新型コロナウィルスの感染拡大を受け、22卒採用からオンライン一色になった就活市場。23卒の採用活動が本格化する現在もその流れは変わっていません。企業側も試行錯誤を重ねながら採用活動を行っている中、この2年間で就活生の動きはどのように変化したのでしょうか。現在就活真っ只中の23卒学生2人に、現在の就活状況やコロナ禍で感じた変化、就活を通じて感じた企業に対する本音を聞きました。
 
 

東京理科大学 理学部 応用数学科 ミモザ(仮名)

2023年卒業予定。大学2年生の10月から就活開始。現時点(大学3年生の冬)で外資系やベンチャー企業を中心に4社から内々定をもらっているが、まだ選考中の企業もあるため就活を続けている。就活と長期インターンに取り組む傍ら、自身の考えや就活体験などを綴ったブログも精力的に更新中し、自ら目標として掲げた500日連続更新記録を達成した。

津田塾大学 総合政策学部 総合政策学科 ここなつ(仮名)

2023年卒業予定。大学2年生の3月から就活開始。大学3年生の夏に日系大手を中心にサマーインターンに参加し、現在は3月に始まる本選考待ちのため内々定などはまだない。女子大では唯一となる総合政策学部に所属し、企業との連携プロジェクトの代表や地方でのインターン、プログラミングの習得など幅広い領域で学びを広げている。

オンライン授業で時間に余裕、早期から就活を開始

 
―ミモザさん、ここなつさんともに比較的早くから就活を始めていますが、その理由について教えてください。
 
 
ミモザ:新型コロナウィルスの感染拡大の影響でオンライン授業が始まり、時間に余裕ができたことがきっかけでした。

当時私が受けていた授業はほとんどがオンデマンド形式で、自分で自由にスケジュールを組むことができたので、今のうちに就活準備を始めておこうと思ったんです。

あとは就活に対する不安もありました。私は一浪しているため22卒の友人が多かったのですが、新型コロナウィルスの影響によって就活が混乱している様子を友人たちから聞いていたので、早めに準備しておくに越したことはないだろうと思っていました。
 
 
ここなつ:私も同じ理由です。オンライン授業によって時間的に余裕ができたことと、やはり先輩方が苦労している様子を見ていたので、早めに準備を始めて損はないと思いました。

ネットで「22卒」と検索すると、「やばい」という言葉がサジェストされているのを見るとすごく不安になったので…。23卒の自分も今のうちからできることはないかと情報収集を始めました。
 
 

就活開始時期は二極化、理系と文系による差も

 
―周りの人も同じような時期から就活を始めていましたか。
 
 
ミモザ:私の周りは二極化している印象です。外資系コンサルやエンジニア志望の人はすでに就活を終えている一方で、3月の就活解禁に向けて何をすればいいかわからない…と戸惑っている人もいます。そういう人は選考ありのインターンに応募したり、腕試しにすでにエントリー受付を開始している企業の本選考に参加したりしているようです。
 
 
ここなつ:私の周りもさまざまですね。SNSで“就活専用アカウント”を作ってすでにバリバリ就活している人もいますし、まだ就活を始めてすらいないという人もいます。

でもミモザさんと違って、内定をもらったという話はまだ聞かないですね。このあたりは理系と文系の差かもしれません。

大学からは就活対策のセミナー開催のお知らせがメールや葉書でたくさん届いているので、3月に向けて徐々に就活モードになっているのは間違いないと思いますが。
 
 
《2人の就活スケジュール》

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サマーインターンで志望業界の輪郭をつかむ

 
―お二人の就活スケジュールを見る限り、ミモザさんもここなつさんもすでに志望業界や志望企業は固まっているのでしょうか。
 
 
ミモザ:そうですね。サマーインターンの選考を受ける前は幅広い業界の企業を見ていましたが、サマーインターン以降からは業界を絞って選考を受けるようになりました。サマーインターンでかなり多くの企業との接点ができたので、夏以降はそれらの企業の選考に参加するだけで正直精一杯で…。

4年生になるとゼミなどで授業が忙しくなるので、今から新たに出会った企業の選考を受けることは考えていません。親に大手企業も受けろと言われれば受けるかもしれませんが…。できれば4月までに就活を終えたいですね。
 
 
ここなつ:私もサマーインターン前には広く業界を見ていましたが、サマーインターンを経て志望業界が固まりました。私は10社ほどのサマーインターンに参加したのですが、中には事前の準備が重いものもあり、それをこなすだけでも精一杯でした。

