「オンラインで採用できた」ということがゴールではない|サイボウズ×三菱総研が語る新卒採用”100%オンライン化”から見えてきたもの

「オンラインで採用できた」ということがゴールではない|サイボウズ×三菱総研が語る新卒採用”100%オンライン化”から見えてきたもの

 新型コロナウィルスの影響を受け、選考を急遽オンラインに切り替える企業が増えている。サイボウズと三菱総研も従来はオフラインで行っていた新卒採用を、21卒採用から100%オンラインへと切り替えた。
 オフラインからオンラインへ選考を切り替えたことによるメリット・デメリット、withコロナ時代における今後の採用の在り方についてお話を伺った。

※本コンテンツは、2020年5月に開催されたiroots人事ミートアップの内容から構成されたものです。

Speakers:
サイボウズ株式会社 採用推進部 新卒採用チーム リーダー 綱嶋航平氏
株式会社三菱総合研究所 総務人事部 人事グループ 主任 中村公省氏

Moderator:
エン・ジャパン株式会社 新卒iroots事業部 山崎壮太

記事の目次

  1. 1.コロナの影響を受け、急遽すべての採用活動をオンラインに
  2. 2.2時間で160件の質問が寄せられるオンライン説明会
  3. 3.例年以上に読めない“内定承諾率”
  4. 4.3daysのオンラインインターンシップを終えて
  5. 5.アンケートから見えてきた、オンライン就活に対する学生の意識
  6. 6.「オンラインで採用できた」ということがゴールではない

コロナの影響を受け、急遽すべての採用活動をオンラインに

iroots 山崎:最初に、21卒採用をオンラインへ切り替えられた経緯と、選考フローについて教えてください。

株式会社三菱総合研究所 総務人事部 人事グループ 主任 中村公省氏
2011年に新卒で大手印刷会社へ入社。労務管理・評価制度などを担当。2016年に三菱総合研究所へ入社。以来、主に新卒採用や人財育成を担当。

三菱総合研究所(以下、三菱総研) 中村:コロナの影響を受け、今年の3月から採用活動をすべてオンラインへ切り替えました。説明会はLIVE配信を行い、録画したものも後日マイページにアップし、参加できなかった学生も視聴できるようにしました。

その後の選考フローとして、弊社では面接の前に論文試験を実施しているのですが、それもすべてオンラインへと切り替えました。今までは会社に足を運んでもらい、時間制限付きの中論文を書いてもらっていたのですが、マイページ内で時間制限を設けるという方法を使い、在宅で受験していただきました。論文試験後に複数回行う面接もすべてオンラインで行い、結果21卒学生に関してはこれまで一度もオフラインで会っていない学生もいます。

21卒の計画では、グループディスカッション選考を実施しないことをもともと決めていたこともあり、急遽オンラインに切り替えた形にはなりましたが、比較的スムーズに進めることができました。

オンラインへ切り替えた結果、地方や海外に住んでいる学生、博士課程をはじめとした研究で忙しい学生からは「会社へ足を運ばなくても選考を受けることができて助かる」という声をたくさんもらっているので、オンライン化によるメリットは大きかったと感じています。

 

サイボウズ株式会社 採用推進部 新卒採用チーム リーダー 綱嶋航平氏
2017年新卒入社。入社以来、一貫して新卒採用業務に従事。2019年10月から新卒採用チームのリーダーとして、サイボウズの新卒採用戦略の設計、採用活動の運営を行っている。

サイボウズ 綱嶋:弊社もコロナの影響を受けて、今年2月下旬から面接を、3月上旬から説明会をすべてオンライン化しました。もともとオフィスで説明会を開催していたときは、東京、大阪、愛媛の3拠点合わせても1回あたり150名ほどの参加が限界でした。それをオンラインに切り替えてからは、約2倍の300名ほどに参加いただけるようになりました。中村さんのお話にもありましたが、オンライン化に伴って地方や海外学生の参加が増えており、オフィスで説明会を開いていたときとは比べ物にならないぐらい幅広い学生に会えているなという印象です。

2時間で160件の質問が寄せられるオンライン説明会

iroots 山崎:学生としても移動時間・コストの負担が減り、企業としても今まで会えなかった学生に会えるというのはお互いにとって大きなメリットですね。逆に、オンライン化して戸惑ったこと、大変だったことはありますか?
 

