
私自身、日本の教育モデルや、現在の就職活動のあり方には課題があると感じています。例えば、「業界分析・企業分析をしなさい」と言われると、日本のインプット型の教育の影響で多くの人は、「自身で一生懸命業界を研究し、早く業界を絞り込んだ方がいい」と考えてしまいがちです。しかし、アウトプットせず、自分の先入観だけで就職活動を進めてしまうと、本当のベストマッチは生まれにくいと私は思っています。
だからこそ、皆さんには、ぜひ客観的な視点を大切にしてほしい。自ら企業へ足を運び、自分がこれまで思ってもみなかった業界の話まで、積極的に聞いてみてください。そうして広い視野で企業を探すことが、最終的に心から納得できるベストマッチにつながり、皆さんが本当に望むファーストキャリアを実現する道だと信じています。これは、私自身が今に至るまで一貫してお伝えしているメッセージです。どうか先入観を捨て、自分の可能性を広げる活動をしてください。