近年、多くの企業において副業をはじめとした社員の「課外活動」が推奨されるようになりました。それは社員の課外活動を支援する側の人事においても例外ではなく、本業以外の場所で「人・組織」を軸にした活動をおこなう方が増えています。本連載では、そんな課外活動に挑戦している人事の方にインタビューし、課外活動をはじめたきっかけやその内容、本業との課外活動の関わり方などについてお話を伺います。

第10回目は人事交流会、島の職員、登山など幅広い活動をされている東邦レオの人事・菅将人さんをゲストにお招きし、それぞれの課外活動をはじめたきっかけや、これからのキャリアについてお伺いしました。
 
 

菅 将人 東邦レオ株式会社 人財戦略室 兼 カルチュラルエンジニアリング事業

近畿大学農学部卒業後、2013年より東邦レオへ入社。名古屋を拠点に中部エリアで木造住宅部門の営業・工事・メンテナンスを担当。その後2017年、人財戦略室を立ち上げ。採用をメインとした人事を中心に、ティール組織の導入やそれに伴う評価制度、社内研修、コミュニケーション施策などを実施。現在、人事と商業施設事業のリーダーを兼務。山が死ぬほど好きで、7大陸最高峰登頂を目指す山バカ。国内では夏季を中心に初心者向けの登山ツアーを企画。

人事という枠にとらわれない、“3つ”の課外活動

 
―課外活動をはじめた時期ときっかけについて教えてください。
 
課外活動をはじめたのは、新卒で東邦レオに入社してすぐのころです。当時は営業として名古屋に配属されたのですが、もともと大阪に住んでいたので知り合いがまったくおらず…。

単純に知り合いを増やしたいという思いで、「大人が夢を語ることで子どもたちに夢を与える」というコンセプトのプレゼン大会にプレゼンターとして参加し、そこで知り合った人たちとビジネスでも交流するようになったのが課外活動の第一歩でした。

その後人事として東京に配属されたときもやはり知り合いがおらず、人事としての知見を深めるために社外のミートアップに参加し、そこで知り合った人たちと一緒に“日本酒”を軸にした交流会をおこなうなど、ゆるやかなつながりによって活動の範囲が広がっていきました。
 
―現在おこなっている課外活動の内容について、具体的に教えてください。
 
今までおこなってきたものを含めると、課外活動としては「仕事に直結しない課外活動」と「仕事に直結する課外活動」、そして「ライフワーク」の3つに分かれています。

「仕事に直結しない課外活動」が先ほどお話ししたプレゼン大会や日本酒を軸にした交流会などの活動です。直結しないといっても、他社の人事やその他の職種の方との交流によって得られた知識や気づきは仕事にも還元されていますし、楽しみながら仕事に活かせるつながりを作れるのはありがたいですね。

「仕事に直結する課外活動」としては、2020年に人事の仕事と兼務で伊豆諸島の御蔵島で1年間職員として働いていました。

伊豆諸島御蔵島の様子

もともとコミュニティづくりに関する事業をおこなうために東邦レオからデザイン会社へ出向しており、その事業の一環として御蔵島の総合戦略を作るプロジェクトに参加したのがきっかけです。

プロジェクトの目的は御蔵島の10年計画を作ることで、私は住み込みの職員として住民の方へのヒアリングやワークショップをおこない、そこで生まれたアイデアを計画に練り込んでいく役割を請け負っていました。

御蔵島は300人ほどが暮らす小さな島で、規模は東邦レオとほとんど変わりません。それでもコミュニティの濃度や「当たり前」の違いなどを体感し、とても気づきの多い1年間を過ごすことができました。

そして「ライフワーク」としては、自身の人生の軸になっている“登山”の魅力を伝えるために、登山ツアーの計画とアテンドをおこなっています。社内外問わず、現在に至るまでのべ150名ほどをアテンドしてきました。

自分だけで登山するのももちろん好きなのですが、それを一人で極めるよりも、誰かに魅力を伝えることの方が向いているように感じます。初級・中級・上級コースに分けて3000m級の山をアテンドするので体力的に大変なことも多いですが、それ以上にやりがいを感じています。
 

「会社を辞めなくてもチャレンジできる」と身をもって伝える

 
―課外活動を通じて得られた収穫や気づきについて教えてください。
 
ライフワークとしておこなっている登山は、自身の「謙虚さ・寛容さ」というマインドセットのベースになっています。普段仕事をしていると自分の未熟さゆえにイライラしてしまうこともありますが、自然の中に身を置くとそんな自分の小ささに気づきます。

仲間との登山の様子

また、登山は自然が相手なのでどれだけ頑張ってもコントロールできず、理不尽な目に遭うことも多々あります。でも、それは仕事も同じですよね。

それを人のせいにせず、どのように準備して対処していくかに目を向けるということを含めて、自身の糧になっていると感じます。

もう一つの収穫としては、人事としての“引き出し”が増えたことでしょうか。現在も東邦レオの人事として採用に関わっているのですが、御蔵島の職員として住み込みで働く、登山のために1ヶ月休みを取る、など「会社を辞めなくても別のことにチャレンジできるんだ」ということを経験として伝えられるのは大きな武器になると考えています。

実際、御蔵島の職員として働きながら東邦レオの人事を務めていたときは、距離や時間の制約があったにも関わらず、例年よりも多くの方にご入社いただくことができました。
 

一見遠回りに見える経験が、キャリアに“面白さ”を与えてくれる

 
―課外活動をおこなう前と後で変わったことはありますか。
 
キャリアに対する考え方には特にいい影響があったと感じます。私は今30代前半ですが、自分のキャリアってなんだかんだ焦ってしまいますよね。

それも間違いではありませんが、一見遠回りに見えることをあえてやってみることが、キャリアのおもしろさやオリジナリティにつながるのではないかと思っています。

以前はロッククライミングのように早く上にのぼることだけを考えていましたが、今は登山のように「どの山にどんなルートで登ろうかな」と楽しみながら考えられるようになりました。

人事が一番キャリアを楽しんでいないと、会社での働き方も伝えられないだろうと思います。

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―最後に、課外活動を踏まえてこれから描いていきたいキャリアや展望について教えてください。
 
現在は東邦レオでさまざまな経験を積ませてもらっていますが、40代では自分で組織を作っていきたいと思っているので、それを見据えて30代は会社のリソースを活用しつつ、事業を生み出すことにチャレンジしたいですね。

それに向けて現在は教育系サービスの立ち上げを進めており、来年にはリリース予定です。

一方で、東邦レオの人事として多様な人たちが集い、多様なチャレンジができる環境を作っていきたいという目標も持っているので、本業・副業という線引きにとらわれず、よりよい組織づくりに貢献していきたいです。
 
 
 
取材:小笠原寛、文・編集:西村恵