新型コロナウィルスの感染拡大を受け、多くの24卒学生が大学入学時からオンラインを中心とした学生生活を送ってきました。サマーインターンを終え、いよいよ本格的にスタートする就活活動の中で、24卒学生はどのような価値観に基づいて行動・選択していくのでしょうか。現在就活真っ只中の24卒学生3人に、現在の就活状況やこれから迎える本選考時期の動き方、そして就活を通じて感じた企業に対する本音を聞きました。
 
 

大阪大学 経済学部 トマトさん(仮名)

2024年卒業予定。大学3年生の春から就活を開始。サマーインターンには10社ほど参加したものの、夏の時点では就活よりもアルバイトに力を注ぐ。現時点で志望業界はあまり絞っておらず、「好きなことを仕事に」という軸で気になった企業の選考に参加している。

早稲田大学 国際教養学部 すももさん(仮名)

2024年卒業予定。1年間の留学を経て、大学3年生の夏から就活を開始。マスコミを第一志望としており、夏の時期にはベンチャー、コンサル、デベロッパーなども含め約30社の選考に参加。現在は第一志望への内定獲得を目指して早期選考に参加している。

早稲田大学 文学部 ラッコさん(仮名)

2024年卒業予定。大学3年生の春から就活を開始。人事職や人材系、教育系を志望しており、10社ほどのサマーインターンに参加。スカウトを中心に就活をおこなっており、現在はサマーインターンで接点を持った企業の早期選考に参加している。

大学3年生の春・夏から本格的に就活をスタート

 
―最初に、就活をはじめた時期ときっかけについて教えてください。
 
 
トマト:就活を本格的にはじめたのは今年の5月からです。6月からナビサイトなどでの情報が解禁されるので、それよりも少し前に動きはじめた方がいいかなと。高校時代の友だちから「一緒に就活をしよう」と誘われたので、一緒にESを書くところからはじめました。
 
 
すもも:自己分析をはじめたのは留学をしていた大学2年生の冬ごろでしたが、留学中はあまり就活に時間を割きたくなかったので、自己分析以外のことはしていませんでした。そのため、本格的に就活をはじめたのは帰国後の今年8月からです。
 
 
ラッコ:大学3年生の3月末です。4月から就活解禁だと聞いたのではじめたのですが、今思えばなんの解禁だったのか…(苦笑)。大学1、2年生から長期インターンをやっている人もいたので、自分は動き出しが遅い方なんじゃないかという焦りもありました。とりあえずインターンに応募してみようと思い、就活サービスを利用しはじめました。
 
 

早期行動組とマイペース組…二極化する就活事情

 
―現在の就活状況について教えてください。就活ではどのようなサービスやツールを利用していますか。
 
 
トマト:おもに使っているのは、ナビサイトとスカウトサービスです。あとは友人の口コミとSNSですね。特にInstagramやTikTokには「●月にES締め切りの企業一覧」や「あの企業が求めている人物像は?」などの情報がまとまっているので、ナビサイトよりもわかりやすいです。指向性にあわせたコンテンツが表示されるので、わざわざ検索しなくても済むところも魅力的ですね。
 
 
すもも:私もInstagramやTikTokで流れてくる情報は参考にしています。情報がまとまっているのでわかりやすいですし、授業の合間などの時間で手軽にチェックできるのも便利です。あとはスカウトサービスも積極的に活用しています。ベンチャーは数が多すぎて自分で探すのが難しいので、スカウトをもらえるとありがたいですね。
 
 
ラッコ:私はスカウトサービスを中心に利用しています。就活をはじめたときはナビサイトも利用していたのですが、忙しくなるにつれて選考通過率の高いスカウトサービスへ移行しました。一部選考免除などのスカウトもあり、効率よく選考に参加できるのがいいですね。情報収集でいうと、一般的なSNS以外に大学のオープンチャットもよく活用しています。大学のキャリアセンターから学内セミナーなどのお知らせが届くこともありますし、学生同士で「●●のインターンについて教えてください」というやりとりをすることもあります。
 
