2020年以降、世界の生活様式を一変させた新型コロナウィルス。それは新卒採用市場にも大きな影響を与え、採用フォーマットは一気にオンラインへと変化しました。人事の皆さんもこの2年間で、自社のリアルな姿を伝えるためにさまざまな試行錯誤を重ねられてきたのではないでしょうか。

今回は2020年の新卒入社以来、フルリモートでの新卒採用に取り組んできたエン・ジャパン人事にインタビューし、オンライン採用で大切にしていることを聞きました。

すぐに試せるノウハウから、コロナ禍でのコミュニケーションに欠かせないインフラまで幅広くご紹介します。
 


 
 
今回インタビューしたのは、エン・ジャパンで新卒採用人事を務める武井さん。エン・ジャパンは2020年春から現在に至るまでリモートワークを実施しており、人事である武井さんも出社頻度は月1回程度だとか。
 
 
武井さん:
私は2020年に入社したので、就活時は対面で選考を受けていたものの、入社したころには会社全体がリモートワークに切り替わっていました。なので、出社して働くということをほとんど経験しないまま2年が経ちます。現在も月1回程度は出社していますが、オフィスもがらんとしていますね。入社時は寂しい気持ちもありましたが、今では働く=在宅リモートは当たり前の感覚です。

新卒入社以来リモートワークを続けている武井さん

人事になったときからオンラインでの採用が当たり前だったという武井さんですが、対面で選考を受けていた自分自身の就活と比較することで、オンライン採用の課題を整理し、対応策を整えていったといいます。
 
 
武井さん:
オンラインでのコミュニケーションだと、やはりお互いに“手触り感”は感じづらいなと思います。会話の中で学生のリアクションがわからず不安になることもありますし、逆に私が伝えようとしていることがどこまで伝わっているのかも計りかねることもあります。

あと、最初のころはオンラインの中で「オン」と「オフ」の時間を作ることにも苦戦しました。今までは面接前後の会話でお互いの人柄が垣間見えることもありましたが、今は“zoomをオフにするまでが面接”という空気があります。そうなってしまうと学生もどこまで自己開示をしていいのかわかりませんし、こちらも学生のありのままの姿をつかめません。

そのため、オンライン上では「この人になら自己開示してもいいかも」と思ってもらえるような空気感を以前よりも意図的に作るようにしています。

細かいことですが、生活感が伝わるようにあえてzoomの背景を設定しない、自分の好きなものや季節感のあるものを部屋に置いて相手から見えるようにする、服装をかっちりしすぎない…というように、ノンバーバルなところからも自分という人柄が伝わるように工夫しています。
 
 
武井さん曰く、エン・ジャパンを志望する学生にその理由をたずねると、多くの学生が“人”だと答えるそう。では、全社がリモートワークを行ないオフィスに人がいない中で、どのようにその魅力を伝えればいいのか。

自社の強みである“人”と“チーム”の魅力をオンラインで伝えるために大切にしている3つのことと、それぞれの取り組みについて聞きました。
 

①会社の魅力をオンラインで”見える化”する

武井さん:
採用担当のルーツや人柄を学生に知ってもらえるように、1人1つ以上は自己紹介がわりになるオンラインコンテンツを作っています。

例えば、社外向けにも公開している「ensoku!」という社内報のサイトの中では「エンの採用担当File」という連載を行なっており、採用担当が自分のルーツや学生時代に好きだったこと、エン・ジャパンを選んだ理由、心に響いた上司の言葉、今後の目標などをラフに話しています。
 
 

▲「ensoku!」内で紹介されている武井さんのインタビュー
 
この記事を面談のURLと一緒に送ると、面談の際に「私も同じ部活でした!」と学生側から話を振ってくれることもあり、打ち解けるきっかけになっています。かっちりとしたインタビューではなく、自分を知ってもらうためのラフなコンテンツだからこそ、学生も面談前にさくっと読んでくれるのかもしれません。

その他にも社長賞を受賞した社員を紹介するインタビュー記事やYouTube動画なども配信しているので、「次の社員面談の人はこの人です」と案内するときに活用しています。
 

▲広報チームが作成している活躍社員の紹介動画
 
採用における弊社の1番の魅力は”人”なので、コロナ禍になったときにオンラインを通じて社員の姿を伝えられるようにさまざまなコンテンツを作りました。

さすがに人事だけでこれらのコンテンツを作ることは難しいので、広報メンバーと二人三脚でコンテンツづくりに取り組んでいます。
 

②オンライン面談での気遣いは、事前準備がすべて

武井さん:
オンライン特有のトラブルには学生側も大きなストレスを感じますし、会社や人事への不信感にもつながりやすいので、小さなことにも気を配るようにしています。

通信環境を整えておくのは基本中の基本ですが、同居する家族の会話や周囲の音にも配慮が必要です。面談中に他の人の声が聞こえてくると、「自分の話を周りの人に聞かれているんじゃないか?」と不安を感じる学生もいると思うので。実際私は同居している家族の声が気になったので、リモートワークになってからは少し広い部屋に引っ越しました。

またオンライン面談前には学生の電話番号を必ず手元に置き、接続トラブルがあったときにすぐ電話ができるようにしていますし、インターネットが落ちたときに備えてデザリングができる機器も準備しています。一度オンライン面談中に自宅が停電になってすごく焦ったのですが、すぐにデザリングに切り替えたのでことなきを得ました。

それでも100%大丈夫とは言えないので、事前に接続トラブルがあった場合にはこちらから電話するという旨も伝えておき、学生が「どうすればいいかわからない」という状態にならないようしています。

武井さんのデスク。学生によくおすすめの本を聞かれるので、手の届くところに何冊か置いているそう

オンラインに慣れてくると基本的なことが疎かになってしまいがちですが、こういったことの積み重ねで信頼は得られるものだと思うので、これからも変化に合わせた配慮をしていきたいです。
 
 

③リモートワーク体験で、入社後の“リアル”を伝える

武井さん:
一次面談はzoomで行っていますが、それ以降の面談や面接、イベントなどは「Ovice」というバーチャルオフィスを利用しています。弊社では全社的にOviceを導入しているので、選考段階から入社後のイメージを持ってもらえればいいなと思います。

Ovice上では相手のアイコンに近づくと声が聞こえて、離れると聞こえなくなるので、オフィス内で近くに座っている人と話したり、すれ違った人と立ち話をしたりという感覚に近い体験ができます。

本来はオフィス見学ツアーなどの方が学生さんに喜んでもらえるのかもしれませんが、今はオフィスで働く社員も多くないので…。バーチャルオフィス内で実際に社員同士が声を掛け合っている姿を見て働くイメージを持ってもらえれば嬉しいです。

バーチャルオフィス内の様子。社員がそれぞれの場所で会話や作業を行っている

座談会などのイベントもOvice上で行っているのですが、ワンクリックで自由にレイアウトを変えることもできるのでとても便利です。以前は会場設営などの工数にかなりの時間を取られていたようですが、それらの工数がなくなったことで学生に向き合う時間が増えました。

このように、重要だと思っていたけれど実は重要ではなかったということがオンラインになってから色々と見つかったこともオンライン採用における一つの収穫ではないでしょうか。
 
 
これまでは重要だと考えられてきた採用業務の中でも、“オンライン採用に合わせた取捨選択の可能性が色々と見えてきた”と語る武井さん。

変えるべきところは変えながら、変わらない強みにフォーカスを当てる。オンライン採用が始まって2年が経った今だからこそ、改めてそれらを見直し、ブラッシュアップを行う機会かもしれません。
 
 
 
取材:小笠原寛、文・編集:西村恵