近年、多くの企業において副業をはじめとした社員の「課外活動」が推奨されるようになりました。それは社員の課外活動を支援する側の人事においても例外ではなく、本業以外の場所で「人・組織」を軸にした活動をおこなう方が増えています。本連載では、そんな課外活動に挑戦している人事の方にインタビューし、課外活動をはじめたきっかけやその内容、本業との課外活動の関わり方などについてお話を伺います。
第4回目は株式会社GA technologies グループ人事室長・清家 良太さんをゲストにお招きし、課外活動をはじめたきっかけと2019年に立ち上げた「合同会社事業人」での活動についてお伺いしました。
清家 良太 株式会社GA technologies グループ人事室長/合同会社事業人 共同代表
新卒で2007年に旭硝子(現AGC)に人事として入社。国内・海外人事を経験した後、アクセンチュアで人事・組織コンサル、DeNA、ビズリーチで人事に従事。ビズリーチでは事業推進室にて事業開発も経験。2019年3月、GAにCHROとして入社し、現在はグループ人事室長としてGAグループ全体の人事戦略を担う。それと並行しながら、2019年からは合同会社事業人の共同代表も務めている。
目次
「これは他人事ではない」。リーマンショック時代の“危機感”
―課外活動をはじめた時期ときっかけについて教えてください。
現在課外活動としておこなっているのは、主に人事系のコンサルティングをおこなう合同会社事業人での活動と、CHRO代行やアドバイザリーなど個人としての活動です。事業人に参加する前から個人での課外活動はおこなっており、現在の本業であるGA technologiesとの出会いも副業がきっかけでした。
課外活動をおこなう目的の一つに“自分自身の成長”がありますが、それを意識するようになったきっかけは、リーマンショック時代に感じた危機感でした。
当時私は新卒入社した大手メーカーで人事として働いていたのですが、人員整理に関わる中で「これは他人事ではない」と感じるようになり、変化の激しい時代においても価値の高い人材になりたいという想いから、大手外資系コンサルでの経験を経てDeNAに入社しました。
DeNAではメディア事業のHRBPとして働いていたのですが、そのとき一緒に仕事をしていた経営者のみなさんが積極的に社外へ連れ出してくださったことをきっかけに、他社の人事制度設計を依頼されるようになったんです。それが私の課外活動の第一歩でしたね。
その後、当時ニューズピックスで人事責任者を務めていた宇尾野と知り合い、他のメンバーも含めて定期的な人事勉強会を開催するうちに「面白いから事業化する?」という話になり、2019年に合同会社事業人を立ち上げました。
「事業人」での課題解決を通じて、日本を面白くしたい
―現在おこなっている課外活動の内容について、具体的に教えてください。
冒頭でも触れましたが、現在は合同会社事業人で社外の人事コンサルティングとHR系のプロダクト・人事メディア・人事コミュニティづくりに携わっており、それと並行して個人でCHRO代行やアドバイザリーなどの活動をおこなっています。
「事業人」という名前は事業作りと人事の両方を経験しているメンバーで立ち上げたところから来ており、私を含めメンバーの個性はさまざまですが、本質的な社会課題に向き合って日本を面白くしたいという想いは共通しています。
本業はGA technologiesのグループ人事室長としてグループ全体の人事戦略を担っているので、自分の出力を120%にして課外活動に取り組んでいます。
課外活動における時間の使い方はみなさん気にされるところだと思いますが、単純に時間の切り売りをするような活動をしても自分の成長には繋がらないと思うので、時間ではなくアウトプットベースで自分にも社外にも意義があると感じたことに絞って活動をしています。
スキルの切り売りでは意味がない。成長できる課外活動を求めて
―課外活動を通じて得られた収穫や課題を教えてください。
一番の収穫は、さまざまな経営者の方と一緒に仕事ができることですね。
外資系コンサルにいたときは日本を代表する大手企業の経営者の方と一緒にお仕事をさせていただきましたが、今はスタートアップから中堅、大手企業まで、さまざまなフェーズの経営者の方とご一緒させていただくので、「このフェーズだとこんな課題が出てくるのか」という経験値が日々積み上がっていく感覚があります。
もちろんそれらの課題に対するHowをすべて私が持っているわけではないので、事業人のメンバーや人事コミュニティの方々にご相談しながら解決の方向性を見出しています。そのプロセスを含めて自分にとっては大きな収穫ですね。
また、事業人では2ヶ月に一度メンバー同士でフィードバックし合う会をおこなっているのですが、人事経験豊富なメンバーから率直にGood・Badのフィードバックをもらえることも大きな収穫です。
課外活動の中で見えてきた課題は、何よりも自分の至らなさですね。より大きな物事を支えていくためにはもっと経験と成長が必要だと痛感させられました。ただ、こうした課題も含めて成長するうえでの収穫だと捉えているので、ネガティブな意味での課題は思いつかないです。
個人的な考えとして、成長のない課外活動には意味がないと思っているので、これから課外活動をはじめる人事の方には、スキルの切り売りではなく新たなスキルを得るための課外活動をおすすめしたいですね。
得られた知見を活かして、息子世代が豊かに暮らせる社会を作りたい
―課外活動をおこなう前と後で変わったことはありますか。
変わったことは大きく二つで、一つは自分の軸がぶれにくくなったこと。課外活動でのインプットや経験は本業にも活きるので、それらの知見を踏まえつつ、正しいと思うことを発言できるようになりました。
そしてもう一つはキャリアに対する考え方です。今までは会社の中で大きな視座を得ていくことを意識していましたが、さまざまな方とご一緒させていただく中で、その考えの小ささに気づきました。こういう会社でこういうポジショニングを得て…という考えではなく、本質的な社会課題に力添えができればそれでいいと純粋に思うようになりました。
さまざまな経験を経て、学生時代に人事を志したときの気持ちに立ち返ることができましたね。
―最後に、課外活動を踏まえてこれから描いていきたいキャリアや展望について教えてください。
これからもさまざまな組織に関わっていきたいと思っているので、事業人を大きくしていきながら、個人としても強くなっていきたいです。
あとは私の個人的な想いとして、自分の息子世代が生きる日本が豊かな国であってほしいと思っています。このまま成長が下がり続ければ、日本は外国から搾取される国になっていくでしょう。それを変えるためには、政治と教育にアプローチしていくしかと思っています。とはいえそれらはすぐにアプローチできる領域でもないですし、少しずつ変えていけたとしても時間がかかりすぎてしまいます。それであれば、まずは自分たちで事例を作ってくというのも一つの手なのかなと。
どこまで実現可能性があるかはまだわかりませんが、例えば自分たちで今の教育制度とは違う新しい学校を作り、そこから世界で活躍する人を育てていくという方法です。
いずれにせよ、本業と課外活動で得られた知見を活かして、次世代がいきいきと暮らせる社会づくりに貢献していきたいですね。
取材:小笠原寛、文・編集:西村恵