なので、サマーインターンが本格化してからは大学の就活セミナーやSNSなど、最低限の情報収集しか出来ていませんでした。今はサマーインターンで興味を持った企業の本選考開始待ちなので、他の企業の選考を受けることはあまり考えていません。
 
 
ミモザ:ここなつさんの言う通り、サマーインターンが始まってからはかなり忙しくなるので、インターンの選考案内などは早くもらえればもらえるほどありがたいですね。
 
 

3年生の冬以降は選考直結型のスカウトが気になる

 
―今の時期(3年生の冬)に選考案内をもらった場合、どのような内容であれば興味を持ちますか。
 
 
ミモザ:最初の説明会の時間が短かったり、説明会と一次選考がセットになっていたりすると魅力的ですね。あとは内定まで最短1ヶ月!というように内定までのスケジュールが事前に開示されていれば、今からでも受けてみようかなと思うかもしれません。
 
 
ここなつ:志望業界はすでに固まっているので、自己分析や業界研究のようなセミナーにはあまり興味は引かれません…。なので、ミモザさんの言う通り選考直結型の案内は魅力的です。

また、志望業界の中でまだ知らなかった企業から選考案内をもらった場合でも興味を持つと思います。業界が違いすぎると選考対策を行うのが大変なので、志望している企業の本選考に全部落ちない限り、志望業界を一から考え直すということはなさそうです。
 
 

オンライン選考では企業側のリテラシーにも着目

 
―オンラインのインターンや面接に参加する中で、オンラインならではの変化を感じることはありましたか。
 
 
ミモザ:うーん…就活を始めたときからオンラインが主流だったので、特別感じることはないですね。オンラインが当たり前という感覚が強いです。

ただ、選考に参加する中でオンラインに対する企業側の習熟度は気になります。事前に企業から「電波のいい場所で参加してください」とアナウンスがあったにも関わらず、企業側の電波状況が悪くネットが落ちてしまう…ということが何度かあったので。

オンラインに慣れていない様子を見ると、この企業はオンラインで仕事をする場面があまりないのかな?と想像してしまいます。
 
 
ここなつ:オンラインになってから、新たな「就活マナー」に戸惑っている人が自分を含めて多い気がします。

例えばオンラインイベントに参加したとき、どのタイミングで顔出しすればいいのか、ミュートでいいのかだめなのか、服装はどうしたらいいのか…など、空気の読み合いになっている気がします。そういう風潮はコロナ禍の前からあったと思いますが、オンライン化によってその中身が変わってきている印象です。

なので、オンラインイベントなどで事前にルールを明文化してくださっている場合はとてもありがたいです。
 
 
―現在はオンラインでのインターンや面接がほとんどとのことですが、対面での選考を求められたらどのように感じますか。
 
 
ここなつ:初回の面接から対面を求められると少し戸惑うかもしれませんが、最終選考を対面で実施したいと言われても特に抵抗感はないです。やはり会ってみないとお互いに感じられない雰囲気などはあると思いますし、いつまでもコロナ禍が続くわけではないので、対面での選考を求める企業の考えも理解できます。
 
 
ミモザ:今のところ選考はすべてオンラインで参加してきましたが、対面での選考を求められたからと言って志望度に影響することは特にありません。ただ、対面での選考に慣れていないため、緊張せずに自分らしく話ができるのはオンラインだと思います。

対面形式で嬉しかったのは、オフィスツアーを開催してくれたときですね。そこで働くイメージが具体的にわくので、オンラインであってもオフィス中継などしてもらえると嬉しいです。
 
 

溢れかえる情報に惑わされず、本質的なことに向き合える就活を

 
―ミモザさんは4月までに就活を終える予定で、ここなつさんは3月からが本番という状況ですが、最後に現時点で就活に対して感じていることを率直に教えてください。
 
 
ここなつ:コロナ禍での就活に不安を感じて早期から動き始めましたが、本音を言えば大学の勉強や課外活動にもっと力を注ぎたかったです。また、就活がオンライン化して学生同士のリアルな繋がりがなくなったことによって、ネットの情報に惑わされやすくなったように思います。コロナやネットの情報に惑わされず、みんなが自分のペースで自分らしい就活をできるようになればいいなと思います。
 
 
ミモザ:確かに今の就活は良くも悪くも“情報戦”のようになっています。先程の話にもありましたが、オンラインによって新たに生まれた就活マナーやルールに縛られている友人をたくさん見かけます。リアルな繋がりが少なくなり、情報が溢れているからこそ企業側も学生側もそれをきちんと取捨選択し、本質的なことに向き合える就活になればいなと思います。
 
 
取材:小笠原寛、文・編集:西村恵