三菱総研 中村:このミートアップでも同じ状況なのですが(笑)、オンラインだと会場の反応が見えないので話しづらいという部分はあります。ただこれは話し手の慣れの問題なので、回数を重ねるごとに話しづらさはなくなっていくと思います。

もう一つ予想外だったのは、オンライン説明会での学生からの質問の多さです。オフラインに比べてオンラインの方が質問しやすい雰囲気があるのか、リアルタイムでどんどん送られてくる様々な質問に対応するのはかなり大変でした。時間内に回答ができなかった質問については、後日マイページに回答を掲載しました。


サイボウズ 綱嶋:弊社も同じく、オンライン説明会では多くの質問をいただいたので、すべての質問にお答えするのは予想以上に大変でした。

直近で開催したオンライン説明会にも350名の学生に参加いただいたのですが、約2時間の間に160件の質問をいただきまして…(笑)。人事4名体制で、スピーカーが口頭で質問に答えつつ、残り3名がチャットで回答し続けるということを行い、なんとかすべての質問に答えることができたのですが、説明会を進行しながらの回答はかなり大変でした。

この経験から、説明会の内容は事前にYouTubeにアップし、LIVE配信では時間の許す限り学生からの質問に答えるというふうにプログラム内容の変更も検討しています。


iroots 山崎:なるほど。同じオンラインでも、LIVE配信と録画をうまく使い分けると運営側の負担も軽減されますね。
ちなみに、オンラインだからこそのユニークな質問などありましたか?


サイボウズ 綱嶋:ありますね。直球なものだと「お給料に満足していますか?」とか(笑)。「社員が転職していく理由はなんですか?」という質問もありました。オフラインの説明会では聞かれなかったようなこともバシバシ質問されますが、僕らとしてもそれはありがたいです。というのも、サイボウズが大事にしている価値観の一つに「公明正大」というものがあるので、嘘をつかずにきちんと説明するということを体現できる場があることは貴重だと思っています。

例年以上に読めない“内定承諾率”

iroots 山崎:選考をオンラインに切り替えると、学生とのコミュニケーションがスムーズにできないのではないかという懸念の声もありますが、それに関してはどのようにお考えですか?


サイボウズ 綱嶋:コミュニケーションについて大きな課題はないと思っています。ただ、オンライン化したことで配慮しなければいけない点はあると思っています。細かいことですが、「音声が聞こえないことがあれば、遠慮なく面接官や人事に聞き返してください」、「メモを取るために面接官が下を向くこともありますが、ちゃんと聞いているので安心してくださいね」ということを事前に伝えておくという配慮は必要です。

あと、学生からも「PC越しで熱意が伝わるのかどうか不安」という声もいただくので、「サイボウズの社員は日頃からオンラインのコミュニケーションに慣れているので、いつも通りお話ししてもらったら大丈夫です」と伝えています。

 

iroots 山崎:面接官がそれぐらい細かく気遣いをしてくれると、学生もリラックスして面接が受けることができますよね。オンライン化に伴って、面接の内容も変えないといけないのでは?と悩まれている方もいらっしゃるかもしれませんが、まずは面接官側がオンラインでの基本的な振る舞いに慣れることが大事ですね。

もう一つ懸念事項としてあるのは、「オンライン化に伴う内定承諾率の低下」です。対面で会うことやオフィスへの来訪ができない分、学生との関係性が希薄になってしまうのではないかという意見もありますが、こちらについてはいかがですか?


三菱総研 中村:採用をオンライン化してから初めて内定を出す学生なので、オンライン化によって内定承諾率にどの程度影響が出るのかは読めないというのが正直なところです。現時点での状況で申し上げると、企業によっては選考をオンライン化せずにストップしているところもあるので、それに伴い、学生からは内定承諾期限について「他社の選考が再開するまでもう少し待ってほしい」と言われることが増えてきています。

このような状況なので、内定を出してもどの程度当社を志望してくれているのかはどうしても見えづらいところがあり、例年よりも内定者フォローは手厚くしていく必要があると考えています。

 

サイボウズ 綱嶋:弊社も同じく、学生から内定承諾をもう少し待ってほしいと言われることは例年より増えています。内定者フォローに関しては、意識的に社員と内定者の面談回数を増やしました。オフラインで採用を行なっていた頃から、内定者に対してはその人が希望するキャリアパスと近いキャリアを持つ社員との面談を実施していたのですが、オンラインだとわざわざオフィスに足を運んでもらう必要がないので、より気軽に面談をセッティングできるようになりました。

3daysのオンラインインターンシップを終えて

iroots 山崎:ここからは22卒をテーマにしたディスカッションができればと思います。現在、22卒の最大の関心事として一つあるのが、「インターンシップのオンライン化」ではないでしょうか。
今回、参加者としてご参加いただいているフリークアウト・ホールディングスさんは先んじて22卒のサマーインターンシップをオンラインで実施されたと伺いました。よろしければ簡単に開催の経緯と成果についてお教えいただけますか。

