「社会に大きな変革を起こしたい」という気持ちから富士通に入社し、新卒一年目から人事のキャリアを歩み始めた渡邊さん。「採用は人事の中で最も”毎年チャレンジできる”仕事」と語る渡邊さんは、大学1・2年生向けの教育プログラム「FUJITSU Academy」や、学生一人一人に向き合った「1on1リクルーティング」などの施策を牽引してきた。HRBP、グローバル人事を経て、新卒採用責任者を務める渡邊さんのチャレンジの軌跡を辿る。
 
 

富士通株式会社 人材採用センター シニアマネージャー 渡邊賢

2005年に新卒で富士通に入社。主に採用部門やHRBPを経て、2016年からシンガポール法人に駐在。2019年に帰国し、現職。現在は新卒採用の責任者として、大学1・2年生向けの教育プログラム「FUJITSU Academy」や、学生一人一人に向き合った「1on1リクルーティング」などの施策を牽引する。

「社会に大きな変革を起こしたい」という想いから富士通へ

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―渡邊さんは富士通に人事としてご入社されたとのことですが、そこに至るまでの経緯について教えてください。
 
 
元々、漠然とではありますが、将来は人々の生活をより豊かにしていけるような仕事に携わりたいと思っていました。
私が大学3年生だったころ、ちょうど世の中に「Suica」が登場しました。当時はまだ電子マネーという概念がなかったので、プリペイド式の乗車券機能を持ったシンプルなものでしたが、人々の生活を豊かにするとはこういうことなのではないかとヒントを得ることができました。
 
そして世の中に大きなインパクトを与え、豊かな社会の創造ができるのは確かな技術力を持っている企業だろうと思い、富士通をはじめとした大手のIT系企業を志望しました。
 
その中でも、昔からコンピュータの製造技術に強みを持っている富士通であれば、きっと世の中に大きな変革を起こせるだろうと思い、内定をいただいた企業の中から最終的に富士通を選びました。
 
 

新卒一年目にHRBPへ配属。採用を行う上での土台が培われた

 
 
―新卒から人事に配属されたのは渡邊さんのご希望だったのですか。
 
 
第一志望が営業、第二志望が人事だったので、希望通りといえば希望通りの配属でした。学生時代からチーム一丸となれる部活や学校行事が大好きだったので、単純に人事という仕事も面白そうだなと思ったんです。具体的に何をやるのかはわかっていませんでしたが(笑)。
 
入社研修でひととおり人事業務を学んだあと、ビジネスマネジメント人事部という、いわゆるHRBPの部署に配属されました。最初はもちろん何もできないので、上司にいろいろと教えてもらいながら部署ごとのリソース配置の調整や、グループ会社との合併などに携わりました。
 
それから三年後に新卒採用の部署に異動したのですが、入社して最初にビジネスマネジメント人事として現場の状況や社員のリアルな声を聞く経験ができたのは、とても貴重な経験だったと思います。
 
 

採用は、人事の中で最も“毎年チャレンジできる”仕事

 
 
―新卒採用の部署に異動されて、どのような所感を持たれましたか。
 
 
すごく楽しかったですし、新卒採用にしっかり向き合ったあの期間があったからこそ、今の自分がいると言っても過言ではありません。そのぐらい、成長の機会を与えてもらったと思っています。

というのも、人事という職種の中でもとりわけ採用は「毎年チャレンジできる仕事」だと思うんです。HRBPや制度設計などは、規模の大きい話で毎年毎年変えるものでもないですし、体系化するまでには少なくとも数年かかります。一方、採用は自分で企画して、自分で実行して、自分で閉じることが一年間というタームでできる。たとえ失敗したとしても、それを学びとして翌年に引き継いでいけばいいのですから。
 
それが「同じことばかりをやりたくない。ルーティーンが嫌い」という自分の性格にすごく合っていましたし、若手のうちから企画や実行に携われる採用の仕事は、自立的な成長を促してくれました。
 
新卒採用の部署には六年間在籍していたので、その間に職種別採用のコース、求める人物像のガイドライン、内定者教育カリキュラムなど、それまでの富士通にはなかった新しい制度を作ることができました。
 
 

入社時はTOEIC300点台。猛勉強の末、グローバルを肌で感じるために海外へ

 
 
―新卒採用のリーダーをご経験後、グローバル領域の部署へ異動されたとお伺いしました。その背景について教えてください。
 
 
新卒採用の仕事をしている中で、「これからは採用においてもグローバルというキーワードが必須になってくる」と感じるようになりました。そのためには自分自身が海外に身を置き、グローバルのビジネスとHRの仕事を学ぶ必要があると思い、採用の仕事をしながら英語の勉強を始めました。

