新型コロナウィルス感染拡大の影響を受け、大学入学時から行動が制限された学生生活を送ってきた24卒学生が、いよいよ就活の時期を迎えようとしています。コロナ禍での学生生活は、これから始まる就職活動にどのような影響を与えるのでしょうか。今回は、早期から就職活動に向けて動き始めた2名の24卒学生にインタビューをおこない、コロナ禍での大学生活や現在の就活状況、就活に関する悩みなどを伺いました。
【今回お話を伺った人】
都内私立大学 商学部 3年生 たく(仮名)
2024年卒業予定。コロナ禍で留学を断念した代わりに、早期から参加したゼミでは異文化について学ぶ。現在はサマーインターンにエントリーしつつ、念願の留学に向けて準備を進めている。
都内私立大学 法学部 3年生 なっち(仮名)
2024年卒業予定。大学では3つのサークルをかけもちしつつ、大学2年生の冬から就職活動を開始。現在は業界を絞らず、幅広い業界のサマーインターンにエントリー中。
目次
大学入学時はコロナ禍真っ只中。今ではほぼすべての授業が対面に
―お二人は入学時からコロナ禍での大学生活を過ごされていますが、大学1年生と現在ではどのような変化がありましたか。
たく:緊急事態宣言が出ていたこともあり、1年生の春学期はすべてオンライン授業、秋学期は少人数授業と体育だけが対面で実施されました。部活やサークルでの活動が大学側から制限されていたこともあり、サークルには入っていたものの活動はまったくありませんでした。
大学2年生になってからも大半の授業はオンラインで、対面でサークル活動ができたのも4回だけでした。そこから少しずつコロナが落ち着いてきたこともあり、今年の4月から徐々に対面での授業やサークル活動が解禁され、今はほぼすべての授業が対面になっています。
なっち:僕もたくさんと同じようにオンラインでの学生生活を送っていました。唯一救いだったのは、体育の授業で友人ができたことです。サークルでの活動が制限されており、大学外でのつながりを作ることが難しかったので、体育の授業がなければまったく友人関係を作れなかったのではないかと思います。
今ではすべての授業が対面になっていますが、毎日通学するのは大変なので、大人数の授業はオンライン、少人数の授業は対面というふうにハイブリッド式にしてほしいなというのが正直な感想です。
サマーインターンはとりあえず幅広い業界にエントリー
―就活をはじめた時期ときっかけについて教えてください。
たく:就活を意識しはじめたのは大学2年生の夏頃でしたが、本格的に「やらなきゃ」と思いはじめたのは今年の3月です。大学3年生になることをきっかけに、自然と意識が就活へ向きはじめました。
なっち:大学2年生の12月に「コロナ禍の影響で24卒も就活が危ない」というwebのニュース記事を見て焦ったことをきっかけに、就活を意識しはじめました。ただ、何から就活をはじめればいいのかわからなかったので、大学2年生のうちは就活の進め方について調べていることが多かったです。
―就活をはじめてから現在に至るまで、どのように就活を進めてきましたか。
たく:すでに企業マイページから10社ほどエントリーしており、今後も増やしていく予定です。インターンはすでに参加したものも含めると10社ほど応募しました。
複数daysのインターンにはあまり受かる自信がないので、1dayインターンを中心に業界や企業理解を深められればいいなと思っています。
就活をはじめた当初はコンサル業界を見ていたのですが、もう少し幅広く業界を見たほうがいいかもと思い、スカウトサービスも積極的に活用するようになりました。それと並行しながら、GDやES対策なども進めています。自己分析は就活をはじめる前から自主的にやっていたので、特に今はやっていません。
7〜8月の間にサマーインターンに参加し、9月からは1ヶ月間留学に行きたいと思っています。本当はもっと前に行きたかったのですが、コロナ禍で機会がなかったので…。1ヶ月という短い期間ではありますが、語学力をさらにアップさせて就活にも役立てたいです。
なっち:3月ごろから自己分析を進めつつ、春休みは時間があったのでスプリングインターンや選考にも参加しました。ただ、いざ面接を受けると自己分析が全然できていないことに気づき…。周りの学生はきっちり準備してきていたので、早期から動いている人たちのレベルの高さを感じました。
