「JTと出会ったときは、何をしている会社なのかも知らなかった」と当時を振り返る山岡 彩香さん。それでも”何をやるか”よりも”誰とやるか”に重きを置き、営業からサポート業務、事業企画室を経験したのち、人事へと異動。組織や個人の成長支援を行う中で、「自分よりも明らかに優秀な社員に対して成長支援をするなんて、絶対無理」と感じたこともあったそう。現在は新たなフィールドに移られた山岡さんの人事時代を振り返りながら、これから採用に向きあう人へのメッセージを伺った。
 
 

日本たばこ産業株式会社 たばこ事業本部 品質保証グループ お客様満足推進部 次長
山岡彩香

2005年にJTに入社。営業やバックオフィス関連の部署を経て、2016年より人事領域に携わる。組織開発、NLP(※)の事務局運営を経験後、ピンポイントで新卒採用を行うチームの責任者を務め、現職に至る。※Next Leader’s Program:次世代の経営リーダーの成長を集中的に支援する独自プログラム

個性豊かな社員に出会い、「一体この組織はどうやってまとまっているんだ?」と興味を持った

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―山岡さんは新卒で日本たばこ産業株式会社(以下、JT)にご入社されたとのことですが、そこに至るまでの経緯について教えてください。
 
 
JTに出会ったのは本当に偶然でした。なんとなく参加した学内セミナーでJTの存在を知ったのですが、当時の私はたばこを吸ったことがなかったので、JTが何をしている会社なのかも、たばこが一箱いくらなのかも知りませんでした(苦笑)。

しかしリクルーターの方に誘われてさまざまな社員と話す機会をいただくうちに、徐々にJTという組織と人に興味を持つようになりました。

出会うJT社員はみな個性豊かで、「一体この組織はどうやってまとまっているんだ?」と疑問に感じるほどでした(笑)。しかしその一方で、一人一人の個性を認めて受け入れるこの会社であれば、私自身も肩肘を張らずに頑張れるかもしれないと好感を持ちました。

たばこには疎いままでしたが、好きか嫌いかはやってみないとわからないと思っていましたし、私にとっては“何をやるか”よりも“誰とやるか”の方が大切だったので、JTに入社を決めました。
 
 

今まで自分がやっていたことは、“仕事”ではなく“仕事風”のことだったと気づいた

 
 
たばこ営業を3年半、営業部隊のサポート業務を3年半経験したのち、たばこ事業本部の事業企画室に異動しました。この事業企画室への異動をきっかけに、私の中で“働く”ということへの意識が大きく変わった気がします。

今でも印象に残っている言葉のひとつが、事業企画室に異動してすぐの頃、当時の上司に言われた「”気配り上手”と”八方美人”は違うよ」という一言。当時は八方美人的に振舞っているつもりはなかったので、「なんでこの人はわざわざそんなことを言うんだろう」と思っていました。

しかし事業企画室でまったく何もできない日々が続き、今まで自分は「ウフフ、アハハ」でことなきを得る立ち回りばかりして、自分の頭で考えるということをしていなかったんだと自覚したんです。きっと上司はそれを見抜いていたのでしょう。
今まで自分がやっていたことは、“仕事”ではなく“仕事風”のことだったんだと気づき、このままではいけないと思うようになりました。

そこからすぐに何かを変えられたわけではありませんでしたが、「とにかく本質の追求!」という上司の教えをもとに、社員研修の企画や運営に取り組みました。社員数が多い会社ではどうしても社内調整や根回しの方に気を取られそうになりますが、その上司は周りとの衝突を覚悟してでも本質を追求していく人でした。その背中から学んだことは多かったですし、今でもその教えに感謝しています。
 
 

営業から一転、全社の組織開発を担うことに

 
 
―その後再び営業に戻られたのち、人事に異動されたと伺いました。人事への異動は山岡さんのご希望だったのですか。
 
 
キャリア面談の際、事業企画室での研修業務経験から「人に向き合う仕事に携わってみたい」という話をしたことはありましたが、まさか人事部に異動するなんて思ってもいませんでした。営業に戻って1年半ほどしか経っていなかったためとまどいもありましたが、せっかくいただいた機会なので、チャレンジしてみようと思いました。
 
