紙・パルプ・印刷・インキ業界の概要・職種・魅力・動向 | 業界研究記事

今回ご紹介するのは、紙・パルプ・印刷・インキ業界。

我たちが生活していく上で紙は欠かせないものです。授業のレジュメから、ティッシュ、トイレットペーパーなど、身の回りに多くの紙製品があります。しかし、例えばティッシュの製品名は思い浮かんだとしても、その製品をどこの会社が作っているのかまでは知らない方も多いのではないでしょうか。

この記事では、以下の3つの角度から紙・パルプ・印刷・インキ業界への理解を深めていきます。
（1）業界概要
（2）業界の魅力
（3）業界動向

この項目では、業界の事業内容や他業界との比較、業界特有の職種、そして業界に属する主要企業について解説します。

【事業内容】
業界を大きく分けると、木材から紙製品を作る「製紙会社」と印刷に特化した「印刷会社」に分けることが出来ます。

（1）製紙会社
製紙会社では、植林をするところから事業が始まります。環境破壊を防ぐため、各製紙会社は海外に巨大な植林地を有し、多くの場合は育ちの早いユーカリ材を植えています。伐採された木は、粉砕することによりチップとした後、日本へ運びこまれます。このチップを化学的に処理することによりパルプを調製し、パルプから紙を作るのです。製紙会社は、この「紙」の状態で販売を行うだけではなく、種々の目的に応じて表面をコーティングするなどして紙製品を作り、販売することもしています。

（2）印刷会社
印刷会社は「印刷」に特化している会社です。紙に特殊な処理を施すことにより、高機能な紙を調製し、付加価値をつけて販売しています。例としては、容器内の臭いを吸収したり、湿気を吸収しやすくしたものがあります。

【他業界との比較】
詳しくは後で述べますが、時代背景が似ている業界との比較として、今回は繊維業界を挙げたいと思います。
製紙の業界規模は4兆7,374億円、印刷は3兆8,383億円と、両者の業界規模は似たようなものとなっています。一方で繊維業界の業界規模は2兆2,927億円であることから、製紙・印刷業界の業界規模は繊維の約1.5〜2倍にのぼることが分かります。

一方で利益率はどうなっているのでしょうか。利益率ランキング上位10社の平均を見てみると、製紙業界4.6%、印刷業界4.4%に対し、繊維業界は8.8%と倍近い値になっています。
繊維業界の利益率が高い理由としては、炭素繊維を初めとした高機能繊維／繊維複合材料の販路拡大が挙げられます。

現在、製紙・印刷業界は業界規模の大きさによって利益率をカバーする形をとっていますが、今後は高付加価値製品の開発に注力し、利益率を増加させる戦略をとるものと思われます。

【業界特有の職種】
・法人向け新規開拓営業
・法人向けルート営業
・物流・在庫管理
・商品企画・プランニング
・応用研究
・技術開発
・生産管理・品質管理

【主な企業】
・製紙会社　　王子ホールディングス　日本製紙　レンゴー　大王製紙
・印刷会社　　凸版印刷　大日本印刷　

紙・パルプ・印刷・インキ業界で働くやりがいや魅力としては、主に以下の4つが挙げられます。

（1）社会に与える影響が大きい
紙は様々な形をとって身の回りに存在し、私たちの生活に欠かせないものとなっています。生活必需品である紙に関係のある業界に携わるということは、それだけ我々の生活に与える影響も大きいということです。

（2）新製品の開発に力を入れている
製紙・印刷業界は転換期にあります。各社は自分たちの技術を生かし、様々な高機能製品の開発に力を入れています。現在、特にセルロースナノファイバーの研究が盛んに行われており、今後はセルロースナノファイバーを用いた新製品の開発が中心になるものと思われます。

（3）環境問題への取り組み
製紙・印刷業界は木材を原料として製品を製造していることから、環境問題とは切っても切り離すことのできない関係にあります。各社環境問題への取り組みは積極的に行っており、環境問題に関心のある学生にとっては魅力的な業界です。

（4）勤続年数の長さ
製紙業界の平均勤続年数は16.7年、印刷業界は14.3年と、他業界と比較して勤続年数が長く、雇用が安定している傾向にあります。すなわち、従業員にとっては安定した労働環境が整っていると言えるでしょう。

紙・パルプ・印刷・インキ業界の動向は、2000年代後半から横ばい傾向になっています。 高度経済成長期頃までは、文化資本が豊かになり、