入社時に受けたTOEICの点数は300点台という実力の私でしたが(苦笑)、平日は毎朝オンライン英会話を学び、土日はマンツーマンの英会話教室に通う…という生活を一年以上続けた結果、なんとか英語力を身につけることができました。留学経験もなく、勉強も苦手なタイプだったので、あのときの頑張りは今でも褒めてあげたいです(笑)。

そんな希望が叶い、次はグローバルデリバリービジネスグループという、世界規模で富士通のビジネスを支援している部門のHRBPに配属されました。当時は上司が外国人だったので、日本にいながらもグローバルな環境を感じながら仕事をすることができました。そして、二年後には念願だった海外駐在が決まりました。
 
 
―駐在先のシンガポールではどのような業務に携わられていたのですか。
 
 
シンガポールがアジア全体を統括していたので、私もシンガポールを含むアジアの10ヵ国を担当していました。HRとして、駐在員の管理に加えて、アジア全体の人事制度企画を行い、その施策がうまく回るようにシンガポールから各現地に赴くこともありました。

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現地の労働法や文化慣習、ニュアンスがわからない中で人事制度を整えていくのはかなり難易度が高いことでしたが、それと同時にやりがいもありました。世界中を飛び回って仕事ができることも、自分の中では大きなモチベーションになっていました。
 
 

企業レベル=採用レベルではない。企業レベルを上回る採用のためにチャレンジしたい

 
 
―その後、2019年に再び新卒採用部署に戻られた背景について教えてください。
 
 
通年採用やジョブ型採用など、これから新卒採用市場が大きく変わろうとしている中で、富士通の新卒採用をひっぱっていってほしいと会社から打診を受けました。
正直、採用に再び戻ることはあまり考えていなかったのですが、期待いただいているからには富士通の新卒採用を新しく作っていこう、という意気込みで日本へ戻りました。
 
 
―戻られた後の取り組みについて教えてください。
 
 
「富士通という名前だけでは振り向いてもらえない人たちをどのように採用していくか」が胆になると思い、大学1・2年生向けの教育プログラム「FUJITSU Academy」や、学生一人一人に向き合った1on1リクルーティングなどの施策を始めました。これらの施策は採用目的だけでなく、まずは学生自身がキャリアを考える場を提供できればいいなという発想から生まれたものです。
 
先ほどもお話しした通り、私は同じことをするのが好きではないので、毎年何かしらのチャレンジをするよう部下に促しています。私自身、採用でのチャレンジを通じて成長することができたので、部下にも同じ経験をしてもらいたいと思っています。
正直、毎年同じことをしても採用はできるので、楽をしようと思えばいくらでもできますが、そこに成長はありません。企業レベル=採用レベルではなく、富士通という企業レベルを上回るような採用のプレゼンス向上に取り組んでいきたいです。
 
また、中長期的な観点で言うと、富士通だけでなく日本全体の新卒採用をより良いものにするために、インターンシップへの理解をもっと広げていきたいです。
シンガポールなど海外では基本的にインターンシップをベースに経験を積んでいわゆる正社員のポジションに応募をするというのが当たり前の世界になっています。

ジョブ型雇用が日本において今後のトレンドになるかと思いますが、日本の特異な新卒市場の良さを生かしたインターンシップのかたちがあると思っています。そのためには大学と国、そして企業がもっと連携していく必要があると思うので、その支援もしていきたいですね。
 
 

学生には、部下と対話するように接する。“企業の中”だけでなく、“社会”で活躍できるような成長支援を

 
 
―最後に、これから採用に向き合う人へ伝えたいことは何でしょうか。
 
 
採用は、人事領域の中で唯一社会とつながりを持っている仕事です。だからこそ我々は、「これから社会を背負って立つ若者の育成に関わっている」という誇りと自覚を持つべきだと思っています。
 
私は部下と接するときに、「富士通という看板がなくても社会で活躍できる人材になるためには、どのような成長支援をすればいいか」という観点を大事にしています。それは学生に対しても同じで、「自社に入る・入らない」の前に、「その人が社会で活躍するためにどうすればいいか」という観点で対話をする必要があるのではないでしょうか。
 
私たち人事が自分の部下と同じように学生の成長を支援できれば、日本全体がもっと元気で豊かなものになると信じています。