総合商社を受けるなら「これだけは押さえておくべき」最低限の知識│就活研究記事
総合商社の成り立ちから現在、そしてそこを踏まえた未来への展望
その総合商社を取り巻く環境は近年大きく変化しています。
総合商社はどんな存在であり、今後どうなっていくのか。
総合商社の成り立ちから現在、そしてそこを踏まえた未来への展望までをまとめてみました。
◆ TOPIC
- 総合商社と専門商社の違いと、具体的な8大総合商社とは?
- 知っておきたい専門商社の特徴と主な企業
- 総合商社の始まりと歴史
- 総合商社の8つの機能とは?
- 市場規模は約42兆円。世界で圧倒的な存在感を誇る日本の総合商社
- 総合商社の今後のビジョン・戦略・方針とは?
- トレーディングだけが業務じゃない、商社の主な職種
- 世界を舞台に活躍する商社パーソン。向いているのはこんな人
- 高水準は本当?商社業界の年収ランキング。トップは三菱商事
- 総合商社業界の知っておきたい基本の言葉10選
- 商社業界に興味があるなら必ずおさえておきたいインターン情報
総合商社と専門商社の違いと、具体的な8大総合商社とは?
総合商社を成り立ちからふり返る前にそもそも「総合商社」とはどんな企業群を指すのかを確認します。
まず、「総合商社」とは商社の中の一つの形態で、商社の中で「総合商社」でないものは「専門商社」と呼ばれます。
ここでそもそも「商社」とは何なのかを確認します。
wikipediaには「商社(しょうしゃ)とは、輸出入貿易ならびに国内における物資の販売を業務の中心にした、商業を営む業態の会社である。 幅広い商品・サービスを取り扱う総合商社と特定の分野に特化した専門商社に区分される。広義の卸売業である。特に総合商社は日本特有の形態とされ、海外においても「Sogo shosha」と呼ばれる。」と記載されていました。
つまり元々は海外との貿易、輸出と輸入の間を取り持つ、「トレーディング」が中心の会社です。(※後ほど記述しますが、「トレーディング」が中心だったのはあくまで過去の話であり、現在はトレーディングビジネス”だけ”の会社ではありません。)
総合商社と専門商社の違いはいくつか挙げられますが、まず、トレーディングをメインで行なっていた会社のうち、特定の分野のトレーディングに携わっている会社を専門商社、幅広い分野のトレーディングに携わっている会社を総合商社と呼びます。
総合商社が「ラーメンから飛行機まで」というキャッチコピーを掲げていたこともありました。経営の安定化を目的に取り扱い商品・サービスを増やすとともに、「総合」商社であることを印象付ける必要があったからです。
貿易立国としての確立が国策だった高度経済成長期の日本で、総合商社は海外躍進のためのオーガナイザー役として、経済成長の牽引役を果たすことが目的でした。
このため、総合商社の「総合」は、多数の商品を扱っているというよりも、「オーガナイザー」という機能を意味しているとも考えられています。日本独自の理解で成り立つビジネスモデルであり、海外には日本の総合商社のような業態はないとも言われる理由です。
以上のことから、オーガナイザーとしての役割(後述)を果たせる企業を総合商社、オーガナイザーとしての役割を果たすことが出来ないが細かいニーズに答えて物を調達できるのが専門商社という考え方もあるようです。
総合商社というと一般的には以下の8社が挙げられます。
三菱商事、三井物産、伊藤忠商事、丸紅、住友商事、双日、豊田通商、兼松の8社です。
特に5大商社と呼ぶときは
三菱商事、三井物産、伊藤忠商事、丸紅、住友商事の5社を指します。
過去には10大商社と呼ばれた時代もありましたが業界内の統廃合や事業領域の縮小などにより現在の8大商社体制が出来上がりました。
知っておきたい専門商社の特徴と主な企業
以上、総合商社の特徴と代表的な企業を説明してきました。次に、総合商社の比較対象として、事業分野に特化している専門商社について解説します。
専門商社も仲介や物流でトレーディングビジネスを行ってきましたが、近年は事業投資をより強化する展開へとシフトしています。
