近年、多くの企業において副業をはじめとした社員の「課外活動」が推奨されるようになりました。それは社員の課外活動を支援する側の人事においても例外ではなく、本業以外の場所で「人・組織」を軸にした活動をおこなう方が増えています。本連載では、そんな課外活動に挑戦している人事の方にインタビューし、課外活動をはじめたきっかけやその内容、本業との課外活動の関わり方などについてお話を伺います。

第2回目はサイボウズの人事・石川憂季さんをゲストにお招きし、コロナ禍ではじめたカレー屋の店長としての活動と、Twitterを中心に立ち上げた300人規模の人事コミュニティでの活動についてお伺いしました。
 
 

石川憂季 サイボウズ株式会社 人事本部

2016年4月、大手建設会社に総合職として新卒入社。本社の人事部、財務部を経験したのち、2020年5月にサイボウズ株式会社に人事として入社。採用業務を中心に、キャリアコンサルタントの資格を生かしてキャリア支援の制度企画や人事制度を社外に発信するなど広報業務もおこなっている。

サイボウズの人事が、なぜ「カレー屋の店長」に?

 
―課外活動をはじめた時期ときっかけについて教えてください。
 
私は2020年5月にキャリア採用でサイボウズに入社したのですが、コロナ禍だったこともあって社外の人とつながりを持てる機会が少なく…。

社外の人とのつながりを作りながら本業とまったく別のことにチャレンジしてみたいという想いではじめたのが、カレー屋でした。この話だけを聞くと、「なぜカレー屋?」と思いますよね(笑)。

そもそものきっかけは、コロナ禍で在宅勤務がはじまり、ランチに毎日カレーを食べるようになったことでした。毎日なにを食べるのか考えることが面倒だったので、自分のルールとして基本的に「ランチはカレー」と固定したんです。

そこから色々なカレー屋さんに足を運んだり、本を買ってスパイスを調達したり、通信講座でカレーについて学ぶ『カレー大学』に通ったりと、単に食べるだけでなく、カレーについての知識も深めていきました。

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そうやって日々さまざまな種類のカレーを食べているうちに「同じ場所で毎回違ったカレーが食べられる場所がほしいな」と思うようになり、「毎回さまざまなカレー屋さんがやって来て、そこにカレー好きの人たちが集まる場所を自分で作れないか」と考えはじめました。

そのためには「まず自分でカレー屋をやってみないとお店の人の気持ちがわからないよね」という考えに至り、2021年1月22日のカレーの日に合わせて、カレー部「華麗な日常」を立ち上げて、カレー屋づくりを始めました。

アルバイトを含めそれまで飲食店での経験がまったくなかったので、本当に0からのスタートでしたね。

幸いなことにサイボウズは副業に寛容な文化や制度があり、本業とはまったく違う副業をしている社員も多いので、新しいことに挑戦できる環境に恵まれていました。

過去にもカレー屋をはじめて最終的に独立した人もいると聞いたこともあるので、サイボウズ的にカレー屋の副業は全然めずらしくないみたいです(笑)。
 
 

カレー屋と並行して立ち上げた人事コミュニティは300人規模にまで成長

 
―あらためて課外活動の詳しい内容について教えてください
 
スポットで場所を借りてそこでカレー屋を営むという『間借りカレービジネス』をしています。

昨年には『東京・間借りカレーウィーク』というイベントにおいてカレーをもっとも多く提供した店として優勝し、最近では下北沢で開催されているカレーフェスティバルにもゲストとして出店しました。

カレーの聖地ともいえる下北沢のイベントに、お店を立ち上げてから一年で呼んでいただけるようになるとは思ってもいませんでした。

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現在一緒にカレー屋を運営しているメンバーは私を入れて5人です。はじめは友人と二人ではじめたのですが、SNSで私たちの活動に興味を持ってくれた2名がまず仲間に加わってくれました。

