新卒入社した会社で人事としてのキャリアを歩み始めた永井慎也さん。人事に配属されたのは意外だったものの、採用の仕事を通じて、その楽しさややりがいに気づいたと当時を振り返る。その後、研修会社での講師、エス・エム・エスでの人事を経験し、2018年にユーグレナに参画。現在は人事マネージャーとして、“ユーグレナ・フィロソフィー”を本気で追い求められる組織づくりを目指す。採用、育成と幅広い人事キャリアを歩んできた永井さんの歩みと、今後人事として実現したいビジョンについてお話を伺った。
 
 

株式会社ユーグレナ 人事課 マネージャー 永井慎也

2005年、新卒で株式会社インテリジェンス(現:パーソルキャリア株式会社)に入社。人事として新卒採用と中途採用を経験したのち、事業部へ異動し、「an」の営業推進を務める。2009年にエディフィストラーニング株式会社に転職、営業から研修企画、研修講師までを経験。2012年に株式会社エス・エム・エスに人事として入社し、採用から制度、研修まで幅広い人事業務を担う。2018年から現職。

ある企業との出会いから、「働くことは面白い」というイメージに変わった

画像配置 580x300

―永井さんは新卒でインテリジェンス(現:パーソルキャリア)に人事としてご入社されたとのことですが、そこに至るまでの経緯について教えてください。
 
学生時代は、工学部と医学部が融合した研究室に所属し、心臓の挙動を細胞レベルからコンピューター上でシミュレーションしていくことを目指して、日々、研究に取り組んでいました。いずれ人の命を救うことに繋がる研究ですが、実際に毎日行っていることは、10分の1ミリほどの大きさの心筋細胞と顕微鏡下で格闘する日々でした。

そんな毎日を過ごしている中で、ずっと研究室にこもって研究を続けるよりも、自分はもっと人と近い距離で人の役に立つ仕事がしたいと思い、研究ではなくいわゆる文系就職の道を選びました。
 
 
―その中でインテリジェンスを選ばれた理由について教えてください。
 
 
もともと私はテレビっ子だった影響からか、「働くことはつまらないこと」というイメージを持っていました。
しかし、就職活動の中である会社に出会い、働くことのイメージが劇的に変わり、「もしかしたら働くことは楽しいのかもしれない」と思うようになりました。

そして、その会社以外にも、様々な会社の選考を受け、いろいろな社会人の方の話を伺い、「働くことは楽しいかもしれない」という想いはより一層強くなっていきました。
そこで出会った会社の一つがインテリジェンスで、最初に内定をもらった縁もあり、入社を決めました。
 
 

「はたらくを楽しもう」を体験できたインテリジェンスでの人事経験

 
 
―インテリジェンスではいきなり人事に配属されたとのことですが、それは永井さんのご希望だったのですか。
 
 
いえ、人事への配属は意外でした。たまたま、私が入社した年から新入社員を人事に配属するという方針になり、私を含む3人が新卒採用の部署に配属されました。

1年目は本当に無我夢中に働きました。体力的にハードなことも多かったですが、一緒に働く仲間が気持ちのいい人ばかりで、目標に向かって共に全力疾走していく毎日が楽しかったです。

まさに、インテリジェンスが掲げていた「はたらくを楽しもう」というブランドスローガンを体験できた日々で、今、私自身が働く上での価値観のベースになっていると思います。
 
その後、新卒採用と中途採用を3年ほど経験したのち、経営統合した学生援護会が展開していた「an」の事業部へ異動願いを出し、営業推進を担いました。

当時はインテリジェンスと学生援護会という異なるルーツをもった組織が一つになっていく時期で、組織が統合していく過程を当事者として経験することができたことは貴重な体験でした。

そんな中、不思議に感じたことは、同じ組織で、同じような業務を担っているにも関わらず、楽しく働いている人とそうでない人が混在していることでした。
なぜ同じ仕事をしているのに、こんなにも働き方が違うのか、モチベーションが違うのか、ということに強く興味を持つようになり、それをきっかけにインテリジェンスを離れ、企業向けの教育研修事業を展開している会社に入社しました。
 
 

本人の成長や事業の成長に寄与できる人材育成がしたかった

 
 
―そこで講師を3年間務められたのち、エス・エム・エスに移られたきっかけは何でしたか。
 
 
研修会社では、営業や研修講師というこれまで経験したことのない新しいことにチャレンジすることばかりで、とても刺激的でしたし、今の自分の大きな糧にもなっています。

一方で、外部からお客様に関わり続けていく過程で、次第に、お客様の課題に対して外部から関わることの限界を感じるようになりました。

そこで、人材育成が本人の成長や事業の成長に寄与していくことを、外部からではなく内部から関わって実現したいという想いが強まり、エス・エム・エスに人事として入社しました。
 
 

戦略を重んじるエス・エム・エスでの学び。前提を押さえることの大切さ。

 
 
―エス・エム・エスでの5年間は永井さんにとってどのような経験になりましたか。
 
 
エス・エム・エスでの5年間の経験は、社会人としてのコアスキルを大きく引き上げてくれた5年間でした。

具体的には、エス・エム・エスの組織運営スタイルが、「大前提として会社全体の目指す方向性や各組織の目指す状態があり、それを受けて各個人の役割が定まり、各個人のレベルでミッション、ビジョン、戦略を作成し、それぞれが縦横でリンケージしている形で組織運営していくスタイル」だったことが大きかったです。

