前職での経験から「採用して終わり、ではなく、教育から活躍まで見届けたい」という想いでISIDに人事として入社した伊藤謙介さん。入社してすぐの頃、現場への理解不足を社員に指摘された経験から、今では現場を巻き込んだ採用づくりを徹底している。学生一人一人の可能性を広げるため、低学年向けのキャリア教育から入社後育成までを見据え、日々奮闘する伊藤さんの人事1年目についてお話を伺った。
株式会社電通国際情報サービス コーポレート本部 人事部 伊藤謙介
大学卒業後、新卒でメーカーに入社。エンジニアとして活躍する傍ら、営業や広報、採用、技術者育成なども並行して行う。その後人事へ異動し、二年間採用を担当。その後、株式会社電通国際情報サービス(ISID)に人事として入社し、採用ビジョンの言語化、採用、入社後育成までを幅広く牽引。
目次
就職活動時の出会いから、人事という仕事に興味を持った
―伊藤さんは2017年に中途で電通国際情報サービス(以下、ISID)にご入社されていますが、そこに至るまでの経緯について教えてください。
大学卒業後、エンジニアとしてメーカーに入社しました。幼少期からずっとサッカーに打ち込み、大学卒業時にはプロチームに声をかけていただいたこともあったのですが、自分の実力を客観的に理解していたので、就職する道を選びました。
就職活動の結果、メーカーと商社に内定をいただいたのですが、2社それぞれの学生に対する対応が印象的で、それをきっかけに人事という仕事に興味を持ちました。
最終的に入社を決めたメーカーの人事の方は、それまで出会ったどの人事よりも魅力的な方で、自社の利益よりも多くの人を幸せにしたいという想いを持っている人でした。
それまで自分の中で「こういう人になりたい」と思ったことはなかったのですが、その人と出会って初めて「この人と一緒に働きたい!」と感じ、人事を志すようになりました。
一方で商社は、採用時と内定後で提示された採用条件が違ったことから、内定を辞退しました。
このような経験を通して、もし自分が人事になったら、どんなときでも誰に対しても誠実でありたいと強く思うようになりました。
入社後はエンジニアとしてキャリアをスタートさせました。
ゆくゆくは人事になりたいと考えていたものの、ファーストキャリアだからこそエンジニアを経験できるチャンスだと考え、希望を出しました。
本当は3年ほどで人事に異動したいと考えていたのですが、エンジニアの仕事は想像以上に面白く、気づけば7年が経っていました。
この会社ではエンジニアとしての業務もしつつ、自分の意思で他の業務もできるため、営業や広報、採用、技術者育成なども並行して行っていました。
そのような点も含め“自分らしさ”を発揮できる場面が多かったので、とてもやりがいのある七年間でした。
その後異動希望を出し、念願の採用部署に配属されました。
入社時の配属もそうですが、この会社は基本的に社員のやりたいことを尊重してくれる社風があったので、その点はとてもありがたかったですね。
“採用から活躍まで見守りたい”という想いから、転職を決意
―念願の採用部署に配属され、どのような所感を持たれましたか。
もちろんやりがいがありました。しかし、その会社では「採用」と「教育」の部署が完全に分かれており、採用した後は教育の部署に引き渡すという仕組みになっていたため、徐々に「採用して終わり、ではなく、教育から活躍まで見届けたい」という思いが膨らんでいきました。
また、これは良い面もたくさんあったのですが、社長が圧倒的なリーダーシップで会社を引っ張って行くタイプの方だったので、採用においても社長の意見が反映される傾向にありました。
私は自分のアイデアや施策をどんどん試していきたいと望んでいたので、2年間人事として働いたのち、それが叶う環境へ移る決断をしました。
そして人事を募集している会社を探す中で、ISIDに出会いました。
最初はISIDという会社の存在も知りませんでしたが、調べているうちに「自由」「裁量」「クリエイティビティ」というキーワードに惹かれ、選考を受けました。
面接の中で現場社員や役員と話すうちに、この会社であれば自分がやりたいことを追求できるのではないかと感じ、入社を決めました。
“学生と一緒に考える”ISIDの採用スタンスに共感した
―入社後、その印象とギャップを感じることなどはなかったですか。
まったくなかったですね。少しでも早く採用現場に入りたかったので、会社に頼み込んで二ヶ月前倒しで入社させてもらったのですが、その二ヶ月の間に「やはりISIDを選んで間違いはなかった」と確信しました。
私が入った採用チームには先輩社員が二人いて、はじめの頃はその二人と一緒にイベントの出展、面接、内定者フォローなどを行なっていました。その二人が学生と接している姿を見ていると、 ISIDに無理やり入社させるのではなく、“学生と一緒に考える”というスタンスをとても大切にしていることが伝わってきました。私も就職活動時の経験から、学生に対してつねに誠実でありたいと考えていたので、そこに対するズレがないことを改めて感じ、安心しました。
入社してから四カ月が経ったころ、先輩社員の二人が異動し、現場から来たメンバーと私の二名で採用を引き継ぐことになりました。
