オンラインでのインターンシップが主流になる中、リアルな仕事内容や社風の伝え方について難しさを感じている人事の方も多いのではないだろうか。
昨年度、810人の学生向けに完全オンラインでの体験型ワークショップを開催したソフトバンクのお二人をお招きし、”圧倒的なリアルを提供する”オンラインコンテンツの作り方についてお話を伺った。

※本コンテンツは、2021年6月に開催されたiroots人事ミートアップの内容から構成されたものです。
 

ソフトバンク株式会社 コーポレート統括 人事本部 採用・人材開発統括部 人材採用部 採用推進課 課長
渡邊祐紀

2012年ソフトバンク新卒入社。法人営業、HRBPを経験後に新卒採用へ異動。マネージャーとして採用戦略立案、イベント企画、選考、内定者フォローなど新卒採用全般を担当。

 

ソフトバンク株式会社 コーポレート統括 人事本部 採用・人材開発統括部 人材採用部 採用推進課
和田真菜子

2015年ソフトバンク新卒入社。コンシューマ営業を経験後に新卒採用へ異動。学生フォロー、地方創生インターン、オンラインプログラムの企画運営などを担当。

“圧倒的なリアルを提供する”ソフトバンクのインターンシップ

 
ー最初に、ソフトバンクの採用について教えてください。

ソフトバンク株式会社 コーポレート統括 人事本部 採用・人材開発統括部 人材採用部 採用推進課 課長 渡邊祐紀氏

渡邊:弊社では「ソフトバンクの変化を楽しみ、何事にもチャンスと捉え挑戦する人」を求める人物像として、毎年550名規模の新卒採用を行っています。

学生ファーストの観点から、本人の意思によって選考を受ける時期が選べる「ユニバーサル採用」という方式を取り入れており、優秀な人材には広く門戸を開いています。

2016年まではいわゆるマス向け採用を行なっており、多くの母集団を集めてその中から選抜するという方式をとっていましたが、現在ではソフトバンクが求める人材に私たちからアプローチをしにいくという“攻め”の採用活動にシフトしています。
 
 

ソフトバンク株式会社 コーポレート統括 人事本部 採用・人材開発統括部 人材採用部 採用推進課 和田真菜子氏

和田:ソフトバンクの採用の中で、非常に重要な役割を担っているインターンシップについてお話しさせていただきます。
私たちは“就労体験の提供”と“採用”を目的にインターンシップを行なっているので、インターンシップを開催して終わりではなく、必ずインターンシップと選考をセットにして学生に提供しています。

インターンシップからミスマッチのない採用を行うには、まずは学生にソフトバンクのリアルな仕事内容と社風を知ってもらう必要があります。そのため、私たちは“圧倒的なリアルを提供する”ということをコンセプトにし、毎年インターンシップを開催しています。

新型コロナウィルスが流行する前の2019年までは、このコンセプトをもとに主に2つのインターンシップをオフラインで行なっていました。
 
 
①JOB-MATCHインターン
就労体験×採用直結型のインターンシップ。ビジネスコース、エンジニアコースに分かれ、営業や事業開発、エンジニアなど各部門の社員と同じ環境で2〜4週間業務を体験。2019年度の受け入れ実績は460人。内定後、参加者とソフトバンク双方が、インターンで参加したジョブでの配属を希望する場合は配属を確約。

②TURE-TECH(ツレ-テク)
地方創生インターンシップ。次の世代を作る変革リーダーを目指す学生のための地方創生インターンシップ・プログラム。2020年度は3,000名を超える応募から30人の学生が参加。フィールドワークを行いながら自治体のリアルな課題をテーマにし、最終的には自治体の市長に提案を行う。
 
 
JOB-MATCHインターンはもともとソフトバンクに興味を持っている学生にリアルな就労体験を提供するもので、TURE-TECHはソフトバンクに興味のない学生に対して地方創生という切り口からアプローチを行うというそれぞれの狙いがあります。
 
 

「毎年の決まりごと」としてインターンシップを実施しているわけではない

 
ーこれらのインターンシップを通じてどのような成果が得られましたか。
 
 
渡邊:どちらも“リアルを提供する”ということにこだわっているので、やはり入社後のミスマッチは起こりにくいです。実際、インターンシップ経由で入社した社員は他経由で入社した社員に比べて定着率が高いという結果も出ており、採用だけでなくその後の定着・活躍という面においてもインターンシップは有効な施策だと思います。
 