フリークアウト・ホールディングス 堀上:まず実施した結果としては、大成功だったと感じています。オンラインでの開催に踏み切ったきっかけとしては、4月にワーク型の新入社員研修をオンラインで実施したことでした。その中で大きな課題点などがなかったので、「これであればインターンシップもオンラインで開催できるのではないか」という話になり、実施に至りました。

予想していた通り、3daysの中で大きなトラブルなどは起こらず、参加学生アンケートの結果を見ても、「音声が聞こえにくいことがあった」や「社員と会ってみたかった」などの意見は多少ありましたが、それ以外の不満などはまったく挙げられていませんでした。むしろ「自宅から参加できるのでリラックスできた」「地方に住んでいても参加できるのが嬉しい」など、ポジティブな意見が多く寄せられました。


iroots 山崎:オンラインでのインターンシップやグループディスカッションは特に難易度が高いというイメージがありますが、今回成功したポイントはなんでしたか?


フリークアウト・ホールディングス 堀上:ツール周りの準備はかなり念入りに行いました。事前に参加学生の通信環境を確認し、インターネット環境が不安定な学生にはこちらからポケットwi-fiを送付する、オンラインでもスムーズなコミュニケーションが取れるようにSlackのアカウントを用意するといったことです。

学生側も、大学の授業がどんどんオンライン化しているということもあり、私たちが予想していたよりもずっとオンラインの習熟度が高く、抵抗感なく参加していたのがとても印象的でした。


iroots 山崎:堀上さん、貴重なお話ありがとうございます。

 

アンケートから見えてきた、オンライン就活に対する学生の意識

iroots 山崎:先ほどのお話の中で、学生のオンラインの習熟度や抵抗感というお話がありましたが、今回我々も22卒学生向けに「選考のオンライン化に対する意識調査アンケート」を実施しました。(詳細:22卒学生600名に聞く「オンライン就活」意識調査

その中で、「就活がオンラインで行われることについて、メリットとデメリットどちらを感じますか?」という質問に対しては7割の学生が「メリットを感じる」と答えています。その理由としては、やはり「移動時間、コストの軽減」が最も多く、それらの制約がなくなったことでより多くの企業と出会えるという回答でした。

デメリット派の意見としては、「通信回線が安定しない」「就活仲間ができにくい」などの意見もあげられています。

一方で、「以下のイベントのうち、オンラインでの参加に抵抗があるものはありますか?」という質問に関しては、最終面接やインターンシップに抵抗があると答える学生が3割近くという結果になりました。

「実際に会社を見てみないと働く実感がわかない」「一度も会わないまま入社して、ミスマッチが起きないか不安」という声が多かったです。

「オンラインで採用できた」ということがゴールではない

iroots 山崎:このような学生の意見を踏まえて、22卒に関してはどのような方針で採用を行う予定でしょうか?


三菱総研 中村:インターンシップに関しては、現状、オフラインで実施することが実態や目的に適っているのではないかと思っています。というのも、弊社のインターンシップに関しては実際のプロジェクトの一部を体験してもらうという内容にしているので、セキュリティ面を考えると来社していただいた方が実施しやすいためです。しかし、今回面接をすべてオンライン化しても全く問題はなかったので、ゆくゆくはインターンシップもオンライン化を進めていければなと考えています。


サイボウズ 綱嶋:オンラインでも実際に行なっている業務を体感できるように設計さえできれば、選考はオンラインをデフォルトにしていくという選択肢はあると思います。しかし一方で、今まで行なっていたオフィスを見てもらうということなどはできなくなるので、その分の接触頻度や密度というのはきちんと設計していく必要があると考えています。


iroots 山崎:なるほど。オンラインとオフラインのどちらかのみにするという議論ではなく、両者のいいところを活かしながら設計を考えていくことが重要ですね。
最後に、本日のパネルディスカッションを通じてのご感想をいただけますか。


サイボウズ 綱嶋:現在、弊社も含めて、誰も正解がわからない中採用を行っているフェーズにあると思います。しかしそんな中でも忘れてはいけないのは、「オンラインで採用できた」ということがゴールではなく、採用した人がその後いきいきと働けているかどうかが大切だということです。そのためには会社の枠にとらわれず、採用に関わっている人たち同士で採用・教育についての知恵を出し合いながらこの状況を乗り切っていきたいと思っています。


三菱総研 中村:コロナの影響で先行きが見えず、労働市場の状況が悪化する中、我々採用担当が担っている仕事は責任のある仕事だと改めて感じています。綱嶋さんのお話にもありましたが、このような状況だからこそ、企業同士での交流や情報交換をもっと密にできればと感じました。


iroots 山崎:本日はありがとうございました。

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