情報収集・分析をはじめ、新商品調達、物流効率化、メーカーとの経営統合やプライベートブランドの開発・販売、小売店への販売支援の強化など、顧客企業・商品の付加価値の創造や高度化を担うパートナーという役割を果たすようになりました。
また、日本メーカーの海外進出が進むとともに、専門商社も海外展開や、専門分野の垣根を越えた再編・連携を活発化させています。今後はさらに、顧客の競争力強化と企業価値向上へのサポートが求められていくでしょう。
専門商社は、「メーカー系」「総合商社系」「独立系」と大きく3つに分けることができます。
・メーカー系専門商社
特定のメーカーを中核とした専門商社。そのメーカー商品を売ることがメイン事業です。代表的な企業として、JFE商事、花王カスタマーマーケティング、日産トレーディングなどが挙げられます。
・総合商社系専門商社
総合商社の特定分野を中核に成立した専門商社や、総合商社の事業投資により子会社化した専門商社があります。主な企業は、伊藤忠丸紅鉄鋼、メタルワン、三菱商事エネルギーなどです。
・独立系専門商社
総合商社などに属さない専門商社のこと指します。単独で事業を行なっているため、独自のコネクションを持っていることが特徴です。兼松、阪和興業、豊島などが挙げられます。
総合商社の始まりと歴史
<商社の起源は倒幕運動ー商社なくして起き得なかった明治維新ー>
商社のルーツは幕末まで遡ります。坂本龍馬が1865年に長崎で初の民間貿易会社となる「亀山社中(のちの海援隊)を設立したのが商社のルーツと言われています。
この亀山社中はイギリスから軍需品や蒸気船を買って長州藩や薩摩藩に提供するなど倒幕に大きく貢献しました。
その後明治維新を経て、三菱商事の前身となる九十九商会を岩崎弥太郎が設立します。三菱財閥の創設者と呼ばれる岩崎弥太郎です。
岩崎弥太郎についてはNHKの大河ドラマに登場することもあったので興味がなくても知っている人も多いのではないでしょうか。岩崎弥太郎は亀山社中で会計係を務めた人物でした。 九十九商会の設立と同じ頃、 三井物産の前身となる先収会社を井上馨、益田孝らが設立します。
<明治期の日本の発展を支えた商社>
出典:富岡製糸場|写真素材なら「写真AC」無料(フリー)ダウンロードOK
商社は明治初期に製糸業の発展を強く支えました。まず、製糸業に欠かせない製糸機械、紡績機械、発電設備などを輸入し、そして完成品である生糸、綿糸、織物などを輸出していました。
明治後期から大正中期にかけては鉄鉱石や石炭など日本に乏しい資源を輸入し、重工業の発展を支えました。
明治維新後の日本の産業の発展を強くサポートしたのが商社だったのです。その結果、国内の企業との強いコネクションを持つようになります。
その後第一次世界大戦が勃発し、軍需品の輸出が盛んになり、商社は凄まじい発展を見せます。
<総合商社の解散と大合同。そして商社の矜持>
しかしその後、関東大震災や昭和大恐慌の発生、また日中戦争や第二次世界大戦の勃発により欧米との貿易がストップするなど成長の阻害要因が続きます。 終戦後にはGHQ指令による財閥解体によって 三菱商事、三井物産はそれぞれ解散しました。
三菱商事は解散後、部長以上だった者が2名以上いてはならないなどGHQによる厳しい規制の中で、多くの社員が新会社設立を図りました。やがてその数は百数十社にまで拡大。戦後の厳しい経済状況下、その多くが倒産や吸収合併により姿を消していきました。
しかし、その後GHQは経済復興のために商社の存在は欠かせないと考え、役職員の雇用規制を解除します。その発表を受け徐々に三菱商事再建に向け新会社の集約、合併が進み1954年に新生三菱商事が発足します。
このとき、初代社長に就任した高垣勝次郎は以下のように語りかけ、多くの社員が涙したそうです。
「会社は営利事業ではあるが、利潤追求のために手段を選ばぬという考え方は許されるべきではない。我々は日本における代表的商社に属するとの矜持をもって万事正々堂々と行動し、健全かつ清新な社風の確立に努力すべきである」と。
三井物産も内部の争いなどもあり三菱商事の大合同に4年遅れるものの、大合同を果たします。
<戦後復興・高度経済成長期を支えた商社>
そして始まった三菱商事と三井物産の二大商社体制は戦後日本の高度経済成長を力強く支えることとなります。日本に数少ない資源である鉄鉱石、原油、石炭などを輸入し、重工業の発展に大きく貢献したのです。
