23卒採用の本選考に向けて各社の動きが活発になる中、年内〜年明けからは24卒採用を検討し始めるという企業も一部増えているのではないでしょうか。

新卒採用計画を立てる上で重要なポイントの一つに、「毎年変化する学生の興味関心・志向性をどのように捉えるか」という点があります。

それを捉える上で、どの企業も考えなければいけなくなっているのが「社会課題に対する学生の興味関心」です。
事業成長や利益の追求だけでなく、社会の中でどのような価値を出せるのかということも、学生が就職先を決める上での重要な指標になりつつあります。

そこで今回は、社会課題に対する学生の意識はこの2年間でどのように変化したか、その中でも特に学生が興味を持っている社会課題のキーワードとは何か、ということについて調査しました。
 
 

社会を揺るがす出来事が起こると、学生の就職先選択にも変化が起こる

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新型コロナウィルスの流行など、社会に大きな影響を与える出来事が起こった後には、学生の社会課題に対する意識は大きく高まると言われています。
また世の中では政府・民間ともにSDGsの取り組みが活発化し、11月1日からは地球温暖化対策を話し合うCOP26が開催されています。

これらの出来事により、「企業が社会課題に取り組む姿勢」が学生の就職先選択に与える影響は今後より大きくなっていくと予想されます。

では、実際にコロナ禍前に就活を行っていた21卒学生とコロナ禍での学生生活を経て就活を迎えた23卒学生では、どのぐらい意識に変化があったのでしょうか。

21卒学生と23卒学生のirootsプロフィール(※)をもとに、この2年での変化を調べました。

※irootsプロフィール…新卒スカウトサービス「iroots」に学生が登録しているプロフィール。幼少期からの経歴やスキル、将来像を最大6000字で記入している。
 
 

コロナ禍、社会課題への注目…2年間でSDGs関連のキーワード出現率が155%純増

 
学生の社会課題に対する興味関心の変化を調べるにあたり、SDGs 17のゴールで使用されている次のキーワードに注目し、これらのキーワードが使用されたプロフィールの数が21卒学生と23卒学生でどのように変化したのかを調べました。
 
 
<SDGs 17のゴール・キーワード>
貧困 飢餓 保健 教育 ジェンダー 水・衛生 エネルギー 成長・雇用 インフラ・産業化・イノベーション 不平等 都市 生産・消費 気候変動 海洋資源 陸上資源 平和 実施手段

 
 
▼SDGs 17のキーワードが記入されたirootsプロフィール数の比較(21年卒・23年卒比較)

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図のとおり、コロナ禍前に就活を行っていた21卒学生とコロナ禍での学生生活を経て就活を迎えた23卒学生のirootsプロフィールを比較すると、SDGsに関連するキーワードが155%も増えていることがわかります。

多くの企業・団体が社会課題への取り組みを積極的にPRし始めたことや、新型コロナウィルスの流行によって顕著となった貧困・格差の問題が学生の意識に影響を与えていると予想されます。
 
 

海外留学、研究テーマ…大学生活での学びがキーワードとして上位にランクイン

 
次に学生がSDGs 17ゴールの中でも、何に対して注目が集まりつつあるのかを知るために、各キーワードの増加率を比較しました。
 
 
▼irootsの学生プロフィールにおけるSDGs17キーワード増加率ランキング(21年卒・23年卒比較)

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※外務省HP記載の、SDGs17ゴール、及び図解にあるキーワードから可能な限り原文の主要ワードを抽出・集計 ※(17実施手段)は本来の趣旨以外の活用が想定されるため、「グローバル」キーワードをSDGs説明文中より抽出・集計 ※キーワードを同一プロフィールで複数記入しているプロフィールは1としてカウント※(6水・衛生)(8成長・雇用)(9インフラ・産業化・イノベーション)(12 生産・消費)はいずれか単語記入を1としてカウント ※適切な比較を実施するため、3ヵ年の学生総数が同一になるように分母を調整
(参考資)https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/pdf/sdgs_gaiyou_202108.pdf

 
 
