2021年に富士フイルムに入社後、1年目から人事部にされた村上さん。内定者フォローを任されるも、年齢の近い学生とどのようにコミュニケーションをとってよいのかわからず、悩むことも多かったそう。「自分らしさ」と「人事として」のはざまで葛藤しながらも、ご自身の強みを活かして奮闘した人事1年目時代についてお話をお伺いしました。
富士フイルムホールディングス株式会社 人事部 採用グループ 村上奈那
高校・大学での留学経験を経て、2021年に新卒で富士フイルムへ入社。入社1年目から富士フイルムホールディングス出向人事部へ配属され、事務系新卒採用担当に。内定者フォローやインターンの企画・運営をはじめ、採用PRから選考に携わっている。
目次
親が提案してくれたサマーキャンプが、今の自分を作ってくれた
―村上さんは2021年に新卒で富士フイルムにご入社されていますが、そこに至るまでのルーツについて教えてください。
現在は多くの学生さんと接する人事という仕事をしていますが、幼いころは人見知りが激しく、本当に仲の良い友達としか話さない、授業中に手を挙げるなんてことは絶対にしない、目立つことが苦手な子どもでした。
そんな自分が変わるきっかけになったのが、小学3年生のときに参加したイギリスのサマーキャンプでした。人見知りだった私を心配した両親が、イギリスのサマーキャンプに行ってみるかと提案してくれたんです。
私の回答はYES。どうせ行かないだろうと思っていたみたいなので、「あのとき、行くと言ったのは正直驚いた」と後々聞きました。
今振り返ってみると、当時の私は「挑戦してみたさ」「やってみたさ」はあったものの、「恥ずかしさ」がいつも勝っていたので、行動に移せていなかったんですよね。新しい人と話すことや授業中発言することも本当はしたかったけど、恥ずかしくて、できていなかったんだと思います。
なので、自分の本質をグッと引き出してくれた、そんな両親からの提案でした。
そして、実際3週間サマーキャンプに参加したのですが、実際最初の1週間は、周りの言葉が全く分からず、「寂しい、来なきゃよかった」「日本に帰りたい」とほぼ毎日泣いていました。
ですが、自発的に行動している同世代の子たちに刺激を受けて、「多少間違えてもいいから自分で行動しなきゃ」と思えるようになりました。
サマーキャンプを終えてからは学級委員長や生徒会長を務めるほど積極的になれたので、このときの経験が今の自分を作ってくれたと思います。なので、両親には本当に感謝しています。
サマーキャンプでの経験から、中学卒業後はカナダの高校へ進学しました。
英語の拙さゆえに苦労したことも多くありましたが、しっかりと自分を持つことができるようになりましたし、いい意味で厚かましくなったと思います(笑)。
そのまま海外大学に行く選択肢もあったのですが、特に学びたいことや海外で挑戦したいことがなかったので、一旦帰国して東京の大学へ進学しました。
大学2年生からは再びカナダへ留学したのですが、1年後に帰国すると周りがすっかり就活モードになっていて驚きました。
とりあえず周りに合わせてサマーインターンにいくつか応募してみるものの、全然受からず…。冬になってはじめて参加したインターンで、富士フイルムに出会いました。
やりたいことがなかったからこそ、「誰とやるか」が大切だった
―なぜ富士フイルムにご入社されようと思ったのですか。
もっとも惹かれたのは、「入社後に歩めるキャリアの幅が広い」というところです。
私は就活を始めてからもずっとやりたいことが見つかっていなかったのですが、富士フイルムはBtoC・BtoBの両方で多角的に事業を展開しており、かつジョブローテーション制度を取り入れていることから、様々な経験を積む中で自分がやりたいことを見つけられる点に魅力を感じました。
実際、面接でも「入社後に歩みたいキャリアプランは何ですか」と具体的に入社後のキャリアについて聞かれたことは一度もありませんでした。
後は、「人」の魅力です。特に人事の方や現場社員がセミナーやインターンでいきいきと話している姿を見て、「この人たちと一緒に働きたいな」と初めて思ったことが決め手になりました。
やりたいことが見つかっていなかったからこそ、「なにをやるか」よりも「誰とやるか」が私にとっては大切だったので。他社からも内定はいただいていましたが、出会ったときから内定まで、変わらず第一志望だった富士フイルムに入社を決めました。
―村上さんは入社1年目から新卒採用担当として人事に配属されたとのことですが、それはご自身のご希望だったのですか。
どっちとも言えなくて、配属面談では「富士フイルムの良さを伝えられるような仕事がしたいです」と伝えました。どこの部署でも通用する希望ですよね。人事部の方を信頼していたので、私に合う部署に配属して下さいというスタンスでした。
ですが、1年目から新卒採用担当はないだろうと勝手に思っていたので、配属を聞いたときはとても驚きました。ただ、先ほどもお話しした通り、「この人たちと一緒に働きたい」と思った先輩社員と実際に一緒に働けることは嬉しかったです。
