サイボウズ株式会社 人事部長 青野誠
2006年早稲田大学理工学部情報学科卒業後、サイボウズ株式会社に新卒で入社。
営業やマーケティング、新規事業立ち上げなどを経験後に人事部へ。
現在は人事部での採用・育成・制度づくりとチームワーク総研を兼務。
目次
大きな組織の一員になるより、小さな組織で先頭に立ちたい
ーサイボウズ社では、以前から「チームワーク」という言葉を社内外で大切にされていますが、青野さん自身はサイボウズへ入社される前からチームワークに触れる機会は多かったのですか。
そうですね。小・中学校では野球部のキャプテン、大学では寮長を務めていたので、それらの経験からチームについて考える機会は多かったです。
強烈にリーダーシップを取るタイプではないのですが、昔から人の意見をじっくりと聞くことが得意で、色々な人の意見を聞いた上で最終的に「これでいこう!」という決断を下していました。この姿勢は今の仕事においても変わっていないと思います。
ーその経験を経て、新卒でサイボウズに入られたきっかけは何だったのでしょうか。
就職活動を始めた当初は周りの友人と同じように大手の会社を目指していましたが、途中からみんなと同じ流れに乗りたくないなと思ったんです。みんな大手の会社がいいっていうけど、本当にそれでいいんだっけ?と。
思えば大学を選ぶときも、周りから当然のように国公立大学を勧められることに違和感を感じて、「別に私立が選択肢にあったっていいじゃん!」と、地元の中ではめずらしく私立大学に入学しました(笑)。
「みんながそっちを選ぶなら自分は違う道を目指したい」という気持ちがあったからです。
また、「鶏口牛後」という言葉が好きで、大きな組織の一員になるよりは、小さくても自分が先頭に立って引っ張れる組織のほうが良いと思っていました。
そんな中で偶然出会ったサイボウズの説明会に行き、サービスを通して世の中の役に立とうとしている想いや誠実さ、どこか関西ノリで面白い社風に惹かれて入社しました。
全員がサイボウズに居続けることが正解ではない
ー当時のサイボウズは今と違って離職率が3割近くあったということですが、それについては気にならなかったですか。
確かに人は辞めていましたが、あまり気にならなかったです。まぁベンチャーだしそんなものだよね、と思っていました。
それよりも1年目から様々なパートナー企業と一緒にお仕事をさせてもらえることにとてもやりがいを感じていました。不安よりも、ワクワク感の方が大きかったです。
ただ、入社5年目くらいに営業チームのリーダーを務めていたときに、5人いたメンバーのうち3人が辞めてしまったときはさすがにつらかったですね。辞めた理由はさまざまだったのですが、自分の接し方に問題があったのではないかと思い、かなり自信を無くしてしまいました。
しかし、当時の上司や副社長に相談したところ、「辞めるのは悪いことじゃない。全員がサイボウズに居続けることが正解ではない」と言われ、ハッとしました。
そして辞めること=悪いことではないのだと思えるになってからは、とても気持ちが楽になりました。人事になった今でもその言葉は自分の中に大きく残っています。
描いていたキャリアに“人事”という選択肢は全くなかった
ーその後の新規事業部署から人事への異動は、青野さんのご希望だったのですか。
いえ、会社からの打診でした。入社以来、営業、マーケティング、新規事業を経験してきた僕にとって、「人事」という選択肢は全く入っていなかったので、戸惑いました。
上司にも「人事への異動は考えたこともなかったです」と言ったのですが、「今後また営業に戻ってくるとしても、人事での経験は必ず役に立つから」と説得され、そこまで勧めてくれるのなら…と引き受けました。
人事になって改めて会社と向き合うようになると、以前と同じようにやりがいを感じるようになりました。
会社説明会などで経営陣の話を隣で聞いているうちに、改めてサイボウズの良さを発見しましたし、逆にまだ足りていない部分にも気づけました。
入社して7年ほど経っていましたが、今まではただ目の前の仕事をこなすだけで、会社の全体像が全然見えていなかったんだなと痛感しました。
誠実でありたいからこそ、「うちの会社最高!」とは言わない
ー人事になって一番悩まれたことは何ですか。
会社や自分の“見せ方”については悩むことが多かったです。
当時、会社としての魅力は今よりも圧倒的に少なかったと思います。今のように働き方で注目されるわけでもないし、SaaS事業が注目されているわけでもない。
だから、注目されようとすると無理に「成長できる」「グローバルに挑戦」などの学生に耳障りが良い言葉を並べがち。実際他社でもそういう企業を沢山見てきましたが、違和感を感じていました。
また、個人として、僕もいわゆる“ベンチャーのキラキラ人事”というタイプではなかったので、そこもどうしようと(笑)。
でも、結局どちらも無理に演出するのはやめました。
つい最近まで「うちの会社最高!」って言っていたのに、転職した途端に「新しい会社最高!」って言う人事の方、いるじゃないですか。そういうのを見ていると、「サイボウズは最高だよ!」と無理な誇大広告をして学生に入社してもらうのは違うなと思ったんです。
僕はサイボウズのことが大好きですが、良いも悪いもありのままを見せたほうがミスマッチも少ないはず。多分「サイボウズに来なよ!サイボウズ向いてるよ!」とか候補者の方に言ったことはないです。
サイボウズの良いところも悪いところもすべて事実ベースで伝えて、その上でサイボウズを選んでくれる人に入社してもらえればと思っています。
学生と向き合う前に、自分が「何故ここにいるのか」を探究してほしい
ー青野さんは今後やりたいことをどのように考えていらっしゃいますか。
今人事をしながら、外部向けの講演や研修などを積極的に引き受けています。また副業で人事として何社かと携わることもしてきました。
サイボウズの人事は採用も制度作りもどんどん新しいことに挑戦する会社で、新しい組織モデルの1つになる可能性を秘めた会社だと感じています。
自社の試行錯誤の中で得たノウハウを社会に還元して、フィードバックをもらいまた改善する。そんな良い循環をまわしていく中で、社会が少しでも前進する役に立ちたいと思っています。
ー最後に、これから採用に向き合う人へ伝えたいことは何ですか。
まずは、目の前にいる人を「何が何でも入社させないと」と思わないことが大切です。
僕も人事なので、そのように焦る気持ちは痛いほどわかるのですが、そのようにして入社してもらっても、結局どこかで無理が生まれてしまいます。勇気を持って、できないことはできない、とはっきり伝えておくことが大事だと思います。
採用担当者が提供する情報は、オープンかつありのままであることを心がけています。自分自身がなぜ今ここにいるのか、その問いに向き合ってみると、僕自身が人事である前に、常に自分にも他人にもわがままなほど誠実であったからだと思えるからです。
そして会社の顔として学生と向き合う前に、自分が「何故ここにいるのか」ということをもう一度探究してみてほしいです。僕の経験上、学生に一番思いが伝わる瞬間も、「なぜ自分はこの会社にいるのか」ということが自分の言葉で伝えられたときだったりします。
ー本日はありがとうございました。
編集後記:
コロナ禍において、“個”と“チームワーク”のあり方が見直されている今だからこそ、第1回目のインタビューはこの方にお願いしたい!と満場一致でお名前が挙がったサイボウズ株式会社の青野誠さん。
「なぜここにいるのかを問い続ける必要がある」というシンプルな言葉の裏には、幼少期から常に“他者”と“自身”にとことん誠実であり続けようとする青野さん独自のスタンスを感じることができました。