新卒で証券会社に入社後、社会人2年目からは営業・人事コンサルタントのフリーランスとして活動していた西村晃さん。ご自身のキャリアについて、「人生のゲームチェンジが起こったのは、人事としてSansanに入社したことだった」と振り返ります。現在は仲間と立ち上げた合同会社事業人の代表社員として、さまざまな企業の組織づくりの課題に挑む西村さんのキャリアと今後の展望についてお話を伺いました。
合同会社事業人 代表社員 西村晃
早稲田大学政治経済学部を卒業後、新卒で証券会社に入社。2007年よりフリーランスとして営業や人事コンサルティングをおこなう。2015年にSansan株式会社に入社し、新卒/中途採用を統括。また、「Eight Career Design」の事業責任者を務める。株式会社カケハシで組織人事の経験を積んだ後、株式会社リフカムにて執行役員兼社長室室長として事業と人事の双方を管掌。2022年4月より事業人の経営に専念することを決断し、現職。
目次
学生時代からスペシャリストに憧れていた
ー最初に、西村さんのルーツについて教えてください。
幼い頃から外面のいい子どもで、やんちゃな子とも真面目な子ともそれなりにうまくやるタイプでした。スポーツが得意で、野球やテニスなどで成果を出したときに周りの人が喜んでくれることがすごく誇らしかったことを覚えています。
その反面、人からどのように見られるかをすごく気にする性格で、周りの友人にはなかなか本当の自分を出せませんでした。結局、本当に気が合う友人に出会えたのは大学に入ってからでしたね。
高校2年生までは軟式テニスに熱中していたのですが、あるときトップの選手とお話しする機会があって、そこで年収を聞いてみたんです。
私はあまり裕福ではない環境で育ったので、将来は稼げる仕事に就きたいという気持ちが漠然とあって。
てっきりプロになれば稼げるのだろうと思っていたのですが、答えてくれた年収額は想像よりも一桁少なくて…。
そのこともきっかけの一つとして、きっぱりと部活を辞めて、受験勉強に専念して早稲田大学の政治経済学部に入りました。
そのときには弁護士に憧れるようになっていたので、司法試験の合格者が多いところに行った方がいいだろうと思ったんです。
その頃から、特定の分野におけるスペシャリストになりたいという気持ちが芽生えはじめていました。
そんな経緯で大学に入ったものの、入学後はサークル活動と飲み会に時間を費やして過ごしていたので、誇れるものは特にありません(苦笑)。
ただ、周りの仲間には本当に恵まれましたし、自分のアイデンティティを作ってくれた場所だったと思います。
私は昔から歴史や哲学がすごく好きだったのですが、地元ではそんな話ができる友人がなかなかいなくて。でも、大学にはどんな分野でも詳しい人が必ずどこかにいたので、気を遣わずに自分の好きなことについて語り合える友人もできました。
証券会社を経て、社会人2年目からフリーランスに
―西村さんは新卒で証券会社にご入社されていますが、そこに至るまでの経緯について教えてください。
実は私、ほとんど就活をしていないんです。大学時代から起業した先輩の会社で働いていたので、卒業後もそのまま続ければいいかなと考えていました。
ただ、当時は周りにいる優秀な人たちのように“何者か”になりたいという気持ちが強かったので、人材会社が主催する学生プレゼンの大会に出場したんです。
そのプレゼンを企業人事が見て、評価の高かった学生に内定を出すというもので、ありがたいことに私も7社から内定をいただくことができました。
同世代の優秀な人たちがたくさん出場していたので、その中で自分を評価していただけたことは一つの成功体験になりました。
結果的に内定をいただいた会社には入社しなかったのですが、そのときに出会った人事や経営者の方々には今でもお世話になっています。
卒業ギリギリまで先輩の会社で働き続けるか悩んだのですが、一度はサラリーマンの経験をしておいた方がいいだろうと思い、知人から紹介された証券会社に入社を決めました。
―証券会社に入社後、一年で退職されてフリーランスになられたのは何故だったのでしょうか。
金融について学ぶのは楽しかったのですが、自分にとっての意義を見出せなかったんです。
法人営業として金融商品を売っていたのですが、当然ながら株価は自分でコントロールできるものではないので、お客様を損させてしまったときに心からの「ごめんなさい」が言えないようになっていました。
そんな自分に対してこのままでいいのだろうかという気持ちが強くなり、入社一年で退職を決断し、営業コンサルティングのフリーランスとして歩みはじめました。
私は自分にスペシャリティがないことにコンプレックスを感じていたのですが、営業だけが唯一自信を持ってできることだったので、営業代行や営業教育の案件を受けながら徐々にクライアントを開拓していきました。