 
―春から夏にかけてどのぐらい選考に参加しましたか。また、現状はどのぐらい就活に時間を割いていますか。
 
 
トマト:インターンに10社ほど参加しました。あまり企業を知らないので、とりあえず業界関係なく名前を知っている企業にESを出し、受かったインターンに参加しました。本選考ではベンチャーを受ける可能性もありますが、良くも悪くもインターンはインターンなので、本選考とは別で考えています。就活に割いている時間でいうと、現状は1割程度でしょうか。夏休みは基本的にアルバイトばかりしていたので…。マスコミ志望で早期から就活に力を注いでいる人もいますが、自分のようにとりあえずインターンに参加している人や、中にはまったく就活をしていない人もいるので、あまり焦ってはいません。
 
 
すもも:インターンに参加したのは15社、面談も含めると30社ほどでしょうか。基本的にお声がけいただいた企業の選考にはすべて参加していたので、夏休みはほぼ毎日就活をしている状態でした。私のいる学部には日本の就活に染まる気がない人も多いですし、早稲田祭が終わってから就活を…と考えている人もいるので、友人よりは多く行動している方だと思います。
 
 
ラッコ:インターンに10社ほど参加しました。合格したインターンは20社ほどでしたが、日程が合わなかったり口コミの評判が悪かったりした企業のインターンは参加を見送りました。就活に割いていた時間でいうと、私もTさんと同じように夏休みはほぼ毎日就活をしていました。周りには早期からコンサルや外資系を志望して行動している人もいれば、「就活って4年生の6月からはじめればいいんでしょ?」といっている人もいるので、かなり二極化している印象ですね。
 
 

参加してよかったインターン・いまいちだったインターン

 
―サマーインターンで印象残った企業の特徴を教えてください。
 
 
トマト:よくない意味で印象に残ったのは、メガバンクのインターンです。内容そのものが悪かったわけではないのですが、周りの学生のレベルが高すぎて、専門的用語などがまったくわからず…。実践的な内容にもついていけず、ただ大変そう…という印象だけが残りました。一方、ゲーム形式で企業の歴史や業務を学べたIT系企業のワークショップは満足度が高かったです。また、メンターの方がずっとついてくださり、随時フィードバックや手助けをもらえたインターンも満足度が高かったです。でも、今のところ「ここに行きたい!」と明確に思った企業はありません。
 
 
すもも:残念だったのは、参加者が6人しかおらず、かつ全体的に温度感が低い中でワークショップをやったインターンです。対面のインターンがめずらしかったので参加してみたのですが、時間がもったいないと思ってしまいました。いい印象だったのは、ベンチャーの3daysインターンです。3日間をかけておこなうとワークの内容も奥深くなりますし、参加者もみんな優秀で熱量が高く、社員の方からも丁寧なフィードバックをいただけたので大満足でした。
 
 
ラッコ:2週間の企画立案型インターンに参加したのですが、周りの学生と話が合わないと感じ、途中で離脱してしまいました。参加者にフィルターをかける必要はないと思いますが、切磋琢磨できるようなメンバーが集まっていないと時間がもったいないと感じてしまいますね。同じ2週間のインターンでも、大手メーカーのJOB型インターンは実務経験を学べたのですごくいい機会になりました。また、別の大手メーカーのインターンでは一風変わったコンテンツを通じて「自分に向き合う」という経験をさせてもらえたので、自己成長の観点から高い満足度を得られました。
 
 

「まだ業界は絞っていません」=志望度が低い?

 
―志望業界や企業はどの程度絞れていますか。
 
 
トマト:今のところはあまり絞っていません。ただ、就活をはじめたときに比べると知識も増えましたし、サマーインターンに参加してみて「自分には向いていないな」という業界は見えてきたので、徐々に絞れてきていると思います。自分の趣味やアルバイト経験から、マスコミや出版、教育や人材には特に興味を持っていますが、それが以外にもいいなと思う企業があれば、業界にこだわらず受けたいです。
 
 
すもも:マスコミを第一志望にしており、その中で行きたい企業も明確になっています。その他には、海外で働けるということを軸にベンチャー、コンサル、デベロッパーなども見ています。第一志望のマスコミに行けると嬉しいですが、狭き門なので絞り込みすぎないようにしています。
 
 
ラッコ:自分でオンラインの学習塾を開いていることもあり、現在は人事職や人材系、教育系を中心に見ています。これらの業界が本当に自分に合っているのかまではわかりませんが…。面接で「まだ業界は絞っていません」というと志望度が低いと思われてしまいそうなので、なるべく絞っていると伝えるようにしています。
 
 