商社はこの時代に「開発輸入」という事業を始めます。外国の資源を買い付けて輸入するだけでなく、商社自ら資源開発の事業に参加して資源の確保に努めました。開発にかかるお金を商社が負担したり、開発に使う機械を輸入したり、開発した資源を日本に運ぶためのタンカーなど船の手配をしたりと様々な仕事を行いました。
つまり、この頃からただの手数料ビジネスから事業開発会社の側面を持つようになります。
<オイルショックによる風評被害。社会への貢献を誓う商社>
しかし、1970年代に入りオイルショックが起こると商社はその犯人扱いされてしまいます。石油の値段が急激に上がったのは商社による石油の買い溜めや売り惜しみをしたためではないかとされたのです。
実際はそのようなことはなかったのですが、そう思われたこと自体を反省した商社は社会貢献に積極的に取り組み、法律はきちんと守るといった自主的な行動のルールを作り社会に公表しました。
商社は、商社の団体である日本貿易会が作った「総合商社行動基準」にしたがって、それぞれの会社で行動指針を作り、法律の遵守と情報の開示、社会に貢献することを強く誓います。
<商社冬の時代と事業の転換ー挑戦し続けることで生き残りを果たした商社ー>
オイルショックを境に、日本は低成長時代に入りました。商社の業績も落ち、なかなか回復しません。理由はいくつか挙げられます。
オイルショックの影響、当時の日本の主要輸出品となっていた加工度の高い製品(自動車、精密機械など)を作るメーカーでは商社の手助けがなくても独自で輸出ができるようになっていたこと、都市銀行の進出によって中小企業への融資における商社の必要性が小さくなったことなどです。
また、価格競争が厳しくなると、メーカー(川上)や小売り・消費者(川下)からは、「なぜ商社が必要なのか」と疑問の声があがるようになりました。商社がいなければ、取扱手数料を減らすことができるからです。これがいわゆる「商社不要論」。このように商社が酷く落ち込んだ時代を、後に「商社冬の時代」と呼ぶようになります。
商社は生き残りをかけ、BtoB(企業間取引)から、「川上」と「川下」に手をつけるという大転換を行いました。原材料の調達から製品・サービスが顧客に届くまでを、バリューチェーン(価値の連鎖)として捉え、川上、川中(川上と川下をつなぐ存在)、川下でそれぞれ利益をあげるようになりました。 さらに、これ全体を構築するオーガナイザー機能を自らの「存在価値」として位置づけし直しました。
低成長時代においては保守的な方向に走る会社も多くありますが、商社は低成長時代においても新しい分野へのチャレンジを重ねながら冬の時代からの脱出に取り組むのです。
特に注目したのが、ICなどのエレクトロニクス分野でした。将来、日本の産業構造が重化学工業中心から先端技術を活かしたエレクトロ二クス中心に代わると予想し、また石油に代わるエネルギーや、なるべくエネルギーを使わない省エネ技術、遺伝子組み換えなどバイオテクノロジーやコンピューターといった新しい分野の成長に期待し進出しました。
また、この時期に多くの日本企業が海外へ進出しており、商社はそうした企業に積極的に投資をしました。
<バブルの崩壊ー不況期下でも投資し続けた商社>
昭和が終わって平成になると、日本経済は大きな打撃を受けることになります。バブル崩壊です。
後に「失われた10年」と呼ばれることになるバブル崩壊の1991年から2002年まで、日本は景気低迷の時期でした。この頃、商社の業績も下がっていきます。
バブル崩壊で発生した不良資産の影響はもちろん、不況に苦しむメーカーがコスト削減のために、商社に頼らないで直接取り引きをするようになったり、取り引きする商社の数を減らしたりしたのも影響します。インターネットの普及により各メーカーはこういったことが可能になったのです。
これにより、国内販売や輸出入の仲介取引による手数料収入が減りました。
バブル崩壊で作ってしまった不良資産と、商社を取りまくビジネス環境の変化による利益の減少というダブルショックが、業績悪化の原因となります。
