22卒のインターンシップ開催時期を終え、各社はその内容をどのように振り返り、何を23卒インターンシップに活かすのか。今回は22卒インターンシップをオンラインで開催した楽天とミキハウスでインターンの企画・運営に携わっているお二人にお話を伺いました。

※本コンテンツは、2021年2月に開催されたiroots人事ミートアップの内容から構成されたものです。
 

楽天株式会社 グループ人事部 採用推進課 新卒採用グループ マネージャー 椎野恭平

2008年に新卒として日本ヒューレット・パッカード株式会社に入社。2016年に楽天株式会社へ入社し、採用システムの導入・改善・オペレーション強化を経験。2017年にHRISグループマネージャーに就任し、人事システム導入プロジェクトをグローバルプロジェクトマネージャーとしてリード。2020年8月より現職。ビジネス総合職の新卒採用を担当。

 

株式会社ミキハウス 人事部 採用課 新卒採用担当 神谷優太朗

2016年に新卒で入社。初配属から現在まで約5年間、人事部採用課として新卒採用業務に従事。人材要件の選定、採用全体の計画・運営、内定後フォローなどを一貫して担当。

楽天、ミキハウスともに大きく方針転換を行なった22卒インターンシップ

 
ー22卒インターンシップの概要について教えてください。

楽天株式会社 グループ人事部 採用推進課 新卒採用グループ マネージャー 椎野恭平氏

楽天 椎野:前提として、弊社では今期も昨年同様700名規模の新卒採用を目指しており、どのような施策を行えば700名という大規模な採用を成功させられるのかということを、日々新卒採用メンバーとディスカッションしています。

今回のテーマであるインターンシップについてご説明しますと、弊社では毎年夏と冬にインターンシップを行なっています。21卒では長期のインターンシップを実施していましたが、22卒ではインターンシップの方向性をガラリと変え、夏に12コース別、1dayのインターンシップを開催しました。その1dayインターンシップに参加した学生を対象に、続編として5dayインターンシップを設けました。
 
 
ー12コース別・1dayインターンシップにされた狙いは何ですか。
 
 
楽天 椎野:22卒選考ではより多くの方にご応募いただき、選考を行うことが目標の1つにありました。例年インターンシップは次期選考の目標を意識して企画しているので、夏インターンシップではより多くの学生に参加いただき、楽天のことを知ってもらい、就活の際に弊社を意識していただくことを狙いにしていました。
 
 
ーミキハウスさんはどのようなインターンシップを開催されたのですか。

株式会社ミキハウス 人事部 採用課 新卒採用担当 神谷優太朗氏

ミキハウス 神谷:弊社では、昨年6月頃にコロナ禍によるアパレル業界への打撃を受け、弊社の魅力や販売職の在り方を再度定義し直そうということになり、それに伴ってオンラインインターンシップのコンテンツ内容も新たにしました。その後、企画期間を経て、昨年8月から現在(今年2月)に至るまでの半年間、新たなオンラインインターンシップをほぼ毎月開催してきました。

弊社も楽天さんと同じく、多くの方にミキハウスを知っていただきたいと考えているため、インターンシップ参加に伴う選考は行なっておらず、参加を志望した学生は全員参加いただけるようにしています。
 
 

残る課題は、「学生満足度」と「リソース」のバランス

 
ー実際にインターンシップを開催されて見えてきた収穫と課題は何でしたか。
 
 
楽天 椎野:まずは初めての取り組みであった12コースすべてをつつがなく開催できたことと、想定していた通りの人数の方にご参加いただけたことは良かったと思います。また、参加者アンケートの結果も好評だったので、今回実施した夏インターンシップは成功したと言えると思います。
もちろん、22卒採用の結果を最後まで見てみないと、この夏インターンシップがどの程度採用目標に貢献するかなど見えてこない部分もあるので、引き続き本選考の動向確認が必要です。
 
一方で課題だと感じたのは、リソースの問題です。選考時の面接官は現場社員に協力を仰ぎ対応いただいていますし、インターンシップのようなイベント・施策等にも現場社員の登壇をお願いしています。

ただ、今回実施したインターンシップやその他イベント、また選考周りのもろもろの業務は全て我々新卒採用グループの主管となり、応募人数が増えれば当然、人員数や組織体制も検討が必要です。

そうしたことから今期は、現在の状況を組織ごとに整理しました。その1つとして、組織内の課題と役割を明確にするために、これまでリクルーターチームが主に行っていた企画の立案や進捗確認の部分と、オペレーションチームが行っていたシステム運用・改修やデータ分析を専門的に担う部隊としてプランニングチームを新設しました。まだ新設したばかりのチームなので、日々改善を繰り返し、仕組みを整えていっています。
 