採用にはじめて関わったのは、フリーランスになって二年目のときでした。営業チームの採用から教育までを一貫してお願いできないかという依頼を受けたことをきっかけに、自分で採用をおこなうようになりました。
当時、営業コンサルタントはたくさんいましたが、人事コンサルタントはそこまで多くなかったので、肩書きを変えることで受けられる案件の幅がぐっと広がりました。これがHR領域に足を踏み入れたきっかけです。
Sansanへの入社で、人生のゲームチェンジが起こった
―その後、人事としてSansanへご入社された経緯について教えてください。
リーマンショックや東日本大震災の影響を被ったことをきっかけに、自分のポテンシャルやある種のノリだけで世の中に対応していることに限界を感じたんです。もう一度体系的に人事について学ぶ必要があるのではないかと。
それまでは自分のキャリアについて考えたこともなかったのですが、私生活での出来事もあいまって、本当にこのままでいいんだろうかと考えるようになり…。
このタイミングで一度キャリアをリセットしようと思い至り、そのときに出会ったのがSansanでした。
人生のゲームチェンジが起こったのは、Sansanに入社したことだと今でも思っています。
(代表の)寺田さんという名経営者と近い距離で、採用責任者として仕事ができるのはまさにスタートアップの醍醐味だなと思いましたし、ちょうどSaaSが盛り上がりはじめていた時期に業界をリードしていたSansanに身を置けたのはすごく貴重な経験でした。
なによりも大きな発見だったのは、自分は採用がすごく好きなんだと知れたことです。特にはじめましての相手とお互いの価値観を交換する面接という場がすごく好きで、1日16回面接をしても全然飽きませんでした。
相手が今までどんなことをしてきたのか、どんな価値観を持っているのかということに単純に興味がありましたし、同じように自分の経験や価値観について話をすることもありました。
一方で、人を採用することの重責について骨の髄まで叩き込まれたのもこの時期です。採用させていただいた方が入社後に活躍する姿も、こちら側の責任でご本人の力を引き出しきれなかった姿もたくさん見てきたので。
途中からは「Eight Career Design」の事業責任者になり、事業サイドから採用を眺められたこともいい経験になりました。
スペシャリティのなさにコンプレックスを感じ続けていましたが、Sansanに入ってやっと採用の中の面接という機能においてはスペシャリティがあると言えるのではないかと思えるようになりました。
人事は一生探索できる仕事。成長が成果に直結する楽しさを感じて
その後、カケハシにて評価制度やミッション・ビジョン・バリューの策定、OKRの推進、リフカムにて執行役員として事業と人事の管掌を経験し、今年からは仲間たちと立ち上げた合同会社事業人の共同代表としての活動に専念しています。
事業人は2019年に創業しており、それまでは兼業という形で共同代表を務めていたのですが、やはり自分で事業を作っていきたいという気持ちが強くなり、専念することに決めました。
現在、延べ70社の企業の人事業務の支援をさせて頂いており、大きな手応えを感じています。
仲間も増えて30名を超え、大きなチャレンジを今後していくのでこの記事を見てくれた人事や経営者の方ともコラボレーションをしていけると嬉しいなと思っております。
Sansan、カケハシ、リフカムでは、経営陣をはじめとして本当に優秀な方々に恵まれたと実感しています。
しかしその一方で、スタートアップの経営チームづくりの難しさに触れ、そういったところに組織づくりのコンサルティングをおこなう事業人の介在価値があるのだと実感しました。人事経験豊富な信頼できるメンバーと一緒に、組織づくりの課題に本気で挑戦していきたいです。
―最後に、これから採用に向き合う人へのメッセージをお願いします。
前提として、人事ほど誰かの人生に影響を与えられる仕事はそうそうないと思います。
特に面接は60分で人生が変わるかもしれない場なので、入社する・しないに関わらず、こちらも真剣に向き合う必要があります。ただ、そのためにはこちらも日々自己研鑽をしっかりと積んでおかなければいけません。
事業や組織のことだけでなく、歴史、宗教、哲学、アートなど、リベラルアーツ全般の幅広い研鑽を積んだ人事だけが相手の人生にコメントできるのではないだろうかと思います。
人事はやればやるほど幅が広がり、一生探索できる面白い仕事です。言い換えれば、「成長や学びが成果に直結する仕事」であるといえると思います。
ネガティブな経験や大きな失敗も、いつか誰かの痛みを癒す経験となります。とはいえ、私もまだまだ勉強中なので、ぜひ一緒に学びを深めていきましょう。
取材:小笠原寛、文・編集:西村恵