言葉に出して言えば至極当然のことですが、そのスタイルの徹底度が異常なほどに高く、それを頭の中でなんとなく考えるではなく、きちんと文字で書き起こすことは、想像以上に難易度が高かったです。
 
私も見よう見まねでその考え方を理解・習得していく日々で、上司にはよく施策を提案してはめった切りにあいましたが(笑)、外部環境の状況や会社の方向性、組織の方向性、会社や組織として大事にしている価値観等の前提情報を正しく押さえながら提言していくスタイルを身に着けられたことは一生もののスキルだと今では考えています。
 
 
―その前提を押さえながら提言していくスタイルとはどのようなものですか。
 
 
エス・エム・エスで学んだことを活かしつつ、自己流にカスタマイズした方法なのですが、何かを提言する際には、「前提」「ゴール」「ゴール到達に大事なこと」「具体的なHow(提案内容)」という流れで提案するようにしています。
この枠組みはとても汎用性が高くて、人事のあらゆる場面で活用できることを実感していて、今の私のかけがえのない財産になっています。

例えば採用担当として採用戦略を考える際も、前提情報として、転職市場の状況や自社の中長期に目指す方向性、自社の採用ブランド力の現状、許容可能な採用コスト等を押さえていけば、ゴールに対して、どのような方針で我々が戦うべきかについては、自ずと方向性が見えてきます。

逆に、前提情報を正しく把握できていないと間違った方向性の方針を打ち立ててしまい、結果的にリソースをかけても成果が得られないという形になるリスクが高まります。

日常的な業務で言えば、ある人材紹介会社の方とコミュニケーションする時においても、その人材紹介会社の方の前提情報を正しく押さえていれば、お互いにとって良いゴールに到達するために何が大事な点になるのかが自ずと見えてきて、それを踏まえたコミュニケーションをしていくことで、双方にとってメリットがある形に着地できることが多々あります。
 
 

仲間になってほしいのは、“ユーグレナ・フィロソフィー”を本気で追い求められる人

画像配置 580x300

 
 
――エス・エム・エスを離れ、ユーグレナに入られたときに違いのようなものは感じましたか。
 
 
組織の雰囲気は全く違いましたね。エス・エム・エスはビジネスの推進にとても強みを持っている組織でしたが、ユーグレナはビジネスビジネスというよりは、理念共感度が高い仲間がとても多く、ちょっと優しすぎるのではないかと思うくらい、優しさをもった組織でした。
 
その背景を辿れば、経営陣がとても理念を大事にしていること、そして仲間のこともとても大事にしていることがベースにあり(もちろんビジネス観点も大事にしていますが)、当時のユーグレナでの採用が自社ホームページからの応募がメインだったことも、理念共感度が高い仲間が多いことの一つのポイントだと思います。
 
 
―面接の際には、候補者のどのような部分を見ていますか。
 
 
採用で見ているポイントとしては、当社のフィロソフィーである「Sustainability First」を本気で追い求められる方かどうか、ですね。

私たちは自分たちの事業が成長すればするほど、世の中が良くなっていく、社会問題が縮小していくことを目指しており、収益性と社会性を高いレベルで両立させたいと考えています。理念だけではビジネスを拡大することができませんし、収益性だけを追求すると理念がお飾りになってしまう。

多くの企業がこの間で苦しんでいて、私たちもそこで日々格闘しています。当然、それは簡単な道ではないことも理解していますが、だからこそ、それを実現していくことを本気で追い求められる仲間を増やしていきたいですね。
 
 
―今後永井さんはどのようなキャリアを歩みたいと考えられていますか。
 
 
人事全般に携わってみて思うのは、やはり育成領域が好きだということです。
まだまだ社内でできていることは極わずかですが、今後も会社の成長に寄与できて、多くの仲間の可能性も広げられる成長支援策を展開していきたいです。
そして、頑張っている人が報われる、そんな世界をつくっていく一助になりたいですね。
 
 

相手のメッセージを「点」ではなく「線」で受け取ることが、人事としての誠実さである

 
 
―最後に、これから採用に向き合う人へ伝えたいことは何でしょうか。
 
 
私が尊敬する方の言葉で「その方にとっての真実を理解する」という言葉がありますが、これは採用活動においてもとても大切なことだと思います。
 
面接で候補者の方の話を聞く際に、皆さんはどのような工夫をされていますでしょうか。
様々な面接手法はありますが、私が大切にしていることの一つとして、その方を深く理解するために、その方の言葉を「点で理解する」のではなく、「線で理解する」ということがあります。

その方は過去の様々な経験の積み重ねで今のご自身が形成されていて、その経験が前提となって今の発言をされている。
まさにその方の背景、ルーツを含めて「線で理解する」ことは、その方を深く理解する上でとても欠かせないことだと思います。

候補者の方が実績として残されてきた成果を伺う時も同じで、そのビジネスを取り巻く外部環境を把握することはもちろん、その方が在籍している会社がどんな方針で、どのような組織体制の中で、ご本人がどのような役割を担っているのか、そして、その方の周囲に有効なアドバイスをしてくれる人はいるのか、いないのかなど、様々な前提情報を確認します。

その上で、ご本人がどのような目標に向かって、どう行動し、どんな成果を出されてきたのかを一連の線として繋げて確認することで、相手を深く理解することに繋がると思っています。

上記のことは面接をする上では当たり前に近いことだと思いますが、面接はその方の人生のターニングポイントにも繋がるものですので、目の前の方の背景やルーツといった前提を踏まえて線で理解すること、理解しようとすること、理解できる力を高め続けていくことは、面接を行う採用担当に求められる誠実さではないかと考えています。