「グローバルに活躍したい」という想いから新卒で住友商事グローバルメタルズに入社した菊池大輔さん。人事1年目時代は新卒採用の課題だった「二番手採用」を脱却するべく、新しい採用手法を模索し続けたといいます。「学生一人ひとりが後悔しない選択をできるように、採用担当者としてできることを提供し続けたい」と語る菊池さんの、人事1年目から現在に至るまでの歩みについて伺いました。
 
 

住友商事グローバルメタルズ 人材総務グループ 採用・人材育成チーム サブリーダー
菊池 大輔

入社後は国内海外向けの鉄道関連部品を取り扱う部署で営業に従事。2019年4月に採用チームへの異動希望を出し、同年の8月に着任。採用・人材育成チームのサブリーダーとして新卒採用を牽引。

海外営業に憧れて、迷わず住友商事グローバルメタルズを選んだ

 
―菊池さんは2015年に新卒で住友商事グローバルメタルズにご入社されていますが、そこに至るまでの経緯について教えてください。
 
大学院に進学し一年留学していたこともあり、就活を始めるころには同期の大半はすでに社会人になっていました。そのため、本格的に就活をはじめる前にさまざまな会社で働いている友人や先輩20〜30人に会って話を聞き、そこから自分に合っている業界を探していきました。

もともと海外志向も強くグローバルに働きたいと思っていたことから商社業界に興味を持ち、周りから「菊池は商社が合ってそう」と言われたことも相まって就活の7割は商社の選考に時間を割いていましたね。

その中で第一志望としていた住友商事グローバルメタルズに内定をもらい、入社を決めました。
 
―住友商事グローバルメタルズを第一志望としていた理由について教えてください。
 
グローバルに働きたい、営業として最前線で働きたい、形に残る仕事がしたい、世界の変化を感じる場に身を置きたいという4つの軸にもっとも当てはまっていたからです。

住友商事グローバルメタルズは商社の中でも海外の売り上げ比率がとりわけ高く、当時の新卒は全員営業配属が確約されていたので、配属リスクの大きい総合商社は受けず、即決で内定承諾しました。

でも、いざ入社してみるとまさかの私ともう一人の同期だけが国内営業配属で…(苦笑)。適性を見ていただいてのことでしたが、語学力に自信があったので当時は正直納得のいかない気持ちでした。

しかし、2年目以降は少しずつ自分の努力が認められるようになり、3年目からは海外営業も任せてもらえるようになりました。国内市場と海外市場では営業スタイルも大きく異なるので、今から思えば、現場がいつも側にある国内営業で鍛えていただけたのは貴重な経験だったなと感謝しています。
 
 

最終決定権が相手にあるという点においても、営業と採用は似ている

 
―入社5年目で人事にご異動されたとのことですが、それは菊池さんのご希望だったのですか。
 
そうです。就活のときにいろいろな会社の話を聞く中で、「会社ってやっぱり人でできているんだな」と思ったことから、もともと人事の仕事には興味を持っていました。幼いころから人への興味関心が強いタイプで、つねに人と関わっていたいと思う性格も起因していると思います。

ただ、まずは現場で経験を積みたいと考えていたので、ある程度自分の中で営業をやりきったと思えるようになったタイミングで人事への異動を希望しました。
 
―人事にご異動されて、どのような所感を持ちましたか。
 
新卒採用を担当することになったのですが、相手に自社の魅力を伝えていくという点において採用と営業は似ており、それまでの仕事と大きなギャップは感じませんでした。

人事の中には「自分たちが学生を選んでいるんだ」というスタンスの方もいらっしゃいますが、最終的な決定権を持っているのは学生なので、そこは勘違いしてはいけないなと思います。

自分のちょっとした言動で今まで積み上げてきた信頼があっというまに崩れてしまうというシビアなところも含めて、採用と営業は似ていますね。
 
 

「二番手採用」から脱却し、本当に合う人材を探す方向へ舵を切った

 
―人事1年目はどのようなことに取り組まれましたか。
 
それまで住友商事グローバルメタルズは住友商事の仕事を受託していたのですが、2018年に会社が独立し、これから会社を背負って立つ人材を採用しなければいけないフェーズを迎えていました。

それに伴い、総合商社を併願している学生から採用するという「二番手採用」から脱却し、本当に自社に合う人たちに対して自分たちからアプローチしていくという方向へ舵を切っていきました。上司がいろいろなことにチャレンジさせてくれる方だったので、責任の重みを感じつつも新たな採用スタイルを模索した一年でしたね。