人事一年目で真っ先に取り組んだことは、採用のビジョンを“言語化”すること
―ISIDの人事一年目として取り組まれたことは何でしたか。
まずはISIDの採用において大事にしたいビジョンを言語化することから始めました。
「ISIDの採用って●●だよね」という共通の価値観があれば、社内外問わずより多くの人に私たちの想いを伝えていけるのではないかと思ったからです。
その結果、「関わる全ての人たちが幸せになる採用活動をすること」、「おもしろい、他にはないと言われる採用活動をすること」という二つをビジョンとして定めました。
このビジョンと今まで行なってきた採用活動を照らし合わせながら、残すものと見直すものを決めていきました。
学生の幸せを考えたときに、ISIDに入ることだけが正解ではないと思っていたので、その考え方を共有できる他社の人事と有志で集まり、合同イベントを開催したこともあります。
また、今までは新人の配属の際にその意図や背景などを新入社員に伝えるルールはなかったのですが、それも意図的に変えました。
配属の際にその意図や、会社から期待されていることを知ることで、その後の活躍度や幸福度が変わってくると考えたからです。
―当時の失敗談などもあれば教えてください。
学生への発信の仕方に関しては、もう少し慎重になるべきだったなと思います。
ISIDに入社してすぐにイベントや説明会の場に立っていたので、会社や現場に対する理解が十分でないまま、事実に自分の解釈やイメージを足して学生に伝えてしまっていたことがありました。実際、その場にいた現場社員からも「伝え方に少し違和感を感じた」というフィードバックを受け、反省しました。
それ以来、現場社員や役員をランチに誘ったりして、それぞれの立場からみんなが考えていることを学ぶようにしました。
その中で意識していたのは、無理に全員の意見を一致させようとするのではなく、十人十色の意見に耳を傾けるということでした。
所属や役職が違えば、考え方に違いが出てくるのは自然なことですからね。
このようなコミュニケーションを増やしたことで、私たちが掲げているビジョンに共感してくれる人もたくさん現れ、結果として協力者を増やすことにもつながりました。
単に仲良くするだけでなく、ビジョンを共有することで協力者を見つけることができたので、やはり最初にビジョンを言語化しておいて良かったなと思います。
学生の“自分らしさ”を引き出せる支援をしていきたい
―今後伊藤さんが取り組んでいきたいことは何ですか。
低学年向けのキャリア教育にもっと力を入れていきたいです。
そのきっかけとなったのが、私たちが大事にしている「先入観は置いていこう」という考え方です。
採用に携わる中で、惜しいことに多くの学生が先入観に縛られながら就職活動を行なっていると感じます。
例えば、「自分は文系だからエンジニアにはなれない」「専門知識がないからIT領域にはいけない」というような考え方です。
このような先入観が入ることによって、学生は将来の選択肢や可能性を自ら狭めてしまうことになります。
そこで私たちは、そのような先入観が入る前、つまり低学年の段階でキャリア教育を行い、もっと学生に視野を広げてもらいたいと思っています。
また、就職活動のタイミングで自分に合う会社と出会えたとしても、選考の際に本人の力を出し切れなければ、会社にとっても学生にとってももったいない結果となってしまいます。
そうならないためにも、早期からキャリアについて考える機会を提供し、就職活動のタイミングで本来の力を100%出し切れるような支援をしていきたいと考えています。
これは就職活動のノウハウを教えるという意味ではなく、学生の“自分らしさ”を引き出せる支援をしていきたいという意図です。
そして、「関わる全ての人たちが幸せになる採用活動をすること」という言葉の通り、この取り組みを学生だけでなく、ISIDで働く社員にも還元していきたいです。
「会社や学生のことを知っている」という自覚は持たない方がいい
自分が会社のこと・学生のことを知っているという自覚は持たない方がいいです。
「自分は学生のことをわかっている」と思っている人事の方もいらっしゃるかもしれませんが、世代が変われば考え方も変わっていきます。
いくら歩み寄ったとしても、私がZ世代のみなさんを完全に理解することは無理だと思っています。
もちろん私たち人事が学生のことを理解する努力は惜しまずやるべきですが、やはり学生のことを一番よくわかっているのは学生です。
そのためISIDでは、就活生や低学年向けコンテンツを企画する際には、学生である内定者に意見をもらいながら一緒に作り上げています。
同じように、現場のことを一番わかっているのは結局現場の社員です。また、学生も人事ではなく現場社員からリアルな現場の話を聞きたいと思っています。
だからこそ採用や研修の場で、学生と年代の近い若手社員や、現場をよく知っているベテランの社員を巻き込むことが重要なのだと思います。
入社後のギャップを生まないために、この先何年人事の経験を積んだとしても、「知った気にならない」ように私も心がけていきます。