さて、仲介取引による収入が期待できなくなった商社は、別の事業に力を入れはじめます。それが事業投資です。
投資は商社の仕事のひとつで、昔から行ってましたが、バブル崩壊後、商社は今まで以上に投資に力を入れるようになります。
利益が出ない事業は他の企業へ売ったり、他の企業と一緒にさせる一方で、大きな利益が期待できる事業には、積極的に投資をしました。
特に、資源エネルギーに関する事業には力を入れるようになります。
不況期でも、商社は世界中で積極的に事業投資を行っており、これらの事業投資は、その後の商社に大きな利益をもたらすことになります。
また商社は、小売事業にも積極的に投資します。特に平成の不況下でも好調だったコンビニに注目し、コンビニ企業に投資して自分たちのグループ企業にしました。
例えば三菱商事はローソンの筆頭株主であり、伊藤忠商事はファミリーマートの筆頭株主です。三井物産も1.8%と株の保有比率こそ少ないですが、セブンイレブンに出資しています。
商社の歴史は日本経済の歴史とイコールである言っても過言ではないぐらいに密接しています。
その中で社会の変遷に伴って総合商社はそのあり方をただの仲介ビジネスから事業投資・経営ビジネス、川中だけでなく川上から川下まで全てを事業として持つバリューチェーンの考え方を根本に持ったビジネスへと変容していきました。
総合商社の8つの機能とは?
1.商取引機能-グローバルな商取引を推進する商社のコア機能
グローバルな需給格差や情報格差を活かした「モノ」や「サービス」の売買を地球規模で行なっている、いわゆる商取引を推進する、商社のコア機能です。2.リスクマネジメント機能-蓄積したノウハウを活用し、ビジネス上のリスクを最小限に止める
特に途上国の大型事業や新規成長分野でのベンチャー事業など、より高度なリスクマネジメントを求められる事業に対して、情報力と経験にもとづく多様なノウハウを活かして、適切なパートナーの選択やコンソーシアムの組成、責任分担の適正化、担保の確保、為替取引や先物市場(リスクヘッジ)、各種保険制度の活用などを行い、事業推進に伴うリスクを極小化しています。3.情報・調査機能-広範多岐にわたる情報を収集・分析し、日々のビジネス活動に反映
グローバルなネットワークを通じて、世界各地の政治経済情報、産業・企業情報、先端技術情報、市場・マーケティング情報、地域情報、法律・税務情報など広範多岐にわたる情報を収集・分析し、経営戦略の立案や事業計画の策定、日々のビジネス活動推進などに活用しています。4.ロジスティクス機能-物流事業に参入し、全体最適の物流システムを目指す
陸・海・空を問わず最適な物流手段を提供しています。また最近は自ずから物流事業に関わり、ITを活用した効率的な物流情報システムの構築や、倉庫・流通センターといった物流施設の運営にも参入しています。そして、顧客のニーズに合わせた、きめ細かな搬入・仕分け・配送・加工処理など全体最適の物流システムの実現を目指しています。
5.市場開拓機能-需給動向を分析し、グローバルな市場を開拓
グローバルに張り巡らされたネットワークを通じて、世界市場の情報収集・分析を行い、需要と供給をマッチングさせることにより、グローバルな市場開拓を進めます。広範にわたる商品やサービスについて、顧客ニーズの情報収集・分析などを通じた新たな市場の創造、新技術の紹介や導入先企業の発掘、取引先が開発した新規商品の販売支援など、さまざまなタイプの市場を開拓しています。いわゆるカウンタートレードは、グローバル・ネットワークを有する商社ならではの市場開拓機能のひとつです。6.金融機能-商社独自の金融機能を提供し、その深化・拡大を目指す
銀行などの金融機関とは異なる商社独自の金融機能を提供しています。例えば、取引先に対する立替与信、債務保証、融資、プロジェクトファイナンス、為替ディーリング、商品ファンド提供、リースサービスなどです。また、最近は有望ベンチャー企業にリスクマネーを提供し、育成を支援するベンチャーキャピタル機能、あるいはM&AやMBO・EBOなど事業買収・合併に関わる諸機能を提供するなど、商社の金融機能は最近の経済環境の変化に合わせ急速に深化・拡大しています。7.事業開発・経営機能-さまざまな機能を駆使し、事業の開発・育成とグループ経営の強化を目指す