 
―人事部では最初にどのようなことを担当されたのですか。
 
 
当時立ち上げ間もない組織開発チームの一員となり、社内の各組織に対してパフォーマンスとエンゲージメントを最大化するための個別支援を行っていました。かっこよく言えば、全部門を対象としたHRBPというところしょうか。チームメンバーは上司を含めて3人しかいなかったので、つねにいくつかのプロジェクトをかけ持ちしているような状態でした。

その後、組織よりも“個”にフォーカスをした成長支援の領域を担当することになり、若いトップマネジメントを継続的に輩出することを目的としたNLP(JT-Next Leaders Program)の事務局に入りました。

NLPは次世代の経営リーダーとなり得るポテンシャルを持った人財の成長を集中的に支援するためのプログラムで、私は選抜試験の運営やNLP認定を受けた社員の成長支援(配属検討、Off-JT企画、面談など)に携わっていました。
 
 

組織と個人の成長支援を経て、採用の現場へ

 
 
―NLPの事務局に入られて、どのような所感を持ちましたか。

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最初のころは結構つらかったです。自分よりも明らかに優秀な社員に対して成長支援をするなんて、自分には絶対無理だと思いました。肩に力が入っていたんですね(笑)。

しかし彼らと対話を重ねていくなかで、スキルや能力うんぬんの前に「結局お互い人間なんだ」という当たり前のことに気づきましたし、自分が全てを背負いこむ必要はないんだと思えるようになりました。彼らが困っているときに要所要所で相談に乗ったり、前向きな決断ができるように背中を押せるような存在になりたいな、という気持ちで日々を過ごしていました。

その後、成長支援から採用に役割をシフトし、一般公募に加えてこちらから学生にピンポイントで会いに行く部隊のリーダーを任されることになったんです。
 
 

「組織が個に合わせる」時代を目指して

 
 
―山岡さんは責任者としてどのような役割を担っていたのですか。
 
 
ほとんど何もしてないですよ(笑)。チームメンバーが施策についてどんどん提案をくれるので、私は「いいじゃん!」と応援しつつ、それらのボリューム調整や優先順位づけを行なうようにしていました。

「個が組織に合わせる」のではなく「組織が個に合わせる」時代をつくっていきたい、そんな想いを持ちながら、採用というタッチポイントにおいても”個”を意識して活動していました。

また、採用という枠にとらわれすぎないこともチームとして大切にしていました。社員になってもらうことだけが仲間を増やすことではないし、採用につながらなかったとしても、いつの日か何かしらのかたちで協業できる可能性も十分にありますから。

目の前の採用に向き合うだけでは自分たちも窮屈になってしまうので、組織人としての役割を果たしながら、いかに“仲間づくり”を行うかということをチームの目標に置いていました。
 
 

ゲームのようなリソースの取り合いはやめて、もっとみんなで社会を善くしていきませんか

 
 
―最後に、これから採用へ向き合う人へのメッセージをお願いします。
 
 
ゲームのようなリソースの取り合いはやめて、もっとみんなで社会を善くしていきませんか、と呼びかけたいです。採用の現場に関わってみて感じたのは、「就職=1人1社」という方程式自体に限界がきているということ。副業や兼業など、働き方が多様化している中で、今年は何人採用できたとか、どの会社にバッティング勝ちしたとか、そんな話は本質的ではないですよね。

もちろん、こんなことを言いつつも現実として会社の採用計画に沿った活動をしないといけないことは理解していますし、それは私も同じです(苦笑)。

しかし、もっとも学生と接する機会の多い私たち人事が、「その人の人生はその人のものであって、会社のものではない」という姿勢を忘れてはいけないと思います。

「絶対にうちの会社に入ってほしい」ではなく、社会と多様な関わりを持つ中の一つに自社が入っていれば嬉しい、という考え方がもっと広がっていくことを願っています。