6月からはサマーインターンの応募を開始し、すでに20社ほどのインターンにエントリーしています。できるだけ多くの企業を見たいと思っているので、最終的には40〜50社ほどに応募予定です。
今いろいろな企業のインターンを見ているのですが、新規事業立案や機能提案をテーマにしたインターンが多すぎるような気がして…。もっと具体的な業務について知れるインターンがあれば嬉しいですね。
“納得がいけば”という前提で、年内には就活を終えたい
―今の時点で想定している今後の就活スケジュールについて教えてください。
たく:サマーインターン後に業界を絞って、秋以降に深めていくようなイメージを持っています。インターンで興味を持った業界の中から企業理念、経常利益、海外の売上比率、CSRなどの観点で企業を絞り、秋冬以降で早期選考に参加したいです。
希望をいうと、年内には志望する企業から内定をもらって就活を終えたいですね。わがままな考えですが、大学院への進学や長期留学も視野に入れているので、内定をいただいていれば安心して他の選択肢を考えることができるなと思っており…。コロナ禍で満足のいく大学生活が送れなかったので、大学院に行ってもう少し学生生活を続けたいなという気持ちがあるんです。
一方で、すでに魅力的な企業にも出会っており、ここに入社できたらいいなという気持ちもあるので、今後については迷い中ですね。
なっち:僕もサマーインターンで幅広い業界を見てから、それ以降にいくつか業界を絞ろうと思っています。
もちろん納得がいけばという前提ではありますが、たくさんと同じように年内には就活を終えたいですね。今サマーインターンの選考を受けていますが、就活はやはりメンタル面での浮き沈みが激しいのでこれが来年まで続くのかと思うとしんどくて…。
せっかく早めにはじめたので、早めに終えられればいいなというのが本音です。
“情報を取った者勝ち”のような風潮への違和感
―就活に関する悩みや不安などはありますか。
たく:周りに就活の話ができる人がいないので、周りの学生が何をしているのかわからなくて不安になります。サマーインターン後に業界を絞って、その後深めていくという進め方も合っているのか自信が持てなくて…。商学部に在籍しているので、士業系に行きたい人が多く、一般企業に就活している人が少ないんですよね。
就活のコミュニティにも入っていますが、関係性の薄い人と具体的な就活の話をするのはハードルが高いですし、みんなもあまり言おうとしないので、とりあえず手探りで進めているような状況です。
なっち:就活に関する情報がいろいろなところに散らばっていて、“情報を取った者勝ち”のような風潮に不安を感じます。どこからそういう情報をとってくればいいのかもよくわからないですし、その情報が正しいものかを見極めるのも大変なので…。
あとは、そういった情報の中にWebテストの回答やESの模範例なども見かけるので、自分を含めそういうものを使わずに就活をしている人が損をする仕組みにはならないでほしいですね。
今、就活について思うことは…
―最後に、就活に対して「こうなってほしい」と思うことや、人事の方へ伝えたいことはありますか。
たく:徐々に個人の多様性を認められる風潮が高まってきていると思うので、就活においてもありのままの自分を認めてもらえると嬉しいですね。就活をする中で「こうしなければいけない」という同調圧力には巻き込まれたくないですし、それは社会人になってからも大切にしたい価値観です。
今後人事の方と一対一でお話しする機会も増えていくと思いますが、お互いの価値観を深く知れるような場になると嬉しいです。
なっち:要望になってしまいますが、もっと学業に配慮した就活になるとありがたいです。7月末に試験があるのでその勉強をしたいのですが、平日もインターンや選考が普通に入ってしまうので、なかなか両立が難しく…。不安感から結局は就活を優先してしまうのですが、本当はもっと勉強に時間を割きたいです。
企業側の事情などもあると思うのですが、春休みや夏休みなど大学側のスケジュールに合わせる形で選考を組んでもらえると嬉しいです。
取材:小笠原寛、文・編集:西村恵