社会・産業の変化のなかで、満たされないニーズに対して、情報収集・分析、原材料調達、製品販売、物流手配、資金調達、人材育成などの機能をフルに活用することにより、ニーズを満たすための新たな商品・サービス開発と事業化を支援・育成しています。また、様々な分野の事業経験を生かして、川上から川下までのバリューチェーン再構築、既存バリューチェーンの他分野への適用など、産業の変革を支援しています。8.オーガナイザー機能-各種機能を有機的に組み合わせ、大型プロジェクトを推進
特に高度経済成長期においてオーガナイザー機能が発展します。拡大途上にあった日本経済では、資源輸入の急拡大にしても、輸出市場の拡張整備にしても、大掛かりな組織力と信用力を必要としていました。その両方を兼ね揃えていた総合商社は海外躍進のオーガナイザー役を買って出るようになります。商社の大きな特徴の一つとして部門間の関係性が密接なことが挙げられます。 上記の8つの機能は一つ一つが分離しているのではなく、プロジェクト毎に様々な機能を組み合わせることで課題の解決にあたるのです。
例を一つあげます。
三井物産がブラジルで取り組んでいる農業事業の例です。
ブラジルには耕作可能面積が多くあるのに、農耕地として使われているところは少ないという状態にありました。今後世界の人口増加を見据えた上で食糧生産量を増やすためにもブラジルに農地を増やす必要がありましたが、様々な課題により難航していました。そこに 三井物産が挑戦したのです。
三井物産はまず農業事業会社シングー社を買収します。(情報・調査機能)(リスクマネジメント機能)(事業開発・経営機能)
それにより、実際に生産者の現場に立ってみたことでリスク要因や改善点が分かり、そこに対して 三井物産が科学的に解決するアプローチがとれるようになります。
また、広大な農耕地を手に入れたことで、広範囲に農地を拡散することが可能になり、場所によって生産物を分けたり、天候リスクをマネジメントしたりすることが出来るようになりました。
また、広大な耕作可能な土地を持ちながらブラジルにおいて農業が発展しないのは保管施設や運搬方法など、流通可能量に限界があり、それにより生産量が抑制されていることが原因でした。
そこで、三井物産はブラジルにおいて鉄道事業を寡占する2社のうちの1社であるヴァーレ社に出資し、流通の仕組みを整えていきます(ロジスティクス機能)
そうして生産、港まで運んだ農作物を世界各地で販売するのです
(市場開拓機能)(商取引機能)
市場規模は約42兆円。世界で圧倒的な存在感を誇る日本の総合商社
次に総合商社の市場規模を見ていきたいと思います。総合商社大手8社の国際会計基準(IFRS)に準拠した2018年3月期における売上高合計は約42兆円。当期純利益合計は約2兆1,000億円となっています。
総合商社は「会社を創る会社」とも呼ばれる通り、事業会社の設立や既存企業の買収を通じて新規分野へ参入するなど、時代やニーズに合わせて着々と巨大な企業グループを形成。
伊藤忠商事、住友商事、双日、豊田通商、丸紅、三井物産、三菱商事の7社だけで、国内外に約5,000社の関連企業があり、従業員数は約40万人にもおよぶほか、拠点数は国内25都市、海外234都市とグローバルなネットワークを有しています。
Forbes誌が毎年発表している世界の公開会社上位2000社のランキングリスト「Forbes Global 2000」によると、日本の商社は、“Trading company”というカテゴリーに分類されており、下の図表はその2017年版からTrading companyのみを抜き出したものです。
■2017年Forbes Global 2000における世界の総合商社
出典: 一般社団法人 日本貿易会
この カテゴリーに属する企業のなかで日本の総合商社は7社がトップ10にランクインしており、しかも上位5社を独占するなど圧倒的な存在感を示していることがわかります。
また、ランクインした他国の商社のなかで、日本の総合商社のような取扱品目や機能の多様性、グローバルなネットワークを持ち合わせた企業は見あたりません。
総合商社の今後のビジョン・戦略・方針とは?