とはいえ、毎年の決まりごととしてこれらのインターンシップを行なっているわけではなく、採用全体の数字を見ながら毎年ベストな施策は何かということを考えています。効果が悪い施策はすぐにやめますし、一方で少しでも面白そうな案があればすぐに試します。“トライアル”という言葉を使わない年がないぐらい(笑)、毎年ブラッシュアップを行っています。
 
 
ーリアルな業務体験を提供するという点で、現場の社員の方の協力が不可欠かと思いますが、部門協力を仰ぐために工夫されていることはありますか。
 
 
渡邊:2012年からずっとインターンシップを実施しているので、インターンで受け入れた子が配属になり、活躍し、というサイクルがまわっているので、いつかは自分たちのためになるという実感は少しずつ持ってもらえているのかなと思います。とはいえ全社で見るとまだまだな部分もありますが…。

インターンシップの実績がない中で新しい施策を始めるときには、まずリレーションのある部門に相談し、小さくチャレンジしていくというのも有効な手段だと思います。実績がない中ですべての部門を動かしていくのは難しいと思うので、いざというときに頼れるようなリレーションを少しずつ作っていくことをおすすめします。
 
 

オンラインだからこそ、“今”のリアルな働き方を伝えられる

 
ー2020年度から、これらのインターンシップをどのようにオンラインで実施されたのですか。
 
 
和田:コロナの影響を受け、就労体験型インターンシップの「JOB-MATCHインターン」が実施できなくなったので、その代替として完全オンラインでの体験型ワークショップ「Beyond Border Week Challenge(BBWC)」を実施しました。

JOB-MATCHインターンの参加者が460人だったことに対し、BBWCは810人の学生が参加してくれました。JOB-MATCHインターンが中止になってしまったことは悔やまれましたが、ただでは転ばない精神で(笑)、ほぼ倍の学生にお会いすることができました。

私たちはリアルな就労体験のことをインターンシップと呼んでいるので、オンラインで2日間もしくは7日間という短いスパンで行うBBWCは、ワークショップと位置付けています。

営業体感コースでは、架空の企業を想定したテレアポ、ロープレ、課題解決提案までをオンラインで体験してもらいました。部門社員に協力してもらいながら営業にとってあるあるの課題を含めたストーリー設計をしっかりと行ったので、かなりリアルに近い営業を体験してもらうことができたと思います。

エンジニアコースは2日間で4職種の仕事内容を体感できるように設計を行い、オンラインでありながら満足度の高い体験をしてもらえるような内容にしました。

結果として、BBWC全体の参加者満足度96%と非常に高い評価を得ることができました。また、BBWCに参加した学生の9割以上が本選考に参加してくれたので、その点でも成果が出たと考えています。

現在はオンラインで働く社員も多いので、オンラインだからこそ“今”のリアルな働き方を伝えられるのかなと思います。リアル=オフラインという概念は徐々に変わりつつあるのかもしれません。
 
 

採用の先を見据えているからこそ、“リアル”にこだわり続ける

 
ーインターンシップから本選考までの導線はどのように設計されていますか。
 
 
和田:インターンシップ経由や一般応募経由など、入口ごとにフォローのロードマップを作成しています。実際にそれらを経由して入社した社員の声を参考にし、いつ、誰が、何をすべきかをかなり細かく設定しています。学生に対してやみくもにフォローするのではなく、適切なタイミングで適切な情報を提供できるように心がけています。
 
 
ー自社の良いところもそうではないところもリアルにさらけ出すという点において、社内で懸念の声などはありましたか。
 
 
渡邊:いえ、それはないですね。インターンシップに参加してくれた一部の学生が「ここは違うな」と思って辞退したとしても、それはそれで良かったんじゃないかと思います。最初にもお話しした通り、インターンシップの目的は“就労体験の提供”と“採用”ですが、ゴールは定着・活躍にあると思っているので、「合わない」ということが入社前に気づけたのはお互いにとって良い結果なのではないでしょうか。
 
 
ーそのような結果も含めて、圧倒的にリアルなインターンシップを提供することにはやはり価値があるということですね。本日はありがとうございました。