また、大学4年生のときに就活支援を行う団体に所属し、後輩の就活相談やES添削、イベント企画なども経験していたので、新卒採用担当は営業やマーケティングなどの他の仕事に比べると自分にとってはイメージのつきやすい仕事でした。
「自分らしさ」と「ありたい姿」の間で悶々とした1年目
―入社1年目から新卒採用を担当し、どのような所感を持たれましたか。
私は主に内定者のフォロー、セミナーへの企画・運営、春インターンの企画・運営を担当していたのですが、最初は学生さんとの距離感の取り方にかなり悩みました。
特に内定者とは一学年しか違わないので、「自分らしさ」と「人事としてのありたい姿」の間で悶々としていたんです。
そんなときに、先輩から「私が学生さんに伝えられることと、村上さんが学生さんに伝えられることは同じじゃなくていい」と声をかけてもらったことがありました。
「年齢が近いからこそ学生さんに寄り添えることもあるし、村上さんの人柄も理解したうえで人事に配属したので、無理に背伸びする必要はないんだよ」と。
そのアドバイスをいただいたことで、「ありのままの自分でいいんだ」と肩の荷が少し降りたことを覚えています。
ただ、ありのままでいいとはいっても、会社について理解しておかなければいけないことはたくさんあるので、入社後すぐにイベントの登壇を任されたときはすごくプレッシャーを感じました。
自分なりに勉強はしていたものの、当時はただ原稿を読んでいるだけで、全然自分の言葉で伝えられていなかったなと反省しています。質疑応答の場面では、お恥ずかしながらうまく答えらないことも多々あり…。
先輩の受け答えを学びつつ、他部署にいる同期に質問をしたり、現場社員を交えた座談会で学生さんと一緒に話を聞いたりする中で、経験がないなりに自分なりに理解した富士フイルム像をつかんでいきました。
イベントの休憩時間を、貴重なインプットの場として活用
―人事1年目を振り返って、うまくいったことや工夫したことはなんですか。
自分のアイデアを活かしたインターンの企画・運営ができたのは一つの成功体験だったと思います。
私はインターンをきっかけに富士フイルムが好きになったので、「去年と同じでなくていいから、企画を考えてみて」と言われたときはプレッシャーを感じたのですが、自分なりにアイデアを組み立てて企画を作っていきました。
学生さんと年齢が近かったからというのもありますが、イベントの休憩時間には必ず学生さんに話しかけて、フランクに就活状況や面白かったインターンシップやセミナーを聞いていたことがアイデア出しの役に立ちました。
そのアイデアをもとに、富士フイルムの強みにかけて、「変化に強い人材とは?」というテーマでインターンをおこなったのですが、参加者の9割以上が本選考に進んでくれたので、とても嬉しかったですね。
自分が企画したインターンシップを通して、ある程度は富士フイルムの魅力を伝えられたのかなと思い、ホッとしました。
アイデアを出すのは得意な方なので、インターンの企画や内定者フォローにおけるチーム制の導入など、1年目から新しいことにチャレンジさせてもらえたことに感謝しています。
しばしばアイデアが先走り、ミーティングで先輩から「なぜ?」と問いかけをいただくこともありましたが…(苦笑)。それも含めて、貴重な経験でした。
入社1年目で人事部採用担当に。「自分らしさ」と「人事として」のはざまで
―入社2年目を迎えられて変化したこと、今後チャレンジしたいことはなんですか。
入社1年目のころは業務を遂行することにいっぱいいっぱいになっていましたが、2年目からは物事に自分の想いを乗せられるようになってきたと感じます。任される業務の幅も広がっているので、採用担当として少しずつ成長できているのではないかなと感じています。
長期的な目線でいうと、人事以外の仕事にもチャレンジしていきたいです。「部署を異動すれば、自分のできる仕事の幅がぐっと広がるよ」という先輩方の言葉に惹かれて富士フイルムに入社したので、そのときから気持ちは変わっていません。
ただ、その前になにかをやりきったと言えるようになってから異動したいと思っているので、まずは人事としての仕事を全うしたいです。
―最後に、人事1年目の方に伝えたいことはなんですか。
人事1年目のころは特に「人事=会社の顔」だという気負いから背伸びしがちになりますし、それも間違ってはいないと思います。
実際に、人事の一挙手一投足によって会社の印象や志望度が変わってしまうこともあるので、私たちは細心の注意を払わなければいけません。
ただ、私もそうだったように、無理な背伸びは必ず学生さんにも伝わると思います。まずは等身大の自分で、学生さんのために一生懸命汗を流すことから始めることが大切なのではないかなと思っています。一緒に頑張っていきましょう!
取材:小笠原寛、文・編集:西村恵