ここまで総合商社の成り立ちから歩み、そして現在総合商社が備える様々な機能や市場規模などについてみてきました。
それでは私たちが今後生きていく世界において総合商社はどのようなことに取り組み、どのような存在になっていくのでしょうか。
総合商社各社の中期経営計画やその他WEBサイト上の情報、また役員や幹部メンバーへのインタビュー記事などを読むとだいたい共通して以下のワードが登場してきます。
「バリューチェーン」
「事業経営」
「非資源」
それぞれが意味するところを確認していきましょう
「バリューチェーン」
元々商取引機能しか有していなかった商社はいわゆる「川中」だけを取り扱う企業でした。しかし、近年川上から川中、川下までを取り扱う企業となっています。生産から流通、そして販売までを一括して自社(出資先なども含む)で行うのです。
全てを行うからこそそれぞれの部分で認識したリスクを他の部門に活かしたり、一つの地域で行なった事例を他の地域に活かすことも出来るようになります。
働く側の視点で言うならば商社で何かの担当になってやり続けるとそのビジネスの全て(生産から販売まで)を扱うことが出来るようになるかもしれないということです。
「事業経営」
総合商社は「商社冬の時代」にその存在意義を深く問われることになります。インターネットの普及により生産者と消費者が直接繋がったことで商社不要論が唱えられたこともありました。そこで商社はそれまで中心であった事業出資からさらに多くの価値を創出する事業経営に移行していくことになります。
トレーディングの利益を増やすための事業出資などではなく、出資先やその業界全体の成長に寄与するための事業経営を行なっていくのです。
「非資源」
伊藤忠商事は非資源事業である青果物事業「ドール」の急拡大により2017年3月期決算において過去最高益を記録
出典:スウィーティオ バナナ | バナナ | フルーツ・果物 | 商品ラインナップ
中国など新興国経済の減速を背景に資源・エネルギー市況低迷が長引いたことにより総合商社各社は「非資源」ビジネスに力を入れるようになっています。
資源でなく非資源に力を入れていた伊藤忠商事が純利益でトップに立ったこともありました。
資源価格が下降する中、いかに非資源で利益を出すかが各社にとって大事なテーマとなっています。資源・非資源の割合、非資源の中でも何に力を入れているのかを見ると各社ごとの特徴の違いが明らかになっていきます。
総合商社は前のTOPICで見てきたような国内社会の変化やインターネットの発展など国際社会の変化の影響を受け、上記のような変革を迫られています。
そのため、各社とも重要課題として掲げているのが「経営人材」を育てるということです。事業経営が出来る人材を出資先に派遣し、より深く経営に関わって事業を革新し、新たな価値創出をするために、その「事業経営が出来る人材」を育成することが非常に大事になってきます。
総合商社は今までも優秀な人材を排出する企業であると言われてきましたが、今後は今まで以上に育成システムに注力していくと思われます。
総合商社は今行なっている事業、今後行なっていく事業がそれぞれ現代の世界情勢はもちろん今まで歩んできた歴史にも強く影響を受けています。
総合商社を見る際は今のカラーの違い、今後の方向性の違いもですが、その根拠となる各社の歴史をしっかりもしっかりと確認して見ていけるといいのではないでしょうか。
トレーディングだけが業務じゃない、商社の主な職種
大手総合商社の例をとると、総合商社における基幹の職種である総合職には2種類あります。1つ目の職種は担当職で他業界の営業職のように、組織目標に沿った課題設定や、その実践実行が求められます。
近年は輸出入の商取引以外に、国内海外企業への出資や経営管理、経営人などの人材派遣、IT構築やシステム開発など、ある種、投資会社に近い機能が商社の業務内容となっています。
また、これらの機能を活かして新たな事業を立ち上げることも多く、人と人、企業と企業などをつなぎ合わせて新しい価値を創出していくことが新たな商社のカタチに。
商社パーソンは国を超え、常に新たなビジネスチャンスを見出していかなければならなく、海外現地法人、関係会社出向、研修員制度等により海外勤務の可能性が高い職種となります。
もう1つの職種は営業担当者をサポートする業務職で、電話応対や書類整理など事務職的な業務のほか、原料や製品を輸出入する際、税関での必要な手続きを担当する貿易事務的な仕事にも携わることがあります。
世界を舞台に活躍する商社パーソン。向いているのはこんな人
近年はデジタルトランスフォーメーション(既存のビジネスから脱却し、新しいデジタル技術を活用することで新たな価値を生み出していくこと)などにより、商社業界を取り巻く社会や顧客のニーズは大きく変化しています。
