出版業界の「これだけは押さえておくべき」最低限の知識│就活研究記事
スマホなどによる雑誌の定額制読み放題サービスが話題となり、新たな出版のカタチが注目されている出版業界。難関な筆記試験などが実施されるうえ狭き門となっていますが就活生からの人気は根強いものとなっています。
今回は、そんな出版業界に興味を持つ就職活動中の皆さんに、同業界の歴史から、概要、市場規模、最近の動向のほか、気になる年収や出版業界に向いている人物像などを紹介していきたいと思います。
国内出版業界の成長を牽引してきた「出版流通」の歴史
はじめに出版業界の歴史からみていきたいと思います。なかでも、日本特有の「取次」に注目してみましょう。取次とは、書籍や雑誌を出版社から仕入れ、書店に卸している問屋のような役割を担う会社を指します。
取次の歴史は明治時代に雑誌を配送しはじめたのが起源です。大正時代になると、その雑誌配送ルートに書籍も一緒に載せるようになったことが、現在の取次というビジネスにつながっているといわれています。
はじめて雑誌の流通に書籍を載せたのは講談社の創業者である野間氏。毎日書店を回る雑誌配送網に書籍を載せることで書籍配送費を節約し、そのぶん書籍を安いコストで流通させることに成功しました。
第二次世界大戦後、取次のおかげで日本の出版産業は、書籍、雑誌、マンガ、文庫など安価な出版物を全国に流通させることができ、アメリカに次ぐ世界第2位の市場規模まで成長しました。
しかし、今出版業界では出版流通を担ってきた取次が、デジタル化の影響で危機的状況に。 雑誌の販売で利益を得てきた中小規模の書店ですが、この20年余で雑誌の市場が3分の1以下に縮小し、特に雑誌の販売比率の高い小規模書店が急速に減少していることがその背景にあります。 取次の中には従来の流通業だけではなく、新たな分野に挑戦する企業が増えてきています。
変わりつつある出版業界のビジネスモデル
出版社には、創業者や経営者の経営方針により様々な専門があります。ファッション誌、女性誌、芸能誌、コミックなど幅広い種類の雑誌や、児童書、ライトノベルなど書籍を手がける総合出版社、そして、文芸、情報、学習参考書、地図など特定の分野に強みを持つ出版社があります。
主な出版社:講談社、KADOKAWA、集英社、小学館、学研ホールディングス、文藝春秋、新潮社、ダイヤモンド社、日経BPマ-ケティング、旺文社、光文社、徳間書店、東洋経済新報社、マガジンハウス など
出版業界では、出版社から出版取次を通じて各書店へと雑誌や書籍が流通する独特のビジネスモデルがあります。雑誌や書籍は出版取次から書店に委託販売され、一定期間に売れなかった場合は出版取次を通して出版社に返品されます。
主な出版取次会社:日本出版販売、トーハン、大阪屋栗田、中央社 など
また、近年は電子書籍やインターネット上の購読サイトなどの事業分野が増しており、それら電子書籍の取次を行う会社もあります。
主な電子書籍取次会社:メディアドゥ、モバイルブック・ジェーピー、パピレス、ブックリスタ など
Appleの参入でますます盛り上がる、定額制読み放題サービス
続いて、出版業界における最近のトレンドについて紹介します。
今、出版業界で最も注目されている話題の1つは、Appleの雑誌の定額制読み放題サービスでしょう。既存のAppleニュース配信サービス「AppleNews」に雑誌コンテンツが追加され、 「AppleNews+」としてパワーアップ。エンタメ、ファッション、ニュース、政治、ライフスタイルなど300の雑誌が提供されます。
雑誌のレイアウトはスキャンしただけではなく、iPhoneやiPadごとに最適化され快適に見られるように配慮されているとか。購読料金は9.99ドル/月で現在サービス対象国はアメリカとカナダのみ。2019年秋にはヨーロッパでも開始するようですが、日本での扱いについてはまだ不明。待ち遠しい限りです。
また、定額で雑誌が読み放題になるサービスとして、圧倒的な品ぞろえを誇るAmazonの「Kindle Unlimited」や、有名雑誌が充実している楽天マガジンがあります。ほかにもアムタス社が提供する国内最大級の電信コミック配信サービス「めちゃコミック(めちゃコミ)」なども多くのマンガファンから支持されています。
Appleだけでなく、今後も雑誌の定額制読み放題サービスがますます充実していくことでしょう。楽しみですね!