加えて、上位にランクインしているキーワードがirootsのプロフィールの中でどのように活用されているか、代表的な事例をいくつか挙げました。
 
 
▼irootsプロフィールにおけるキーワード活用事例(※個人情報の観点で原文を一部修正しています)
 
<第1位:ジェンダー>
・留学経験の中でジェンダーに興味を持ち、国際機関でインターンをした
・ジェンダーにおける先進的な考えや取り組みを理解するためにヨーロッパで暮らす経験をした
・ヨーロッパの大学でジェンダーを研究する人との出会いは私を変えた
・高校生でジェンダーについて学んだ。男女が平等であるために自分には何が実行できるのか考えている
・大学の授業でジェンダーなどを学んだ経験から、女性が社会進出する為にどんなことが必要なのか興味を持った
 
 
<第2位:気候変動>
・大学院では途上国の気候変動と、そこにおける農家への長期的な影響について研究している
・大学のゼミでは気候変動のテーマに興味を持ち、いかに脱炭素社会を構築できるのかを研究した
・学生時代の探求テーマは持続可能な循環型社会の実現だった。環境保全の為に気候変動について学んだ
・次世代への責任を果たすために、気候変動や差別問題など、大きな社会課題解決の為に自分を活かしていきたい
・気候変動やその他の社会課題に対して、関心を持つだけではなく、実際の仕事で貢献したい
 
 
<第3位:不平等>
・情報を持つ企業が栄え、持たざる企業は衰退する。この不平等を解決したい
・不平等や不便など多くの「不」を無くすことに貢献したい
・テクノロジーで、社会の「不平等や非効率性」を解決したい
・世の中から不平等を減らしていきたい
・グローバル社会に多い不平等をしっかり理解し、課題解決をしたい
 
 
第1位の「ジェンダー」は、2年前に比べ3倍以上増加しています。2021年3月に世界経済フォーラム(World Economic Forum:WEF)が発表した、世界各国における男女格差を測るジェンダー・ギャップ指数(Gender Gap Index:GGI)で日本は156カ国中の120位と低迷しています。海外留学など、日本国外との接点が多い今の大学生の問題意識が浮き彫りになりました。
もともと存在した男女間の正規・非正規雇用の格差も、コロナ渦における「対面型サービス」の減少で更に拍車をかけている点は学生の「女性が社会進出する為にどんなことが必要なのか」への関心を促進させていると言えます。
 
 
第2位の「気候変動」は、COP26の開催や真鍋淑郎氏のノーベル物理学賞受賞などメディアで取り上げられることが多い話題です。ゼミ・研究テーマとして探求している理系学生も多いことから、興味関心度の高いキーワードとしてランクインしています。
また興味関心や学業での探求の粋に留まらず、「実際の仕事で貢献したい」と考える学生も存在します。
 
 
第3位の「不平等」は、感染症のパンデミックにおいてより浮き彫りになった問題です。
地域医療格差から始まり、在宅勤務で新たな可能性を広げられる人々、それとは逆に失業せざるを得ない人々との格差。
世界的な持つ者・持たざる者の格差は学生の視点でも明らかになってきています。
 
 

まとめ

 
上位にランクインしているキーワードとその活用事例をみると、留学や研究など、大学生活の中で学んだこと・経験したことをきっかけに社会課題に興味関心を持ち、社会の一員としてそれらの課題を解消していきたいと考えていることがわかります。

withコロナ時代に学生生活を送っている24卒学生についても、社会課題に対する興味関心は引き続き上昇トレンドとなる予測です。

このような学生の興味関心を理解した上で、自社の何が「魅力」として学生に伝わるのか、学生の何を事前に知る必要があるのかが見えてきます。
学生との接点を持つすべての社会人(人事・リクルーター・面接責任者)自身が社会課題に対する関心をより深めることで、アカデミックの世界にいる学生との円滑なコミュニケーションを促進し、本音を引き出せることで、相互理解、さらには入社した後の活躍につながることが期待できます。

人事・採用として、本業での「社会貢献」と「人材採用」の両立に本記事が少しでも役に立てば幸いです。