今後は想定外の競合相手が出てきたり、今まで無関係と考えていた技術やサービスが結びつき、新たなビジネスモデルが創造されたりするでしょう。
このような状況の中で商社は、性別・国籍にこだわらず、さまざまなバックグラウンドを持った多様な人材を求めています。既存の枠にとらわれない考え方や価値観を持つ社員一人ひとりが新しい発想を生み出しあって積極的に挑戦していくためです。
あなただけが持つ、誰にも負けない個性が貴重なものであることはもちろんですが、さらに商社に向いている人に備わっているのは、世界におけるビジネスの現場で、想定と現実が違ってもやり抜く強い意志を持っていること。泥臭くても、荒削りでも、やり遂げてやる、という強い意志を抱いている人です。商社が求めているのは、「真の挑戦者」なのです。
また、海外で仕事をする機会が多いことからTOEICはもちろん、簿記の資格を保有することを推奨する企業もあります。選考に影響することはありませんが、本気で商社を目指すのであれば今のうちから勉強しておきましょう。TOEICならば730点くらい、簿記は3級以上取得することをおすすめします。
高水準は本当?商社業界の年収ランキング。トップは三菱商事
続いて、気になる商社業界の年収を企業別ランキングで見ていきましょう。ビジネスリサーチ・ジャパンが発表した大企業の「従業員平均年収」ランキングの中から、商社業界に属する企業を選出し、下記表にまとめました。
出典: ダイヤモンドオンライン
トップは三菱商事で1540.9万円ですが、トップ7にランクインした企業がすべて1000万円を超えていることからわかるように、総合商社は総じて高給な業界であることがわかります。その理由として、商社は在庫を持たないためかかるコストが少なく、利益を人件費に回しやすいということが挙げられます。
また、海外赴任がつきものであるためその手当は高額です。特に新興国の場合はかなり手厚いとか。さらに商社パーソンは激務な仕事に取り組んでいることから、年収が高水準なのはそれなりに理由があるのもうなずけるのではないでしょうか。
総合商社業界の知っておきたい基本の言葉10選
総合商社業界で使われる用語を10語厳選して解説していきます。総合商社の専門用語というよりは、グローバルなビジネスにたずさわる人が覚えておきたい言葉と言えるでしょう。
・キャッシュ・フロー(CF)
資金の流れを意味します。資金の流出を「キャッシュ・アウトフロー」、資金の流入を「キャッシュ・インフロー」といい、2つを合わせて「キャッシュ・フロー」といいます。
・コーポレート・ガバナンス
日本語では企業統治と訳されます。企業の不正行為を防止するため、経営や経営陣を監視する仕組み。
・コンプライアンス
日本語では法令遵守と訳されます。社会的なルール、法律、命令を守ること。
・サプライチェーン
原材料の段階から、商品やサービスが消費者のもとに届くまでのプロセスのつながりのことを指します。
・ステークホルダー
株主、顧客、従業員、取引先、金融機関など、企業活動を行う上で関わるすべての人のこと。
・フリー・キャッシュフロー(FCF)
企業が本来の営業活動により得た営業キャッシュ・フローから、投資にまわしたキャッシュ・フローを差し引いたもので、自由に使うことができるキャッシュを指します。
・バリューチェーン
川上(原料)、川中(加工・製造、中間流通)、川下(小売)をつないで、収益の最大化を図る戦略。
・CSR
Corporate Social Responsibilityの略で、日本語では企業の社会的責任と訳されます。
・ESG
環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を取った文字。最近、企業評価をする際に財務情報だけでなく、環境問題への対応や社会との関係、企業統治の在り方といった「ESG」情報を利用する、「ESG」投資の注目度が高まっています。
・IFRS
International Financial Reporting Standardsの略で、日本語では国際財務報告基準と訳されます。国際会計基準と呼ばれることも。
商社業界に興味があるなら必ずおさえておきたいインターン情報
最後に、商社業界に興味がある人必見のインターンシップ情報です。今回は、就活生に人気の高い、伊藤忠商事、住友
内容については細心の注意を払っておりますが、ご利用に際しては、閲覧者各人の責任のもとにこれをご活用いただけますようお願い申し上げます。
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