最初に4人でそれぞれ自分がやりたいことを話し合った結果、私が店舗全体の運営、友人が外部との調整、女性メンバーがレシピ開発と調理を担当するという分担になりました。

自分たちの活動やビジョンを発信し仲間を集め、それぞれの得意分野に合わせて役割分担をし、お客様に喜んでいただけるものを提供するというのは、採用からオンボーディングまでを担う人事の仕事に通じていると感じます。

カレー屋をはじめたときには多くの方に知ってもらえるよう、SNSでの発信にかなり力を入れました。

インスタグラムでハッシュタグを作ったり、noteを毎日更新したりという活動を意識的におこなっているうちに、先ほどの二人以外にもSNSの運用を支援してくださる方や、お店のロゴをデザインしてくださる方など、さまざまな方の力を借りることができました。

SNSの発信をきっかけに、インスタグラムの運用などをやりたい、と声かけてくれて、もう1名仲間も増やすことができました。

サイボウズ入社時に作ったTwitterアカウントでは、本名に加えて「カレー好き人事」というふうに名乗っていました。最初はつぶやくネタがなかったので、人事とカレーのことをつぶやくことで自分らしさを伝えていければと思ったんです。

そこからスタートしたTwitterで徐々に他社の人事の方とつながるようになり、勉強会や読書会を開催するようになったことを機に『人事の語り場』というTwitterコミュニティを立ち上げました。

コミュニティでは会社の垣根を超えて、仕事やキャリアについて相談しあえるような交流が生まれており、ありがたいことに現在では300人以上の方にご参加いただいています。
 


 

「将来の夢はサラリーマン」だったキャリア観に変化が

 
―課外活動を通じて得られた気づきや、難しいと感じることを教えてください。
 
食材の調達、時間管理、動線設計など、普段人事の仕事をしているときに使っている頭とは全然違う頭を使うので、学ぶことが多い反面難しさも感じますし、カレー好きが集まる場所を作りたいという目標に対してはまだまだ課題だらけです。

資金繰りや衛生管理などについても自分たちで考えなければいけないので、経営者目線というとおこがましいかもしれませんが、ビジネスの成り立ちについて知れたことは大きな気づきですね。

また一方で、仲間集めやチーム運営、外部連携など人事の仕事と一部通じる部分もあるので、その点においては本業にも活かせる学びを得られていると思います。
 
 
―課外活動をおこなう前と後で変わったことはありますか。
 
 
いろいろありますが、一番大きいのはキャリアについての考え方が変わったことです。

私は幼稚園の頃から「将来の夢は会社員」と書いていたような子どもだったんですが(笑)、カレー屋の経験を通じてサラリーマン以外の選択肢があってもいいなと思えるようになり、大人になってから夢を見つけられました。

サイボウズが好きなので、転職して他の会社に行くという考えは現時点では特にありません。課外活動を通じて、会社でできないことは会社以外のところで仲間を集めてやればいいんだというふうに視野を広げることができました。

また、今ではTwitterの人事コミュニティも自分の居場所になっています。

コミュニティを運営し続けるという難しさはありますが、他社の人事の方からいただくお悩みやご意見は学びになりますし、新しいことに挑戦している同世代の方を見ると「自分も人事としてもっと成長しなければ」と刺激を受けます。

中には個人的に飲みに行くようになった方もいて、社会人になってから会社以外のところでも仲間ができたことを嬉しく思っています。
 
 

人事として成長しながら、“場づくり”にも挑戦していきたい

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―最後に、課外活動を踏まえてこれから描いていきたいキャリアや展望について教えてください。
 
今後もカレー屋とTwitterコミュニティを運営しながら、場づくりに挑戦していきたいです。

コロナ禍で行動が制限される中、人に会うことの大切さを私に限らず多くの人が痛感していると思うので、さまざまな人が集まる場所にカレー屋がある、というふうに自分の活動をいい形でつなげられればと思っています。

本業ではサイボウズで人事としての専門性を高めつつ、ゆくゆくは他社の人事制度設計や社員のキャリアや成長を支援できる仕事などにも携わっていきたいですね。自分の仕事を通じて、働くことが楽しいと思える人をもっと社会に増やしていくことができれば嬉しいです。
 
 
 
取材:小笠原寛、文・編集:西村恵