 
ーミキハウスさんはいかがでしょうか。
 
 
ミキハウス 神谷:21卒は目標エントリー数に対して7割程度しか達成できていなかったのですが、22卒のエントリー数はすでに目標を達成しており、インターンシップ参加者も21卒の2倍という結果になっています。もちろんオンライン開催で参加ハードルが下がったことも大きく関係しているとは思いますが、各社が手探り状態の中、半年間インターンシップを開催し続けたことが成果につながったのではないかと思っています。
 
見えてきた課題としては、楽天さんと同じくリソースの問題です。弊社はメインの担当が私ともう一名しかおらず、その人員で半年間100回ほどのインターンシップを開催したため、ほぼすべてのリソースをインターンシップに割くことになりました。

1回あたりの参加者を増やすという選択肢もありますが、学生が手触り感を持って参加でき、なおかつこちらもきちんとフィードバックができる規模は限られているので、学生の満足度を担保したまま、いかに効率よく体系化して運営していくのかというのは今後の課題だと思います。
 
 

インターンシップ当日のコンテンツだけで、他社との差別化はできない

 
ー従来のオフラインのインターンシップとオンラインのインターンシップで、意図的に変えた部分はありますか。
 
 
ミキハウス 神谷:コンテンツのストーリー性をより重視するようになりました。オフラインのときであれば、会場に来てもらい、我々が目の前で話すことによって学生に熱意や雰囲気を伝えることができましたが、オンラインでは良くも悪くも“なんとなく”という雰囲気は通用しません。そのため、オンラインのインターンシップではより綿密にストーリー性のあるコンテンツを作り込む必要がありました。
 
とはいえ、当日のコンテンツだけで他社との差別化を図るにも限界があります。そのため、離れていてもミキハウスの強みの一つである“温かみ”を伝えるために、インターンシップに参加いただいた学生全員に、後日弊社の商品と過去にお客様からいただいた感謝の手紙を送付しました。
 
 
楽天 椎野:参加者全員に郵送ってすごいですね。
 
 
ミキハウス 神谷:ありがとうございます。オフラインのときには会場の手配や設営などに時間がかかっていたので、オンラインになってその時間を別のことに使えるようになったからこそ出来たことだと思います。
 
 

自社の魅力を伝えるよりも、学生が満足できるコンテンツを大切にしたい

 
ー楽天さんはいかがでしょうか。
 
 
楽天 椎野:先ほどミキハウスさんから”人の温かみ”をいかに伝えられるかというお話がありましたが、弊社でもその点はすごく意識しています。
楽天の社員が活き活きと働いている様子を知ってもらえるよう、実際の業務に近いワークをインターンシップやイベントのコンテンツに盛り込んで疑似体験いただいたり、社内の様子をLIVE配信したりといった工夫を行っています。
 
また、自社の魅力の発信に加えて、“学生の満足度”を高められるコンテンツ作りも意識しています。
最近の学生の傾向として、特定の会社に限らず、どこでも活躍できる人材となることに意欲を持っている方が多いので、ポータブルスキルを高められるコンテンツを用意した方が満足度が上がります。

そのため、インターンシップの中でフィードバックをする際にも、「たとえ楽天に入社しなくても、ビジネスパーソンとして活躍できる人になるように」というポイントからフィードバックを行うようにしています。
 
 
ー5daysインターンシップの案内を行うときにも、そのポイントはお伝えされているんですか。
 
 
楽天 椎野:そうですね。このインターンシップを通じてどのようなスキルが身につくかというのは事前に伝えています。
ただ、どのように伝えれば魅力的に感じるかというのは学生によっても異なりますし、先にインターンシップの中身を全部伝えてしまっては逆に興味をひけなくなってしまうので、バランスだと思いますが、そのあたりのトーンがきちんと伝わるようにしています。
 
 

23卒は今期以上にオンラインインターンシップの質が問われる

 
ーインターンシップ自体は完全オンラインであっても、その前後でのコミュニケーションを丁寧に行うことで、学生との距離感を縮めることができるんですね。一方で、オンラインにおける見極めについてはどのようにお考えですか。
 
 
ミキハウス 神谷:見極めという点においては、オンラインにすべてを求めていません。そのため、先ほどお話ししたオンラインインターンシップでは基本的な素養だけを見るようにしており、それ以外のプラスアルファの部分に関しては、オフラインで見るようにしています。
本日お話しした通り、オンラインとオフラインにはそれぞれの強みがあるので、どちらかだけで完結するのではなく、どちらもうまく組み合わせて一つのコンテンツを作り上げることが大切だと考えています。

今期までは企業も学生も手探り状態だったので、弊社のようにとにかくインターンシップを多く開催すれば成果が出やすいという年だったと思います。しかし来期以降は、両者がある程度オンラインという環境に慣れてきた中で開催されるので、本当の意味でオンラインインターンシップの質が問われるようになるのではないでしょうか。
 
 
ー本日はありがとうございました。