2018年出版市場規模は3.2%減の1兆5,400億円。紙は5.7%減、電子は11.9%増
公益社団法人全国出版協会・出版科学研究所によると、2018年における紙の出版物(書籍・雑誌)の推定販売金額は前年比5.7%減の1兆2,921億円。これで14年連続のマイナスに。書籍が同2.3%減の6,991億円であるのに対し、雑誌は同9.4%減の5,930億円と大きく減少していることが明らかになりました。
書籍のマイナス要因となったのは文芸、実用、文庫、新書など主要ジャンルで、児童書やビジネス書は前年並みをキープ。雑誌は月刊誌が同9.3%減、週刊誌が同10.1%減となりました。
紙出版物の不振の一方で好調なのが電子出版市場です。前年比11.9%増の2,479億円となりました。内訳は、電子コミックが同14.8%増の1,965億円、電子書籍が同10.7%増の321億円、電子雑誌が同9.8%減の193億円です。
電子コミックは一時期、海賊版サイトなどの影響で伸びが鈍化しましたが、売り上げは復調傾向にあります。また、電子書籍はライトノベル系の作品や紙でよく売れたビジネス書や実用書、写真集なども売れており、着実に成長していることがうかがえます。
以上、紙と電子を合わせた市場規模(推定販売金額)は前年比3.2%減の1兆5,400億円となりました。
出版における電子化の課題、1位は「権利処理の手間」
日本電子出版協会は「電子出版の著作権に関するアンケート」を出版社などにおこない、その結果を発表しました。そこからは、書籍の電子化における課題がみえてきます。例えば、「書籍・雑誌を電子化しない/できない理由」で一番多かった回答は「権利処理の手間」です。
■書籍・雑誌を電子化しない/できない理由
出典: 日本電子出版協会
具体的には「紙版の契約と同時に電子化の契約がなされず、電子化に際してあらためて手間をかけなければならないことが多い」「ガイドブックの場合、寺社仏閣、遺跡の肖像権処理が難しいケースがある」「著作権者が複数おり、許諾の手間がかかる」などといった問題があげられていました。
また、「書籍・雑誌を電子化しない/できない理由」の第2位となったのが、「売上やコストの問題」。「図版等が多い本の場合、電子も含めた権利処理をコストに反映すると原価がUPしてしまう」「特に既刊本に関しては権利処理が必要な上、OCRスキャンによる製作コストがあり、売上が見込めるものでないと電子化は難しい」など、電子化した際の売上に、権利処理のコストが見合うかどうかは大きなカギとなっているようです。
出版営業とは?向いているのはこんな人
出版社の仕事と言えば雑誌・書籍の編集の仕事を思い浮かべる人も多いと思いますが、最近は電子書籍・コミック、通販サイトなどデジタル・通販に携わる職種もあります。また、書籍やコミックのアニメ化、映画化、海外の出版に携わる版権の職種などもあります。今回は出版社の中でも営業職に注目し、出版営業について紹介したいと思います。
出版社の営業とは編集以外の仕事全てを指しており、広告・販売・宣伝・広報・制作などの業務があります。このなかでも例えば販売は、作品の特徴をつかみ、どう売るかを考えます。初版(最初にする部数)や価格を決めたり、プロモーションを考えたりするのです。
作品を読んでもらうために努力することで、作品の力を何倍にも大きくすることができる、そんなところにやりがいを感じることができる人に向いている職種です。
また、制作はコミックスの原価・スケジュール・装丁の管理が主な業務です。取引先は印刷や製本、加工会社など。出版社から発行するすべての雑誌、コミックス、書籍の印刷・製本を担う部署で、1タイトルに1人しかつかないこともあり責任は重大です。
そのため、自分の担当するタイトルが刊行したときには達成感を感じ、また、重版がかかったりするとやりがいを感じます。
制作での仕事は、本を作るための費用や発売までのスケジュール、装丁のチェックを行うことで、作家や編集の意向を目に見えるカタチに整えていくこと。出版の基本を学びたい、出版に携わりたいと考える人に向いている職種と言えるでしょう。
出版業界年収ランキング、トップは東洋経済新報社
続いて、気になる出版業界の年収を企業別ランキングで見てみましょう。
■出版業界 平均年収ランキング(2017-18年)
出典: 出版業界 平均年収ランキング(2017-18年)-業界動向サーチ
平均年収ランキングのトップは東洋経済新報社で1173万円。唯一大台と言われる1000万円を越えた企業となっていますが、他の平均年収口コミ情報によると、講談社の年収は1085万円だそう。