採用スタイルを変えて3年目になりますが、総合商社と並行して選考を受ける人の含有率は年々減ってきており、一方で専門商社や鉄鋼業界を志望、当社を第一に見てくれる人の割合が大幅に上がりました。当社にしかない事業や顕著な特徴も沢山あり、それらを真摯に伝え続けてきた結果が出てきていると思います。

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―新たな取り組みをはじめるにあたり、苦労した点などはありましたか。
 
既存の方法でも十分優秀層の採用はできていたので、周りからの「そこまで頑張る必要ある?」という空気を感じるときはありました。

ただ、会社全体の意識改革を行うためにはボトムアップで変えていくしかないと思っていましたし、結果が出れば必ず理解は得られるので、そこは気にせずに突っ走りました。

「なんとなく商社」という理由でうちを選んだ人に比べて、うちの魅力や強みをしっかりと理解したうえで入社してくれた人の方が当然ながら入社後のコミットメントが高いので、それを評価してくれている現場との協力体制も年々強くなっています。
 
 

「最終的にはあなたが決めることだよ」と迷いなく言えたのは、人事として大きな一歩だった

 
―人事1年目を踏まえて、2年目以降で変わられたことなどありますか。
 
人事の仕事は確固とした正解もなく、社会人というだけで学生さんも話を聞いてくれることから、俗人化しやすいと思います。

もう一段階、採用担当としての付加価値を高めたいと思ったので、2年目からはキャリアコンサルタントの勉強をはじめて専門的知識を身につけるようにしていきました。それをベースにして学生と対話することで、少しでも有意義な時間を相手に提供できればと思っています。

また、キャリアコンサルタントの資格を取ってからは内定辞退に対する捉え方も変わりました。人事1年目のときは、内定辞退の返事に対して自分を否定されたような気持ちになり、内心かなりショックを受けていて…。

しかし、勉強を通じて改めて、価値観や考え方は人それぞれであり、当社が“絶対解”ではないことを冷静な気持ちでとらえることができる様になりました。他社さんと競合した場合であっても、必要以上に相手を惹きつけたり、良い面ばかりを伝えるのは学生さんが考えることをやめてしまう原因になるため、重要な場面ほど等身大でフラットに向き合うことが大切だと思います。

「正直他社と迷っています」という相談を学生から受けることがありますが、「最終的にはあなたが決めることだよ」と迷いなく言えるようになったことは人事として大きな一歩だったなと思います。

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―人事1年目を振り返ってやっておいた方が良かったと感じることはありますか。
 
人事1年目のときはどうしても「会社をどの様に良く見せるか」ということにフォーカスしてしまいがちですが、もっと外の世界にも目を向けておくべきだったなと思います。

学生が数ある会社の一つとしてうちの会社を見るように、自分も客観的な視点に立って自社を見ることができれば、もっと早い段階で「自社に合う人」がどういう人なのかを定めることができたのではないかと思います。

また、自社の中にとどまらず、他社の人事の方からお話を聞くことで「そういう考え方もあるのか」と気づきを得ることも多かったので、ミートアップやセミナーなどには人事1年目から積極的に参加しておくことをおすすめします。
 
 

私たち人事は「選ぶ側」ではなく「選ばれる側である」ということをつねに忘れない

 
―人事3年目を迎えて、これからチャレンジしていきたいことはありますか。
 
学生一人ひとりが後悔しない選択をできるように、採用担当者としてできることを世の中に還元していきたいです。その第一歩として去年からほぼ慈善事業のような形で毎月学生向けに「キャリア塾」というものを開催し、自己分析ワークなどを実施しています。

これを自分たちだけでなく、会社の垣根を超えた取り組みとして世の中全体に広げていきたいですね。しっかりキャリアに向き合える学生さんが増えれば、社会や私たちの会社にも自ずと良い影響が返ってくるものと信じています。
 
―最後に、人事1年目の方へ伝えたいことはなんですか。
 
私たちは選ぶ側ではなく、選ばれる側であるという気持ちを忘れず、つねに学生と同じ目線に立って採用活動を行ってほしいです。そして、その関わり合いの中で学生の視野を広げることが人事としての義務であるということも大切にしてほしいですね。

人事は「なんとなく」でやっている中で慣れが生まれ、自分が知っている範囲や経験してきた範囲でしか学生と話すことができなくなってしまいます。そうならないように定期的に他者から学び、自分たちを定点観測していく必要があります。

私も人事としてまだまだなので、一緒に学び合う仲間を増やしていければ嬉しいです。
 
 
 
取材:小笠原寛、文・編集:西村恵