就活の時期は1時間すら時間が惜しい。だからこそ嬉しいスカウトは…

 
―秋・冬にかけての動き方について教えてください。
 
 
トマト:春・夏のインターンの中には微妙だった企業も多かったので、秋以降は本当に魅力を感じた企業に絞って参加しようかなと思っています。本選考に関しては、早期選考を視野に12月〜1月ごろからエントリーを開始する予定です。インターンと違って本選考は失敗できないので、エントリーは出せるだけ出せればと思っていますが、おそらく20社程度になるのではないでしょうか。
 
 
すもも:夏までに接触した企業の早期選考に参加するつもりなので、秋冬のインターンに参加する予定はありません。現時点で本選考に進んでいるところが2社あり、それ以外にもマスコミや広告、コンサル、デベロッパーなどを中心に20社ほどエントリーする予定です。
 
 
ラッコ:私もサマーインターンに参加した企業の早期選考に参加するつもりなので、能動的に新たな企業のインターンに申し込むことはないと思いますが、いいスカウトをもらえれば参加したいです。すでに本選考に進んでいるところが5社、早期選考で10社、あとは興味のある企業を追加で10社ほど受けようと思っているので、エントリー数は少なくとも20社ほどでしょうか。
 
 
―秋・冬にもらうと嬉しいスカウトはなんですか。
 
 
トマト:本選考も視野に入ってくる時期なので、早期選考や選考優遇のスカウトをもらえると嬉しいです。一方で、説明会招待のスカウトは特別感が薄いのであまり魅力を感じないですね…。
 
 
すもも:同感です。今の時期はできるだけ結果に直結させたいので、説明会だけのために時間を使うのはもったいないと感じてしまいます。就活の時期は1時間すら惜しいと感じてしまうので、説明会は好きな時間に倍速で見られるアーカイブ配信の方がありがたいです。
 
 
ラッコ:私も同意見で、次のステップへの選考が免除されるようなスカウトは魅力的だと感じます。その中でも特に嬉しいのは個別面談ですね。自分のためだけに時間を割いてくださっているので、特別感を感じやすいです。逆に説明会で話されることはネットやOB訪問でわかることがほとんどなので、参加しないようにしています。
 
 

面接では「年内に就活を終えたい」。でも本音は…

 
―いつごろまでに就活を終えたいですか。
 
 
トマト:早ければ早いほど嬉しいですが、現実的に考えると大学4年生になるまででしょうか。ただ、早く終わりたいとはいっても納得感が大切なので、内定をいただいても他に志望度の高い企業の選考が残っていれば就活は続けるつもりです。
 
 
すもも:希望としては第一志望のマスコミに合格して、年内に就活を終えたいです。いずれにせよ年内には一旦結果が出るので、それによっていつまで就活を続けるか考えます。
 
 
ラッコ:面接では年内と答えていますが、志望企業の中には6月以降にしか内定を出さないところもあるので、実際には来年の6月まで続けると思います。その企業を志望していなければもっと早く終わりたいのですが…。
 
 

採用活動がもっと柔軟になれば、「内定とりゲーム」も終わる?

 
―最後に、「もっと就活がこうなればいいのに」と感じることはありますか。
 
 
トマト:就活自体がもっとカジュアルになれば嬉しいです。今の就活は型にはまった形式が多いので、個性を発揮できる場面が少ないように感じます。面接ではガクチカや志望動機など同じような質問しかされないですし、それに対してこちらが本音を言えるわけでもないので…。企業の方ともっとカジュアルに対話することができれば、等身大の自分で挑めるのにと思います。
 
 
すもも:もっとフィードバックをもらえるとありがたいです。合格したときにはフィードバックをいただけますが、落ちたときにはなかなか教えていただけないので…。合否に関わらず改善すべきところはなんなりといっていただきたいので、個別面談の最後などにフィードバックをいただけると嬉しいです。
 
 
ラッコ:これは学生側の問題ですが、就活がいわゆる「内定とりゲーム」になってほしくないと思います。本当は別にやりたいことがあっても、早く内定がほしいからという理由だけでコンサルや外資系を見ている人もいるので…。ただ、早く内定がほしいという気持ちは自分も同じなので、企業規模や業界に関わらず採用活動の時期がもっと柔軟になれば、学生側も焦らずやりたいことを探せるのではないかと感じます。
 
 
取材:小笠原寛、文・編集:西村恵