それぞれの出版社には理念や思想があり、出版物の内容などについて意見されたくない、買収されたくないなどの理由からか、非上場企業が多く有価証券は非公開です。このため年収ランキング内には大手が入っていませんので実情はわかりませんが、講談社の例のように高給であることが予測されます。
出版業界の平均年収は618万円となっており、今回ランクインした8社までが平均を超える水準となっています。
「ママイキ」「トルツメ」?略語が多い、出版業界の用語
続いて出版業界で使われているさまざまな用語について紹介します。仕事柄、校正に関するものが多いようです。校正とは原稿と校正刷りを対照し、誤りを修正指示する作業です。
・赤
校正時に誤字などの訂正指示をするために書き込んだ文字や記号のことで「赤字」の略。本文との見分けがつきやすいよう赤ボールペン、赤鉛筆で書き入れるところからこのように呼ばれています。
・ママイキ
校正する時に使う用語で「修正せずにそのまま活かす」という意味。
・トルツメ
これも校正用語で「指定の部分を取って詰める」ことを意図した言葉です。
・面陳(めんちん)
雑誌や本の表紙を表に向けた陳列のことを指します。
・雨垂(あまだ)れ
感嘆符「!」のこと。記号を逆さまにすると雨のようですね。
・耳垂れ
疑問符「?」にも俗称があります。
・埋草(うめぐさ)
余白を埋めるために挿入する短い記事や小さなカット(イラストなど)。
すぐ゙れた才能を発掘して世に送り出す。出版業界スタートアップ動向
「だれもが創作をはじめ、続けられるようにする。」をミッションに、表現と創作の仕組みづくりをしている、ピースオブケイク社 。
同社が運営するメディアプラットフォーム「note(ノート)」では、クリエイターが各自のコンテンツを発表してファンと交流することを支援しています。2014年4月にサービス開始し、現在までに約350万件の作品が誕生。月間アクティブユーザー数は1000万人に達しています。
また、note クリエイターが活躍する場を広げるために、ピースオブケイクがパートナーとともに才能の開花を後押しするプログラムを実施しており、書籍化やメディアでの連載、マネジメント契約、番組への出演など、クリエイターの個性とパートナーの強みや特性に応じて活動を支援しています。
■note クリエイター支援プログラムのパートナー企業
出典: ピースオブケイク
2018年4月にはじまった同プログラムのパートナーは合計43社まで拡大し、TOKYO FMはラジオ局で初の参画。note のクリエイターが活躍する場を広げるために、さまざまな強みを持つパートナーとともに創作を続けやすい環境づくりに取り組んでいます。
■同プログラム発の書籍「定番の“当たり前”を見直す 新しい料理の教科書」他
出典: ピースオブケイク
また、LINEのWEB小説投稿サービス「LINEノベル」も、誰でも簡単に作品を投稿することができ、作家デビューのチャンスもあるサービスとして注目を集めています。
一方で読者側はアプリをダウンロードするだけで、文芸からライトノベルまで幅広いジャンルの作品が読めるほか、読書時間に応じてチケットをゲットできるLINEならではの特典が人気です。
出版業界に興味があるなら必ずおさえておきたいインターン情報
最後に、出版業界のなかでも就活生に人気の、カドカワ、講談社、集英社、世界文化社、東洋経済新報社という、5つのインターンシップ
出版・雑誌業界とは?仕事・業界研究 - リクナビ
2018年出版市場(紙+電子)を発表しました|公益社団法人 全国出版協会・出版科学研究所
Apple、雑誌の定期購読サービス「AppleNews+」発表 | ギズモード・ジャパン
Apple、LINEノベル - 「小説が楽しいをつなげる」WEB小説投稿サイト
Amazon kindle Unlimited
JEPA|日本電子出版協会 電子化において課題となるのは何か?「著作権に関するアンケート」結果を発表
株式会社ピースオブケイク
職種紹介|集英社2020年度定期採用情報
出版営業の最前線|集英社2020年度定期採用情報
出版業界 平均年収ランキング(2017-18年)-業界動向サーチ
講談社の年収は1,085万円!生涯年収・給料・採用・強みを徹底解説!
おしえて!ドヤ顔できる業界用語 2019最新版
用語集 | 株式会社スリースパイス
インターン・説明会スケジュール|集英社2020年度定期採用情報
講談社2021年度定期採用プレサイト|講談社ってどんな会社?
記者・編集者【2019年12月18日(水)、19日(木)開催】|インターンシップ|採用情報|東洋経済新報社
(株)世界文化社のインターンシップ | マイナビ2021
株式会社KADOKAWA 1dayインターンシップ開催決定!
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